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plumeria

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少しだけまたお腹が大きくなって、最近は本当によく動くようになった。
病院に行ってない私はこれだけが赤ちゃんの無事を知ることが出来る現象だったから、いつもお腹に手を当てて話し掛けていた。


早くパパの所に帰れるように頑張るからね。
だからあなたも頑張ってね・・・。

あなたはどっちなのかしら・・・男の子?女の子?・・・パパに似てるのかしら。そうだと嬉しいなぁ・・・。
ママに似たら鼻が低いかもしれないものね。
パパに似たらイケメンだし美人だし、モテモテで困るわよ?


そう念じるとお腹の中で笑ってるような気がして嬉しい・・・早く顔が見たいなぁって毎日目を閉じてこの子の寝顔を想像した。

本当は赤ちゃんのものを類と選びに行きたいのに、柊祐が少しずつ揃えている。
可愛いなぁとは思うけど、それを見ても嬉しいとは思えなかった。あの人はいつ、どうやってこんなものを買いに行ってるんだろう。それとも現物は見ずにネットショッピングかしら。

私は自分で見て、触って選びたいなぁ・・・大事なものだし、その買い物を類と2人でするのが夢だったから。


子供の時に両親と過ごした記憶が少ない私には家族一緒は憧れでもあり夢・・・それが類とだなんてこの上もない幸せだってずっと思っていたのに。



そうやって微睡んでいたら部屋に入って来たのは森田さんだった。
いつものように私の話し相手と身体の事を聞いてくれて、もう諦め半分に「病院に行きたい」を繰り返すだけ。

でも、その時にお爺様の容態を教えてくれた。


「血縁がないとは聞いていますけど、その気になったならお顔を見に行ってあげて下さい。もうそんなには・・・」
「そんなにお悪いの?この前寝込んでおられたけど、あれは一時的なものじゃなかったんですか?」

「そうですね・・・ご本人様の希望で入院をされないから、このお屋敷では投薬と点滴ぐらいが限界でしょう?治療とは言えないし、それ以上を受ける意思がないなら・・・」
「柊祐はなんて言ってるんですか?」

「柊祐さんはお爺さんの気持ちを優先するって言われています。どうしてもここを離れたくないのなら、それも仕方ないと」

「そうですか・・・判りました。後でお顔を見に行きますね」
「そうしてあげて下さい。とても淋しそうにしていらっしゃるから」


淋しいのは私も同じ・・・そして子供の私をここに連れて来て軟禁したのもお爺様だ。
今は復讐の為だと言ってまた閉じ込めてる。

それなのに顔を見て、何と言えばいいのだろう・・・?


森田さんには「行きます」なんて言ったけど、結局私はお爺様の部屋に行く事は出来なかった。顔を見ても私の心が動かない・・・心配するフリはしたくない。
そんなに器用じゃないもの・・・目が覚めていればお爺様に私の気持ちがバレてしまう。


「そうよ、実の孫なんだから柊祐が顔を出した方がよっぽど・・・・・・あれ?」

そう言えば最近柊祐が来ない。
何処かに行ってるのかしら・・・もう1週間ぐらい、あの人の声を聞いてない。

これだけ長い不在は初めてじゃないかしら。
なんだか胸騒ぎがする・・・。


この得体の知れない不安はなに?




********************




総二郎と話した2日後。

定時で退社する日々が続いていて、その日も何もすることがなく時間になったら上着を羽織った。そして何の書類も入ってないビジネスバッグを片手に執務室を出ようとしたら、スマホにメッセージが入った。

それは三条から・・・!驚いてすぐにメッセージを開いたら俺への呼び出しだった。


『今から先輩に関する情報をお教えしますのでK町のSホテル横の駐車場まで来て下さい。大事な人に会わせますからお1人で来て下さいな』


その先輩という書き方も文体も三条のものだと思った。
一体今まで何処に行ってたんだ?つくしの事だと書いてあるけど、まさか仕事じゃなくてつくしの為に何かを探ってたんだろうか?それならこの行方不明は俺達のため?

