雨の降る日はそばにいて (46)

あきらは信じられないといった顔でただ驚いていた。

「でも、怪我をしたのは綾乃の責任だろう?なんで謹慎処分になる必要がある?総二郎が刺したわけじゃないだろう!
それならいっそ茶室の話をすればいいじゃないか!」

「止められなかったのは事実だからな。家元達も綾乃のしたことだとわかってんだ・・・謹慎処分って言っても
西門の外部には寺での修行になってる・・・期間はわかんないけど、ここで茶を点てるのはかなり先かもな・・・」

納得出来ないあきらは俺よりも悔しそうな顔をした。

「お前一人が処分を受ければ済むことなのか?・・・俺が証言してやるから・・・」

「いいんだって!・・・俺がもっと早くに綾乃を遠ざければ良かったんだ。学生の時からわかっていたから・・・
それに綾乃が最後に俺にしようとしたことが家元達にわかれば、本当に綾乃は西門から追放される。
甘いかもしれないがそこまでは望んでない。俺は牧野とここで生きていけたらそれでいいと思ってるからな・・・」


あきらはもう何も言わなかった。
しばらく2人とも何も言わずに時間が過ぎた・・・もうすぐ日が落ちるぐらい長い時間が経っていた。

「あきら、牧野と話しがしたいんだ。これを牧野にも説明したい。聞いた上で俺の所に戻れないというなら
直接牧野の口から聞きたい・・・そう、伝えてくれないか?」


「いつから長野だ?」

「明後日からだ。明日・・・連れてきてくれないか?もう、時間がないんだ」


あきらは牧野に伝えると言って帰って行った。
あきらの所に牧野がいる・・・いる場所がわかっただけでも少しは安心したけど空しかった。

あいつの車が走っていく音だけが聞こえた。あの車はそのまま牧野の所に行くんだ。
そう思うと親友に対してでも異常なほど嫉妬をしてしまう自分がいる。


「牧野・・・あの家で交わした約束・・・覚えているよな。だから海ばっかり見てんだろ?」

どこにあるかわからないあきらの別荘で今日も牧野は海を見ているんだろうか。
俺のせいで泣かせたんなら、俺の腕で抱き締めてやりたかった。


******

<sideあきら>

別荘に戻ったら、やっぱり牧野は同じ部屋の同じ場所で外を見ていた。
俺が帰っても何を話すわけでもなく、ただジッと座ったまま動かなかった。この状態はもう何日目だろう。


「牧野・・・少しいいか?」

そう声をかけると目だけを向けてきた。その表情からは悲しみ以外の何も伝わってこなかった。

「総二郎に会ったよ・・・今日、西門に呼ばれたんだ」

「西門さんに?」

久しぶりに聞いた牧野の口から出た言葉は西門という名前・・・総二郎のことにはやはり反応するんだな。
牧野は抱えていた膝を降ろしてソファーに座り直した。今度は正面から俺の方を見ている。

「総二郎から会いたいって連絡があったから、牧野には言わなかったけど会ってきたんだ。
あいつも牧野の事心配してたよ。会社にも電話入れたりして・・・随分探したらしいからここにいることは
教えておいたよ。・・・まぁ、安心はしただろうけど、他の心配も始まったみたいだけどな・・・」

「そう・・・なの?もう、私のことなんて心配しなくてもいいのに・・・関係ないんだから・・・」

「そんな心にもない事言うんじゃない。本当にそうならそんなには落ち込まないだろう?
一度ちゃんと会って話しをしてこないか?西門まで連れて行ってやるから。まだ・・・会う自信ないか?」


口ではそう言うけど内心は迎えに来て欲しいと思ってるんだろう。
俺にはわからないけど、ずっと海を見ているのは何か意味があるんじゃないのか?

