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plumeria

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あれから何日が経ったんだろう・・・。
もうよく覚えてもいない。会社には長期の休暇願いを出した。
一日中、何もせずにただ窓の外の海を眺めることしかしなかった。


「牧野、もう少し食べないと倒れるぞ・・・無理ならデザートだけでもいいから」

そう声をかけてくれるのは美作さん・・・夜になるとこうしてこの別荘に帰ってきてくれた。
あれからずっと側にいてくれたけど、彼は一度も私に何があったのかを聞かなかった。
ただ、黙って私の側についていてくれた。あの日に美作さんの気持ちに応えなかった私なのに・・・。


「ねぇ、美作さん・・・なんでそんなに私のことを助けてくれるの?」

「そりゃ、男だからさ・・・好きな女性のためならどんなことでもするだろ?」

美作さんを見たらすごく優しい顔で笑っていた。
あの時の抱き締められた感覚を思い出して少し慌ててしまう・・・。


「大学の時に類と一緒にあっさり振られたからな。でも・・・何度も忘れようとしたけど忘れられなかった。
今でも牧野の事を愛してるよ。だから、今は牧野の側にいたいんだ。
何があったのかは話したくなってからでいい・・・立ち直るまでは俺が側にいるよ」

「でも・・・私は美作さんとは・・・」

「いいんだ。わかってるから・・・。でも、もし総二郎の行動が牧野を泣かせたのならそれは許せない。
もしそうなら、牧野が何て言おうが総二郎の所には戻さない・・・!」


初めて見た・・・美作さんの怒ったような顔・・・

この2人が争うようなことが起きてしまうなんて・・・その原因を作ったのは私なんだ。
そう思ったらまた胸が張り裂けそうなぐらい痛んだ・・・。


*******


俺に出た謹慎処分・・・西門の家を出て長野の縁の寺に行くことになった。
この寺で精神修行をしろというものだが、要するに今回の件が治まるまでの間おとなしくしておけと言うんだろう。
綾乃が自分で刺したことは家元始め、藤崎も知っているから傷害事件などにはなっていない。
ただ、本邸で起きたことだからすぐに人の噂には上がってしまう。

ある事ない事、妙な話が関係者に広まっていく・・・世間体を気にして家元が出した決断だった。


その前にどうしても牧野の事が知りたくて、屋敷中の弟子や使用人にあの時の状況を聞いてまわった。
そして、1人の使用人の口から出た人物は・・・あきらだった。

「あの時は確かに美作様が門の所までいらっしゃってましたよ。ただ、すぐに綾乃様のことがあったので
お入りになったのかどうかまでは記憶していませんが・・・」

「あきらが・・・?その時に牧野は一緒だったのか?」

「それはわかりません・・・とにかくお屋敷中が混乱していましたから。牧野様が来られたときは応対したのですが
帰られたのは見てないですね・・・」


なぜ、あきらがあの日、あの時間に西門に来たんだ?
俺は呼んではいない・・・用もないのにこの堅苦しい西門にあきらが来るはずがない。

都合が良すぎる・・・もしあきらを呼んだのが綾乃だったとしたら・・・?
あきらが起こす行動をあらかじめ推測して、あの時間にここに呼んだのなら牧野はあきらが・・・。
綾乃の計画がそこまで立てられていたとしたらあきらは牧野を連れて行ったのか?

そうだとしても綾乃がもう手を出してくることはないだろう。あの状態はすぐには変わらないはずだから。
直接あきらと連絡を取るしかなかった。


少し躊躇いはあったがあきらに電話をかけた。
あのホテルでの事を忘れた訳じゃなかった・・・牧野を嬉しそうに待っていたあきらの姿を思い出さずにはいられない。
あきらだって俺に後ろめたい気持ちが少しはあるはずだ・・・。

もしかしたら出ないんじゃないかと思っていたのに、意外にもあきらはすぐに電話に出た。


「あきら・・・お前、今どこにいるんだ?牧野を知らないか?・・・いなくなったんだ」

『・・・・・・いなくなっただと?・・・その原因は何だ?』

「何か知っているのか?あきら!・・・お前、あの日にうちに来てたってのは本当なのか!」

『あの日ね・・・あぁ、行ったよ。・・・牧野が泣いて飛び出してきた時にな』

あきらが感情を押し殺して話しているのがわかる。こういう時のあきらは最大級で怒っているときだ。
昔からそうだ・・・怒りが強いときほど冷静で自分を抑えてしまう。そして、それが爆発したときが一番恐ろしかった。
だが今はそんなあきらを置いてでも牧野の情報が知りたかった。


