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「いえ、柊祐という子は本当に知らないのですが、つくしって・・・えーと、確か牧野つくしちゃん?」

「・・・・・・どうして・・・どうしてその名前を知ってるんですか?それはいなくなった私の妻の名前です。つくしが・・・つくしの方がこの土地に居たって事ですか?」


突然身を乗り出して俺が叫んだから、中野美枝子は驚いて身体を仰け反らせた。
それを見て「失礼」と、自分も座り直したけど焦る気持ちがそうさせたんだろう・・・彼女は「あぁ、吃驚した」と小さな声を漏らし、少しだけ唇を震わせた。


「申し訳ありませんでした。でも、まさか彼女の旧姓をここで聞くとも思わなかったんです。
教えていただけますか?守秘義務があることは知っていますが、私はどうしても妻を取り戻したいんです。お願いします、中野さん!」

「・・・・・・確かに守秘義務はあるけど、もう15年・・・いえ、もう少し後かしら。少し待って下さいね」


中野美枝子はそう言うと一度部屋を出て行き、暫くしたら卒業アルバムのようなものを手に持ってきた。
それは今から12年前のもので、確かにつくしが小学校を卒業するぐらいの時だ。そこにつくしが写ってるらしくて、彼女はそっとページを開いてくれた。


クラスの集合写真・・・その真ん中辺りに幼い顔のつくしが居た。

幼い顔と言っても今とあまり変わらない・・・どちらかと言うと、このアルバムのつくしの方が大人びて見えた。

理由は笑っていないから。
他の子供達は笑顔なのに、つくしは悲しそうな顔をしてその写真に収っていた。


「その子で間違いないですか?」
「・・・えぇ、妻です。今と殆ど変わってない・・・確かにこの子は私の妻、つくしです」

「そうですか。珍しい名前ですものね。つくしちゃんの事はある事情からよく覚えていますよ」
「ある事情?」

「・・・その子は養子・・・と言いますか、養い親のところに居たでしょう?ご存じですか?」
「もしかして、有栖川という家がこの近くにあるんですか?小学校の事務の男性も聞き覚えがあるような事を言ってましたが」

「あぁ・・・ご存じなのね?えぇ、あるにはあるんでしょうけど・・・この辺の土地の人もその場所が判らないのよ。
この窓から見えるかしら・・・あぁ、あの山の向こう側、あの辺りにお屋敷があるはずなんだけどね。道が途中で寸断されてるから車では入れないと思うのよ?」


その「あるはず」という言葉には違和感を覚えた。
人が住んでるなら何らかの付き合いとか繋がりがあるだろうに・・・しかも子供が居るんだから学校関係とか、ライフラインだって整ってないと住めないんだから、それなりに辿り着けるんじゃないのか?
それを中野美枝子にぶつけるのも、と思って声には出さなかった。


「つくしちゃんはその有栖川さんって人のお屋敷で養われてて、登校も下校も総て車だったんです。行事には殆ど参加しなくて、家庭訪問は何度頼んでも拒否されるって担任の先生が言われてました。
実のご両親の行方が判らないからと言われてましてね・・・本来は住民票とか色々書類が要るんですけど、事情のあるお子さんは校長の判断で居住地の学校に通えますからねぇ・・・教師の間でもどんな事情があるのかと噂になってました」

「つくしは女の子と同居していたと聞きました。一緒に通ってくる子供はいませんでしたか?」

「・・・えぇ、つくしちゃんは1人でしたよ?学校でも殆ど友達が出来ずに1人で遊んでいました。たまに私も声を掛けて一緒に花に水やりしたりしてね。優しい良い子でしたよ?」


じゃあつくしが一緒に居た女の子はどうしてたんだ?その話は本人からも聞いてないから歳は知らないけど・・・。

昔だからアルバムの最後には卒業生の住所録があった。
でも「牧野つくし」の蘭は空白・・・その住所の記載はなかった。

その他のクラブ紹介の中にも、遠足のスナップの中にも、運動会にもつくしの姿はなかった。
授業風景を撮った写真に一枚だけ・・・みんなが前を向いてるのに、窓の外を見ているつくしが写っていた。


すごく・・・悲しそうな顔で。




*************************


~side進~

成瀬コーポレーションの社長と柊祐のお母さんが付き合っていた・・・そのお母さんは花沢さんのお父さんとも付き合っていた?
じゃあ柊祐は誰の子供なんだ?
柊祐が有栖川って名前なら、海で姉ちゃんを連れ去った人と関係があるの?

頭の中がこんがらがって、次に何を聞いたらいいのかも判らなくなって黙ってしまった。
でも姉ちゃんは有栖川家で女の子と暮らしたって・・・じゃあ、別の有栖川?でも、そんな珍しい家がそんなに何軒もあるのか?


