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plumeria

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その日は会社から帰るなり、仁美にスマホを見せながら大きな声を出してしまった。


「仁美!総二郎のところ、産まれたってさ。ほら、その時の画像・・・総二郎が文字無しでこんなのばっかり送って来てさ」
「そうなの?まぁ、お目出度いわね。早速お祝いを贈らなきゃ。どっちなの?」

「女の子だって。それで1度帰国しないか?司や類も帰って来るらしいから光留を会わせたいしな」
「判りました。すぐに支度するわ」


今までなら誰かに会うことを躊躇っていた仁美だけど、最近はこっちでも友達が出来て外出することも多かったから返事は明るかった。

クローゼットの奥からスーツケースを引っ張り出し、次には同じ場所から俺達の着替えを持って来て詰め始めた。光留が生まれてからは初めての帰国・・・荷物には何処か賑やかさがあった。
小さな服やタオル、そこまで必要か?ってぐらいの小物が並べられて、心なしか仁美が嬉しそうに見えた、。


「・・・・・・くすっ」
「え?なぁに、あきらさん」

「いや、母親だなって思ってさ」
「・・・いやぁね!母親ですもの、間違ってないわ。ね~、光留」
「あ~あ~・・・んまっ!」

「うふふ、このお気に入りのタオル、これも持って行こうね~」
「あ~だぁ~!」

「あぁっ!ダメよ、光留ったら・・・あきらさん、光留をお願い!」
「ははっ、ママの支度の邪魔してんのか?・・・おいで、光留」


せっかく詰めたものをぐしゃぐしゃにしてそこから出しても、俺達にはそれが愛おしくて堪らなかった。
遊びたがる光留を俺が抱っこして、笑いながら詰め直す仁美を見る・・・その笑顔を見る度に勇気を出して良かったと思えた。


そうして2日後、俺達は日本に帰国した。



**



美作邸では光留の帰国を待っていた両親と妹達が大騒ぎだった。
我先にと光留を奪い合うもんだから抱っこしては泣かれ、最終的には俺が怒って仁美の腕の中で眠る、そんな1日目だった。
ここに居る間の世話係をしてくれることになった小夜も、見違えるほど日焼けした仁美と俺そっくりの光留を目を潤ませて見ていた。


「遅くなりましたけどおめでとうございます、奥様。本当に可愛らしい赤ちゃんですねぇ!」

「うふふ、あきらさんに似てるでしょう?大きくなったら心配だわ」
「・・・どう言う意味だよ」

「あはは!あきら様みたいになったら困りますよ?毎日何処かにラブレターが・・・あっ!失礼しました、昔の事ですから!」

「へぇ、そうだったの?想像は出来るけど」
「確かにモテたけど、だからって総二郎じゃあるまいし手当たり次第とかしてないって!」

「うわっ!西門様ってそうなんですか?!」

「でも、紫音はそんな事しないから大丈夫よ」
「確かに・・・顔は総二郎に似てるけど性格は全然違うもんな!逆に花音が心配だけど・・・」

「・・・やっぱり今でもご両親みたい。紫音様も花音様も羨ましいなぁ~!」


我が子、光留とは違う意味で大事な双子・・・「もうすぐ会えるのね」と仁美も待ち遠しそうだった。


数年前は双子が遊んだ庭で、今度は光留が日向ぼっこをして仁美が子守唄を歌った。
目を覚ましたら抱きかかえて花壇や温室を回り、花を触らせながら話し掛けている・・・それをお袋と並んでリビングの窓から眺めていた。
「夢のようね・・・」、そう言ったお袋は潤んだ目を指で拭った。


「あきら君・・・もう無理しなくていいんじゃないの?日本に居て欲しいわ」
「いや、光留に弟妹をっていう気持ちは変わらないからもう1度チャレンジはするよ。でも、もし2回チャレンジしてダメだったら帰って来る。光留が高校生ぐらいまでは日本で暮らして欲しいと思ってるからさ」

「そう・・・また向こうに帰っちゃうの、淋しいなぁ・・・」
「また来ればいいだろ?もっと賑やかになるかもしれないから待っててくれよ」

「・・・そうね。仁美さんも変わったしね」


仁美とお袋の関係もまた新しいものになる。

これからは本当の親子みたいに喧嘩も出来るようになるかもしれない。
そしてその後はきっと大笑いしながらティータイムが始まる・・・そんな光景を想い描いた。





牧野が退院する日になった。
光留を連れて西門邸を訪れたら、出迎えてくれたのはすっかりこの家の子になった双子・・・俺達を見るなり両手を広げて走り寄ってくるのはあの頃と何も変わっていなかった。


