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plumeria

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「おはようございます、堤さん」
「牧野さん、おはようございます。今日も楽しそうでしたね」

「・・・はっ?ど、どう言う意味でしょうか?」
「いえ、早く出勤してしまって総二郎様のお部屋の近くを通ったものですから。少し奥の棟に移った方が安全かもしれませんね・・・と、総二郎様にお伝え下さい」

「・・・・・・判りました」


だから言ったじゃないのっ!!
朝っぱらからはよせってっ!💢💢



・・・って怒鳴ってもこの部屋に肝心の本人は居ない・・・だからバレバレの赤い顔のまま椅子に座った。



その日の午前中は総二郎とお茶のお稽古をした後で、アメリカで一緒にイベント参加した団体へのお礼状の作成。午後からはそのために変更した茶道教室の講師をしてから、渡米中に入院した後援会長さんのお見舞い。
全部が終わった後で、巾着袋の追加を作るために手芸店に行くと言ったら堤さんがピクッとした。


「・・・手芸店ですか?因みに何処でしたっけ」

「えーと、藤田手芸店だったかな?大きなチェーン店ですけど、どうしてですか?」
「いえ、何でもありません。車を運転するのなら気を付けて」

「はい、気を付けます」


あれ?どうしてそんな気不味そうな顔?
堤さんが自分の感情を表に出すのは珍しい・・・私が席を立ってお茶室に向かう時も全然顔を上げようとしなかった。
ま・・・いいんだけど。


お茶室に行ったらその横の部屋から総二郎がひょこんと顔を出した。
だからそっちに向かうと用意していたのは付下げ・・・やっぱり着物に着替えるのか、とウンザリ・・・。でも総二郎の方は嬉しそうにニコニコして「早く脱げ」なんて言うから、その腕を思いっきり殴った!


「痛ぇ!何すんだよ!お前ぐらいだぞ、この屋敷で俺を殴るのは!」
「殴りたくもなるわよ!朝のアレ、堤さんに聞かれてたのよ?も~、恥ずかしいじゃないの!」

「でもお前が声出したんだろ?」
「声が出るようなことをしたのは誰よっ!!」

「それは俺。ってか、俺以外の男とか有り得ないだろ」

「・・・・・・・・・反省しないの?」
「なんで反省すんだ?」


そう言いながらいつまでも服を脱がない私のブラウスのボタン、いつの間にかこの男が嬉しそうに外していた!
慌てて「自分でやります!」って言っても「遠慮すんな」の返事・・・もう1回殴ろうとしたら、その腕を掴まれて逆に抱き締められた!

「うわっ!何すんの?時間がないでしょうが!」
「少しだけ抱かれてろよ。朝は30分しか出来なかったんだから」

「その30分でご飯半分しか食べられなかったじゃないの!ちょっとっ・・・も、もういいでしょ?」
「ダメ・・・あと5分」

「5分もこんな事してたら窒息する!」
「・・・仕方ねぇ、着るか」

「・・・・・・(あら、10秒で終わったわ)」



こんな男でも茶室に入ったら人が変わったように鬼になる。
今日も障子の開け方から怒られて、ほんのちょっと踏んでしまった畳の縁まで見られて、溜息ついて座ったらはじめからやり直し・・・お抹茶に辿り着くまでにお稽古時間が終わってしまった。
ま・・・それもいいんだけど。

自分で点てるまでは出来なくても総二郎のお茶はいただく・・・これも彼の茶の味を知る勉強って事らしい。

うん、でも・・・流石に美味しい。
夜になったら豹変する彼が点てたとは思えない程、上品でまろやかなお茶だった。


「どうだ?」
「大変美味しゅうございました。ありがとうございました」

「そうか。でも俺も人間だから不安があったり怒りがあったら茶の味が変わる。だからつくしは俺の茶に変化があったらちゃんと気付いてくれよ?で、その時は俺の軌道修正を頼む。頼りにしてるから」

「そんな大役、まだ務まりませんって。でも、この味が変わらぬように私も精一杯フォローしますんで!」

「くくっ、それでいい。じゃ、昼から宜しくな」


お約束のように最後の退出でもお小言をもらったけど、その時の総二郎は嬉しそうに笑ってた。




***********************




10日ぶりにつくしの運転する車に乗る・・・ある意味すげぇ恐怖だった。

エンジンは掛かっている。
こいつは今、何を悩んでるんだろう。

筋が立つほどハンドルを握り締めて、ド真剣な顔でフロント硝子の向こう側を睨んでるつくしを、同じくド真剣な顔で助手席からガン見していた。
いつになったら動くんだ?この車・・・。


「おい、出ないのか?そんなんで茶道教室の時間に間に合うのか?」
「・・・精神統一よ。少し集中させて」

「いや、そこまでしないと運転出来ねぇのか?10日前まで運転してたんだけど」
「・・・アメリカに行く前の数日間は運転してないわ。だから2週間以上公道を走ってないのよ」

「そのぐらいで忘れねぇって。し、心配すんな、俺がついてるから!」
「今、言葉に詰まったわね?」

「・・・・・・・・・」


精神統一って言ったクセにそう言うところはよく聞いてんな?


暫くしたら覚悟を決めたのか(普通に運転するだけだけど)、大きく息を吸って「よし!」と気合いを入れていた。
そしていつものようにアクセルを踏んだが、ガッタン!!と急発車して急停止!!
当然俺はゴットン!とダッシュボードに顔面激突!つくしはバッコン!と、ハンドルで鼻を打った!

何が起きたのかと思ったら、またフットブレーキを解除してなかっただけ・・・


うちの裏門を出ていくだけで既に15分。しかも正確に言えばまだ出ていない。
結果、間に合わないと判断して運転手交代・・・慣れない着物でハンドルを握って、それを西村さんと志乃さんが不安そうに物陰から見ていた。


「どうやったらそんなに綺麗に忘れんだ?!マイルド発進出来ねぇのかよ!」
「1回やったら思い出すと思うんだけど・・・」

「仕方ねぇなぁ・・・じゃあ、今度は田舎にドライブだな!」
「え~?私の運転で?勇気あるなぁ、総二郎♪」



・・・まぁ、こんな移動も悪くない。

秘書だけど恋人・・・そんなつくしと馬鹿笑いしながら都内を軽快に走ってった。
俺は額を、つくしは鼻を真っ赤にさせて。






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