もしそうなら申し訳ない・・・だから急いで車をK町に向けて走らせた。



言われた駐車場に車を入れて三条が現れるのを待ったけど、彼女らしい姿はなかなか現れなかった。
時間指定だったかとメッセージを見直したけど「今から」としか無い・・・どうしたのかとイライラしながら辺りを見回していた。

そこは大通りから1本中に入った道で、遠目にブティックホテル、ファッションホテルの類いがいくつか見えた。
三条が呼び出す場所にしては違和感があったけど、会わせたい人というのがこの近くの人間なのかもしれない・・・そんな事を考えながら時計と外の光景を交互に見ていた。


もうすっかり空は暗くなり、この時間の方が人の動きが多い・・・その人の動きの中に派手な赤いコートを見つけた。
赤い色は真っ直ぐこっちに向かっていて、顔まで見えなかったけど三条だと思った。だから車を降りてその人に身体を向けると、確かに彼女が真面目な顔をして俺の方に近寄って来た。

それはいつもより凄く強張った表情・・・一瞬背中がゾクッとした。


「三条?あんた、会社に電話した?みんなが探してるみたいだったけど、もしかして何か探ってくれてたの?」
「えぇ・・・会社なら大丈夫ですわ。じゃあ、行きましょうか」

「何処に?車で話すんじゃないの?」
「いえ、近くに会わせたい人が居るんです。すぐそこですわ」

「会わせたい人って誰?」
「・・・すぐに判ります。いいから早く来て下さい」


今まで俺を待たせていたのは三条なのに・・・と、苛ついていた分、憤りを感じたけど黙って彼女について行った。
そして歩くこと数分、あるファッションホテルに入ろうとしたから慌てて止めた。
こんなホテルにこいつと入るところを誰かが見ているのかもしれない、と辺りを見回したけどそれらしい人影は見当たらないし、怪しい動きもなかった。


「ちょっと待てよ!こんな所で待ってるのか?」
「えぇ、そうですわ。逆にこんな所だから大丈夫なんですよ」

「・・・悪いけど呼んできてくれないか?俺はこんな場所に入る気は無いから」
「いやだわ、何を考えてるの?花沢さん、聞きたくないんですか?先輩の居場所が判るかもしれないんですのよ?」

「つくしの居場所?それを知ってるヤツ?」
「・・・それは話してみないと判らないでしょ?でもここが指定の場所なんです。いいから行きましょう」


三条は俺を置いてさっさと中に入った。その様子に少しだけ戸惑ったけど、つくしの居場所というワードに反応して彼女の後をついていった。

そのホテルは如何にも・・・と言う空気が漂っていた。
何処か安っぽい内装に品のない調度品が置かれていて、この類いのホテルが初めての俺は気分が悪い。
勿論三条だってそうだろうに、真っ直ぐ何処かの部屋に向かって行く・・・その機械仕掛けの人形のような動きが妙に気になった。


「ここですわ」、そう言って入った部屋は真ん中に大きなベッドがあって、窓もないクセに掛けてあるレースのカーテンが目に飛び込んできた。
そして薄暗い室内には人の気配なんてしない・・・ここには誰も居ないように思えた。


「誰も居ないみたいだけど」
「・・・・・・・・・」

「三条・・・本当にここに誰かが来るわけ?」

「・・・・・・・・・花沢さん・・・本当の事が知りたいんでしょ?」


「勿論、でもそれと・・・えっ?!」

俺の後ろに居た三条の方に向き直ったら、いきなり彼女が何かを俺の顔面にスプレーで吹き掛けた!それに驚いて目を閉じたけど、その気体を吸い込んでしまった俺は咳き込んでその場に座り込んだ・・・!


・・・身体が痺れる・・・!
これは何だ?麻酔薬・・・か?

目が霞んで開けていられなくなり、指先が痺れて手が動かない・・・崩れ落ちた足にも力が入らなくなって、俺はそこから意識がなくなった。


「花沢さん・・・ゆっくりしてらしてね」


そんな三条の声が聞こえたのが最後だった。





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