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plumeria

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「よくここが判ったね・・・花沢類君」
「・・・・・・あんたが教えてくれたんだけどね」

「俺が?どういう事だ?」


”つくし”を目の端で確認しながら柊祐に身体を向けてそう言った。
彼はその意味が判らなかったから一瞬眉を歪めたけど、すぐに冷静を装って、その動揺を隠したように見えた。


”つくし”の動きに変化はない。
柊祐が来たからと言って彼のところに行こうともせず、手摺りに片手を伸ばしたままバルコニーに立っていた。でも無意識なのか空いた手は大事そうに子供を守ってる・・・それが救いだった。
子供のために無茶はしない、そう信じることにして、顔を柊祐に向けた。


「随分と色々してくれたみたいだね。三条まで使ってくるとは思わなかった」
「・・・何の事かな」

「俺がここに来たんだから総て見破られたとは思わないの?有栖川柊祐・・・君は成瀬柊祐じゃない」
「・・・・・・・・・へぇ、俺の正体に辿り着いたんだ?流石だね」

「俺1人の力じゃないけどね」
「・・・やはり君の周りの人間は厄介だったって事か」

「まぁね。たった1人で他人を操ることしか出来ないあんたとは違うんだよ」
「・・・・・・・・・何だと?!」


初めて感情的になった柊祐を見てゾッとした。
その目が異様に光り、回りの空気でさえ変わったような・・・これが催眠暗示を掛けられる人間の、ある種超人的な技能を有する人間のオーラだろうか、と背中に汗が滲んだ。

足が金縛りにあったかのように動かない・・・意識は奪われてないけど、身が竦んで身体の自由が効かなかった。
ゴクリと喉が鳴り、固く握った拳の中で爪が食い込んだ。


いや・・・俺はここで負ける訳にはいかない。
”つくし”を連れて東京に戻り、失った数ヶ月を取り戻すんだ・・・彼女を守るのは俺しかいないんだから!


「俺がどうして花沢を・・・お前を憎んでるのかも判ったのか?」
「いや、総てが判った訳じゃない。逆にあんたも知らない事実ってのがあるんじゃないの?」

「はっ、何を今更。俺は総てを知ってるよ・・・お前のせいで母さんは仕事を失い、命まで落としたんだ。そしてこの俺も何も手に入れることが出来なかった。自分の居場所も戸籍も、父親と言う名前の人間も学校も・・・何もかもだ!」

「だからってつくしを?それが俺には判らない。俺を憎むのにどうしてつくしを利用した?!」
「・・・それはもういいだろう。どうせ知ったところで後戻りは出来ない。仲良く親子3人でこの世から消えるんだから」


親子3人でこの世から?
振り向いたら”つくし”は無表情のままで、この話を聞いているのかどうかも判らない。
さっきと変わらないポーズと虚ろな目のまま、部屋の中の俺達を見ていた。

何をする気だ?
この状態の”つくし”に何かを命令するのか?



「鈴花、彼が君と一緒にいたいらしいよ」
「・・・・・・・・・嫌です。私は成瀬の人間です」


俺を挟んで2人の会話が始まった。
でもそれはどう考えても”つくし”の言葉じゃない・・・柊祐の質問に、教えられた「答え」を出していることは明白だった。


「でも連れて行くってさ。どうする?お腹の子供を彼が育ててくれるらしいけど」
「・・・・・・お断りします。この子は成瀬の子です」

「どうしてもって言うんだ。俺も君を離したくないけどね・・・じゃあ鈴花はどうしたい?」
「・・・私はこれまでと同じようにここで柊祐と一緒に暮らしたい・・・何処にも行きません」

「残念だけど無理みたい。鈴花、ごめんね?」
「・・・・・・・・・嫌・・・です」


”つくし”の台詞は凄く悲しいものなのに、感情が無いからなにも感じない。
まるで小さな子供のお遊戯会のように、誰に向かって言ってるのかさえ判らない。だからその台詞が俺を拒絶するものだったとしても怒りなんて湧かなかった。

それよりも”つくし”が誘導されてそこから身を投げ出さないかと、そればかりが気になって彼女の手の動きを見ていた。


「嫌ならどうするんだっけ?鈴花・・・君はこの後どうする?」
「・・・・・・・・・・・・」

「柊祐、つくしになにをさせる気?」

「さぁ・・・鈴花に聞いてみたら?俺はここから動かないから」


腕組みをして薄く笑みを浮かべ、柊祐はこの部屋の入り口横の壁に縋った。
それを見て俺は今まで固まっていた足をバルコニーに向け、”つくし”のところに行こうとした。

その時・・・!


