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~side進~

「あれは有栖川祐子にとっては悲劇だったなぁ・・・」
「悲劇?」

「あぁ。確かに彼女は関わってなかったと思うよ。真面目に頑張る人だったからねぇ。相当悔しかったんじゃないかねぇ」


金子さんの話が始まった。

今から30年ぐらい前、祐子さんは花沢さんのお父さんの紹介で入社してきて、1年ぐらい資材課の事務員をした後で営業課に配属された。
思いの外成績がよく、愛想や頭の良さですぐに昇進して課長補佐から課長になるまで異例のスピードだった。それには背後に花沢物産の当時の後継者が居るという噂もチラホラあったらしく、トップ陣の特別配慮ではないかと囁かれた。

だからあまり社内では親しい人は出来なかったらしい。

そうやって数年が過ぎた時、監査室の調査で会社の資金に不思議な流れがあることを発見された。そこまで大きな案件でもないのに動いた金が多い・・・それが何件もあったために、横領ではないかと上層部が動き出した。


「それで名前が上がったのが有栖川祐子ってワケだ。なんたって花沢物産からの紹介だったからねぇ・・・誰かと通じてるって噂になったんだよ。それで本人は違うって言ったけど、色んな証拠が出てきてさ」

「証拠が出たんなら有栖川さんの仕業では?営業だったんなら担当だって決まってるわけだし」

「ばーか!本人がやってるなら証拠は早々に隠滅するさ。都合よく出てきたってことは捏ち上げの可能性が高いだろうが。それに課長の上には部長だっているだろ?課長が総責任者って訳じゃない」

「あぁ、そう言うことですか・・・」

「出てきた証拠は犯人なら1番に消すはずのメールとか、絶対に人目につかないように保管する領収書とかだったしな・・・それがいつの間にか花沢本社を相手に、下請け会社とグルになって横領したって話にすり替わったんだよ」

「え?花沢物産の人は?」

「そりゃ1番に自分の身の回りは綺麗にして、バレないようにしたんじゃないのか?そこんとこは俺でも判らねぇけどな・・・大企業の幹部ってのはそう言うの、上手いからなぁ・・・」

「下請け会社の名前は?」

「何だったかな・・・俺は有栖川とは課が違うから下請け業者までは覚えてないな。だってここにも来ないしよ、課が違えば書類だって目にしないから」

「ですよね・・・どうなったんですかね?その会社」
「潰れたらしいぜ?下請けってのは大元に切り捨てられるとなかなか立て直しが出来ねぇからな」

「・・・判ります。可哀想ですね」
「まぁな・・・」


金子さんの話では、うちのトップも親会社に楯突くよりは下請け会社と1人の営業課長を処分して有耶無耶に終わらせた方が楽・・・それで真実を曲げられて祐子さんは会社を追われた。
金子さんの知ってることはそれだけだと言った。


「あぁ、そう言えばな」
「はい?」

「いつだったかなぁ・・・有栖川祐子が泣いてたことがあったよ」
「泣いてた?」

「あぁ。その事件が起きる前だったと思うけど、1枚の写真を手に持ってビルの裏口辺りに腰掛けてさ・・・俺はサボろうと思って偶然そこを通りかかったんだ。
丁度花沢物産の後継者が奥さんと子供連れて海外の赴任先から帰国した時でな。泣いてる理由を聞いたら意外な返事だったんでよく覚えてるよ」

「意外な返事って?」

「その写真・・・本社ビル前で誰かが後継者の息子の写真を撮ったらしくてさ、それを焼き増ししてもらったって言ってた。その時代はスマホの画像とかじゃないからなぁ。
それが自分の息子とよく似ていて、まるで兄弟みたいだってな。『でも父親が違うからそんなわけないのにね』って言ったあとで、慌てて『今の内緒ね!』なんて困った顔して言われたよ。もうバラしても怒られねぇと思うけど」


それは大野さんの話と一緒だった。
だからこっちが真実・・・でも、それだと何処か納得出来なかった。


「本当の犯人・・・って言うか不正をした人は誰なんですか?知ってるんじゃないんですか?」

「・・・・・・まぁ、そいつもすぐにここを辞めたよ。部下の不始末の責任を取るって言ってな。名前は吉岡ってヤツだ」


吉岡・・・その名前を言い残して金子さんは戻って行った。

何だろう、あと少しだけ繋がらない。
今の話が本当でも、どうして姉ちゃんが連れて行かれたんだ?


