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<sideあきら>

総二郎の謹慎処分を聞いた牧野は動揺したのか持っていたココアを床に落とした。
びっくりして汚した床を見ているけど脚が震えているのか動くことが出来なかった・・・。

「大丈夫か?火傷・・・しなかった?」
「あっ・・・ごめんなさい、私・・・うっかりして・・・」

動こうとする牧野を手で制して、俺がタオルで床を拭いた。それを涙を拭うことなく見ていた。


「総二郎は長野の寺に行くそうだ。西門の縁の寺だってさ。だから、今は西門を出られないんだ。
会うための時間は俺が家元に頼み込んでやる。会ってこないか?この間の本当の理由も・・・
総二郎に確認したいことも全部聞いてきたら、牧野も前に進めると思うから」

「美作さんは見たものすべてが真実とは限らないって言ったけど・・・実際に見たものは事実じゃないの?
私にはあの時の光景が忘れられないのよ・・・これが嘘だったって言われてもあの時に西門さんの手が
彼女を包んだのは確かだもの・・・美作さんの言うとおり、私とのことは気まぐれだったのかもしれない・・・
それでも、確かめないといけないの?」


総二郎の手が綾乃を包んだ・・・?牧野のこの一言に少し驚いた。
つまり、牧野は綾乃が裸で総二郎といたことでも、総二郎と関係を持ったという言葉でもなく・・・
直接見てしまった、総二郎の手が綾乃に触れた・・・そんな事でここまでショックを受けたのか?

幼いと思っていたのに・・・やっぱり女だな。
多分自分でも気がついていないんだろう・・・それが独占欲だって・・・。
自分以外の女に触れたってだけで・・・それってジェラシー以外の何でもないのに。

もちろんそれ以外にもあれだけの嫌がらせを受ければ、牧野のこの反応は無理もないけどな。


「牧野は確かめるべきだと思う。俺も昨日は同じように総二郎を拒否したけど、今日会って話しが出来て良かったと
思ってるよ。事実を知らないまま友人を失うところだったから」


「美作さんは・・・全部聞いたの?それで・・・何かが変わったの?」

「聞いたよ・・・今までのことを全部、総二郎と確かめてきた。俺も牧野に謝らないといけないこともあるってわかった。
でも、そのためには牧野もすべて知らないといけないだろ?」


牧野はもう一度立ち上がるとゆっくりと窓の前に行って、また暗い海を見ていた。
そして俺に背中を向けたまま答えを出した。


「わかったよ。・・・美作さんの言うとおりにする。明日、会ってくるよ」

「そうか・・・牧野も辛いだろうけど、総二郎も今は西門で孤立してるから話し合うことでお互いに支え合って
欲しいって思ってるよ。それでも・・・」

それでもダメだと思ったら俺の所に帰ってくればいい・・・・そう言いたかったけど言葉を飲み込んだ。
言いかけた俺の言葉を牧野がたずねることもなく、俺の方を見るわけでもなかった。


「明日は・・・晴れるのかな。それとも雨だっけ・・・なんとなく雨の匂いがするから降るのかもしれないね」

小さな声で・・・まるで独り言のように明日の天気を気にしている。


「今日はもう早く休めよ?いつまでも外ばっかり見てたら今度は本当に襲うぞ?」
「そんな事言って・・・美作さんはそんな人じゃないよ」


いつでも兄貴なんてやめてもいいけど、20年以上続けた友情も捨てることは出来ない。
つくづく損な役回りだと・・・ここまで来たら苦笑いするしかなかった。


*******


次の日に西門に頼み込んで総二郎との面会時間を作ってもらった。
車で向かう途中も牧野は今までになく緊張しているようだった。助手席で身を固くして座っているのがわかる。
膝の上に置かれた手を何度も握り返して落ち着かない。


西門の重厚な門が見えたら、一気に表情が張り詰めた。
すぐ近くにある来客用の駐車場に止めて、助手席のドアを開けたけど牧野は降りる気配がなかった。


「美作さん・・・ここから入るのは嫌なんだけど。・・・違う入り口あるよね?」

正面から入りたがらない牧野を無理矢理引っ張って門前まで来た。

「裏口から入るのは簡単だよ。でも、それは自分の価値を落としてるって事だ。今回ここに来たのも別に疚しい
用件じゃないんだ。自分が悪くないと思えば堂々と正面から入れ!」


門をくぐったら正面玄関で総二郎に会いに来たことを告げた。
家元からも聞いていただろうから、対応に出た使用人は慌てる素振りも見せずに俺たちを通してくれた。

牧野の背中を押して屋敷内に入り、少しは慣れただろうその廊下を俺に引っ張られながら歩く。
なかなか前に進まない牧野に手こずりながら、何とか総二郎の部屋の前まで来た。


そこまで来たら牧野は一気にその顔を曇らせて足が止まった。
おそらくあの日を思い出したんだろう・・・。

「心配はいらない。この中にいるのは総二郎だけだ。綾乃はもうこの家には居ないから・・・」

「え?・・・何で、そんな事知ってるの?」

「昨日も言っただろう?牧野よりも先に俺は総二郎と話してるんだ。あの日のことも聞いてるよ。
今度は牧野が真実を聞いてこい。俺は外で待ってるから・・・」

そう言って俺がドアをノックした。ゆっくりとドアが開くと総二郎の声が聞こえた。


「牧野・・・!」


その少し嬉しそうな声だけ聞いて俺はその中に入るのをやめた。
総二郎の声を聞いた牧野は引き寄せられるように部屋に入っていく。
その寸前まで牧野の背中を支えていた俺の手は、あっさりとそこに取り残された。


俺たちが昨日確かめ合った真実を・・・あの日ここで起きた悲劇を聞いた牧野はどう思うんだろう。
素直に総二郎の気持ちを喜ぶだろうか。それとも、やはり自分を追い詰めるだろうか。


俺はどちらを望んでいるんだろう。
そんな事を考えながら、ゆっくりと総二郎の部屋から遠ざかった。

ame17.jpg
毎度じれったくてごめんなさいね
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Comments 4

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2017/06/11 (Sun) 02:00 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花さま~!おはようございます!

わかるわ~!!
そうなんですよね。好きなんですよ、私も。
でもね、LOVEじゃなくて究極のLIKEなの。私には・・・
あきつく、いけるんじゃない?って言われるけど
よしっ!って思ったら・・・・・ってなるの。

この話もね、まだあきらが頑張るんです!

最近ね、この話のあきらがいいって言われ
類の「星の砂」の総二郎がいいって言われるんです。

私は誰の話を書いてるんだろう・・・って思う。

あきつく、花様が書いたら私も頑張る!(何で?)
いつか呪いを解きましょうね!

2017/06/11 (Sun) 07:36 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/11 (Sun) 18:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

随分とお疲れのご様子・・・なのに読んで下さいましたのね?
ありがとうございます!

ものスッゴく嬉しいですよ!あきらもなかなか良いでしょう?
萌えて下さいませ!笑える~!

花さまと私はあきらをいいように使うので呪われ仲間なんです!

個性があるなら嬉しいですね!
では、これからも脇役に磨きをかけていきましょうか!
でも・・・坊ちゃんを書けないので3人のローテーション?
あ!今でもそうですねっ!

いつも楽しいコメントありがとうございます!本当に嬉しいです!

2017/06/11 (Sun) 20:54 | EDIT | REPLY |   

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