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plumeria

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アメリカから帰った母さんに呼ばれたのは数日後。
社長室に入るなり不機嫌な顔をされて「そこに座りなさい」と冷めた声で言われた。


もうつくしの事なんて考えてもいないのか・・・母さんの表情からは仕事の心配しか伝わってこなかった。


「・・・何とかスミス氏に会うことが出来て謝罪して来たわ。道明寺との事があるなら早くに言って欲しかったってね。
でもこれで暫くロス方面の仕事は請け負えそうにないわね・・・現地の人間に細やかな対応を心掛けるように伝えては来たけど、アメリカ支部の役員達も困惑していたわ」

「そう・・・俺が何かをしたわけじゃないけど、ごめん・・・」

「・・・そうかもしれないけど言えないじゃない。あなたの名前を勝手に使われたなんて・・・格好が悪すぎるわよ。それにお父様・・・社長だって随分心配してるわ。ヨーロッパ支部の幹部達にもこの話は伝わってるから、ご子息は大丈夫なのかって言われてるみたい。まぁ、こんな理由にはしたくないけど、事故の後の精神的なものだって言ってるみたいだけどね。
それでも将来を心配する役員は少なからず居るって事よ、類」

「・・・判ってる。早く元の自分に戻る努力はする、でも」


「つくしさんの事ね?」


母さんがソファーから立ち上がり窓に向かった。
そして腕組みしたまま外を眺め、小さく溜め息をついた。

その背中が『いい加減に諦めなさい』と言ってるよう・・・それを感じながら無視して母さんから視線を外した。


「・・・こんな言い方、類は怒るでしょうけど」・・・そんな前置きで、俺に背中を向けたまま話し始めた。

「こんな事なら初めから行方不明だと公表すれば良かったって思ってるわ。まさかこんなに探しても発見されないとは思わなかったから、スキャンダルを恐れて隠してしまったけど間違いだった・・・」

「・・・何が言いたい?」

「入院して絶対安静だなんて言ったから今更それを訂正も出来ないけど、おかげで見付からないつくしさんを探す類がどんどん会社から離れていってしまう・・・そんな気がするわ。
世間ではつくしさんは無事で療養中のはずなのに、類がいつまでも不安定だって思われてるの・・・後継者の精神状態が良くなかったら、それだけで離れていく取引先もあるのよ」

「つくしは見付かってる。だから取り戻すために動いてるだけ・・・悪いけど、これが俺にとっては最優先事項だから」


そう言うと半分だけ顔を俺に向けて眉を顰め、すぐにまた窓の外に視線を戻した。

相当苛ついてるんだろう。
組まれた腕の先・・・指に力を入れてるのが判った。


「世の中は止まらずに動いてるのよ、類」
「判ってる」

「あなたは花沢物産の後継者よ。どれだけの社員を抱えてるか知ってるわね?」
「あぁ、勿論」


そんな事は言われなくても判ってる。
止まらずに動いてる・・・時間は確実に過ぎて、つくしの変化も止まることはない。

だから急がなければ・・・・・・。


母さんの焦りとは少し違う焦りが俺を襲った。



**



その日の夜、総二郎から電話があった。
また新たな情報かと急いで通話をタップしたけど、その第一声が意外な内容だった。


『なぁ、最近桜子に会ったか?』

「・・・え?三条・・・あぁ、会ったけど、どうして知ってる?」
『会ったのか?じゃあ類だったんだ、少し前にあいつと飯食ったってのは』

「・・・待って、総二郎。その話、何処から聞いた?」
『は?三条の会社の事務員からだけど?どうしたんだよ・・・何でそんなに類が慌てるんだ?まさか、あいつの居場所、知ってんのか?知ってるんなら連絡してくれよ、困ってるみたいだぞ?』


・・・・・・何の話?

