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plumeria

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男が出ていった後で三条の話を母さんにしてみたけど、つくしの時と同様「そんな馬鹿な!」で終わった。
むしろ恐ろしかったのは「三条家なら問題は無いからいいけど・・・」と言う言葉だ。

まるでこの状況がつくしと離婚出来るのではないかという意味に聞こえて、我慢出来ずに横目で母さんを睨んだ。
三条家なら家柄的にも問題は無い・・・このままスキャンダルにもならずに済めば、この方が花沢にとっては有益だと思ったようだった。


「残念だったね。俺も三条もその気は無いし、そんな事実もなかったから」
「・・・誰もそんな事は言ってないわ。もしもそうであっても咎めないって事だけよ。世間は知らなくてもつくしさんは居ないんだから」

「つくしは居るよ。もう随分近づいてるけど邪魔が多くてね」
「まだそんな事を・・・彼女には荷が重すぎたのよ。きっとそうだわ」

「・・・・・・話がこれだけなら帰る」
「いい加減にここに戻ったらどうなの?自分の事も満足に出来てないんでしょう?だから変な方向に考えが向くのよ」

「・・・俺の部屋はあそこだから」


そう言って立ち上がったら、戻って来たうちの情報部員が男の行き先について報告をした。

男は屋敷を出たら大通りでタクシーを拾い、東京駅に向かった。
そしてタクシーを降りたら駅の構内に入ったけど、その時にはここで手に入れた現金が入った鞄はなかったらしい。つまり乗ったタクシーが柊祐の差し向けた車で、そこに置いて行った訳だ。

情報部が尾行して辿り着いたそいつの棲み家はかなり古いアパートで、男はその入り口付近で立ち止まった。


「我々は部屋に入ったのを見届けて、そこで話合いをするつもりだったのです。ですが急にそこで男が倒れまして」

「倒れたですって?」
「・・・・・・・・・」

「はい。まるで全身の力が抜けたかのように崩れ落ちましたから、驚いて近寄り意識の確認をしました」

「意識はあったの?」
「誰かがそこに居た?」

この俺の質問に母さんは不思議そうな顔をして、情報部員は驚いていた。
答えは・・・「確かに人影がありました」だったから。

おそらくそいつのアパートで待っていたのは柊祐で、そいつが「仕事」を終えて戻って来たら暗示を解くつもりだったんだ。だから男はその場で倒れた。
意識はすぐに回復したけど、そいつは「何も覚えていない」と言ったらしい。

情報部の人間がここに来たことを聞いても「花沢」そのものを知らない、そう言って蹌踉けながら自分の部屋に戻って行った・・・それが報告内容だった。


「・・・そんな事があるの?」
「だから言ってるだろ。それが出来るヤツが居るんだよ・・・そして俺に挑戦してるんだ」

「類に?どうして?」
「それが判らないから調べてる。つくしも・・・多分操られてるんだよ」

「・・・・・・・・・そんな」


まだ信じられないと言う母さんに背中を向けてリビングを出ると、そこには今日も悲しそうな目をした加代がいた。

「何か思い出したら教えて」、それだけを言い残して自分のマンションに戻った。




**




その一週間後・・・俺の予感は的中した。

1億という金を持って行かれたと言うのにそれだけでは終わらなかった。週刊誌へのリークではなくダイレクトに、花沢グループを初め、国内の主要企業に向けて俺と三条の密会写真がばらまかれた。
それを知ったのは花沢内部からではなく、イギリスに居るあきらからの連絡だった。


『おい、どういう事だ!お前、まさか牧野の事を諦めたのか!』
「・・・あきら、何の話?」

『うちの本社から連絡があったんだ!お前が女性とホテルで抱き合ってる写真が営業本部長や常務宛に送られてきたって!どうなってるんだ?何があった!あれ、桜子だろう!』

「・・・・・・そう言う手段に出たんだ」

『・・・そういう手段って?』
「いや、あきらにも知らせておけば良かった。実はさ・・・」


この電話で三条とレストランで罠に嵌められたことからホテルでのこと、その後花沢の自宅に強請の男が来たことを話したらあきらは言葉も出なかった。
その男が吉岡の様子と似ていることや、三条が拉致された時に姿を見せなかった男が柊祐だろうと言う総二郎との推察も話せば「同感だな」のひと言。


『今じゃ出版社がリークを募集するサイトまで作ってるけど、報酬ってのはたかがしれてる。
大きなニュースになるものでもせいぜい50万ぐらいだ。それ以下だと数万円の小遣いにしかならないから花沢本宅を狙うのは犯罪者から見れば当然だな』

「まぁね・・・意識操作されてるから犯罪の感覚は無いみたいだし、もう覚えてないみたいだけど」

『桜子は?あいつは立ち直ったのか?』

「あの後大きな取引を失ってるからね。今は新しい契約を取るために必死だと思う。連絡はしてないけど」

『今回のお前らの写真、相手が桜子だって事は判んないようにしてあるんだ。お前の顔ははっきり写ってるけど桜子はちょうど顔が隠れてる。俺には判るけどな』

「そう・・・これでまた俺は追い詰められる訳だ」

『くそっ・・・!徹底的にお前を陥れるつもりなんだな!あいつ・・・』

「あきら、もう1つ報告しとく」


つくしの妊娠は再びあきらを黙らせた。
でもすぐにあきらも「それはないな」と言い、考えたことは同じだった。

すぐにでも日本に帰って協力したいなんて言ってくれる幼馴染み・・・それには礼を言って電話は切ったけど、その直後に母さんが血相変えて飛び込んで来た。

その顔はシェールガス開発事業トラブルの時よりも恐ろしく、俺を見てもすぐには声を掛けられない程だ。


「・・・類、謹慎しなさい。これ以上騒ぎが大きくなる前に暫く姿を隠してちょうだい。役員全員一致の判断よ」

「・・・判った」


この日から俺は無期限の謹慎処分になった。
抱えている業務もない俺には引き継ぎも何も無い。ビルの裏口から駐車場に向かい、誰にも会わずに本社ビルを抜け出した。

これから母さん達はこれが何者かによる悪質な悪戯だと大々的にアピールし、名誉毀損という手段に出るんだろう。そして、この事件を知らない企業にまで噂が広まる。
これが事実無根であったとしても少なからず記憶に残る・・・そして花沢には負のイメージが残る。


でも、これが柊祐の最終目的だとは思えないけど。





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