「花沢さんは祐子さんの事を本気で考えたみたいだけど家が大きすぎるでしょう?だから親に反対されて海外に飛ばされちゃったの。事実上、それがお別れって事だったのよね・・・。数年後、花沢さんが帰国した時、すぐに彼は結婚してしまったって話してたわ」

「柊祐さんが産まれたのは・・・?」

「柊祐君は花沢さんが海外に行ってから一年後ぐらいに産まれたわ」
「じゃあ花沢さんの?!」


「・・・いえ、それは違うの。彼女・・・花沢さんが日本を離れた後、成瀬さんじゃないもう1人のイギリス人の男性と関係を持っちゃったの。柊祐君はそのイギリス人の男性の子・・・そう言ってたわ」

「・・・・・・そうなん・・・ですか?」

「えぇ、これは多分・・・私しか知らないんだと思うわ」


そのイギリス人の男性はどことなく花沢さんに似ていると言っていたらしい。
成瀬さんも奥さんが居る、花沢さんは海外に行った・・・祐子さんは淋しくなって1人で飲み歩くようになって、その時に知り合った男性がそのイギリス人・・・柊祐の父親だそうだ。

生まれてきたのは父親に似て茶色の髪に同じく薄茶の瞳を持つ綺麗な顔の赤ちゃんだった・・・大野さんはそう言った。


「あんな事がなかったら、祐子さんも柊祐君と一緒に仲良く東京で暮らしてたと思うんだけどね・・・」
「あんな事?」

「あぁ、それは知らないのね?祐子さん・・・会社で不正をしたって事でクビになったのよ。だから田舎に帰ったの」

「・・・不正?うちの会社で?」

「えぇ。でもそれは事実じゃなくてね、上司に騙されたって言ってここで泣きじゃくったの。あの会社なら子供を抱えても何とか暮らしていけたけど、それ以外の職場をこれから探すのは難しいってね・・・。
こっちに知り合いもいないし、小さな子供を抱えて夜の勤務に戻るのは考えられなかったみたいでね・・・」


大野さんはその不正事件についてはよく知らないと言った。
ただ、会社に入れてくれた花沢さんのお父さんに頼んで詳しく調べられないのかって聞いたら「奥さんと子供が居る人に近づくことはしたくない」、そう言ったそうだ。
ちょうどその頃の花沢さん達一家は海外赴任が多く、帰国してくる度に噂は聞くけど会うことはなかったらしい。


「何度か遠目に花沢さんと奥様、それに小さな男の子を見掛けたって言っててね・・・その子供が柊祐君に似てるって笑っていたわ。兄弟だって言っても信じると思うわ、なんてね・・・」

「じゃあ成瀬さんって人は、子供が産まれてどう思ったんですか?」

「成瀬さんは自分の子供だと思ったみたいよ。祐子さんも色々考えたのね・・・違います、とは言わなかったらしいの。結局、彼女はどうしたかったのかなぁって今でも考える時があるわ。
柊君にとって1番良い選択・・・いつもそれだけを思ってたんだろうけど、運がないって言うのかしら・・・とうとう体調を崩して絶対に帰りたくないって言ってた実家に子供を連れて戻ったわ。
もう何年前の事かしらねぇ・・・最後にここに来て『お世話になりました』って言った辛そうな笑顔が忘れられなくて。その祐子さんが亡くなったって誰かに聞いたのは随分後だったから、お線香の1本もあげられなくて」

「成瀬さん、子供を引き取ろうって思わなかったんですかね・・・たとえ真実は違っても」

「・・・奥様が大反対したって聞いたわ。でも祐子さんはそれで良かったんじゃないかしら・・・。
自分でも決められなかったみたいだけど、柊祐君を手放すことはやっぱり出来なかったのよ・・・親子だものね」


両親が居ない俺にはその言葉は苦しかった。
記憶も薄れてしまったけど、俺の父さんと母さんはどうだったんだろう・・・手放す前に少しは俺達の事を考えてくれたんだろうか。


事件の事は会社で聞いてくれと言われて大野さんとの話はこれで終わった。
花沢さんに電話したいけど頭の中が整理出来ずに、気が付いたら休みを取ったはずの会社に向かっていた。





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2019/12/04 (Wed) 07:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

えへへ、実は類パパの子供ではないのですよ(笑)
全然類君とは血の繋がりがないのです。

あると思ったでしょ?(笑)

さて、少しずつ新しい情報が類君にも入って来ます。
真実を全部知ってる人は居るのか、そこが問題です(笑)


ややこしい~💦

2019/12/04 (Wed) 22:41 | EDIT | REPLY |   

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