「来ないで!!」

「・・・つくし?」


俺が近づくと片手だけで持っていた手摺りを両手で持った。
身体を外側に向け、顔だけは俺に向けて恐ろしい目で睨みつけられた。
まさか”つくし”にそんな目で見られるとは・・・それが凄く悲しかったけど、それよりも早く元に戻してやる方が先だ。

あの卒業アルバムの中で見た淋しそうな顔はさせたくない・・・これからは弾けるような笑顔のあんたにしてやりたい。だからここで足を止める訳にはいかない。
そして・・・絶対に助ける自信があった。

だからゆっくりと・・・1歩ずつ”つくし”に近づいて行った。


「来ないで・・・それ以上来ないで!来たらここから飛び降りるわ」
「そんな事出来ないだろ?あんた、お腹に子供がいるんでしょ?」

「この子は私の子よ・・・私がどうしようが勝手だわ」
「そんな訳無い。そしてあんたもそんな事は思っていない。大丈夫、判ってるから」

「嫌だ、来ないで・・・!」
「つくし、あんたは俺を忘れたりしないよ」

「・・・・・・・・・・・・」
「もし忘れたのなら思い出させてあげる・・・だから戻っておいで」


「・・・・・・・・・・・・戻る?」
「ん、俺のところに戻っておいで?」



『・・・・・・・・・やっと会えた・・・・・・助け・・・・・・マを助けて・・・』



その小さな声は俺にも、そして”つくし”にも聞こえたようだった。
2人同時に風が吹く方を見上げ、2人同時に「誰?」と呟いた。

それで確信した・・・その声は俺達の天使からのメッセージだと。


「つくし、聞こえたんだろ?俺にも聞こえたよ」
「・・・・・・・・・・・・」

「うん、優しい子だね・・・ママを心配してるんだよ」
「・・・・・・・・・・・・あ・・・」

「そこに行く。だから動かないで」
「・・・・・・・・・・・・・・・」


”つくし”の手の力が緩んだ。
それまで俺を睨んでいた目から鋭さが消え、怯えたような表情に変わった。

柊祐が催眠暗示を解かなくても、“つくし”自らが戻って来ようとしてる・・・そう思った。


俺だけの力じゃ出来なかったかもしれないけど、天使が”つくし”の中で必死に彼女の魂を守ってるんだ。
それも限界に来てるのかもしれない・・・「そこまでさせてごめんな」、と俺の前を通り過ぎる風に向かって呟いた。


『・・・・・・だいじょ・・・・・・ぶ・・・ありがと・・・・・・パパ、ありが・・・・・・う・・・』


「ん、大丈夫・・・後は俺に任せて少しおやすみ」


『・・・・・・うん・・・・・・ん・・・おやすみ・・・』


優しい風がその声と同時に止まった。



「鈴花、約束が違うようだけど?」

今度は柊祐の声が背中から突き刺さるように聞こえてきた。





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Comments 4

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2019/12/13 (Fri) 06:46 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/13 (Fri) 12:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

柊祐も初めてのケースでイラついておりますね。
ヤバい事が・・・起きたらどーしましょ💦

って、類君が居るんだから大丈夫♡
書きたかったシーンだけど、あまりにもややこしくて私へのダメージが大きいです・・・(笑)

2019/12/13 (Fri) 23:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あれ?!そんなにですか?(笑)

いやいやいや・・・いくら私でもそんな酷い結末にはしないですよ~♡

オカルトではなく、ミステリーと言って下さってありがとうございます♡
うふふ、類君がきっと最後は笑顔で天使ちゃんとご対面ですよ~♡


えっ?勿論現実世界で、ですよ?(笑)

怖いわ~💦

2019/12/13 (Fri) 23:36 | EDIT | REPLY |   

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