それでも牧野は自分の気持ちに素直にはなれないようだった。
口から出る言葉は気持ちとは裏腹に冷たくて悲しいものばかり・・・。

「会ってもどうしようもないの・・・辛くなるだけだから会いたくない」

「牧野・・・総二郎からはっきりと事情を聞いたわけじゃないだろう?俺から聞いても意味はないかもしれない。
2人で話し合った方がいい。そうしたら牧野が抱えている疑問も少しは解決できるから・・・」

その先を言おうとしたらいきなり牧野が立ち上がった!両方の手を握りしめて・・・足先も震えている。

「どうして?!美作さんまで私を苦しめたいの?これ以上はもう沢山よ!道明寺の時だってそうだったじゃない!
結局、何があっても・・・本人の気持ちがどうだって、あなた達の家は私なんかを受け入れる気なんてないのよ!
あの時よりも辛い思いなんてしたくない・・・もういいから、放っておいてよ!」

突然出た何年も前に別れたはずの司の名前に驚いた・・・!
あの時のことはずっと牧野の中で引っ掛かっていたのか?だから余計に西門を恐れたってことか。
道明寺の時よりも恐怖を感じたのなら・・・それだけ総二郎を愛してる・・・そういうことか?


「牧野、俺たちの家がすべてそういう訳じゃないよ。道明寺は大きすぎて、西門には歴史がありすぎた。
それだけだよ。司は真剣だったが勝てなかった・・・総二郎は、今まだ戦っているんじゃないかと思う」

「戦ってる・・・?誰と、何を?」

「総二郎だって自分の家と戦ってるんだよ。前にも話しただろう?西門の家のややこしさってのを・・・。
誰かが支えてやらないとあいつも戦えない。それが今は牧野だからな・・・1人だとさすがの総二郎も
あの家では生きていけないかもな。・・・自分には力がないとか思うなよ?あんな男を本気にさせたんだから・・・」

取り敢えずもう一度牧野を座らせて、いつものように暖かい飲みものを入れた。
牧野の手にホットココアを持たせると、深くため息をついたけど一口だけ飲んでいた。


「ごめんなさい・・・美作さん。大きな声出して・・・。でももう少しだけ時間が欲しいの」

「牧野の希望をきいてやりたいけどそうもいかないんだ。・・・総二郎の方に時間がない」

「どういう事?時間がないって・・・」

「総二郎に西門から謹慎処分が出されたんだ。もうすぐ総二郎は東京を離れる・・・しばらく会えなくなるんだ。
だから牧野に明日、西門へ来て欲しい・・・総二郎からの伝言なんだ」

最後の言葉に牧野の表情が変わった。


「謹慎処分・・・ってどうしてなの?どこに行くの?いつまで・・・」

そう言いながら大粒の涙を流している。


俺はすぐに抱き締めたくなるのを必死に堪えた。
俺じゃあお前の笑顔を取り戻すことは出来ないもんな・・・
いい兄貴に戻ることしか出来ないんなら妹のためにその背中を押すしかないだろう?


「俺にも言われたことだけどな・・・牧野が見たものがすべてじゃないって事だよ。ひとつ言えることは
総二郎は牧野を裏切った訳じゃない。俺に言わせたら、総二郎も牧野も被害者だ。
俺からも頼むよ・・・総二郎を助けてやってくれないか。牧野にしか出来ないんだから・・・」


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2 Comments

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2017/06/09 (Fri) 12:51 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは✨

あきらくん、いつもこんな感じですよね、私が書くと。
う~ん。やっぱりあきつく始める⁉

いや、無理ですわ!自信ない。
今日の司くんぐらい自信ないですわ。

故事ことわざでもひどい仕打ちしたしなぁ。
いつか、書けたらいいんだけど。

星の砂の総二郎がこの話だとあきらかも?
ラストまであきらくん、頑張ってくれます。
それも可哀想?

まぁ、こっちもラスト近いし‼しばらくは暗い話からにげたいぞ?と、思っております。

もう少しだけおつきあいくださいね!

2017/06/09 (Fri) 16:13 | EDIT | REPLY |   

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