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随分明るくなってから小さな喫茶店で朝食を済ませた。
今までなら食べなくてもいいなんて思ってたけど、ここまで来たら自分が倒れる訳にはいかないから。そしてすぐに向かったのはスマホで調べたこの地区の小学校と中学校だった。

でも、いくつか行った学校では玄関に入ることも出来ず、その質問は拒否された。


柊祐と言う名前の子供に覚えがないか・・・確かに突拍子もない質問だとは思う。
でも手掛かりはこの名前しかなかった。
そして昔より格段に厳しくなった個人情報だから当たり前と言えば当たり前・・・それでも頼み込むしかなかった。


「お願いします、調べていただけませんか?柊祐と言う名前の男の子です。今からだと20年ぐらい前なんですが」
「あのねぇ、さっきから何度も言ってるけど、在校生にでさえ名簿を見せない時代ですよ?それなのに名前も言えないっていうあんたに教えられる訳がないでしょう?」

「それは判っています。でも人を・・・妻を探しているんです。その為に調べているんです・・・お願いします、調べていただけませんか?俺に名簿なんて見せなくてもいい、居るかどうかだけでも」
「だから無理だって!」


ある小学校では事務所の前までは入れてもらえた。
でも、それから先は押し問答・・・事務員の男は腕組みをしたまま、何度も頭を下げる俺に向かって首を横に振り続けた。

その時、手に持っていたスマホが鳴り、画面に出た名前は進?
掛けてきた事なんて殆どないし、つい最近会ったばかりなのに・・・と、驚いてその場ですぐに通話をタップした。


「・・・・・・進?どうした?」
『花沢さん、いや、お義兄さん!俺、見つけたんです!!』

「見つけた?何を?」
『有栖川って人です!俺の会社、徳永商事に30年も前に有栖川って人が居るんです!営業課の課長みたいです!』

「え?有栖川・・・って、それ、女性?男性?」
『あっ、それは印鑑だけだから判らなくて、今から30年間勤務してる人に聞きに行くんです!これ、偶然ですか?俺、すごく焦って・・・それで、あの!』

「落ち着いて、進。まずは・・・」


うちの子会社に有栖川という名前の人間が居た・・・それには俺も驚いた。

進の言うように偶然にも思えない。
何故かそれがつくしを育てたという有栖川に繋がってるような気はしたけど、あきらのところで調べた時には神奈川にも数名居たはず・・・その中の1人って事もあるから確実じゃない。
興奮して喋る進に「落ち着け」と言いながら、自分の鼓動もすごく速くなっていた。


「まずはその人のフルネームと出身地を調べてくれ。それと仲が良かったって人も聞いてみてくれる?」
『フルネームと出身地ですね?それと仲が良かった人・・・判りました!』

「判った事があったらすぐに俺に報告して。いい?」
『はい、まずは名前から調べます!お義兄さん、今何処ですか?』

「津川に来てる。来てみたら近くにつくしが居るような気がしてならないんだ・・・。俺も諦めないから進も頑張れ!」
『はい、じゃあ、また!』


進の電話を切ってから事務員に向き直ると、今度はその人が何かを思い出そうとしているのか、顎に手を掛けて首を傾げていた。
その人の目をジッと見つめると慌てたように目を逸らせたけど、暫くして一度奥に引っ込んで何かをメモし始めた。

それを待つこと数分、事務の男は「中野美枝子」という名前と、俺にはさっぱり判らない住所を書いた紙を差し出してきた。


「ここに行ってみなさい。この人は3年前までここに勤務していた人だけど、もう事務員を40年近くしていたからね・・・何か特徴のある子供の事なら覚えてるかもしれない。
あんたが今話していた有栖川って名前、儂も聞いた事があるような無いような・・・悪いが本当に判らないんだよ。それに立場上調べることも出来ないしな。退職者にも守秘義務はあるけど・・・まぁ、上手く話してごらん。何か教えてくれるかもしれないよ」

「事務員を40年・・・判りました、ありがとうございます」

「中野さんが驚くかもしれんから儂からも連絡しておくから」

「助かります。行ってみます」


その教えてもらった住所をスマホで調べ、急いで車を走らせた。




*********************


~side進~

総務の山田さんと言う人はすごく怖そうなおばさんだった。
流石、こんな企業の総務課に長く勤めてるだけのことはある・・・課長や部長よりも緊張した。


「それで?この有栖川って人の事を聞きたいの?」
「は、はい!知り合いに有栖川って人が居るんです。それでどうしても知りたくて・・・教えてもらえませんか?」

俺が握り締めてた古い契約書を見ながら「どうしてこんなに古いものがあるの!」と怒りだして、不味い!とは思ったけど「今から処分するところでした!」と両手を合わせて拝んだ。
それを見て眉間に皺寄せて、余計に皺クチャ・・・なんて言えないけど、笑っていいのか悲しそうな顔の方がいいのか、こんがらがって変な顔になってしまった・・・。