「泣いて飛び出した・・・その後は?まさか、お前・・・牧野を!」

『俺はお前に隠し事をするつもりはない。牧野がお前から逃げたい・・・連絡したくないって言うから俺からは
黙っていただけだ。牧野は今、俺といる。何も話してはくれないけどな・・・』

あきらの言葉は刃物のように俺の中に突き刺さった・・・あれからずっと牧野があきらといるなんて・・・

しかも、あきらに縋ったのは牧野の方だというのか?



「俺から逃げたいって・・・本当にあいつがそう言ったのか?」

『そうだ。心当たりがあるんだろう?総二郎!』

「あると言えばある・・・。だけど、まだ真実を牧野は知らないんだ!あきら、牧野に会って話したいことがあるんだ!
どこにいるか教えてくれないか!」

電話の向こうのあきらがどのくらい怒っているのか想像出来る・・・
しかしこのまま伝えずに終わるわけにはいかない・・・こうなった今でも俺は牧野と離れる気なんて全くなかった。
みっともないとあきらが言うなら言えばいい!そんな気持ちであきらに叫んだ。

でも、あきらの方はあくまでも冷静だった。


『断る。・・・牧野が会いたくないと言うんなら教えるつもりはない。まずは自分のしたことをよく考えてみろよ。
今回の事は知らないが、元々遊びの延長で牧野を連れ回した結果がこれなんだろう?』


「・・・遊びだと?誰がそんな事を言ったんだ?・・・綾乃か!」

『全部聞いてるよ。牧野がこの前泣いた理由以外はな・・・お前が牧野を西門に釣り合わないと言いながら、
そうやって思わせぶりな態度で振り回したんだろうが!なぜ、牧野を傷つけるようなことをしたんだ!
わかっていたんだろう?西門には牧野を受け入れる気がないって事を・・・簡単に付き合い始めるからだ!!』

あきらも最後の方はその声を荒げた。あのあきらが怒鳴るなんてことは滅多にないことなのに・・・。



あきらも綾乃に操られたんだ・・・。
牧野を騙して・・・俺にも罠をかけて・・・あきらにまでその悪魔の手を伸ばしてたのか。

すべてが繋がった瞬間・・・だからなんだな。
病院で最後に綾乃が笑ったのは知っていたからなんだ・・・牧野の行方を。

あきらが牧野を連れて行くように仕組んだんだ。優しすぎるあきらの気持ちを利用して・・・。


それが最後に綾乃が牧野にかけた罠・・・そして俺たちはそれにハマったんだ!
ただひとつ、俺があの時に綾乃の罠にかからなかっただけだ!


「あきら・・・お前1人で来てくれないか?全部・・・お前に教えてやるよ」

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Comments 4

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2017/06/07 (Wed) 12:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは🎵

このお話が終わる頃、梅雨だろうって思ったんですよ❗

バッチリだわぁ!
確かに台風はいやだけど、雨は好き❤

今日あきらを読んだら笑いがでました。
私の今までの記事コメで一番多かったんですよ。
仏の顔も三度…なんでかな。

明日も宜しくお願いいたします。

2017/06/07 (Wed) 13:11 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/07 (Wed) 21:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

そうかしら?あきつくいけちゃう?私・・・。

でも、無理なんですよ~!嫌ですよ?!あきらとのシーン書いてとか言わないで下さいねっ!
こればっかりは無理だと・・・思います。

抱いた・・・で終わっていいならいいけど。

えっとですね・・・。明日じゃないけどちょっとこの男二人の良いシーンがありますよ。
あ!BLじゃないですよ?!
総二郎がお寺に行く前あたり?私はそこが好きなんです!
楽しみにしてて下さいね!(自分で言うかっ!)

今日もありがとうございました!

2017/06/07 (Wed) 22:25 | EDIT | REPLY |   

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