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荒れた庭の真ん中・・・玄関へと続いている通路を進んでいた。
少し遠くに見えていた屋敷もだんだん近づいてきて、その重厚なドアの模様すら見える程になると重苦しい空気が伝わってくるようだった。

その時静かにドアが開き、出てきたのはいつも柊祐をガードしていた男・・・美作の監視カメラに映っていた男が今日も俺の前に立ちはだかった。


「勝手に入って来られては困ります。覚悟が出来ての事ですか?花沢様」
「そっくりそのまま返すよ。勝手に妻を連れて行かれては困る。そっちこそ覚悟が出来てるなら掛かって来れば?」

「そうですか・・・仕方ありませんね・・・っ!」


その言葉が終わらないうちに男が俺に向かって拳を振り上げ突進して来た!
俺は事故の時に左腕を骨折してるからまだ充分に闘えない・・・だから絶対に捕まえられる訳にはいかなかった。

俺よりも体格が上で訓練も受けているような男だ、捕まえられたら振り解けない。
だから神経を研ぎ澄ませて向かって来る男の動きを見ていた。そしてその拳が振り下ろされた瞬間、目の前を掠めるぐらいで躱して俺も男の脇腹に右腕で殴りかかった!

手応えはあったのにそこまでのダメージは与えられなかったのか、少し蹌踉めいただけで男はすぐに体勢を元に戻した。


正攻法じゃ無理か・・・と、思ったけど何の小道具も持ってはいない。
でもこいつも素手で構えるだけで拳銃やナイフの類いは出してこなかったから、完全な力勝負で俺には分が悪い。

何度も打ってくるのを躱しては隙を見て拳を当てるけど、鍛えられた身体には然程効かないようだ。真面に喰らわせることが出来たのは初めの一発だけで、息すら上がってはいない。


でも、こいつの動きはまるで機械のようだった。
ターゲットは俺だと認識はしているけど、俺の動きを予測して攻撃してくるわけじゃない・・・そんな気がした。シュミレーション通りに対象物に拳を振り下ろすだけで、その繰り出し方もさっきからワンパターンだ。

それなら・・・と、すぐ側にある枯れかけた雑草だらけの花壇の中に逃げるように入った。
そこは通路よりも当然土が軟らかくて、枯れているとは言え足元に障害物が多いし、置き石や柵もある・・・それなのに男は自分の足元を見ずに俺に向かってさっきと同じ速さで突進して来た!

声すら出さずに表情も変えずに、ただ操られたように拳を高く振り上げる男・・・そいつが目の前に来た時に花壇の土に足を取られ、絡まった草に躓き体勢を崩した!


「悪い!あんたもここで眠っときな!」

蹌踉けた男の左側、耳の下辺りを目掛けて足を振り上げ、蹴り落とした!

「ぐわぁぁっ・・・!!」

それは鈍い音を立て、同時に男は低い呻き声を出しながらその場に倒れた。慌てて近づいたけど「ううっ・・・」と声を出しながら立ち上がろうとしてる。
その状態の男に「ごめん!」と呟いて、首の後ろをもう1度肘打ちした。

勿論力の加減はしている。
でも今度は完全にダウン・・・意識を失った男に「後であんたも助けるから」と声を掛けて玄関に向かった。



男が出てきた正面玄関、そこの前に立って呼吸を整えた。


この中につくしが居る。
その側には柊祐がいる筈だ。


この2人がどう出てくるか・・・それを予測することなんて出来ずにドアを押し開けた。


薄暗くて何の音もしない。
自分の心臓の音が反響するんじゃないかと思うほど高鳴ってるのに、屋敷の中はその真逆・・・シーンとして凄く冷たい空気が流れていた。

生活感がない・・・それが第一印象だった。


正面には誰が画いたものなのか知らないけど静物画があり、調度品はかなり古い物ばかり。ここだけ時代が違うんじゃないかと思うほどレトロな内装だ。
装飾も派手な階段の手摺りも一昔前を想像させる・・・こんなところにつくしを閉じ込めていたのだろうか。


その時、コツンと物音が聞こえた。

ハッと顔を上げると、2階の吹き抜けに人影があった。
その服装からして女性だと判ったけど、上半身が陰になってて見えない・・・でも、俺にはすぐに判った。


「・・・つくし・・・」


そう呼ぶと薄暗かった場所から”つくし”が顔を出した。
以前と同じで無表情・・・その唇は俺の名前を呼んではくれなかったけど、前見た時より随分と腹が大きくなっている・・・この状況でもそれは嬉しかった。

