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母様の言う通り、父様はその日帰って来なかった。
今日はお爺様達と一緒に食べようと決めた朝食なのに、ポツンと空いてる父様の席・・・そこに目が行って言葉にならなかった。


「花音、何かあったらすぐに帰るんだぞ?」
「お爺様ったら!まだ行ってもないのに帰るお話はやめてくださる?」

「向こうに行ったら街の様子を教えてね?随分行ってないから変わったかしらねぇ?そのうち私も遊びに行こうかしら」
「あら!お婆様、一緒にお買い物行きます?」

「花音姉様、迷子になるんじゃないの?いつも思い付きで歩くんだもの」
「やぁねぇ!流石に見知らぬ街ではしないわよ」

「判んねぇぞ?男にはついていかなくても食い物の匂いでどっかに行くんじゃねぇの?」
「馬鹿!そんな訳ないでしょう?!帰国する時、絶対颯音にはお土産買わないからね!」


態と元気良いフリしてみんなと話すけど、そこでも黙ってるのは紫音と母様。
2人ともニコニコしてるけど、何処か淋しそうにしてるのがチクチクと胸に刺さるようだった・・・。



パリ行きの飛行機が羽田を出るのが11時40分。
今は8時だからそろそろ類お兄様がここにやってくる時間だ。
恋人として行く訳じゃないから空港で待ち合わせようって言ったのに、やっぱりお爺様達にひと言挨拶したいってお兄様が言ったから。

スーツケース1つを玄関に置いてその時間が来るのをドキドキしながら待っていたら、母様の足音が聞こえた。


「花音、お迎えが来たわよ」
「はーい!・・・あれ?」

その時の母様の格好に驚いた。
いつもは着物か、派手じゃない洋服なのにジーンズ・・・まるで私と同級生みたいな可愛い格好だった。
そんな母様の格好は私が小さい頃に何度か見たぐらいで最近はしなかったのに、どうして今日はそんな格好なのかしら。しかも空港まで見送りのために一緒に行くって言ってたのに?

それが不思議だったけど、穏やかな母様の顔を見たら何も言えなかった。



玄関ではもう類お兄様がお爺様達に挨拶してくれていた。
なんだかお嫁入りみたい・・・なんて勝手に思ったけど、お兄様の「責任持ってお預かりします」って言葉に苦笑い・・・。
まるで保育園に預けられる園児みたいだなって思った。

「類君、宜しくな・・・くれぐれも1人にしてやらないでくれよ?」
「はい、四六時中という訳にはいきませんが、初めのうちはボディガードをつけますから」

「食べ物にも気を付けてやって?慣れない土地のものはお腹を壊すといけないから」
「うちのシェフがついていますから大丈夫だと思います」

「類お兄様!絢音のお部屋もある?」
「くすっ、あるよ。いつでもおいで」

「兄様!俺の歳ぐらいの女には知り合い居るの?」
「・・・・・・颯音、それより勉強しな」

みんながそれぞれ好き放題言ってる中で、紫音だけは黙って類お兄様を見つめていた。それは少し怖いぐらいの顔・・・紫音がそんな表情をするのは珍しかった。
類お兄様も紫音には黙って微笑んだ・・・「心配するな」って心の声が聞こえた気がした。


「お義父様、お義母様、それでは空港まで送ってきます」
「学校の休暇には帰らせますから」


母様とお兄様がそう言って、私は靴を履いた。
そして振り向いたけど、胸がいっぱいで声にならない・・・。みんなもそうだったのか、あの颯音でさえ鼻を啜った。


「花音、待って」
「ん?紫音、どうしたの?」

「これ・・・ちょっと大っきいけどお守りにしなよ。父様、ずっと大事にしてたんだ。黙って持って来たんだけどね」
「うそ、これって・・・あの時の?」


紫音が持たせてくれたのは「雪兎のお茶碗」だった。
まだ私達が美作に住んでいた頃、初めて日光で父様のお茶会を見た時の茶碗・・・私と紫音が飲みやすいようにと小さなお茶碗を用意してくれた父様。
私はお茶菓子だけ持って逃げたらしいけど、その時の事はほんの少し覚えてるぐらいだった。

それを父様はずっと大事に持ってたの?