三条の居場所って・・・、俺と三条はあの店で時間をずらして帰ったんだから、それからは知らない。
その後も連絡は取ってない、そう言うと総二郎は「そうか・・・」とひと言だけだった。「どこ行ったんだ?」って独り言のような言い方が気になって訳を聞くと・・・


『桜子が美容関係のコラムを書いてる雑誌と、俺がエッセイ書いてる雑誌の出版社が同じでさ、担当は違うんだけど顔見知りなんだよ。それで桜子が原稿持って来ないし電話にも出ないって言うから、あいつの会社の事務員に茶道教室の生徒がいるから連絡取ってやったんだ。
そうしたら、桜子のやつ、類と会った次の日から出社してねぇらしいんだよな・・・』

「え?あの日から?」

『あぁ。自由気儘なヤツだけど、あいつ会社じゃ社長だからスケジュール狂わせたり予定変更したりってしないんだってさ。それなのに連絡取れなくなって数日過ぎてるから探してるらしいんだ。
たださ、連絡取れなくなった前の日の夕方「珍しい人から呼び出しがあったから後は宜しく」って言い残して帰ったらしいから、珍しい人って誰かと思ったんだ』


三条から俺にも何の連絡も無い。
そして別れる時も変わった様子も、その後で誰かに会うような話しもなかった。

まさか・・・・・・いや、でも三条をなんの為に?

一瞬頭の中で過ぎった事をすぐに打ち消そうと思ったけど、それにしてはタイミングが良すぎるんじゃないのか・・・?
あの店を予約した人物は三条と俺が一緒に居ることを知ってた訳だし。


『どうした?類、なんで黙ってんだ?』
「・・・・・・総二郎、もしかしたら・・・」

『は?何か思い当たるのか?』

「もしかしたら成瀬かもしれない・・・実はさ」
『いや、直接聞く。すぐに行くから待ってろ!』



成瀬の名前を出したら総二郎はすぐに電話を切って、その僅か20分後にはインターホンが鳴らされた。そしてすぐに部屋に入れると、肩で息をしながらヘルメットをソファーに投げた。
その横にドカッと座ると「酒!」って言うのをバイクだから止めさせて、珈琲に少しだけブランデーを入れて出した。

それをひと口飲んでから、話の続きに入った。


「で?どういう事だ?成瀬かもって」
「ん、実はさ・・・」

総二郎に三条と俺が誰かの罠にはまって六本木の店に呼び出された事を話すと、こいつも「そりゃ間違いねぇな」と呟き、顔を両手で覆ってソファーの背凭れに縋った。
そして暫く天井を睨みながら眉を顰め、この罠の最終目的を考えてるみたいだった。


「三条をどうしたいんだろ・・・あいつ、牧野とは仲良かったよな?」
「あぁ、多分ね。優紀とは違う意味で1番仲が良かったと思う」

「だよな・・・って事は牧野の所に連れて行ったのか?」
「でもそれなら俺を呼び出さなくてもいいんじゃない?三条だけを狙えばいいんだから」

「そうか・・・わざわざ類が一緒に居るかもしれないのにそんな事しねぇか・・・」
「これも俺への攻撃なのかな・・・」


でも、あれから一週間ぐらい経ってるのに俺のスキャンダルなんて何処からも上がってない。
あの店を何処かから撮影したような写真も届けられてないし、それで脅迫されてもいないはず。三条の会社にも脅迫なんて来ていない。捜索願いを出すかどうかの判断をしているんだと総二郎に言われた。


「確かにフラッと海外にも行くようなヤツだからなぁ・・・でも、今回はこれまでとは全然パターンが違うって事務員が言ってたし」
「・・・あいつ、ああ見えて仕事に関しては真面目だからね」

「そうなんだよな~、金儲けって意味じゃねぇけどプライドが高いからな」
「・・・・・ん」



つくしに加えて三条まで・・・まだ他にも俺の回りにターゲットが居るんだろうか。

この後、詳しい事情は話さずに、進と真由美、優紀と滋にも注意するように電話を入れた。
その誰もがつくしを心配して涙声になる・・・それをつくしに届けてやりたかった。





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