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plumeria

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「・・・・・・・・・んっ・・・」


頭が痛い・・・・・・。
なんだ、この感覚・・・凄くボーッとする・・・まるで麻酔から覚めたような・・・

麻酔・・・・・・麻酔?

少しだけ目を開けると見慣れない天井に派手な照明がぼんやり光っている・・・こんな部屋、知らない・・・。
頭を横に向けると品のないカーテンが見えた。それに大画面のテレビ・・・なんだ?何処かのホテルか?


何でホテルに来てるんだ?

そんな事を考えて起き上がろうとしたら、隣に人の温かさがあった。
そこに目をやると布団が盛り上がってて、誰かがそこに寝てる・・・極普通にそれがつくしのような気がして、布団の上に手を置くとピクッと動いた。

なんだ、よく寝てるんだな・・・・・・なんて自分もまだ寝惚けていて「つくし・・・」と、声を掛けた。
その時に何処かで鳴ったスマホのアラーム。朝でもないのに誰かがアラームを掛けていたのかと不思議だったけど、それは数秒間で止まった。

その後「・・・うん・・・?」と小さな声を出してその布団を掴んだ手・・・その真っ赤なネイルを見た瞬間、ハッと気が付いた。


つくしじゃない・・・・・・この手は・・・三条?


急にゾクッとして自分を見たら何も着ていなかった。
驚いてベッドの下に目をやると、そこに俺のスーツも三条の着ていた服も脱ぎ捨てられていた。まるで焦って脱いだかのように、2人の服が重なり合って・・・。


何が起きた・・・?


あまりの事に驚きすぎて思考が追い付かない。昨日の事を思い出そうとしても、目の前の光景がそれを総て停止させる、そんな感じで呆然としていた。
三条に呼び出されて誰かに会うと言われ、それがつくしの居場所だからって、それで回りが見えなくなった?




「・・・・・・は、花沢さん・・・これは・・・?」

三条も目が覚めて、身体にシーツを巻き付けて俺を見ていた。
流石にこの状況には驚いたらしく、片手はシーツを握り締め、もう片方では口を押さえてる・・・慌てて自分の姿を確認して真っ青になっていた。

勿論三条の肌なんて見たりはしない。
「伏せてな」と声を掛け、俺がベッドから降りて三条の服をすぐ側に置いてやった。そして彼女には背中を向けて自分も服を着た。



「・・・着替えた?」
「え、えぇ、大丈夫ですわ」

「そう・・・じゃ、説明してもらおうか」
「・・・・・・・・・え?」

「え、じゃないよね。俺をここに連れて来たのは三条だろ?何があった?」


お互いに服を着たら、三条はベッドの上、俺はそこにあった椅子に座って今日の説明を求めた。でも三条は首を横に振るだけで「何も知らない」を繰り返すだけだった。
「気が付いたらこの部屋に居ましたの!本当ですわ!」・・・その表情には嘘は感じられなかった。

三条がつくしを裏切ることはない・・・それはこの前話したばかりだ。


「あんた、この前レストランを出てからどうしたの?あれから行方眩ましてるよね?」
「・・・信じていただけるかどうか・・・」

「いいから話してみて。何があった?」
「・・・実はあの帰り道に・・・」


三条は俺より先にレストランを出てから1人で自宅に向かう途中、すぐに近づいてきたタクシーを止めてそれに乗った。
行き先は今住んでいる自分のマンション、それを告げた後は車内で新しいスマホの設定をしていたらしい。
そろそろ着いてもいい頃なのに・・・そう思って顔をあげた時、そのタクシーは全然違う方向に向かっていて、驚いて行き先を確認したと言った。

『ちょっと!私が言ったのはこっちじゃないでしょう?このまま行ったら海じゃない!戻って下さる?』
『・・・いや、こっちでいいんですよ、お客さん』

『何言ってるの?違うって言ってるでしょ?停めなさいよ!』
『・・・あなたを待ってる人が居るんですって。もうすぐ着きますから』

『・・・何ですって?こんな事してタダで済むと思ったら大間違いよ?!停めなさい!』


でも運転手は止めることなく車を走らせて、何処かの倉庫の前で停まった。
その後無理矢理真っ暗な埠頭の端に三条を降ろして、そのまま金も受け取らずに向きを変えて逃走・・・三条は1人で場所も判らない海沿いの倉庫の前で唖然としていた・・・それが、彼女の説明だった。