「あっ!あきらパパだぁ!」
「ひとみママ、赤ちゃん抱っこしてる!見せて、見せてぇ~!」

「紫音、花音!挨拶が先だろ?」
「くすっ、あきらさん、ここは西門邸よ?あなたが言わなくてもいいじゃない」

「「おかえりなさ~い!あきらパパ、ひとみママ!」」

「・・・ただいま。なんか変だな」
「・・・ホントね!」

「いいからいいから!お部屋、こっちだよ!」
「はいって、はいって!」


今までならそれも淋しかったかもしれないけど今は光留がいる・・・だから西門に馴染んでる双子を見て、素直に喜ぶ事が出来た。仁美も同じだったのか、双子を見て嬉しそうに微笑んだ。
そして案内された部屋に入ると、腕の中で眠ってる光留を見せていた。


「うわぁ・・・あきらパパそっくり!」
「ホント!小さいあきらパパだ・・・かわいいねぇ、ひとみママ、うれしい?」

「えぇ?うふふ、勿論嬉しいわ。でもあなた達に会えたのも嬉しい・・・大きくなったのね。どう?頑張ってる?」

「うん!しおんはね、幼稚舎でモテてるよ?」
「あら、そうなの?紫音は優しいものね~」

「かのんはいっつも先生に怒られてるよ?昨日もね・・・」
「あっ!それは話しちゃだめ!お花引っこ抜いたの、かのんじゃないんだってば!」

「ぷっ、花音、自分でバラしてるじゃないか」
「花音ったら相変わらずねぇ?怪我はしちゃダメよ?こちらのお爺ちゃま達が心配するわ」


懐かしい顔が揃って、そこに光留がいる。
まだ総二郎達が帰ってなかったこの時、数年前の家族のような時間を過ごした。

その後に総二郎達が戻って来て、あいつの腕の中には小さな天使が眠っていた。
今度はちゃんとその瞬間を味わえたから凄く満足そうに、昔は鋭かった目を細めて生まれたての絢音を見ていた。類は花音に纏わり付かれ、司はどうしていいか判らず子供相手に怖い顔して座ってる。
そして紫音にまで説教されて「あきらの育て方が悪い!」、と俺が怒鳴られた・・・。

暫くしたら子供達の声が消えた。
あれ?って思ったら、光留と絢音を挟んで紫音と花音もそこで寝ていた。


「くすっ、興奮しちゃったのね。美作さん達にも会えたから」
「ほんとだ。静かでいいな」

「こうしてみると光留って髪が茶色・・・薄いのかな」
「類、0歳児はこんなもんだ」

「お前に似たらヤバくねぇか?幸い紫音は総二郎に似てねぇけどよ」
「どう言う意味だ?司・・・」
「なんでそこで紫音を出すんだよ!」

「あら、私はあきらさんみたいな優しい子になってくれたら嬉しいわ」
「道明寺に似なかったらいいわよ」

「・・・何だと?」
「ぷっ!司、牧野には敵わないね」


久しぶりに幼馴染み達と笑って、総二郎の穏やかな顔を見て、牧野の幸せそうな顔を見て安心した。
もう美作にいた頃と表情が違う双子にもホッとした。

確実に時間が過ぎていき、それぞれが自分の居場所を見つけた・・・そんな気がした。



**



その後、10日ほど日本で過ごした後、再びアメリカに戻り俺達は第二子の代理母出産に向けて動き始めた。

今度の代理母はアレンと言う名の女性だった。
サラの時と同様、明るくて元気のいい女性で、面接の時にも穏やかに会話することが出来たから彼女に依頼し、前回と同じように出産までは会わずに過ごすことにした。

途中経過はエージェントが教えてくれるが、今回の第一回目は上手く着床しなかった。次も同じ結果ならアレンにも負担を掛けるから中止しようと話していた時に、妊娠の報告を聞き胸を撫で下ろした。


「・・・良かった・・・光留に弟妹が出来るのね」
「あぁ、順調にいけばね。また見守っていくしかないけど」

「そうね。でも・・・来年の今頃は抱っこしてる気がするわ」
「ははっ!だといいな。俺も仕事、頑張らなきゃなぁ~!」

「私は体力付けなきゃ!もう歳とっちゃったから双子の時のようにはいかないわ」
「でも光留が手伝ってくれるんじゃないか?」

「ふふふ、そうね。楽しみだわ」


夏の夜・・・ロスの海を眺めながらテラスで仁美とグラスを傾けた。
振り向いたらスヤスヤ寝てる光留。その寝顔を2人で眺め、そこに新しい家族の姿を夢見ていた。




そして訪れた次の年、俺達のところに来た天使は女の子だった。

考えていた名前は朱里(あかり)・・・温かく落ち着いた女性であって欲しい。将来は家族が安心して暮らせる場所そのものになって欲しいと「里」の字を付けた。


「初めまして、朱里。俺がパパだぞ?宜しくな」



また1つ、俺の宝物が増えた日・・・紫音たちの誕生から8年が過ぎた春だった。





fin。





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紫音のお話はリアル多忙につき公開未定です。
書き次第アップしますが、来年になる可能性も💦

どうぞ宜しくお願いします♡
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