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~side進~

「あら!牧野君ったら休み取ったんじゃなかったの?」
「あっ、課長、すみません!聞きたいことがあって戻って来ました。ちょっといいですか?」

「・・・何よ、私は勤務中なのよ?」
「少しだけ!少しでいいですから!」


社に戻ったら課長を捕まえて談話室に向かった。
そこでは数人の社員が打ち合わせしたり珈琲を飲んだりしていたから、話し声が聞こえないように隅っこに課長を引っ張って行った。
そんな俺達を誰も気にしてないかと確認した後で、大野さんから聞いた随分前の不正事件について聞いてみた。

勿論この人はそんな昔にはいない。だから俺が気軽に話し掛けられる立場の人で、この経緯が判る人を知らないか・・・それを聞きたかった。


「あぁ~、コンプライアンス会議とかで毎回過去事例で出される話の事かしら。
名前こそ伏せてるけど花沢物産のお偉いさんとうちの営業課長、それに何処かの下請け会社がグルになって会社のお金を横領したってヤツね?」

「そうなんですか?!花沢物産の幹部とうちの・・・それ、誰が詳しいですかね?」
「そうねぇ・・・藤沢営業本部長とか?」

「そんな人に話は聞けませんよ・・・」
「そうよね。じゃあ・・・あぁ、営業3課の金子さんが知ってないかしら。もうすぐ定年なんだけど大した成績も上げてないからいまだに平社員だけどね、実は色んな事知ってんのよ。
それも仕事と関係ないことばっかり。不倫ネタから美味しいレストラン、絶景穴場スポットや儲かるパチンコ台の事まで聞けば何でも答えてくれるわよ」

「そんな人に真面目な話をしても大丈夫でしょうか?」
「聞くだけ聞いたら?他の人じゃいくら牧野君が花沢さんの紹介でうちに入った子だって言っても聞きにくい立場の人だもの」

「判りました!聞いてみます、ありがとうございました!」
「どうでもいいけど明日は仕事してよ?!あなたも今月、売上げ悪いでしょ!」

「うわっ、すみません!頑張ります!」



うちの課のすぐ隣にある営業3課に行き、そこで金子さんを呼んでもらおうと同僚のデスクに行くと「爺さんならあそこに居るよ」と教えてくれた。
いくら成績が悪いからってそんな言い方はないだろうと驚いたけど、その人は1番奥の窓際でこっちに背中を向けている、白髪混じりで痩せ細った人だった。

スーツだって営業とは思えない草臥れ方で、足元に置かれた鞄はボロボロ、靴の踵もすり減ってる。俺が言うのも変だけど、確かに卯建が上がらない感じ・・・がする。
ゴクッと唾を飲み込んですぐ側まで行き、そっと後ろから「失礼します・・・」と声を掛けると、その人が惚けたような顔で振り向いた。


「金子さんですか?俺は1課の牧野と申します」
「・・・あぁ、花沢さんの伝手で入ったのは君か。確かに儂が金子だけど?」

会ったことも話したこともないのに俺の事を知ってる?
まぁ、姉ちゃんの事もあるし、入社の経緯も珍しいから俺の名前を知ってる人は結構居るけど。


「お仕事中にすみません」
「何にもする事がないから別にいいが、何だ?売上げでもくれるのか?」

「いえ、そうじゃなくて・・・20年近く前の横領事件って覚えてますか?有栖川祐子さんが退職したって言う・・・」

「・・・そりゃまたえらく古い話を持ち出すな。それがどうした?」
「その時のことを教えていただきたいんです。少しだけお時間いただけますか?休憩の時で構いません」

「ははっ!それなら今でもいいぞ。でもお前さんが知りたいことかどうかは判らんがな。・・・課長が睨むからこっちに来い」


そう言って連れて行かれたのは小さな会議室。俺は休みだからいいけど、この人は勤務中なのに大丈夫なのか?
でも、とにかく早く知りたかったからその言葉に甘えた。


その部屋の細長いテーブルを挟んでパイプ椅子に座り、金子さんは頬杖ついて俺をジッと見てる。格好は俺よりも見窄らしいのに、その目のギラッとした光りにドキッとして背筋がブルッと震えた。