ここまで聞いてから、やっと俺はスマホを取り出し、花沢さんの名前を表示させた。
上手く伝えられるだろうか・・・それがすごく不安だけど。




***********************




また迷子になりそうな田舎道を走って、やっと民宿に辿り着いた。入り口では中野美枝子の兄、中野猛という男性が明るく出迎えてくれた。
宿泊者名簿には何も書かなくていいと言われ、フロントを通過して案内された部屋に向かった。

そこは本当に小さな部屋で、昔つくしが住んでいた時の広さぐらい・・・でも今の俺は身体を横に出来るだけで有り難かったから、ゴロンとそこに寝転んで目を閉じた。


時間で言えばまだ夕方・・・でも、ここは既に夜が近づいていた。


♪~♪~


「もしもし、進?何か判った?」
『・・・判ったと言えば判ったんですが・・・』

進からの電話を待っていた俺はその歯切れの悪い言い方に戸惑った。
とにかく判った事でいいから説明を、そう言ったらまた電話口で独り言を言ってる。少しイラッとしたけど、確かに複雑すぎる話だから、進が頭を整理するのを待っていた。

ここの使用人が部屋まで食事を持って来たけど、電話を耳に当てていたから申し訳なさそうに小さなトレイを部屋のテーブルに置いて出ていった。
見た事がない家庭的な料理・・・つくしならこれが何かを説明してくれるんだろうな、と思っていたら進が漸く話し始めた。


『お義兄さん、あまりに沢山聞いたから纏まらないけど、1つずつ説明しますね』
「あぁ、いいよ」

『まず、有栖川祐子さんの子供は確かに柊祐でした。大野さんは会ったことがあるそうです。茶色の髪の可愛い子だったって』
「やっぱりそうか・・・」

『出身は新潟で、好きな人を追い掛けて東京に家出して来たそうです。でもその好きな人にはもう奥さんが居て、えーと、所謂愛人関係だったみたいです』


進の話は以前あきら達と調べた成瀬社長の昔話と一致する。
つまり有栖川祐子は成瀬社長と恋人関係だったって事だ。でも実際は彼にアメリカ人の妻が居て、その財力から考えても太刀打ち出来ない。
有栖川祐子が総てを投げ捨てて追い掛けた恋は実らなかった。


『その祐子さんは新潟のお父さんに大反対されてたから帰るに帰られず、夜の仕事をしていた時に・・・・・・その、あの・・・新しい男の人が・・・』
「いいよ、濁さなくても。俺の父さん・・・だろ?」

『えっ!知ってたんですか?』
「知ってた訳じゃない、推察してただけだ。それに彼女が追い掛けたのは柊祐の養父の成瀬社長・・・だよな?」

『そ、そうです!なんだ、そこまで?』
「もしかしたらそうなのかもってね」


俺がその事に驚かなかったから進も話しやすくなったんだろう、それからはスムーズに今までの情報を教えてくれた。

徳永商事に有栖川祐子を入れたのは父さんで、2人が会うのは彼女のアパート・・・加代から聞いた通り、父さんが色んなものを揃えていたようだ。
そして成瀬社長も彼女を忘れられずに通った。だから自分の知らない家財道具に苛だち喧嘩になっていたと。


どことなく俺達は似ている・・・つまり、柊祐の父親は・・・


『でも、大野さんの話だと、柊祐は成瀬社長の子供でも、花沢社長の子供でもないそうですよ?』

「・・・・・・え?」

『祐子さん、花沢社長が海外に行っちゃって淋しかったからって、イギリス人の男性と関係を持ったらしいです。その人の子供だって話してたそうですから。これ、大野さんしか知らないんだそうです。絶対に内緒って約束だったみたいだけど、もう話してもいいだろうって教えてくれました』


柊祐と俺には血の繋がりがない?

それだけは意外だった。
そのせいで恨まれている・・・それしか考えていなかったから。





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Comments 4

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2019/12/06 (Fri) 07:45 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/06 (Fri) 09:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!
謎が多いですからねぇ💦でも私が考える事なので大した仕掛けはありません💦

いつになったら2人は会えるんだろうかと、皆様ヤキモキしてるんですかね?
申し訳ないっ!!

もうすぐと言いながらまだまだです(笑)

2019/12/06 (Fri) 18:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

はい!だんだん終わりが見えてきましたねっ!
始めのプロローグと違うところもチラホラ出てきました。

まだまだ暴かなきゃいけない事が多くて、私の脳味噌が溶けそうです・・・。
(設定したのも私ですけど)

類パパ・・・この人が1番暢気なようで(笑)

年内に終わるのかしら・・・終わらせたいなぁ(笑)

2019/12/06 (Fri) 18:27 | EDIT | REPLY |   

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