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シェールガス開発事業からの撤退?
何故そんな話になって、それを俺に怒鳴りに来るのかが判らず、その英語で書かれた書類を読んだ。

そこに書いてあった撤退を指示した人物・・・それが俺になっていた。
添付資料にはその撤退申請書のようなものがあり、俺のサインと職印が押してある。職印は経営管理者しか持っていないもので、俺も役員じゃないけど後継者としてそれを持ってた。

つまり俺専用の社印・・・それが名前の横にはっきり押されていた。


「いつそんな指示を出したの?なんで類がそこに関わるのよ!」
「ちょっと待って!俺は何も知らないし、こんなの担当でもなんでもないのは知ってるだろう!」

「じゃあどうしてそんなものが存在するの?」
「でもこのサインは俺じゃない!それにアメリカでは印鑑の効力なんて・・・」

「えぇ、そうね・・・でも類のサインがあって、日本が押印社会だって知ってるのよ。そもそも花沢のアメリカ支部の人間が変に思うのよ!」
「・・・・・・それでどうなった?」

「・・・それが向こうの運営母体に提出されて、『プロジェクトが始まったばかりなのにこんな裏切りは初めてだ』って散々言われたらしいわ。取り纏めてるスミス氏が相当ご立腹で、花沢をアメリカから追い出すとまで言われたって聞いたわ!
勿論そんな事はされないでしょうけど、これでかなりダメージを負うことになる・・・だからって誰かに勝手にサインされたなんて言える訳が無いでしょう!」

「でも事実そうなんだって!どうして俺の名前で・・・・・・」


そこでハッとした。

あの時、俺はつくしが来たことで気持ちが浮ついて、この職印を机に出してた?
いや、引き出しだった・・・でも施錠なんてしてない。

頻りにつくしが欲しがった俺のサイン・・・それに急に現れて消えた本田と言う男、それってただの偶然だろうか。
それとも・・・まさか、つくしが持って来たあの書類に細工がしてあった?


覚えていない・・・受領書だと書いてあった1番上の文字しか見ていない。
その中の文字も、複写だったかも・・・それすら確かめずにサインしたのは確かだ。

それにあの内線があったのはガードの男に何かの連絡が入ってからだ。
もしかしたらつくしと俺の会話の中にキーワードでもあって、それを口にしたら何処かから電話が・・・じゃあつくしに盗聴器でも仕掛けてたとか?

この部屋は俺が事故に遭ったあとに作られた仮の執務室・・・ここに監視カメラはない。



「どうしたの?何か思い当たるの?」
「・・・いや、何でもない。それより俺がアメリカに説明して・・・」

「だから言ってるでしょ?そんなのどう説明するのよ!後継者ともあろうあなたが、勝手にサインされましたって?そんなの世間に言える訳がないわ。言えるとしたら撤退する理由を考える事ね。
その報告書には詳しい理由が書かれて無くて、それでアメリカの連中がこっちに回してきたのよ。『本社が責任持って解決しろ』ってね。そして長くこのプロジェクトに関わったエンジニア達にそれ相応の対応と、新しい業務をさせろって言ってるわ」

「・・・・・・・・・判った」

「・・・つくしさんの事を考え過ぎて謝った判断をしてるんじゃなくて?」

「そんな事はない。それとこれとは関係ない・・・ごめん、あとは何とかする」



そうは言ってみたけど理由なんて考えられなかった。
それなら頼るのはあいつしか居なくて、母さんが出ていったあとで司に連絡を取った。

そして今回の事を話したら、司は既につくしの変化を知っていた。総二郎から連絡があったらしい・・・自分が動けないからと、司も凄く苛立っていた。
ただ、妊娠と言う言葉が出ない。その言葉は司を激昂させると総二郎も判断したんだろう。

俺も司にその事だけは話さなかった。
知ったら最後、何をしでかすか判らないから。


『馬鹿野郎!掻っ攫って元に戻してやればいいだろうが!ジッと見てるだけでいいってのか!』
「そんな訳ないだろう。でも状況が全く判らないからこっちも下手に動けないんだ。つくしが意識操作されて別人になってるなら、術をかけた柊祐の言葉は絶対らしい・・・もしも、命を絶てって言われたらそうするかもしれない」

『そんな馬鹿な事を信じてるのか?じっくり話せば思い出すだろうが!』
「そんな感じじゃないんだって・・・司も見たら判ると思う。今はつくしであってつくしじゃないんだ・・・心と体が別々なんだ」