”つくし”が立っている場所のすぐ下まで行って、そこから見上げると彼女はジッと俺の顔を見ていた。
何も言わず、ただ黙って見下ろしていた。


「迎えに来たんだ。帰ろう?つくし」
「・・・・・・・・・」

「そこに行くよ?あんたは動かずに待ってな」
「・・・・・・・・・」


今は「成瀬鈴花」だろうから返事をしないのは判っていたけど、構わずに階段を上がって行った。何処から柊祐が出てくるかは判らない・・・だから“つくし”の動き以外にも神経を研ぎ澄ませてゆっくりとそこを目指した。
でも、俺が上がりはじめると”つくし”はクルリと向きを変えてすぐ横の階段を上がって行った。


「待って、つくし!」

そう言っても待ってくれるはずもなく、小さな足音が上へと向かう。
俺も足を速めると、”つくし”の姿はもう上の階に消えていた。2階の踊り場で周囲を確認したけど柊祐は現れない・・・だから俺も3階に向かった。

本当に人の気配がしない・・・それに古い屋敷にしては広すぎるほどだから余計に彼女の足音が響いた。


3階に行くと何処からか冷たい風が吹いてきた。
それは踊り場から右手の方、風の吹く方に顔を向けると、奥の部屋のドアが少しだけ開いている。

自然とそっちに足が向き、開いたままのドアを片手で押して中に入った。


その部屋はガランとした部屋・・・あるのは古びたソファーだけで、それ以外の家具も机もベッドもないだだっ広い部屋だ。
奥にはバルコニーがあり、”つくし”は俺の方に身体を向けてそこに立っていた。あの日から1度も切ってないのか長く伸びた黒髪をサラリと靡かせて、着ているマタニティードレスが翻った。


「つくし、身体が冷えるよ。こっちに戻っておいで」

「・・・私は成瀬鈴花です。つくし・・・じゃありません」

「それはゆっくり話そう。どうやって元に戻してあげられるかは判らないけど、あんたはきっと俺を思い出すよ。それには自信があるんだ」

「私は何処にも行きません。ここに・・・ここで柊祐と暮らします」

「ここはあんたの家じゃないよ。あんたの家は東京にあって、あれからずっと帰りを待ってるんだよ?そこに戻ろう、つくし」

「私の家は・・・ここです。私は成瀬鈴花です」


”つくし”の目は俺を通り越して何処か違うところを見ている。
口から出るのは”つくし”の言葉じゃなくて、あいつによって喋らされているだけ・・・それが哀れで胸が痛んだ。

早く抱き締めてやりたくて彼女の立っている場所に行こうとしたら、”つくし”がその身をバルコニーの手摺りに近づけたから驚いて足を止めた!


まさか・・・これも柊祐の仕組んだ事なのか?
俺が近づくと次に”つくし”がとる行動って・・・・・・



「よくここが判ったね・・・花沢類君」


その声で振り向いたら、俺の後ろに柊祐が立っていた。





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Comments 6

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2019/12/12 (Thu) 00:20 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/12 (Thu) 06:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

お名前のない読者様、コメントありがとうございます。

ははは💦申し訳ないっ!こういう事だったんです。
卑怯ですが・・・ここはもう類君に任せておきましょうか(笑)

実は書いてる本人が1番こんがらがってるので、おかしいぞ?って思ったら教えて下さい(笑)←超無責任💦


確かにこれから総まとめ・・・ヤバいです💦

2019/12/12 (Thu) 16:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

感動の再会!のはずがとんでもない展開でございますね💦
ははは、お許しください!

きっと何とかなるっ!
ならなかったらプルが読者さんに襲撃されるっ!

・・・・・・類君、私をお助けください(笑)


えーと、そうですねぇ・・・オカルトだとそうなりますよね。
で、生まれた瞬間喋るんですよ。おでこに「鈴の痣」とかあってね(笑)

「・・・パパ、頑張ったじゃん」

ひえ~~~~~っ!怖い~~~っ💦

2019/12/12 (Thu) 16:09 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/12 (Thu) 18:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

いえいえ、教えてくださってありがとうございました。
でもちょっと気が付いてました(笑)ははは!

2019/12/13 (Fri) 01:15 | EDIT | REPLY |   

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