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次の日の夕方、インターホンが鳴り、確認すると花沢からの迎えの人間だった。
そいつが「お迎えに来ました」と抑揚のない声で言い、俺は無言でそれを切った。

そして身支度を整えルームキーを持って部屋を出る・・・その時、もう暫くこの部屋には帰らないつもりでひと通り見回した。出来るなら次にこのキーを使う時は隣につくしが居ればいいけど、そう思いながらドアを閉めた。


エントランスに行くとスーツ姿の男が立っていて、俺に手を差し出し「あちらに車が待っておりますから」・・・それは地下駐車場ではなく、マンション入り口にある臨時駐車場だった。
そこで迎えの車に乗り、自宅に戻った。



自宅には既に父さんと母さんが顔を揃えていて、久しぶりに3人での食事が用意されていた。
そんな気分でもないだろうに、と眉を顰めたけどここで反抗しても仕方がない。気乗りしないまま自分の席に座ると、隣の空席に目をやった。
本当ならここにはつくしの笑顔があるはず・・・何も置かれていないその席を見た俺を、母さんは咳払いで戒めた。

『今はそれどころじゃないだろう』、そう言いたそうな目で。


「・・・謹慎してみてどうだ、類」
「・・・・・・迷惑を掛けてるとは思うけど、俺は仕掛けられた罠に引っ掛かっただけ。それに対しては情けないと思うけど、別に疚しいことは何1つしてない」

「類、そういう甘い事を言ってる場合じゃないのよ?罠だなんて・・・別に私達はあなた達夫婦の事を知ってるんだから、三条さんとの事を責めたりはしないわ」
「・・・確かに責めるつもりはないが、もう少し慎重に行動しろと言っている。まだ世間的には新婚なのだからな。
今回の事は被害届も出してるし、取引先にも誤解を解く為にその旨を報告もした。それでもこの手の話題は世間が1番喜ぶスキャンダルだ。こんなくだらない情報でも好きなように想像して事実と異なる噂が広まる・・・厄介な事だ」

「・・・・・・俺が何を言っても信じる気なんてないんだろ?」

「・・・あぁ、操られてるだの意識がないとか言う話か?当然、信じる訳がないだろう、馬鹿馬鹿しい」



三条と俺の事を責めない・・・それは逆に賛成しているようなものだ。
やっぱりな・・・と、ガッカリもしないし怒る気持ちすら起きない。この後も散々今後についてのマスコミ対応と社への復帰時期なんかを説明された。

どうやら復帰と同時にフランスに行くことになるらしい。何かと騒がれた日本に居るよりフランスで心機一転し、数年間は戻らない。その間に噂は消え、俺の心身も立ち直り経営陣からも不満は出なくなるだろう、と。

それについても返事はしなかった。
でも、フランス行きは嫌じゃない・・・むしろつくしにもその方がいいかもしれない。
色々な事がありすぎた日本を出て、静かに子供を育てる方が気が楽・・・まだ再会もしていないのにそんなことを考えた。


妊娠のことを両親に言わなかったのは「父親」についてあれこれと推測されたくなかったからだ。
つくしを取り返した後で、必要だと言われればいくらでも親子鑑定すればいい。でも、その前につくしの不貞を疑われるのは我慢出来なかった。



「来月には私も渡米してスミス氏に会う事にしたよ」
「あら、そうなの?ご苦労様です。その後、何か言ってきたかしら?」

「いや、私には何も言わないがね。シアトルで新事業の話があったが、それにも少し影響が出ているらしいから」
「そう・・・すぐには信頼関係が回復しないかもね。道明寺にも顔を出して下さる?あなたは楓さんが苦手でしょうけど」

「うむ、仕方ないな・・・」

「・・・・・・・・・」


もう俺の話は終わって仕事の話に切り替わった。
それを食事しながら黙って聞いてるだけ・・・ここでも津川行きの事しか考えていなかった。

下手に旅館には泊まれない。
それなら車中泊か、1人でラブホにでも入るか・・・そうしているうちに食事は終わり、父さんはもう1度俺に反省するようにと厳しい口調で言うと自室に戻っていった。
母さんもそれを目で見送って、最後のワインを飲み干した。