『訳判んねぇ事をお前が言うな!・・・っくそっ!!』


「・・・実際に目の前で他の男に寄り添うんだ。あのつくしが俺じゃない男の横で嬉しそうに笑ってるんだ。司・・・それがどれだけショックか判る?」

『判るか!!いいからどうにかして元に戻せ!いいな、類・・・!』


口の悪い幼馴染みは電話の向こうで散々怒鳴ったけど、このシェールガス開発事業から花沢が撤退したのは道明寺が別の場所で行っている同事業に参加する事になったって理由にすると言った。
しかもそれは道明寺サイドが働きかけたことで、花沢がスミス氏の纏めるプロジェクトを軽視したわけではないことを司自らが説明するらしい。



後日、司からメールがあった。

話合いの結果、花沢よりもエネルギー関係に強い企業を代わりに送り込み、スミス氏にはこれ以上騒がないように口止めをしたとのことだった。
そして花沢のエンジニアを道明寺の事業に参加させる事で、新しく共同事業契約が結ばれた。

それでもアメリカで絶大な力を持つスミス氏の中に花沢に対する不信感が生まれたのは当然のこと・・・その後のアメリカでの新規事業に影響が出るのは避けられなかった。




**********************




また類の夢を見た。
凄く辛そうに私を見る夢・・・どうしてあんな顔で私を見ていたんだろう・・・。

まるで別の人を見るみたいな目で悲しそうだった。
だから何か言おうとするのに私は声が出なくて、手を伸ばしたいのに金縛りにあったみたいに身体が動かなかった。


どうしてだろう・・・凄く嫌な夢だった。
せっかく夢の中で会えたのに。

それに類も何か言ってた・・・私の名前を呼んで、それで・・・何だったかしら、思い出せない。



今日も窓から外を見るだけ・・・また少し大きくなったお腹を抱えて、枯れ葉が舞うのを眺めていた。

その時、廊下を歩く足音が聞こえた。
あれは柊祐・・・今度はどんな言葉で私を苛つかせる気だろうと身構えた。そして軽いノック音のあとでドアが開き、いつもの不敵な笑みをした彼が入って来た。

今日は特に嬉しそう・・・気味が悪いくらい。


「気分はどう?つくしちゃん」
「良いわけがないでしょう。何度頼んでも病院には連れて行ってくれないし、東京にも帰してくれない・・・何の情報ももらえない部屋に閉じ込めて、気分が悪いに決まってるわ」

「そう怒らないで。お腹の子供が驚くよ?」
「あなたのそういう言い方が私を怒らせるのよ!何も無いなら出ていって!こんなの犯罪よ・・・判ってるクセに!」

「誘拐罪・・・監禁罪ってところかな。でも、そのうちつくしちゃんの気持ちが変わって居心地良くなるかもしれないよ?」
「そんな訳無い!お願いだから帰して!」

「くすっ、でも帰らない方が良いと思うよ?花沢・・・これからヤバいかもしれないから」


「・・・え?」


花沢がヤバいって何?

柊祐が嬉しそうなのはそのせいなの?何を・・・したの?
ニヤリと笑った彼の顔が怖くてゾッとした。そしてお腹の子供もピクッと動いたあとで大人しくなった・・・まるでこの子も話を聞いてるみたい。

1歩足を出す度にはっきり見えてくる柊祐の瞳の色・・・琥珀色のそれがキラッと光った時、私の喉がゴクリと鳴った。


「花沢、アメリカで大きな問題を起こしてね・・・大事業から撤退したんだって。その原因が後継者の類君らしいよ?彼、優秀だって評判だったのに違ったのかな・・・向こうの企業実力者を怒らせたからアメリカでの新規参入は暫くないかもね」

「類が?そんな・・・彼はそんなミスをするような人じゃないわ!」

「したんだから仕方ないだろ?可哀想に・・・彼、このままだと地位が危ないからどうにかして名誉挽回しなきゃね。それで空回りしなきゃいいけどね」

「・・・まさか、類に何かしたの?!」


「俺は何もしてないよ。ミスったのは彼・・・今頃必死になって頭を下げて回ってるんじゃない?君どころじゃ無さそうだね」



あの類がそんな事を・・・?
そんな時に側に居ることも出来ない妻だなんて・・・。

類の草臥れた姿を想像して涙が止まらなくなった。






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