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plumeria

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偽の俺が予約したその店で遅い夕食を終えて、三条と少しだけ酒を飲んだ。
その間に話すのはつくしの事・・・三条もまた俺と同意見だった。

つくしは絶対に俺を裏切らないと・・・だから子供は柊祐の子供ではないと言い切ってくれた。


「だってそれしか考えられないんですもの。もし催眠術に掛かって襲われたとしても、先輩ならその途中で目覚めます。たとえそれが何かの合図がないと目覚めない術だとしても無意味ですわよ。あの先輩ですよ?絶対に相手を蹴り飛ばして覚醒しますでしょ?」

「蹴り飛ばす・・・か。うん、そのぐらい抵抗してくれたら助かるけどね。俺も初めこそ腹が立ったけど、すぐに確信した・・・子供が出来たのならそれは俺の子だって」

「当たり前ですわ。私は見てないけど、本当に自分自身を大事にしてるなら心の何処かで花沢さんの子供だって想ってるんですよ。そうじゃなかったらこの私が許しませんわ。その何とかって男の子供なら認めませんから!」

「今はたとえ俺を覚えてなくても無事に産んで欲しいって思ってる・・・そして絶対に花沢に連れ戻すから。その為に調べてるんだけど、いつも何処かで止まってしまうんだよな・・・」

「ややこしそうな男ですわね。と言いますか、卑怯じゃありません?花沢さんを攻撃するなら直接したらいいのよ。どうして先輩を使わなきゃいけなかったの?」


それは初めの頃から思っていた。

何故俺を攻撃するのか・・・そして何故その為に新婚の俺達を引き裂いてつくしを使うのか。
精神的ダメージを負わせるには効果があるけど、どうしてこんな手段を選ぶ?


「・・・もしかしたら花沢さんを攻撃するのとは別に、先輩が欲しかったのかしら」
「つくしを?」

「そうですわ。だって自分が動かずに他の人間を動かすなんて、実に面倒で確実性に欠けますでしょ?自分が居ないところに操ってる人間を送り込んでも、それが絶対に成功するって思えます?不安で仕方ないじゃないですか。
それでも先輩を利用するなら、先輩だって目的の1つだと思いません?」

「・・・柊祐がずっと前からつくしを知ってたって事?」


でもつくしはずっと新潟の有栖川で暮らしていて、そこでは女の子が居たって情報しかない。
もしもそこで柊祐がいたらそんな言い方じゃないだろう。
兄妹とか女の子と男の子の二人が居たとか・・・それに英徳に入学するまで東京に戻るのは進に会うときだけで、誰かと接触する余裕なんて無かったはず。
その後は俺がずっとつくしを見ているんだから、その頃に柊祐のような男の影はない。

それならもっと前・・・でも、そんな子供の時の記憶なんてない。


「どちらにしてももっと情報が必要ですわね。私も成瀬コーポレーションのこと、気に掛けておきますから」
「ん、頼む。それと今日の事だけど・・・」

「ご心配なく。もしも外から隠し撮りされてスキャンダルにでもなったら私が全否定させていただきます。私の好みとは掛け離れた方ですってね!」

「・・・くす、うん、それで頼む」

「それに先輩の目に触れても相手が私なら何とも思いませんよ。先輩が花沢さんを裏切らないのと同じで、私は先輩を裏切りません。そして先輩はそんな私を信じてくれますから」


そうは言っても同時に店を出るのはマズいだろうからと、三条が先に店を出た。
そして俺はその後1時間ぐらい1人で酒を飲んでからマンションに戻った。


まさか、この後三条が連れ去られるとも思わずに・・・。




**********************




~side柊祐~


「・・・・・・・・・」


もうすぐ「鈴花」が目を覚ます。
さっき暗示を掛けたまま寝かせたから・・・。

起きたら「成瀬鈴花だからね」・・・たったそのひと言だけ。最近のつくしは実に術に掛かりやすくなって、その時間も格段に延びた。
ほぼ1日中鈴花で過ごしても不安定にならない。

ただし、腹の子供がいつ鈴花に対して”つくし”を求めるかが判らない。毎回催眠暗示に掛かって居るつくしを観察しながらだったけど、今のところそれは見られなかった。
このまま計画が順調にいけばいいが・・・と、目覚めそうな「鈴花」を見ていた。


「・・・・・・ん・・・」
「・・・お目覚めかな?鈴花・・・」

「・・・あれ?私・・・どうしたの?柊祐と話してたのにまた寝ちゃった?」
「仕方ないよ、お腹が大きい時って眠いって聞いてるし。でも今日は検診に行く日だよ?起きられる?」

「あっ、そうか・・・うん、起きる!」
「起こしてあげる」


俺が手を差し出すと、躊躇いもなくそれを掴んで起き上がる「鈴花」・・・そして俺の首に顔を埋めて「身体が重くなったでしょ?」なんんて幸せそうに囁く。
この言葉を聞くのは本来花沢類なのに、この俺が全部それを奪ってる。

出来たらこの光景を目の前で見せたいぐらいだ。


そしてあの涼しげな顔が歪むのを見たかったけどね・・・。


いつものように検診に行ったら経過は順調だと言われ、鈴花は今日も性別を聞かなかった。
そしてエコー写真をもらって嬉しそうに眺め、自分の腹を摩って俺にも見せてくれた。

もう人の形をしてる画像・・・この子の父親は花沢類だと思うと、鈴花を前にしても少しだけ顔が引き攣った。それを見られないように隠して声だけ「可愛いね」を繰り返す。
内心、この子が産まれて来た時、自分がどんな感情になるのかが想像出来ない。


言えるのは・・・愛情は持てないだろうって事だけだった。


「凄いねぇ・・・ほら、この手だってもう判るわよ?ふふっ・・・お腹の中で何してるのかしら」
「ははっ、何にも出来ないから寝てるんだよ」

「最近は凄く蹴るのよ?寝てないわよ~」
「そうなの?元気がいいんだね」

「うん、早く産まれないかなぁ~」
「・・・まだあと4ヶ月近く先だよ。のんびり待とうよ」


4ヶ月後にはつくしはこの子を産み、そして永久に鈴花として生きるんだ。
覚醒させる事なく一生「成瀬鈴花」として俺の側で暮らす・・・その為にこんなに長い時間掛けて訓練したんだから。


この間に花沢類には再び罠を仕掛けてやる・・・もう二度と表舞台に出られないようにしてやる。


「ねぇ、柊祐。何処かで赤ちゃんのお洋服買いたいわ。連れて行ってくれる?」
「ん、いいよ。そうだな、新しい子供服の店が出来たって聞いたから行ってみる?でも、どっちのものを買うの?性別、判らないけど」

「うふふ、私ね、何となく判るの。買うのはピンク色・・・きっと女の子が産まれてくるわ」

「・・・どうして判るの?」

「ん~~、何となく?お腹の赤ちゃんが女の子だって気がするだけ。夢の中でね・・・ママって呼ぶ声がするんだけど、女の子の声なのよ」

「・・・・・・そんな夢を見るの?」
「えぇ、よく見るわ。でも不思議なの・・・早く帰ろうって言うのよ?何処に帰るって言うのかしらね?うふふ・・・!」


・・・・・・やはり胎児の力は・・・判らない。
俺の催眠暗示が効かない胎児がつくしを誘導しようとしてる?


そんな事があるんだろうか・・・だとしたら、この子は・・・・・・邪魔だな。






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