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plumeria

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志乃さんに言われたとおり客間に行き、一応入る前に深呼吸・・・「失礼します」と声を掛けて中に入ると、そこで雪乃がド真剣な顔して待っていた。
でも俺が目の前に座ると途端にいつもの「笑顔」・・・逆にその変わりようが恐ろしかった。

今日も上品な着物を綺麗に着熟し、メイクはバッチリ。
爪の先まで磨かれて「完全ルフ装備&ゴージャス仕様」・・・見た目だけは非の打ち所がないお嬢だ。全然ワクワクはしないけど。


「お待たせしたようですね。申し訳ありませんでした。それで、どのようなご用件でしょうか?」
「・・・・・・その前にお帰りなさいませ。アメリカでのお仕事ご苦労様です」

「は?あぁ、それはどうも。でも雪乃さんにそう言ってもらう立場でもございませんが?」


家族でもねぇのに「お帰りなさい」とは?「お仕事ご苦労様」ってお前は俺のなんなんだ?

正しい日本語としては「お疲れ様」も「ご苦労様」も目上の人間が目下の人間に対して使う言葉だ。
何故なら両方とも「ねぎらいの言葉」だから。
ただし今では「お疲れ様」を目上の人間に対して使っても、それは挨拶の一部として浸透してるからおかしいとは思われない。

それなのに師匠である俺に対して「ご苦労様」?


確かに後援会に古くから名前を連ねる成宮家だし後援会長とは仲がいいが、それとこれとは別だろう!立場的に自分が優位だと言いたいのか?
それともそんな常識すら知らねぇとか?

ムカッとしてそれには黙っていたら、雪乃の方が鋭い視線を向けてきた。


「・・・どうかしましたか?」

「どう言うおつもりですの?総二郎様」

「なにがです?雪乃さんの仰ってる意味が全然判りませんが?」

「・・・私の親戚が歌舞伎の関係者としてこの度のイベントに同行していましたの。それで色々と聞きましたわ。デモンストレーション会場は別だったから知らないらしいですけど、最後のパーティーであの秘書の手を引っ張って会場を出られたというのは本当ですか?」


・・・・・・くそっ!そんなヤツがあの中に居たのか。
まぁ、隠すつもりもねぇから別に困りはしないが、こっちから紹介する前にあれこれ言われるのは気に入らねぇ。
かと言って「なんでも無い」と言えばこいつがまた出しゃばってくるのか?それはもっと気に入らねぇ・・・。

少し迷ったが、ここはストレートに言うしかねぇな、と開き直った。


「えぇ、本当ですよ。牧野と2人で部屋に戻りましたが、何か?」

「何かって!あの子はただの秘書でしょう?!総二郎様のお部屋に連れて行くなんて・・・!まさかずっと同じ部屋ですか?!」
「言う必要はないと思いますが」

「否定されないのならご一緒ってこと?あんな平凡で何の取り柄もないような女、何処が宜しくて?!」

「・・・はっきり申し上げますが雪乃さんには関係のないことです。加えて言うなら牧野は別に部屋を取ってありましたよ。同行した他の弟子にも確認しますか?
それに何の取り柄もないとは少々乱暴ではありませんか?彼女がこの渡米の間に西門のために動いてくれたおかげで随分と良い結果が生まれているのです。いちいちそれをあなたに報告はしませんが、家元も家元夫人も喜んでいますけど」

「そんなっ・・・お家元が?」


巾着袋なんてものであれだけの人を惹き付けるなんて、お前に出来るのかよ。
世界的大企業の社長夫人の機嫌を取れるなんてこれっぽっちも思わねぇぞ?
それに仲違いしたままの友人とお袋を繋いだんだ。そういう力は考えて出てくるもんじゃねぇ・・・つくしの持って生まれた性分なんだから。


自分のことを考えもせずに人の為にどれだけ走れるか・・・お前は座って待ってるだけだろうが!


「お話がそれだけならもう宜しいですか?とにかくこの件で牧野に何か手出ししたら今度は私が許しませんよ?この意味、判りますね?」

「・・・・・・・・・!!」

「お判りになったらお帰り下さい。暫くお休みだった稽古も来週から再開ですね。変更があれば牧野にお願い致します。それでは、私はまだ仕事がありますので、これで失礼します」


真っ青になってる雪乃をその部屋に残したまま席を立った。
そして来た時と同じように軽く一礼だけでドアを閉める・・・・・・って横を見たら、1日中隣にいたスーツが慌てて何処かに消えて行くのが見えた。


くくっ、気になったのか?



********************




「仕事が終わったらお前専用の男って言ったじゃん。だからその証拠?」
「ばばば、バカッ!!早く行きなさいっ!」

バシッ!と総二郎を畳紙で叩いて、そのまま着物を抱えてダッシュ!
毎度の事で磨き上げられた廊下を走るから曲がり角ではすっ転びそうになるけど必死で堪え、衣装部屋に駆け込んだら凄い音を立てて襖を閉めた!

もうっ!エレベーターといい飛行機といい、所構わずなんだから!


