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時差があるのと、類と司は現時点で何処に居るのかが判らない。
だから光留の誕生はメールで送った。それにすぐ反応したのが総二郎だった。


『あきら、おめでとう!つくしにも見せるからすぐに写真送れ!もう紫音たちも幼稚舎から戻ってるから急げよ?!』
「ありがとう、総二郎。でもまだ生まれたてで新生児ケアの最中だから少し待てよ」

『そんなもん、中断させりゃいいだろ!待ってるからな!』
「判った、なるべく早く送るから」

あいつももうすぐ自分の子供の出産に初めて立ち会うはずだ。
だから余計にハイテンションだった。
仕方なく処置中の看護師に頼んで、1枚だけ光留の写真を撮らせてもらって送ってやった。

司はドイツに滞在中で、フランスに居る類も真夜中だったからすぐには連絡は無かったが、この2人からも数時間後電話があった。
顔が見えないから余計に無感情に聞こえる類の「おめでとう」と、第一声が「祝いは別荘でいいか?」と聞く司。
相変わらずだな、と笑いが出た。



病院にお袋が来たのは産まれてから15時間後。
この人には時差も関係ないのか、元気よくヒールの音を鳴らして病室に駆け込んで来た。

ちょうどその時間は赤ん坊にミルクを飲ませていたところで、お袋は息も荒いまま、まずは光留の顔を覗き込んでいた。
抱いているのは仁美・・・2人は久しぶりの対面だったが、その空気を緊張したものではなく穏やかにしてくれるのはやはり光留の存在だろう。
ミルクを与え終わったら早速お袋に「抱いていただけますか?」と、笑顔で話し掛けていた。


「まぁ!可愛らしい顔ねぇ~・・・あきら君の小さい頃によく似てるわ。うふっ、まだ目を開けないのね」
「少しだけ開けたんですけどすぐに閉じちゃったんですよ」

「そうなの?見たかったぁ!私が滞在中に見せてくれるかしら・・・光留~、夢ちゃんですよ~」
「またそれかよ!いい加減お婆ちゃんで良くないか?」

「いやぁよ!まだそんなに老けてないわ!」
「くすっ、そうですね。小さいうちはいいですよね・・・あっ、欠伸したわ」


初めてでもないのに2人とも光留の動きにイチイチ反応して大喜びしている。
それは紫音たちの時とは少しだけ違っていた。


「さっ!光留のお披露目をするわよ!」

「えっ、もうするのか?」
「お披露目?社報か何かにですか?」

「美作のホームページにドーンとね!!お目出度いことですもの、いいわよね?」
「・・・いいけど」


お袋がそう言うから仁美が光留を抱き、俺がその後ろから見守るようなポーズをとってお袋が嬉しそうに撮影して、自分も抱っこした写真を俺に撮らせて早速そいつを公開していた。
やれやれ・・・これで静かだった毎日が五月蠅くなるのに・・・。

案の定、次の日から俺のスマホには祝いのメッセージが数え切れないほど・・・その返事をするだけで1日が潰れた。

親父がロスに来たのは2日後で、両親揃ってサラに礼を言った。
サラも安産だったらしくて体調にも問題は無く、今日の午後には地元の病院に転院し、3日後には自分の家族の元に帰るらしい。これで最後だと言って光留の顔を見て嬉しそうに笑っていた。

『ヒカルの幸せをこの地で祈ってるわ』、そう言って俺達は握手で別れた。



**



それから数ヶ月が過ぎた頃、日本では牧野が臨月を迎えていた。
だから1度帰国して光留の顔を見せ、牧野が出産した後でまたアメリカに戻り、2人目の代理母出産に臨む事にした。


「あぁ~~あ~、ん~」
「・・・光留、お腹空いたの?ミルクにしましょうか?それともオムツかなぁ・・・」

「ん~ん~、あ~」
「うふふ、パパはお仕事中よ?ママが抱っこしてあげるわ」


日曜日、自宅のパソコンに向かってると聞こえてくる楽しそうな仁美の声・・・それに答える光留の言葉にならない声。
手を止めてそっちに目をやると、光留を抱いて窓の外を眺めている彼女の後ろ姿が見えた。

「海が綺麗ねぇ」と優しい声で呟くと光留が窓に手を伸ばし、その小さな顔に幸せそうに寄り添う・・・あの辛かった日々が嘘のような穏やかな光景。


「天気がいいから散歩に行こうか?」
「え?お仕事は?」

「ん~、もう少し残ってるけど大丈夫だ。今の方が出掛けるにはいいだろ?仕事は夜でもいいし」
「ふふっ、あきらさんが光留と出掛けたいんでしょ?すぐに支度するわね」

「あ~あ~!」
「よーし、光留。ママが支度するまでパパが抱っこしてやるからな」


仁美の腕の中から小さな手を伸ばしてくる光留・・・そのまだまだ頼りない身体を抱き締めて、今度は俺が窓越しに海を見つめた。
そして「準備出来ました」って言う彼女のスタイルは以前と全然違っている。

いつも上品なワンピースやスカートだったのに、今日はTシャツにジーンズに薄手のカーディガン。それに光留のものを入れたマザーズバッグはリュック式で、大きめの帽子じゃなくてキャップを被って光留を抱きやすいようにしていた。
暗い表情だった時には似合わなかっただろうけど、今の仁美は生き生きしてる。だからその格好が極普通の母親っぽくて素敵だった。


「じゃあ行こうか」
「えぇ、下まで光留を抱いて下さる?私はベビーカーを持つから」

「俺がそっちを持とうか?」
「ううん、光留の方が宝物ですもの。安心できる人にお任せしたいわ」

「了解。荷物が多いのにごめんな」
「ふふふ、最近は腕力もついたから大丈夫よ。光留で筋トレしてるから」

「あ~あ~、まっ!」
「光留、嬉しそうね。パパとのお散歩が久しぶりだから」
「あっ!光留、髪を引っ張るなって!」



海まで行く途中に青空に飛行機雲を見つけた。

もうすぐ紫音と花音にも光留を会わせてやろう・・・その日が楽しみだ。






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2019/11/30 (Sat) 12:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

夢子婆ちゃま(笑)確かに老け込みそう💦
うちのお隣さんも、義理の姉もそうですよ(笑)
名前で呼ばせて「婆ちゃん」とは言わせてないみたいです。

逆に私の母は「婆ちゃん」って呼ばれたかったんだって。不思議でしょ?(笑)

私も婆ちゃんはイヤかも・・・でも、名前も嫌かも(笑)
その時にならないと判らないな~。

次話がラストです。
(え?あきら君は早い?💦ごめんね~💦)


2019/11/30 (Sat) 23:59 | EDIT | REPLY |   

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