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plumeria

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『なんだ、類・・・どうした?』
「総二郎、今、何処にいる?」

『あ~~、まぁちょっとな・・・』
「K町に来てくれないか?三条がいるんだ」

『あいつ、見付かったのか?!で・・・なんで俺?』


三条は少し離れた場所でスタッフと連絡中だった。
勝手に商品買い付けの為に海外まで行ってしまったけど、そこで買ったばかりのスマホに不具合が出て連絡できなかった、なんて苦しい言い訳をして業務連絡に追われていた。

俺はその間に総二郎に電話して、今日の出来事を話した。
そうしたらすぐにデートを切り上げて来てくれる事になったが、それはこのホテル周辺に不審人物が居るかどうかを調べて欲しいからだった。


2人同時にホテルから出る訳にはいかない。
だからって三条1人をここから出して、再び拉致されるのを防ぐため・・・事情を知ってるのは総二郎しかいなかった。
ホテルの名前と部屋を教え、時間は掛かってもいいからまずは付近の調査から、そう言えば「判った」とひと言だけ言って電話は切った。

三条はあちこちに電話を掛けながら只管謝ってる・・・これも俺達に関わったせいかと思うと申し訳ない気持ちで一杯だった。


「・・・えぇ、本当にごめんなさい。以後気を付けますから・・・はい、じゃあ明日・・・」

その電話が最後だったのか、スマホをベッドにおいて両手で顔を覆った。そして彼女にしては珍しい大きな溜め息・・・何か大きな商談を逃したのかもしれない。
今の俺はそんな業務を任されていないが、三条は駆け出しの社長だ。
ここで信用を無くしたら大きな痛手になる・・・同じ企業人としてその落胆は理解出来るから、逆に掛ける言葉がなかった。



暫くしたら部屋をノックされ、総二郎がやってきた。
そして如何にもって部屋に居る俺と三条の不釣り合いな組み合わせに眉を顰めていた。

「どうだった?変な動きしてるヤツ、居た?」
「いや、多分誰も居ねぇと思うけど、さっき下のフロントで裏から出られるように話をつけてきた。裏から出れば反対側の通りに出られるし、そこはホテルじゃねぇから大丈夫だろう」

「そう・・・ありがとう。じゃあ総二郎が三条を送ってくれる?」
「判った、そうしよう。でも・・・大丈夫なんだろうな?」

「何が?まさか疑ってるの?」
「・・・いや、そうじゃねぇけどそんな部分まで操られたって事はねぇよな?」


その言葉に俺と三条は目を合わせたけど、お互いに苦笑い。
「冗談じゃありませんわ」と三条は鼻で笑い、「先輩から恨まれることだけはしたくないですから」と、きっぱり言い退けた。


「桜子、お前そのスクリーン越しの男の特徴とか癖とか・・・なんか気付いた事はなかったのか?多分成瀬だろうけど、背格好とか声の特徴とかさ」
「スクリーン越しですから背格好なんて判りませんわ。声は男性にしては高い方だと思います・・・あぁ、それと気になる音を聞きました」

「気になる音?」

「えぇ、それが何処かで聞いた事がある音なんですけど・・・思い出せないんですよ。その人と話していたらいつも意識が遠のくから余計に判らなくなるんですけど」

「どんな音?」

「リズミカルな機械音ですわ」


リズミカルな機械音?それを柊祐が鳴らしてた・・・・・・一体何の音だ?




**



三条の事があって数日後、やはりそれは起こった。

母さんに呼ばれて自宅に戻った俺の前に見慣れない男が居る。
オートクチュールのスーツを着ている母さんと向かい合ってる小汚い風貌の男。浅黒くて薄汚れたジャンパーを着て、歳は40歳ぐらいだろうか、その暮らしぶりが人目で想像出来そうなヤツだった。

そんな格好なのに目の奥だけは鋭く光って、無精髭を生やした口元が俺を見てニヤリと笑った。


「類、こっちにお座りなさい」・・・母さんの怒りに満ちた声。
この光景とその声を聞いて、三条の事だとすぐに判った。

判ったけど週刊誌へのリークじゃなくて直接自宅に来た事には驚いた。
勿論これが柊祐の仕業ならこの男も意識操作されてるんだろうけど、敵陣に乗り込んできたらこの男の移動先から自分達の事がバレるかもしれないのに・・・?

あいつの考えがいつも少しだけ予想からズレる・・・それを腹立たしく思いながら男と向かい合った席に腰掛けた。


「類、これはどういう事なの?」
「・・・・・・これ?」

「この人が持って来た写真があるの・・・見てご覧なさい」

母さんはまるで汚らわしいものでも見るかのようにテーブルの上の茶封筒を目で睨んだ。
俺はその封筒を手に取り、中身を取り出した・・・やはり、あの時の俺達の写真だった。

その行為の最中というものがあるはずはない。
2人共が寝入ったまま裸で抱き合うようにしているもの、態と手を三条の身体に巻き付けているもの、実際にはしてないんだろうけどキスしてるようにも見えるもの・・・そんなものが数枚入っていた。

それを無表情で確認した後封筒に戻し、またテーブルに置くと母さんは俺に視線を向けた。


「これは三条さんよね?いつからなの、類」
「・・・いつから?馬鹿言うなよ、これは事実じゃない」

「こんなにはっきり撮られているのよ?誤魔化せないでしょう!判ってるの?あなた、一応妻帯者なのよ?」
「一応ってなに?間違いなく妻帯者だけど」

「こんなのが世間に流されたらどうなると思うの!?花沢物産の後継者がこんなスキャンダル・・・冗談じゃないわ!」
「じゃあ聞くけど、こんなにはっきり撮られている事に疑問は感じないの?見たら判るだろうけど俺も三条も意識がない状態・・・罠に嵌められたんだよ」


そう言って目の前の男を睨むとふふん、と鼻で笑った。
罠に嵌まったなんて証拠もない・・・そう言いたいのか、これもあいつの指示なのか・・・。


「それで?これを買い取れって話?」
「そうらしいわ。しかも即金で今すぐ1億ですって」

「従わなかったら週刊誌にリークするって?したらいいじゃん、情報提供者の身元がバレるかもしれないけど」
「類!簡単に言わないでちょうだい!」

「三条にも確かめたらいい。あいつだって仕組まれたことだって判ってるから」

「事実がどうであれ、こんな事が噂として流れるだけで今のあなたには大打撃なの。
この前の失敗だってまだ尾を引いてるのに、その上今度は浮気沙汰?しかも彼女はつくしさんの友人で、世間にも顔が知られてるのよ?どんな事を裏で囁かれるかと思ったら・・・こんなこと、お父様が知ったらどうなると思ってるの!」

「だからって言う通りにするわけ?俺を信用しないの?」


俺がそう言うのに、母さんは田村を呼んで他の使用人に気付かれないように1億を用意させた。
それを男に渡し、目の前でスマホに入ってるデータを消去させたけど、それを誰かに転送していたらこの操作は何の意味も無い。それでも母さんは「二度と来ないで!」と感情的になってこの男を追い返した。


当然花沢の情報部員が尾行している。
おそらく屋敷を離れて人目につかないところで逆にあの男を脅すんだろう・・・次にやったら容赦しないと。

俺にはその総てが無駄に思えた。


相手があの柊祐ならこの程度で終わらない。
花沢の行動は読まれてる、そう感じた。




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