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plumeria

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後日招集された役員会議で、厳しい表情の管理職達からこの度の件での釈明を求められた。
証拠は何も無いからつくしの事は言わなくてもいい。
むしろ言っても信用してもらえない・・・だから俺の想像した事は口にしなかった。


「皆さんにはご心配かけましたけど、ご覧のように類の筆跡ではありませんの。ただ、どうやって類の職印まで手に入れたのか・・・それが判らないのですわ」

「副社長がご子息を庇いたい気持ちは判るが、やっぱりこれは類君がまだ社会復帰できないと言う事では?」
「筆跡がねぇ・・・でも、なかなか彼の名前を悪用するような度胸を持ってる人間なんて社内には居ませんよ?何か勘違いしてサインしたとかじゃないのかね?」

「・・・いえ、そのような事はありません」


まだ事故の後遺症があるのではと言う役員の言葉に俺よりも母さんの方が動揺していた。
このままでは後継者としての立場を追われるとでも考えてるのかもしれない。
でも、俺にはそんな事はどうでも良かった。25歳の息子を必死になって弁護する姿の方が滑稽に思えたけど、この場でそんな事は言えない。


「取り敢えずアメリカの事業は道明寺ホールディングスとの共同事業で、これまで計画していた場所ではないけど続けることが出来るようになりましたの。現地のスタッフには一から色んな計画の見直しになるから負担は掛けてしまうけど、研究して来たことは新事業で生かせると信じてますわ。
撤退する事になったプロジェクトの代表には私が直々に謝罪に行くことにしました。留守の間、宜しくお願いします」

その言葉と共に、母さんが集まった全員に再調査を約束してこの会議は終わった。


結論など出ないのに・・・。



**



母さんが渡米してからは役員フロアのこの部屋で何もすることがなかった。
あの件ですっかり信用がなくなったのか、オブザーバーとしても呼ばれないし相談されることすら無い・・・実に社員としては無意味な時間を過ごしていたけど、成瀬コーポレーションの動きを調べることは欠かさなかった。

どうにかしてこの会社に人間を送り込むことは出来ないだろうか。

求人でも出ていれば、と思ったがそれも無い。
それならビルメンテナンスのスタッフを装って侵入するか、電気会社の点検を装うか・・・そんな事を考えながらパソコンに向かう毎日だった。

加えて海外の成瀬コーポレーションの役員を調べたけど、やはり何処にも柊祐の名前はない。
彼は一体この会社で何をしているのだろう・・・?
それを調べるのはやはりこの会社の幹部を金で買収するしかないのか・・・でも、それを失敗したら柊祐にどんな反撃をされるか判らない。

あれこれと考えを巡らして数日が過ぎた。



そんなある日の午後、三条からメールが入った。
今日の夜8時に話があるから六本木のバーまで来てくれと・・・。

彼女からそんな事を言われたことが無かったから驚いたけど、もしかしたらつくしについての情報かもしれないと思い「判った」とだけ返信した。


8時になり、指定の店に入ると窓際の席を案内された。そこでは今日も派手なスーツの三条がスマホを弄くりながら眉間に皺を寄せている・・・その表情からあまりいい話では無さそうだ。

少し重たい気分で席まで行くと、俺に気が付いた彼女がサッとスマホを鞄に仕舞った。
そしてそれまで険しい表情だったのに薄く笑みを浮かべた。


「待たせた?ごめんな」
「いいえ、全然大丈夫ですわ。私、今日は1日中仕事になりませんでしたの。だから早めに来ましたのよ・・・あら、でももう8時?」

「そうなんだ?何かあった?」
「えぇ、スマホを無くした・・・って言うか盗難に遭いましたの。ですから新しく買い直したのは良いんですけど、前の携帯の情報が漏れちゃ困るでしょう?だから携帯会社や警察に連絡したりと、そっちが大忙しでしたわ」

「・・・スマホを無くした?いつ?」
「今日のお昼前ですの。ホントにもうっ・・・こんな失敗初めてですわよ!それで?花沢さんの用事って何ですの?」


「俺の用事?いや、俺は三条から呼び出されて・・・」
「私から?」


その瞬間、三条と俺は完全に動きが止まった。

慌てて振り返って見たけどこの店の中に不審な人物は見当たらない。
すぐに今日のこの席の予約について聞けば、電話を受けたスタッフは「花沢で予約された」と・・・。その予約時間は7時30分で、三条に聞けば指定時間は7時30分だったらしい。


窓か・・・!

今度は窓から外を見たけど、こんな夜に不審者なんて見つけることも出来ない。


「奥に部屋がある?」
「は?はい!ございますが・・・」

「悪いけど外から見えない席に変わる」
「畏まりました」

「・・・花沢さん?どういう事ですの?何があったの?」


罠を仕掛けられた・・・多分これもあいつの仕業だ。
この状況を今度はどんな手に使う気だ?

何が何だか判ってない三条を引っ張って外から見えない個室に入り、そこで三条にもこれまでの報告をした。



「・・・・・・そんな、信じられませんわ。先輩が・・・まさか先輩が花沢さんを裏切るなんて!」
「つくしの意思じゃ無いと思う。総二郎やあきらとも話してるけど、つくしは”意識操作”されてるんじゃないかと思うんだ」

「意識操作って?」
「・・・やり方も本当はなんて言う心理状態なのかも判らない。ただ彼奴らと話した結果、催眠暗示に掛けられてるんじゃないかって事に辿り着いたんだけどね」

「催眠暗示?催眠術みたいなものですの?先輩がそんなのに引っ掛かります?そりゃ単純な人ですけど・・・」

「判らないんだ、どうして簡単にそんなのに掛かってしまったのか。事故の後に連れ去られてるんだろうから精神的に弱くなったところを・・・ってことなのかな」


そして今日の三条のスマホの盗難・・・それももしかしたら計画的犯行かもしれないと話した。
そうじゃないと三条のスマホから俺にメールなんて送ることは出来ない。俺に拘わる人間を調べ上げてるって事だろう。そしてそのスマホは既に処分されてるはずだ。
この場で三条のスマホに電話をかけてみたけど繋がらなかった。


「じゃあ、花沢さんは私が8時に呼び出したって事になってるの?」
「そう。そして花沢で予約した以上、三条の方が早くここに来てないとダメだったからあんたが7時30分って訳だ」

「・・・・・・どうしてそんな事を」
「判らない・・・こんなのどう利用するつもりなのか・・・」

「だって、会った瞬間バレるじゃないですか!」
「だから会うだけで良かったって事だよ。スマホにロック掛けてなかったんだろ?」

「・・・盗まれたのは個人用携帯ですからね。仕事用のスマホは持ってますし、ロックも当然です。そっちが盗まれてたら食事に誘われても来ませんでしたわ」


おそらく妻が入院治療中に他の女性と会ったって事をスキャンダルにするつもりだろう。
三条がそれを否定しても、噂というものには尾鰭がつく・・・こんな些細な事でもあの騒動の後の俺にはかなりのダメージになる。


柊祐の笑い声が何処かで聞こえるような気がした・・・。




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