「でも黙ってって・・・」
「良いんだと思うよ。態と茶室の目立つ所に置いてあったから・・・父様、素直じゃないからね」

「くすっ、じゃあお守りにするわ。父様にそう伝えてね」
「うん・・・割るなよ?」
「勿論!大事に抱えて持って行くわ」


今日は西門の車で行く事にしていたから、先に母様が乗って次に私が乗った。
そして最後に何度もお爺様達に頭を下げるお兄様・・・号泣するお爺様を絢音とお婆様が支えるようにして立っていた。
紫音は巫山戯る颯音の頭を小突き、志乃さんも事務長さんもみんなが門の前に並んでくれた。

ここは・・・やっぱり母様に負けない笑顔で行かなきゃね・・・!


「じゃあ行ってきます!みんな、見送りありがとう!」


車は静かに走り出して、見慣れた白壁が遠離っていく・・・それを振り向いて見ていた。
お爺様の大切な松の木が見えなくなった、その瞬間にほんの少し目頭が熱くなって、車のシートを掴んでいた手に力が入った。


父様・・・何処に居るんだろう。




************************


<sideつくし>

羽田に着いた・・・いよいよ娘を海外に見送る時間になった。

淋しくないと言えば嘘になるけど、この別れは花音が自分で決めた新しい道・・・だから笑って送り出してやらないといけない。少しだけ不安そうな花音を抱き締めて「大丈夫だよ」って言葉を掛けた。

そして花沢類・・・彼にも笑顔を向けた。


「花沢類・・・花音のこと、頼むね」
「ん、判ってる。心配しないで」

「それと、あなたの気持ちを花音に合わせることはしなくていいんだからね?もしも・・・」
「・・・・・・ん?」

「・・・花音との人生を選んでくれたとしても、そうじゃなかったとしても、2人が納得した人生であればOKだから!」

「母様ったら!」
「くすっ・・・あんたらしい言葉だね。じゃあ・・・あいつに宜しく」

「・・・えぇ、伝えておくわ」



あの小さかった花音が、恋をして海を渡っていく。
とても難しい恋だけど、どうかその恋が素晴らしい結果に結びつきますように・・・そう祈るしかなかった。

背の高い花沢類の横を嬉しそうに歩いて行く花音。
これから色んな経験を積んで行くんだろう・・・私や総がそうだったように。

2人が人混みに消えて行くのをたった1人で見送って、最後に「母様~行ってきます~」って声が響いたけど、もう姿は判らなくなっていた。



「さて・・・私は迎えに行くか!世話が焼けるなぁ~ホントに!」




**




西門の車に戻ったら空港の外の道を走ってもらった。
飛び立って行く飛行機が見える場所・・・・・・暫く走っていたら、やっぱり総は停めたバイクに縋って近くの公園に居た。


回りなんて見ても居ない。
ただボーッとフェンスの向こうの滑走路を眺めていた。

だから「荷物」を持って車を降り、運転手さんには先に帰ってもらった。



総の真後ろから足音をさせないように近づいたのに、彼は振り向きもせず声を出した。


「・・・何だよ・・・1人が良かったのに」
「あら、泣くところを見られたくなかったから?」

「・・・ばーか、そんなんじゃねぇよ」
「いいじゃない、もうすぐ時間だよ?」

「・・・・・・うるせぇよ」
「意地っ張りだなぁ・・・ほら、あと10分。11時40分に飛び立つわ」

「だから聞いてねぇよ!」
「ふふっ、はいはい」


総はブスッとした顔のまま真横に立った私の事なんて見やしない。でも「少し寒いね」って言ったらグイッと引き寄せてくれた。
そしてやっぱり黙って真正面の滑走路を眺めていた。


