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~side柊祐~

今日、つくしは「鈴花」として目覚め、そのまま検診に向かった。
それは嬉しそうに大きくなってきたお腹を抱えて俺の横を歩く・・・端から見れば中のいい夫婦ってところだろう。
そして医者にはいつものように金を渡して、胎児の様子とつくしに異常が無いかを診させた。


「・・・問題は無いですね。大丈夫ですよ、赤ちゃんもお母さんも・・・少し貧血気味ですが酷くはないようだし」

「そう。じゃあ順調ってことでいい?」
「良かったぁ!柊祐、赤ちゃん、元気だって!」

「何か不安はありますか?お腹はまだ張らないでしょう?」

「鈴花、どう?」
「ん・・・大丈夫です。彼が側に居るから安心です」

「では体重の増加もこんな感じでいいですからね。栄養のあるものを摂って、食べ過ぎないようにね」
「はい、気を付けます!」


鈴花になって目覚める時、必ず「俺が守るよ」「側に居るのは俺だよ」を繰り返しているから、つくしは目覚めた時に必ず俺を見て喜ぶ・・・それは事故の後からそうしているから、最近は本当に俺に頼りっきりだった。
少しでも姿を見せないと不安がって名前を呼びながら探し回るほど・・・。

そして催眠暗示に掛かったまま1日を過ごせるようになった。
朝起きて夕方まで「鈴花」のままでも、その間に「つくし」が出てこようとしない・・・こっちも順調に進んでいた。


「もう性別も判ると思いますが、どうします?知りたいですか?」

「そうだな・・・鈴花、知りたい?」
「ううん!生まれた時の楽しみでとっておきたいです。だから先生、内緒で!」

「判りました。ははは、最近はみんな知りたがるのにねぇ」

「うふふ、男の子と女の子、両方の名前を考えながら過ごします。どんな名前がいいかしら・・・ねぇ?柊祐」
「鈴花がつけたいなら俺はいいよ。君に任せる」

「ほんと!うん、私が考えるね!えーと、成瀬だから・・・」


本当は「花沢」で考えるところを「成瀬」で・・・この言葉をあいつの前で言わせたかったな・・・。



そして有栖川の屋敷に戻ったら、早速リビングでお茶を飲みながらある話を切り出した。
今度こそ「鈴花」だけで花沢に向かわせる・・・あの計画を実行しなくちゃ。


「鈴花、身体が大変な時にお願いがあるんだけど」
「なぁに?私に出来ること?」

「うん、君なら出来ることだよ・・・鈴花。君なら出来るよ」
「・・・私なら・・・出来る?」

「君じゃないと出来ないんだ。俺の頼みを聞いてくれる?」

「・・・・・・はい、柊祐・・・なんでも聞くわ」


1回だけじゃ失敗する可能性がある。
この日から数日間掛けて「鈴花」にある行動を教え込んだ。




***********************




♪~♪~♪

その電話は本当に突然で、会議資料に目を通していた俺は驚いた。


「・・・えっ・・・本当に?」
『はい。成瀬鈴花様が面会をご希望ですけど、如何しましょうか?』

「すぐに俺の部屋まで通して!」
『畏まりました。では役員フロアにお通しして宜しいのですね?』

「あぁ、大丈夫。彼女は1人?」
『いえ、お連れ様が1人いらっしゃいます』

「・・・そうか、判った」
『はい。ご案内いたします』


つくしが・・・誰かを伴ってるみたいだけど、柊祐と一緒じゃなくてつくしだけが来たと聞いて、慌てて執務室を飛び出してエレベーターホールに向かった。
そのランプがこっちに向かって来る・・・それを見ながらドキドキしていた。

そしてこの階まで来たらスーッと音もなくドアが開き、そこに立っていたのはパーティーでも見掛けたガードの男だった。その男の後ろにいるのがつくし・・・今日も相変わらず笑ってはいなかったけど、確かにつくしが目の前に居た。


「つくし・・・!」、そう言って近づこうとしたらそれをサッと阻止するガード。そいつを睨んだけど、あの日と同じような目付きでこいつも俺を睨んだ。


「本日は柊祐様がお忙しいので鈴花様がご挨拶に伺ったのです。つくしと言う名前の女性ではございません」
「・・・挨拶・・・なんの?」

「それは鈴花様から直接お聞き下さい。それとも花沢物産はエレベーターホールで話をするような会社ですか?」
「・・・判った。どうぞ、こちらに」


秘書のいない俺は自分で案内するしかなくて、その男がつくしを守るようにして歩くのを苛つきながら自分の部屋に連れて行った。そしてドアを開け2人を中に入れると内線で秘書課にお茶を頼み、”つくし”を来客用ソファーに座らせた。
ガードの男は少し離れた場所で見守る役目らしい。入り口のドア近くで仁王立ちして、お茶を運んできた秘書課の女性も驚いていた。

もしかして、今日も触らないつもりなんだろうか。
テーブルに置かれた湯呑みに手を伸ばす雰囲気はなかった。


どうして1人で来ているのにそんなに鋭い視線を俺に向けるの?しかも見てるのは俺の喉の辺り・・・それ以上は目線を上げてくれなかった。


「・・・鈴花として話さないとダメなのか?」
「・・・・・・私は成瀬鈴花です。それ以外の名前はありません」

「そう言えって言われてるの?どんな言葉で君を脅したのか知らないけど・・・」
「・・・・・・・・・」
「花沢様、おやめいただけますか?その方は成瀬鈴花様です。お間違えなきよう、お願いいたします」

「・・・判った。で、今日はどういう用件でしょう?」


敢えてそんな言葉で”つくし”に話し掛けると、漸く俺の目を見てくれた。


「夫からこれを持って行くようにと言われましたの。是非花沢類さんにご担当いただきたいと申しておりました。以前お話したバイオエネルギー関連事業の共同計画書です」

「・・・・・・夫ね・・・」

「はい、夫の成瀬柊祐です。ご覧頂けます?」


それをぱらぱらと捲ったけど頭に入る訳も無く、すぐに理解出来るほど簡単なものでもない。”つくし”には確かに預かったとだけ言って、その計画書はテーブルの隅に置いた。
でも、その書類をジッと見つめて困ったような顔をしている・・・それが気になって声を掛けた。


「・・・なにか?」

「・・・いえ、その中にサインをしていただきたいものがあって・・・お願い出来るかしら」
「サイン?まだ全部を見ていないので出来ないし、こんなものは即答出来ない案件だけど?」

「・・・サイン、お願いできませんか?」
「今は無理。関連部署に見せて精査してからじゃないとサインなんて出来ないんだよ?」

「・・・・・・最後の方に書類があるんです」


俺との会話になっていない。おそらく”つくし”は柊祐に何かのサインをもらって来いと命令されていて、その事しか頭にない感じだった。

あの事故の日の吉岡によく似た反応だ。





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