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絢音から西林という男の名前を聞いてから数日後、大学に高等部3年生がキャンパス見学という名目でやってきた。
制服だから一目瞭然・・・緊張するような生徒は殆どいなくて、寧ろ顔見知りが多いのか和気藹々とした会話が溢れたりして。

でも俺の場合、茶道家って事もあって家業を通じての知り合いはいない。
茶席の亭主を務めても相手は子供じゃないし、ここの学生が大寄せの茶会に来る事があってもその目的は父様、西門総二郎なんだから。

だから特に誰とも会話なんてせずに講義を受け、昼休みだってザワザワしたキャンパスを1人で歩いていた。
その時・・・


「おぉ、西林!久しぶりじゃん!」

そんな声が聞こえて足を止めた。
振り向いたら名前は知らないが男子学生が高校生を呼び止め会話中・・・「西林」と呼ばれた男が立ち止まってすごく丁寧に頭を下げていた。
背が高くてわりとイケメン・・・でも父様を見慣れてるからそこまで驚かない程度。


・・・もしかしてこいつが朱里にパートナーを申し込んだ西林か?

そう思って不自然な場所で立ち止まり、正面を向き直って自分の背後に耳を傾ける・・・盗み聞きなんて嫌だけど、この時はそうせずにはいられなかったんだ。



「お前、あの美作朱里に手を出したんだって?」

その言葉でピキーーーーン!と心臓にヒビが入った!

手を出したって・・・手を出したって・・・
まさか、そう言う事?もう朱里はこの男の・・・そんな馬鹿な!

相手は中学生だぞ?犯罪じゃないか!・・・・・・でも、父様もあきらさんも「その頃だった」って聞いた事がある。
いや、朱里は女の子なんだから男の父様達とは全然違うし!・・・ってこんな部分で男女差って関係あるんだろうか。

僅か数秒の間に考える事はとどまるところ知らず・・・鳴り続ける心臓が五月蠅くて、額には汗が浮かぶし!


「あはは!山田先輩、その噂、もう聞いたんですか?でも手なんて出してないですよ~」
「そうなんだ?お前にしちゃ遅くね?」

「相手は見た目が大人っぽくても中等部の生徒ですからね。しかも美作商事の1人娘ですよ?危ないことは出来ませんよ~。まずは父親から落とさないとね・・・それまでは清らかな関係にしておきます」
「相変わらずだなぁ!あの年上の彼女は?」

「あぁ、彼女はちゃんとリザーブしてますよ?美作がダメならそこを狙うしかないですからね。でも規模が違いすぎるからやっぱり朱里をモノにしたいですけどね~」


「・・・・・・・・・・・・」


なんだ、こいつ・・・朱里を「モノにしたい」って言った?



俺は普段から人と喧嘩なんてしない。
この手を怪我したくないからだ。

日光で父様が茶会をしてくれた時、右手に怪我をして包帯を巻いていた。そのせいで作法が上手く出来ないって苦笑いしてたのをほんの少しだけど覚えている。
あれは本格的なものじゃなかったから良かったけど、手に怪我をしたら感覚が鈍るから亭主は出来ないと言っていた。

だから絶対に手は出さない。

でも許せない・・・!


クルッと向きを変えて西林のところに行くと、俺の事を知っていたのか驚いた顔をされた。
もう1人の大学生は1年生だろうか、俺に「西門先輩!」と言ったが名前も顔も知らない。だからそいつは無視して、制服の男に目を向けた。


「な、なんですか?西門紫音さん、ですよね?」
「うん、そうだけど俺は君の事を知らないし、知りたくもない。でも今の会話が聞こえてね・・・美作家と西門って親戚以上の付き合いだって知ってる?」

「は?いや、お父上同士が仲がいいのは有名ですけど?」
「知ってるならいいけど、朱里に手なんて出さない方がいいと思うよ。あきらさん、そう簡単には朱里の相手を決めないし、そのハードルすごく高いから。下手に近づくと危ないのは君の方だ」

「あぁ、その辺は巧くやりますし。西門先輩に言われなくても大丈夫っすよ?」
「まず、その言葉遣いでアウトだね」

「なんなんだ・・・あなたには関係無いでしょう!」
「覚えといてくれたらいい・・・朱里はまだ子供だから騙すような事はするなよ。彼女のことは西門としても子供同様可愛がって守ってるから。何かが起きたら西門も敵に回すと思っとけ」

