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それから数日後・・・町田さんの忠告があったからそれとなく関西の動きを調べていたけど特に気になる様子はなかった。
間島の爺さんは大人しく地元でのんびりしてるし、剛が上京して来たなんて話は聞かない。

関西支部のホームページも平和な記事ばかりで、宗家に関するものなんて全然無い。
親父達にもそれとなく聞いてみたけど「今更それはないだろう」と笑うだけで気にもしていなかった。

確かに今更なんだけど・・・。


「それなら速く牧野さんに稽古をつけて、きちんと公表出来るぐらいにしたらどうだ?後継者のお前が家庭を持てばそれだけで西門流は安泰と安心する人もいるだろう。
総二郎がチャラチャラしているからそのような考えを持つ者が出るのではないか?」

「間島の奴等が変な考えを持ってるのは俺がチャラくなる前からだろう。しかも今は真面目だ。後はつくしが稽古についてくれば問題ねぇよ」

「・・・ついて来られないのか?」
「正座が15分しか保たねぇからな」


そこからか!と驚いた親父だけど、これでも長くなった方だ。初めは2分だったんだから。
って事で、今日もあいつに稽古をつける為に茶室に向かった。



**



「そこっ!どうしてそんなにトロいんだ?もう少し手際よく回せって!」
「だって、こうやって腕を伸ばしたら着物が~」

「だってとか無し!もう1回初めからだ。帛紗捌きも途中間違えただろ?」
「うそっ、バレてた?」

「俺を誰だと思ってんだ?」
「・・・・・・申し訳ありません(ただのエロ門のくせにっ!)」


申し訳ないと言う顔じゃなくて悔しそうな顔・・・しかも自分の失敗を悔やんでるんじゃなくて、俺に見付かったことが悔しくて口を尖らせていた。
それが可愛くて・・・とは思うが稽古は稽古。「モタモタすんなっ!」って言うと、ブツブツ言いながら初めからやり直していた。


でも進歩がねぇ訳じゃない。
初めの頃に比べたら、所々ミスはするけど美しい所作をするようになった。
口調だけ厳しくは言うけど、褒めてやりたい部分も多い・・・すぐ調子に乗るから言わないだけだ。

あともう少し・・・もう少しだけ茶を美味く点てられるようになったらな・・・と、目の前にいるつくしに見惚れていた。


「おっ!ヤバっ、溢した・・・」
「・・・・・・(この野郎・・・💢人の気も知らねぇで!)初めからやり直し!」

「またぁ?!」
「またとは何だ!午後にも仕事があるんだ、今日はここまでマスターしろ!」

「ふにゃぁ~~」
「・・・巫山戯てんのか?」


そんな猫みたいな声で啼かれたら押し倒したくなるだろうがっ!!
それじゃなくてもこいつの項を見ただけでギンギンになってんのにっ・・・・・・くそっ!




**************************




総二郎が本腰入れてお茶の稽古をしてくれるのは嬉しかったけど、なかなか上達しない自分が情けなかった。
それに加えて華道に書道、着付けにマナー・・・講師が総二郎なら厳しくても少しぐらいは言い返せる。でも、それが志乃さんになると途端に空気が張り詰めて私の身体は余計ガチガチになった。

少しでも間違うと容赦なく「それでも総二郎様のお相手候補ですか!」と怒鳴られて撃沈・・・。


今日は男性用の着物についてのお勉強・・・これも家元の着物は家元夫人が選ぶからセンスと知識が必要って事で、今から鍛えるんだと(志乃さんが)張り切ってた。

「宜しいですか?お茶席の着物は男性の場合、第一礼装は紋付きの着物、袴は「仙台平」の縦柄です。
そしてこの羽織に似た”十徳(じっとく)”という広袖の着物ですけど、これは家元や宗匠など茶人だけのもので、一般の方はその流派の家元の許可なしには着用できないとされております」

「はぁ、十徳ですね?では総二郎・・・さんもこれで?」

「そうです。現在宗家では家元と総二郎様だけで、孝三郎様にも許可は出ておりません」

「成る程・・・」

「ただし、京都にはこれをお召しになる許可をいただいてる間島様がおいでですけどね」


間島・・・何処かで聞いた事があると思ったら、随分前に来た人達だって思い出した。
西村さんも堤さんも「気を付けなさい」と言った人達・・・確か宗家を京都に戻したいって考えてるとか何とか・・・でも、私にはさっぱりな内容で、あの時も聞き流していた。

あれからも関わりないし、東京に来たって話も聞かないし。
だからすっかりその名前を忘れていた。


「間島様も家元と並ぶお立場なんですか?」

「いえ、そんな事はありません。西門家とご縁はある家ですけど、あくまでも支部の方なのですから。でも先代がお許しになったので、今でもお茶会に十徳を着て行かれるそうですわ。少し勘違いをされているのでしょうけど、向こうの権力者ですからイチイチ忠告しないだけでしょう。
それについては所謂”常識”というものですからねぇ・・・そこが判っておいでではないのでしょうね」

「・・・難しいのですね」

「そうですわ。ですからお勉強することは多いのですよ!はい、次です!」

「はいっ!」


その後も志乃さんのお話は続いて、「袷 」は10月から5月に着る裏地の付いた着物、「単衣 」は6月と9月に着る裏地のない1枚仕立てのもの、「絽」「紗」「麻 」は7月と8月で透ける生地で仕立てられてて裏地もなし。
それぞれの季節に帯も買えるのだと言って見せられたけど、どれも全部同じに見えてこんがらがった。