「今夜はここに泊まるんでしょう?」
「いや、マンションに帰る。その方が落ち着くから」

「・・・そうなの?じゃあ父様にこれ以上の心配を掛けないようにしっかり自分を見つめ直して。まだ社内はザワザワしてるからあなたの謹慎はもう少し伸ばすわ。立ち直って頂戴ね・・・類」

「あぁ、大丈夫。もう少しだから」
「え?何が?」

「いや、何でもない」


ここに来た時と同じように車を用意させ、夜中の10時に自宅を後にした。



**



マンションに戻るとエレベーター前までついてくる警護の人間に「お1人での外出はおやめくださいませ」ともう1度言われ、それを背中で聞いたけど返事もしない。
静かに開いた扉の中に入ると「おやすみなさいませ」の声を最後まで聞かずにそれは閉まった。

多分、このエレベーターが最上階まで行くのを見届けているはず・・・だから最上階までちゃんと戻ってから、今度は非常階段で数階下まで降りた。
そこで地下駐車場に行くエレベーターに乗り、そこに着くといきなりは出ずに様子を窺った。


誰も・・・居ないようだ。

それを確信したら自分の駐車スペースに向かった。

俺の車の横には加代に頼んでいた通り、ダークブルーの普通車が停まっていた。
ドアが開いている・・・静かに運転席に乗り込むと、キーがささったままだ。そして驚いたのは俺の行動を見抜いてるかのように、助手席には毛布と温かい珈琲が入ったボトル、それにダウンコートもあった。

「・・・流石加代。気が利くよね」


エンジンをかけハンドルを握る・・・このまま新潟・津川に行くためにマンションの駐車場を出た。

マンション前の道にはスーツの男が立っているのがチラッと見えた。
この車にも視線を向けたようだけど車種が違うから気にしてないようだ・・・上手くいったと、スピードを上げてその場を離れた。




************************



~side柊祐~


「鈴花、お茶が入ったよ。そんな窓際にいたら寒くない?」
「・・・あぁ、柊祐。ありがとう・・・うん、寒くはないけど」

「どうかした?」
「・・・・・・ん?なんでもない」


つくしはあれから一度も元の自分に戻ることなく「鈴花」で過ごしている。
でも、最近少しずつ「鈴花」に変化が見られるようになった。それは紛れもなく胎児からのメッセージ、そんな気がした。
その回数が増えてきてるようで、たまにこうしてボーッと窓の外を眺めるようになった。

その姿はつくしの時と同じだ・・・ここから出たくて仕方無かったつくしの表情に似ている。

だから毎日定期的に「鈴」を鳴らし、夢の世界に「鈴花」を留める・・・それを繰り返す毎日だった。


「・・・・・・ふぅ、あったかい・・・」
「そう?飲んだらまたおやすみ・・・疲れた顔してるよ?」

「ううん、寝ると変な声を聞いちゃうからいいの」
「変な声?」

「うん・・・・・・今日は『青い車』、だったかな?何のことだか判らないけど、誰かが何か言ってくるの。変でしょう?」
「夢の中の話だよ。気にしなくていいと思うよ?」


青い車ってなんだ?それがどうだと言うんだ・・・その声はつくしに何を知らせようとしてる?


今まで感じた事がない焦りが俺を襲う。
「鈴花」の中で眠る花沢つくしが、まさか「あの音」無しで目覚めるとでも?


またお茶のカップを抱えたまま窓の外を漫然と眺めてる。
その後ろに微笑むあいつの姿が見えるようで苛立った。




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2019/11/29 (Fri) 07:40 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

そうなのです~~。このお話のご両親はつくしちゃんを排除する気はないのですが、つくしちゃんじゃなくてもいいって感じです。類君はすごく大事なのです・・・そこが残念っ!

うふふ、柊祐が手を出せない赤ちゃん♡
ピンチの時の花沢類・・・の子供(笑)です。

2019/11/29 (Fri) 18:32 | EDIT | REPLY |   

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