「とにかく、もう1度タクシーを拾えばいいと思いましたの。そうしたら何処かから男性が現れて・・・」
「男性?どんな?」

「どんな?そうですわね、大柄で黒いスーツだったとしか覚えていません。夜なのにサングラスで顔を隠していましたから。でも雰囲気で鍛えられた・・・それなりの訓練を受けている人だと思いましたわ」

「・・・訓練?」

「えぇ、だからすぐに捕まってしまって、今度は目隠しされて別の車に乗せられました。その車内から記憶がなくて、次に目が覚めたら小綺麗なホテルの一室みたいな場所で寝ていたんです・・・嘘だと思うかもしれませんが、本当なんです!」


三条の真剣な目・・・それを見て「判った」としか言えなかった。

そこで何があったのかを聞けば、スクリーンで間仕切りされた向こう側にもう1人男性がいて、彼と会話をしているうちに眠くなり意識が無くなる・・・それを何度か繰り返しているうちに自分の行動が全然判らなくなったと言った。
その男は一度も姿を見せず、その声から想像出来るのは若いのだろうという事ぐらい。

トイレもバスルームも完備された部屋だったけど、窓は外から目張りでもされているのか開かなかった。
そのベランダのような場所にも目隠し用のシートで覆われていて外が見えない為に、自分が何処に居るのかさっぱり判らなかったらしい。
会話中は自分を拉致した男が真横で監視しているから逃げ出す事も出来ず、荷物は総て取り上げられていたから連絡も出来なかった・・・と。


「何を話したの?」
「・・・それがなんて事ない会話なんです。私の事を聞いたり食べ物の話だったり、時事問題だったり・・・その会話に脈絡なんて無くて本当に適当に思い付いた事を言ってくるんです。だから初めのうちはイライラして怒鳴ったりしたんですけど、そのうち何故か眠くなって・・・凄くいい香りがしていましたの」

「香り?もしかしたら・・・」

「えぇ、私も仕事柄扱いますから知ってますわ。日本では取締が厳しいから販売はされていませんけど、その手のハーブではないかと・・・でも、呼吸を止めることは出来ませんから自然と吸い込んだんだろうと思うんです。
そうなると意識をしっかり持とうと思っても出来ません。彼がその時に繰り返し何かを言ってたんですけど、それも今では思い出せませんわ。ごめんなさい・・・花沢さん」

「いや、三条も被害者だから。でも仕組まれたのなら目的があるはずだ」

「目的・・・それって」

「あんた、ここに入った時に俺にスプレー缶を向けたけど、それは覚えてるの?」

「・・・いえ、ここに来ている事すら記憶にありません。花沢さんを呼び出したなんて・・・本当に覚えてないんです」


吉岡と同じか・・・。

三条もこの数日間の間に「何か」を教え込まれたんだ。それは催眠暗示に掛かっている間だけのことで、目を覚ました時には忘れる・・・だから極普通に歩いたり話したりしてるのに記憶にない。
目を覚ますきっかけはそいつによって違うって事だろうか・・・この分野に詳しくないから判らないけど、暗示を解くきっかけがあるはずだけど。

それを三条にきけば「スマホのアラーム音」・・・それで目が覚めていたらしい。


だからさっき鳴ったんだ・・・あれで三条は現実に引き戻されたって訳だ。
催眠暗示中の記憶を消去して・・・。



勿論関係なんて持ってはいない。
それはお互いに判ってる。だけど間違いなく俺達をベッドに放り込んだヤツがいるんだ・・・その時に写真を撮られたとしたら使い道はひとつしか無い。

そうなる前に脅迫してくるならいいけど、それすら無く世間に流されたら・・・


それを想像した三条の方が悔しがって涙を溢したけど、俺はこれをつくしが見てしまう恐怖の方が大きかった。





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