11時40分になった・・・その直後、一機の飛行機が空に向かって飛びたって行った。



「・・・あれかな?」
「時間通りならあれだろ」

「・・・今から12時間も掛かるのね」
「・・・知るか!」

「・・・小さくなっていくわ・・・雲が・・・総、もうすぐ見えなくなるわ」
「・・・・・・・・・五月蠅い」


花音と花沢類を乗せた飛行機は完全に見えなくなった。
その飛行機が濃く残した飛行機雲・・・明日は雨かもしれないねって言っても返事なんて無かった。



「総・・・帰ろう?お腹空いたでしょ?」
「・・・お前は車で帰ればいいだろう」

「そういう訳にはいかないのよ。運転手さん、先に帰ったんだもん」
「は?でも俺はバイクで・・・・・・」


初めて私の方に顔を向けた総の前に、自分のヘルメットを差し出した。
そして私はジーンズ・・・それを見て、やっと総が噴き出した。


「くくっ!馬鹿じゃねぇの?」
「あっはは!久しぶりだから怖いけどさ、これもいいじゃない?」

「こんなデカい荷物乗せるの、久しぶり過ぎて落とすかもしれねぇぞ?」
「そんな事にならないわよ。だって総だもん。私の事は絶対に守ってくれるもの」

「・・・違いねぇな」
「でしょ?さ、帰ろ?」


「よっしゃ、帰るか!」


総がバイクに跨がって、私はその後ろにしがみつくようにして飛び乗りヘルメットを被った。
そして彼の身体に両腕を回すと、それを総のグローブが押さえてくれる・・・ハーレーのエンジン音が鳴り響く。


「つくし、絶対に手を離すなよ?」
「勿論!娘には負けられないからね!」

「・・・・・・上等だ!」



飛行機雲が薄れてしまう頃、私達は少しだけ静かになった家に向かってバイクを走らせていた。
やっと流せる涙を、総も私も誰にも見られることもなく・・・・・・。


頑張れ・・・・・・花音。




fin。




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なかなか更新出来なくて申し訳ありませんでした。
今度はあきら君のお話、そして「紫音の恋」を予定しています。

しばらくお待ち下さいね。
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Comments 8

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2019/11/12 (Tue) 15:10 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/12 (Tue) 15:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは、こんな感じで終わりました~💦
ここのね、バイクのシーンを書きたかったんですよ。

総ちゃんが離れた所から淋しく見送る(笑)

ただ、その途中で非情に悩みましてね💦
花音も大好きだけど、どうしても類君とは・・・(笑)

だからここから先は読者様の妄想にお任せすることにしました。
私の中にもこの後の2人のビジョンはあるんですが、それは私だけの妄想で。

でも幸せになることだけはお約束ですね♡

長引いてしまって申し訳ありませんでした。


さて・・・あきら君、書かなきゃ(笑)←これ書かないと紫音に行けない💦

2019/11/12 (Tue) 22:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

はい、行っちゃいましたね・・・。
何となく紫音の気分になって淋しかった私(笑)

でも花音はこれからの生活にウキウキのドキドキでニヤニヤしてるんでしょうね(笑)
ふふふ、類君はそんなに簡単に落とせる男ではございません・・・。

そんな素っ気ない類君にくっつき回る花音ちゃんを想像してしまいます♡


どうだろう?紫音の時に少し書こうかなって思っていますけど、どうなることやらです。
でもまぁ、花音の話数を超えることはないかな?

やはりここは類君効果で話が長くなると言う(笑)

現在マジで忙しくてなかなか書けないのですが、頑張ってあきら君に移り、年内には紫音を終わらせることが目標です。
どうぞお付き合い下さいませ♡

2019/11/12 (Tue) 22:25 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/12 (Tue) 23:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 素晴らしい‼️

mikeylove様、こんばんは。

ご訪問&コメントありがとうございます。
初めまして、なのですね?ようこそお越し下さいました♡

いやいや💦お恥ずかしい話ばかりでございます💦
でも大変嬉しいお言葉です。ありがとうございます。

今回もこのラストシーンは初めから決めていましたので、すんなりと書くことが出来ました。
天邪鬼総ちゃん・・ふふふ、大好物でございます♡

「私の帰る場所」もあきら君のお話を少しだけ書いたら紫音の話に移り、そこで完全終了となります。
リアルも考えてのんびり更新していきますので、最後までお付き合いいただけましたら嬉しいです。

どうぞこれからも宜しくお願い致します♡

2019/11/13 (Wed) 00:43 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/24 (Sun) 10:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。


うふふ、そのシーン、感動して下さいました?
私もそのバイクの総ちゃんを書きたくてね~(笑)

もう、ここだけは外せなかったのよっ!!


もう飛行機の中の類君も花音もどーでもいいわいっ!って事までは思わなかったけど(笑)
でも、この時は類君を忘れたわ💦

うん・・・まぁ。これで花音は終わった!
次、頑張りますっ!

2019/11/24 (Sun) 23:54 | EDIT | REPLY |   

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