「それで?何が知りたい?」
「そ、その事件、有栖川さんが不正をしたってなってますけど本当は違うんですか?真犯人がいるんですか?花沢物産の本社内にも関係者がいると聞きました。花沢物産は調査しなかったんですか?」

「・・・どうしてそんな事を調べてる?お前の産まれる前後の事だぞ?」
「その有栖川祐子さんの息子さんが俺の姉を何処かに連れ去ったんです。だから探しています・・・あっ!今のは内緒にして下さい!!」


そうだった・・・!姉ちゃんが花沢家にお嫁に行ったことはこの会社全体にバレてる。
そして事故って療養中になってるのに「連れ去った」なんて言ってしまった俺は、慌てて金子さんに頭を下げた。そうしたら「ふふん」と鼻先で笑って「まぁ、いいだろう」とひと言だけ呟かれた。


「あれは有栖川祐子にとっては悲劇だったなぁ・・・」
「悲劇?」

「あぁ。確かに彼女は関わってなかったと思うよ。真面目に頑張る人だったからねぇ・・・」


金子さんは禁煙なのに煙草に火を付けて、昔話を聞かせてくれた。




************************




「色々とありがとうございました。本当に助かりました」

中野美枝子の自宅前で、見送ってくれる彼女に頭を下げた。
記念に持っていたという卒業アルバムも俺に譲ってくれて、それを片手に抱え自分の車に向かった。
彼女も駐車していた空き地まで来て、運転席に乗り込んだ俺に向かって頭を下げていた。そして姿勢を戻した時にはつくしを心配して辛そうな表情をしていた。


「・・・お役に立てましたかね?今夜は何処かに泊まるんですか?」
「訳あってホテルや旅館には泊まりたくないんです。大丈夫、何とかなります」

「それなら私の兄の家に行ったらどうかね?民宿してるんだけど、事情を言って記録を取らなければいいんでしょ?」
「・・・そこまでしていただくのは・・・」

「東京の人ならこの辺りの冷え込みがわからんでしょう。車で夜明かしなんてしたら大風邪引きますよ?そうなったら探すことも出来ないから、年寄の言う事はお聞きなさい」

「・・・ありがとうございます。ではお言葉に甘えます」


そう言って中野美枝子の兄の民宿という場所と電話番号を聞いて、車のエンジンを掛けた時、彼女が顔を上げて正面にある山の方を指さした。
何かと思って俺も視線を向けると、遠く離れているけど細い砂利道が見える・・・それがなんだ?ともう1度彼女を見上げた。


「そう言えばいつだったかしら・・・まだ半袖の頃だったと思うけど、あの道を大きな車が通ったことがありますよ。この奥には家も少ないし、みんな小さな車しか持ってないから不思議でね」

「大きな車?どんな?」

「パイプとか大きな工事用の機材を運ぶような、そんなトラック?あれは何だったのかしら、黒っぽい大きなものを運んでて、何処に行くんだろうって思ったわ。工事現場なんてないんだもの」

「トラック・・・」


振り向いて反対側をみると、その山の向こうは例の事故現場だ。
黒っぽい大きなもの・・・・・・そう言う事か。




思ったより日が暮れるのが早かったこの土地・・・もう空が赤く染まっていた。

そして薄暗くなった道を民宿に向けて走らせていた時、進からの電話が鳴った。




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Comments 4

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2019/12/05 (Thu) 08:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。
プル亀と申します(笑)

うんうん、判って来始めたのですが💦
これがまた長いんですよっ!

なんたって複雑なもんで!だから書く方も必死!(笑)
あれもこれも暴かなきゃならないけど、その順番が・・・💦

もう少し待って下さいね・・・うん、もう少し(笑)

2019/12/05 (Thu) 20:56 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/05 (Thu) 20:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz様、こんばんは。

コメントありがとうございます。お久しぶりです♡

はい(笑)
焦れったいのは判ってるんですが💦
ややこしい話なのでどうしても細かくなってしまうのです。
これでも何かが抜け落ちてないか、ヒヤヒヤしながら書いております。

でも確実に再会が近づいておりますのでご安心を。
その時もめっちゃ長いので怒られそうだなぁ、と今から心配です💦

気長にお付き合い下さいませ~♡

2019/12/06 (Fri) 00:49 | EDIT | REPLY |   

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