そんな俺を見て溜息1つ・・・今度は真面目な顔して椅子に座ったまま俺を見上げた。


「個人情報は社外だけじゃなくて社内にも適用されてるのよ。まぁ、勤務してたんだからフルネームぐらいは教えても問題ないけどね・・・もう連絡は取れないわよ」
「連絡が取れない?どうしてですか?」

「亡くなってるから・・・祐子さんはもう随分前にご実家で亡くなったの。それはここを退職してからの事だけど、人から聞いただけだから亡くなった時の詳しい情報は知らないわ」

「亡くなった?そうなんですか・・・で、ゆうこさんって事は女性ですね?どんな漢字で何処の出身ですか?」

「漢字は示偏に右で祐子。出身までは覚えてないわねぇ・・・東京じゃないって事ぐらいしか。それに入社書類なんてもう保管してないし、システムの中に社員の本籍とかまで入れてないから調べられないの。
覚えてるのはすごく綺麗な人だったってぐらいかしら・・・でも、可哀想にね」

「可哀想?」


今度は席を立って窓際に向かい、俺を手招きした。
そしてこのビルの向かい側にある喫茶店を指さした。それは俺もたまに行く、この辺じゃ安上がりな喫茶店・・・そこがどうしたんだろうって山田さんを見た。


「何か聞きたいならあそこに行ってご覧なさい。カウンターに大野さんって女性が居るんだけど、祐子さんのお友達よ。彼女、あんまり親しくしている人が居なかったけど大野さんとは何でも話し合ってたみたい。
私も昔あのお店に行くと、カウンター席で真剣な顔して話し合ってるのを見た事があるわ」

「今でもいらっしゃいますか?」
「えぇ、大野さんもあの喫茶店のオーナーと結婚したから今でもいるわよ。でも勤務中に行かないこと!それに忙しい時間帯じゃ話しが出来ないからそこはよく考えてから・・・判ったわね?」

「はい、どうもありがとうございました!」


判ったのは名前だけだったけど、これをすぐに花沢さんに知らせた。




********************




何度も迷子になりながら、やっと中野美枝子の自宅に辿り着いたけど不在だった。
もしかしたら新しい職場を見つけて働いてるのかも・・・それならフルタイムじゃないかもしれないと思い、そのまま近くの空き地に車を停めて待つ事にした。

もうすぐ昼か、と時計を見た時に再び進からの着信が入り、急いでそれに出ると興奮状態の進が荒い息のまま喋りだした。


『お義兄さん!名前、名前だけ判りました!あのっ・・・はぁ、あの!』
「いいから落ち着いて。何だった?」

『名前は「祐子」、漢字は示偏に右です!もう亡くなってるそうです。それで、祐子さんと仲が良かった人を教えてもらったんですが、喫茶店勤務の人ですぐには時間が取れそうになくて・・・はぁはぁ』


「・・・・・・祐子・・・」


有栖川祐子・・・柊祐と同じ漢字を持つ女性で、父さんが話していた相手も「ゆうこ」・・・。
この女性は同一人物なのか・・・?

つくしを連れ去った有栖川老人と有栖川祐子の関係は?
柊祐が祐子の子供で、父さんの交際相手が有栖川祐子だとしたら・・・父親は誰だ?

成瀬社長は認知をしたかったけど妻に反対されて柊祐は実子になってない。父さんは子供が出来ることを恐れていたから違うと加代は言った。でも、俺と柊祐は似ている・・・。

柊祐の部下はこの土地で車を降りた・・・そして俺達の事故現場はここから遠くはない。


なんだ?繋がりそうで繋がらない・・・でも、この全部が柊祐の俺に対する憎しみに繋がってる気がしてならなかった。


『お義兄さん、俺、今から休暇願を出して喫茶店に行きます。話を聞いてもらえる時間まで粘って、その人の事を確かめるんで待ってて下さい!』

「判った。ありがとう、進」



もうすぐこのバラバラの情報が繋がる・・・同時にそれも感じた。





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Comments 2

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2019/12/01 (Sun) 08:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!そんな名前がついたんですかっ!
困ったなぁ💦

いや、これはミステリーとか事件簿とかじゃなくてラブストーリーなんですけど💦
あまりにも2人が引き離されてるから忘れてるかもしれませんが、ラブストーリーですから(笑)

が、頑張りまーす!!

2019/12/01 (Sun) 18:26 | EDIT | REPLY |   

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