一緒に目覚めるようになってもこの時のバクンバクンは止められない・・・何度か深呼吸してから着物を広げ、衣桁に掛けた。
それを見ながら今日一日を思い出し、総二郎の残り香がある着物に縋ってみる・・・。

・・・・・・・・・・・・。


って、こんな事してる場合じゃないのよ!!
雪乃さんが何しに来たの?そっちの方が気になるじゃないのーーーっ!!


今度は衣装部屋から飛び出して客間の方に急いだ。
でも客間と言ってもこのお屋敷には幾つもの客間がある・・・何処だろう?って足音をたてないように歩いていたらボソボソと会話が聞こえて来た。

女の人の声?って事は・・・・・・ここ?!

慌ててその部屋のドアの前に立ち、辺りをキョロキョロ見渡した。
そして誰も居ないことを確認したらそっと耳を当ててみる・・・2人の位置なんて判らないけど、声だけは私の耳に届いた。


「どう言うおつもりですの?総二郎様」
「なにがです?雪乃さんの仰ってる意味が全然判りませんが?」

うわっ!険悪なムード?!
いや、甘い雰囲気だったら困るからそれでいいんだけど大丈夫なのかしら?

でも「どう言うおつもり」って・・・何か知ってるのかしら?まさか、こっそりアメリカに来てたとか言わないよね?!


「・・・私の親戚が歌舞伎の関係者としてこの度のイベントに同行していましたの。デモンストレーション会場は別だったから知らないらしいですけど、最後のパーティーであの秘書の手を引っ張って会場を出られたというのは本当ですか?」


・・・・・・マジっ?!そんな人があの中に居たの?
ヤバいわ、歌舞伎の人達にも調子に乗って巾着袋渡しに行って、ついでにサインもらったのがバレたらどうしよう~!
若手の歌舞伎役者、実は超格好良かったのよ・・・ごめんっ!一瞬心の中で浮気しました!(付き合う前だけど)


「えぇ、本当ですよ。牧野と2人で部屋に戻りましたが、何か?」


えええーっ?!言っちゃうの?!
まさか、その続きまで?!



「何かって!あの子はただの秘書でしょう?!総二郎様のお部屋に連れて行くなんて・・・!まさかずっと同じ部屋ですか?!」
「言う必要はないと思いますが」


そうそう!言わなくていいのよっ!
言っちゃダメーーっ!!



「否定されないのならご一緒ってこと?あんな平凡で何の取り柄もないような女、何処が宜しくて?!」


・・・・・・・・・何処がいいかって?💢
総二郎、反撃開始っ!ここはあなたの彼女をフォローするのよ!!


「・・・はっきり申し上げますが雪乃さんには関係のないことです。加えて言うなら牧野は別に部屋を取ってありましたよ。同行した他の弟子にも確認しますか?
それに何の取り柄もないとは少々乱暴ではありませんか?彼女がこの渡米の間に西門のために動いてくれたおかげで随分と良い結果が生まれているのです。いちいちそれをあなたに報告はしませんが、家元も家元夫人も喜んでいますけど」

「そんなっ・・・お家元が?」


よっしゃーーっ!!
それでこそ彼氏ってもんよ!よく言った!



「お話がそれだけならもう宜しいですか?とにかくこの件で牧野に何か手出ししたら今度は私が許しませんよ?この意味、判りますね?」


ヤバいっ!総二郎が出てくるんだわ、逃げなくちゃ!
今度は後ろ向きに数歩、静かに移動して・・・ドアが開く寸前に猛ダッシュして秘書控え室に向かった。

うふふ!心配して損したーーっ♡




*************************


<side雪乃>

まさかあんなちんちくりんに総二郎様を奪われるだなんて思わなかったわ・・・。
私の最大のライバルは真凜さんだと思っていたのに。

それでも堂本会長に気に入られている私の方が一歩リードしてる筈だったのに、まさか家元まであの秘書を気に入ってるですって?
何処がいいのよ、あんな寸胴で子供みたいな女・・・!

家柄が良くなくても、飛び抜けて美人とかスタイルが良いとかなら判るわよ?それなのに許せない・・・!


迎えの車に乗って帰る時も見送りは総二郎様じゃなくて使用人・・・しかも総二郎様、この私にお土産の一つも出さなかった。本気であの女を大切にされてるのかしら・・・。
なんて考え込んでいたら、急に車が停まった!


「なによ、どうしたの?」
「お嬢様、大変申し訳ありません!車の前に人が飛び出てきて・・・」

「え?轢いたの?」
「いえ!当たってもおりませんが、行く手を遮られまして・・・」

「はぁ?何言ってんの、そんなの退かしなさいよ!」


窓から前方を見たら、確かに男性が1人立っていた。
でもその身なりはきちんとしていて私に向かって一礼した・・・・・・あら、なかなかいい男じゃない?

もしかして私に・・・?それなら考えられなくもないわ。


その男はツカツカと歩いて来て後部座席の窓の外まで来ると、もう1回頭を下げたから仕方なく窓だけ開けた。


「どなた?失礼じゃありませんか、私を誰だと思ってるの?」
「申し訳ありません。成宮雪乃様ですね?西門総二郎さんの事でお話があります。お時間、いただけませんか?」

「総二郎様の?あなたは誰?」
「詳しい事は後ほど・・・」






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