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車を引き返したけど幾つかある山道はどれも狭くて判りにくい。
適当に入っても迷ったらアウト、そんな深い森だったから慎重に様子を窺っていた。

その時にある道を見つけ、そこの入り口で車を停めた。

何が気になったか・・・その砂利道には車の通った跡があるような気がした。
草が生えてるところと薙ぎ倒されているところがあるような、でも本当にここがその入り口か?と悩むほど上の方には木の枝が覆っている。

それでも凄く気になる・・・この勘を信じてみるか?と思った時・・・


『・・・・・・だいじょ・・・・・・そこ・・・よ』


「誰だ?!」

『・・・・・・・・・ってきて・・・・・はやく・・・・・・て』


人の声?それとも何かの音がそう聞こえたのか・・・?でも確かに大丈夫、早く、と聞こえた。
それはあまりにも小さくてか弱くて全部は聞き取れなかったけど、この道の奥から聞こえたような気がする・・・だから意を決してその細い道に入った。


砂利道だからガタガタと五月蠅いし、身体が思ったよりも揺れる。
でも、入り口から少し入ると山道は急に広くなった。木々が鬱陶しいのは変わらないけど、その道幅が広がっただけで随分と見通せる。

そして数分後、思わずブレーキを踏んだ。


俺の進む道の先に大きな屋敷の屋根が見えた。
それは3階建てぐらいで普通の家の数倍はある洋館・・・周囲は森で覆われ、ここから見る限り他に家はない。

もしかしたら車で近づくのは危険なのか・・・そう思って車を停めた場所でエンジンを切り、静かにドアを開け外に出た。

洋館はまだ相当先にある。
そこに少しずつ近づいて行くと、こんな森の中の屋敷なのに門番が立っているのが見えた。


それを見て確信した。ここに柊祐が居て、つくしを匿っている。
そうじゃないと門番がいる訳がない。あいつは誰かが不法侵入するのを防ぐために立ってるんじゃなくて、誰も逃げないように内部を監視してるんだ。

その証拠に門番は屋敷の方を向いて立っていた。
屋敷をぐるっと取り巻くフェンスの外には意識を向けていない・・・そう感じるという事は、彼もまた柊祐に操られているんだろう。


それを見てから1度車まで戻り、そこで電話を掛けられるかを調べた。

微弱だけど電波が立ってる。柊祐が自分のネット環境を保つためにアンテナを立ててるのかもしれない・・・それだけはラッキーだった。
だからここで計画通り父さんに電話を掛けた。



『・・・どうした?類』
「仕事中にごめん。実は大至急来て欲しい場所があるんだけど」

『来て欲しい場所?お前が居るのはマンションだろう?』
「いや、つくしを救うために新潟に来てる。場所は阿賀町の津川なんだけど」

『なんだと?!そんな所に・・・お前、自分の立場がわかってないのか?とにかく早く戻れ!!』

「つくしを助けたら戻る。でもその前に父さんに来てもらって説明してもらいたいんだ。有栖川祐子さん・・・その息子がつくしを攫ってるんだから」


『・・・・・・有栖川・・・祐子?どうして・・・その名前を・・・』


それまで怒鳴っていた父さんの声が「有栖川祐子」の名前で変わった。
動揺してるのか次の言葉が出ない。それも無理ないか・・・と、ここの地図をメッセージで送り、ヘリを使って大至急来るように頼んだ。


『そこまでして急げだと?馬鹿を言うな!そんな女性は知らん・・・!いいから1度戻って来い、話はそれからだ!』

「戻らない。俺達の事故もつくしを隠したのも、アメリカのシェールガス開発事業の妨害もそいつの仕業だ。この前の俺のスキャンダルもそう・・・これは彼が花沢家に対して恨みを持ってるから、そう思ってる。
そして真実を知るには父さんの証言が必要なんだ。だからどうしても来てくれないと困る・・・俺の子供の命が掛かってるから」

『何だって・・・子供?!』

「あぁ、母さんに話してもいいし、それは父さんの判断に任せる。じゃ、待ってるから」
『待て!類、その人は・・・』


電波が弱くなったのか、電話は丁度そこで切断された。

余計な時間を使いたくなかったし、伝えたいことは伝えた。
きっと父さんはここに来るだろう・・・そのぐらい「有栖川祐子」の名前は効果的だった。でも大至急手配して東京からヘリを飛ばし、真っ直ぐここに来たとしても3時間ぐらいは掛かる。
その間、ジッと待ってることは出来ない。