これを全部覚えて総二郎の着物を私が選ぶ?
いや、彼なら私が選んだものを全部取っ替えそうだと、頭を掻きながら思った・・・。



次に聞いたのは「夜咄の茶事」について。

夜咄(よばなし)の茶事は炉の季節、冬至に近い頃から立春までの間の夕暮れ時から行われる茶事のことらしい。
午後5時から案内して、露地では灯篭や露地行灯に火を灯し、客は手燭で足元を照らしながら腰掛に進み、迎付の亭主と正客は手燭の交換・・・もう少しで「この寒いのに?!」と言いそうになったのがバレたのか、志乃さんにジロッと睨まれた。

「茶室でも短檠や座敷行灯が使われ、点前や拝見のときは手燭を使うのです。
初めの挨拶を済ませたら寒さをしのぐための前茶を点て、拝見の所望はせず、正客以外は一椀で二人が頂き早く済ませるようにします。それを”おもあい”と呼ぶのです」

「・・・・・・はぁ」

「その後、初炭、懐石、中立の後は濃茶、続き薄茶の順に進められ、もともと茶花も不要とされましたが利休が白い花を生けるようになってからはそうすることもあります。掛け物は字の大きなもの、花ではなく払子や如意などを掛けることもあります。
夜咄は茶事のうちでも最も難しいものとされておりますから、『茶の湯は夜咄にてあがり申す』と言われております」

「・・・そのお話って怪談・・・ですか?」

「・・・・・・夜に行うだけで怪談などいたしませんっ!!」





仕事が終わって彼の部屋に戻り、今日の話をしたら大笑いしてた。


「極普通に道具の話とか掛け物話とかするんだけど、手短にしないと帰りが遅くなるだろ?だから流れは簡略してるけどやる事はいつもより多くて面倒臭いんだ。
それに雰囲気を作り出すのが難しい・・・俺みたいな若造にはまだまだ出来ねぇけどな」

「だってぇ!夜咄って言うんだもん、みんなで薄暗い中で怪談するのかと思うじゃない?帰り道が怖いよ~!」

「それについては言い伝えがあるぞ?香合は瀬戸の狸、炭道具の羽根は梟、待合の掛物は猿が提灯持って出かける図の大津絵。大津絵には魔除けの意味があるんだ。夜咄茶事の帰りに、狸に化かされないようにって意味で夜行性の梟と見送りの猿が現れるってな」

「へぇ~、って言うか、夜にしなきゃいいのに」

「それが季節の風情だっつーの!」


そんなもの?って思うのはやっぱり私が未熟で、この世界を知らないから・・・でも、総二郎は「少しずつでいいから覚えていけ」って笑ってた。
でも着物については「確かになぁ~」だって!


「男の人の着物ってみんな色が似てるんだもの、どれがいいのかさっぱりだわ」
「ははっ!そうだろうな。お袋も初めのうちは悩んでたらしいぞ?でもそのうち親父の方がお袋の好みに合わせていったみたいだから喧嘩にはなってねぇと思うけど」

「総二郎は自分で選んだ方がいいんじゃない?好みじゃないものって着ないでしょ?」
「まぁな。俺達の場合はつくしが俺に染まっていくから大丈夫だろ。そのうち判ってくるって」

「・・・そうかなぁ・・・自信ないなぁ」
「まだ俺に染まりきってねぇからだろ?んじゃ、染めてやろうか?」

「へっ?あっ、そう言う意味じゃないっ!」
「もう遅い。スイッチ入った」


この日の夜も何度意識を飛ばしたことか・・・お稽古もだけど、彼との時間も命懸けだ・・・。






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夜咄の茶事、お道具の紹介~★

これが「払子」。この画像は既に床の間に掛けてあるヤツです。
元々はインドで「虫を殺さず、追い払うために使用していた道具」でしたが、後には「煩悩や穢れを払うための道具」「修行者を導くための道具」として扱われたりするようになったそうです。
yjimagehooo.jpg

こちらが「如意」。
如意の言葉の意味は思いのままという意味で、転じて僧が読経や説法の際などに手に持つ道具を指すそうです。
yjimageEH9U4DFP.jpg

こちらが「手燭」。
yjimage1T2KVEPD.jpg

こちらが「短檠」。実際の夜咄の茶事の光景です。
yjimageN9KSZSR0.jpg
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2019/12/12 (Thu) 18:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!確かに手燭を持ったまま転けそう💦
で、大事な廊下に傷付けて志乃さんに叱られそう💦

私、実は夜咄の茶事って、本当に何かのお話を聞く会だと思ってたんですよ(笑)
だから茶道する人は色んな話を思えるんだろうなぁって思ってました。

でも沢山茶道の本を買ってるのに何処にもそんなことが書かれてなくて、勿論ネットでも書かれてなくて・・・
実は普通のお茶会を夜にするのだと知りました(笑)

本当に電気、使わないそうですよ?ちょっと不気味ですよね~。


いつの日か、つくしちゃんが夜咄の茶事の亭主になった時には妖怪百物語とか話しそう(笑)
オカルト平気な私は聞いてみたいです♡

2019/12/13 (Fri) 01:21 | EDIT | REPLY |   

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