「・・・・・・・・・!」


これでも父様に似てるんだから睨んだら威力はある・・・・・・はず。
本気で人を睨めないからバレるかもしれないけど、父様に成り切ったつもりで西林を睨みつけた。そうしたら少しはビクッとしてくれたようで、山田ってヤツと2人で何処かに消えて行った。

・・・右手は完全ガード。
漸く力を緩めたけど、今の行動が茶人としてはいいのかもしれないが男としては情けなかった。




**



そんな事があってからの数日後の日曜日。
今度はお爺様・・・近日中に隠居して京都に行くと宣言された現家元が、その京都に諸用で出掛けたもんだから土産を持って美作邸に行くように言われた。


「なんで俺?父様・・・は千葉か。母様でも良くない?」
「私は婦人部の引き継ぎがあるのよ。それに夢子おば様は紫音に会いたいでしょうからね」

「・・・1人で?」
「なによ、子供じゃあるまいし。光留くんや朱里ちゃんがいるかもしれないから久しぶりに話して来たら?」

「朱里は最近話したじゃん」
「だから光留君でもいいじゃない。グダグダ言わないで行って来て!あっ、事故しないでよ?」

「・・・ちぇ!」


そうだった・・・父様がいないから俺の1人稽古・・・つまり自由って事か。
絢音も颯音も車の運転は出来ないし、動けるのが俺って訳だ。

母様から渡された和風のケーキは仁美さんの好物。それを持ってガレージに行き、自分の車に乗り込んだ。



隣にはド派手な父様の車がある。
今はマセラティにしてるけど、相変わらずピカピカで眩しいぐらいだ。それに比べて俺は外車が嫌いだから国産のコンパクトカー・・・わざわざ大きな車でエンジン音を響かせて走るのは性に合わないからだけど。


『どうしてお父様と同じ顔なのにこの車~?』って、花音が遊びの送り迎えをさせるくせにゲラゲラ笑ってたっけ。
放っていて欲しい・・・この狭さが俺の好みなんだから!

だから今でも大学には西門の車で通ってる・・・あそこにコンパクトカーを停めるヤツなんていないから。


「・・・仕方ない。さっさと終わらせて帰ろう・・・」

少し浮かれてるような、でも溜息交じりで車を出し美作邸に向かった。



出迎えてくれたのは小夜さん。
俺達が産まれる前から働いていたけど、西門に戻ったその年にここの調理師と結婚してすぐ近くに住んでる。その調理師が今ではここのメインシェフで小夜さんは使用人頭だ。
俺を見ると「紫音様、お久しぶりです」と優しい笑顔を向けてくれた。


「こんにちは。あの、誰かいます?夢子お婆様は?」
「大奥様も奥様もいらっしゃいますよ。あきら様はお仕事で、光留様はお友達のところに行かれましたけど」

「・・・朱里は?」
「お嬢様はお部屋ですわ。お呼びしましょうか?」

「いや、いい!・・・えっと、夢子お婆様と仁美さん・・・だけで」
「??くすっ、判りました」


西林の話を聞いたばかりだから、朱里とは暫く顔を合わせたくない。
いや、本当は会いたいけど何を話したらいいのか判らなくなる。そんな状態でお婆様達の前に居たら絶対にバレるし・・・


「あーっ!紫音だぁ!いらっしゃーーい♡」


「・・・・・・・・・」


どうして出てくるんだっ!!





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Comments 4

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2020/01/17 (Fri) 11:25 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/17 (Fri) 14:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 こんばんは。

コメントありがとうございます。

ええーーっ💦(笑)
私の大好きな紫音にその言葉は💦可哀想です~!(笑)

いや、確かにそうなんですけどね・・・うん(笑)
総ちゃんの息子とは思えないですよね・・・

多分、その血は颯音が持って行ったと思います♡

こんなシャイな紫音ですが、どうぞ応援してやって下さいね♡

2020/01/17 (Fri) 22:40 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

うんうん!いつかね!それ、待ってて下さいね(笑)


そそ!紫音は外車なんて乗らないんですよ。
軽自動車はねぇ・・・って思ったのでコンパクトカー(笑)
色が黄色だったらつくしと趣味が一緒(笑)

この小さな車も実は・・・いい働きするのよ♡
(いきなり車中Rとかないからね?)

純情紫音、最後まで応援してやってね~♡

2020/01/17 (Fri) 22:43 | EDIT | REPLY |   

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