父さんが来た時にはつくしを取り戻し、柊祐を取り押さえてないと・・・そう思って再び車を降りて屋敷に向かった。





*********************




「・・・・・・・・・・・・」
「鈴花、お茶にしようか?・・・鈴花?」

「・・・ううん、要らない」


どうしたんだろう・・・お腹が少し痛い。
まだ産まれるのは先なのに、どうしてこんなに痛いのかしら・・・。
それなのに今日は凄く赤ちゃんが静かだ。今まであれだけ動いていたのに何かあったのかしら。

お腹の中で苦しがってる?
赤ちゃんでも具合って悪くなるの?私のなにかが悪くて調子を狂わせたの?
いつもなら蹴ってくれるお腹の横の方を触ってみても何も感じない・・・だから凄く不安だった。


不安なのはこれだけ?ううん・・・そうじゃない。
何かが・・・誰かが私を呼んでいて、それが凄く悲しそうで胸が痛くなる。2日前からそれを感じて凄く切なくなる・・・。


要らないと言ったのに柊祐が入れてくれたお茶、それを飲もうとしてカップを持った瞬間だった。


『・・・・・・来たよ・・・・・・来た・・・』


「えっ?!何が?」

「どうした?」
「え?あぁ・・・ごめん、何でもない」


またあの声だ・・・来たって何が?何が来たの?
窓の外・・・そこが凄く気になる。


そこに大事な何かが・・・何かが・・・


ガタンと椅子から立ち上がり、急いで窓まで行ってみた。
でも何も見えない・・・いつもと変わらない森が目の前に広がっているだけで何も・・・誰も居ない。
それなのにどうしてこんなに胸がざわめくの?どうしてドキドキしてるの?

カーテンを握り締めて自分の胸に手を当てた。どうしても鎮まらない心臓がバクバク音を立ててる。
その理由が知りたくて、窓に手を掛けて開けようとしたら、後ろから柊祐の手が伸びてきて私の手を押さえ込んだ!


「な、なに?どうしたの、柊祐・・・痛いわ」

「・・・鈴花が俺を怒らせるような真似をするからだよ。大人しく言う事を聞いていればいいのに」

「え?どう言う意味?言う事聞いてるじゃない・・・どうしてそんなに怖い顔するの?」

「・・・・・・君は鈴花だ。それ以外の何者でもないのに戻ろうとするからさ。それも全部その子のせいだよね?」

「・・・この子のせいって?この子はあなたの子供よ?そんな言い方しないで!」

「でも、その子は拒否してるみたいだ。そもそも予定外だったんだ・・・子供なんて」


今まで見た事もない柊祐の顔・・・鋭く光る目が怖くて私は手が震えた。
私の手を持つ柊祐の手の力、それが強すぎて痛い・・・でも、緩めてもくれない。

どうしたの?
どうして怒るの?私が何をしたの?


その時、鈴の音が鳴った。


チリン・・・チリンチリン・・・・・・チリン・・・
     ・・・チリン・・・チリン・・・



「さぁ、鈴花・・・これから言う事をよくお聞き。君が今からしなくちゃいけない事を言うからね」
「・・・柊祐?な、なに?」

「いいから黙ってお聞き。間違えちゃいけないよ?これは命令だ、鈴花」


・・・チリン・・・チリンチリン・・・・・・チリン・・・チリン・・・・・・
     ・・・チリン・・・チリン・・・・・・チリン・・・



『・・・聞いちゃ・・・・・・メ!・・・・・・ダメ!』



「今から君はね・・・」


柊祐の瞳が私を呑み込む。
柊祐の声が私の脳を支配する・・・・・・その後、目の前が真っ暗になった。





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Comments 4

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2019/12/10 (Tue) 08:03 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/10 (Tue) 08:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!スーパーベビーでございますね(笑)
実際に起きたらマジ怖い現象ですが、流石妄想の世界・・・何でもあり!でございます♡

でもちょっと雲行きが怪しい感じ・・・。
柊祐、最後の手に出たようで。


私もドキドキなラスト前(笑)💦
困ったなぁ~!!

2019/12/10 (Tue) 21:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

はい!崖の上に全員集合状態ですっ!
誰が誰を・・・ってのは怖いので置いといて。

そうなんですよね・・・とうとう思い通りにいかない柊祐の暴走が始まりました。
サスペンス劇場の残り10分まで来ましたね!

明るいエンディングが流れればいいんだけど(笑)

2019/12/10 (Tue) 21:07 | EDIT | REPLY |   

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