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plumeria

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秘書控え室で今日のスケジュール表と睨めっこ・・・その1番上にある名前をジッと見ていたら、堤さんから声を掛けられた。

「どうしたんです?そんなに怖い顔して見るような書類じゃないでしょう?」
「えっ?あぁ・・・えぇ、ただのスケジュールなんですけど・・・」

「判らないものがありましたか?」
「・・・今日の10時から成宮雪乃さんのお稽古なんです。この前お見えになった時、怒ってたから・・・本当に来るのかなって思って」


総二郎が変更があるなら私に、って言ってたけど連絡は無かった。
確かに気紛れなお嬢さんだから何回か連絡もせずにサボったことはあるけど、だからって私にはその理由も言って来ないし、代わりのお稽古日の確認もしない。
総二郎にも個別にはメッセージも電話もないって言ってた・・・だから来なくても不思議じゃないけど、来たら来たで私がお出迎えだから憂鬱だった。


あの話、私は聞いてないことになってるけど、本当は盗み聞きしてる・・・私と総二郎の事はバレてるってのは知ってる。
だから余計に酷い事を言われるんだろうと覚悟はしてるんだけど。

今度はなんて言われるのか、その返事はどうしたらいいのか全然判らない。正式な婚約者じゃないから堂々とし過ぎるのもヤバいだろうし、恋人が秘書っていうのもおかしいような・・・。
時計を見たらもうすぐ10時・・・はぁ、と溜息をついたら、使用人さんが「成宮様がお見えです」と伝えてくれた。


「うそっ!来たんだ!」
「稽古日ですから当然でしょう。早くお出迎えしたらどうですか?」

「は、はいっ!行ってきます!」
「走ってはいけませんよ」

「・・・っと!気を付けます・・・」


お見えになりました、って言われてもそれは車が着いたことを意味するから、本人はまだ玄関には来ていないはず。だから廊下を早足で歩きながら「落ち着け」と、自分に言い聞かせていた。

玄関についたらやっぱりまだ入って来ていなかったから正座して待つこと1分・・・人影が見えたら、雪乃さんが姿を現した。


「いらっしゃいませ、成宮様」
「おはようございます。少し遅くなりました、申し訳ございません」

「・・・・・・は?」
「道が混んでおりましたの。急いで行かねば総二郎様をお待たせしますわね」

「・・・・・・・・・あっ、はい!ご案内します!」
「宜しくね、牧野さん」

「・・・・・・・・・・・・」


な、なに?なんでこんなに大人しいの?それにどうして私に笑顔向けるの?!
気持ち悪いんだけどっ?!

私の1.5m後ろを上品に、少しだけ伏せ目がちに歩く雪乃さん・・・こんな姿を初めて見るから逆に背中がゾクゾクした。時々振り返っても目が合えばニコッと笑う・・・凄く綺麗なんだけど、その笑顔が本物かどうか全然判んない。
引き攣りながら笑顔を返し、正面を向いたら眉が歪むのは私の方で、雪乃さんの口からは「もう少しで椿も見頃ですわねぇ・・・」なんて聞こえてくる。


なんで急に変わっちゃったの?!
この前、総二郎に「どういうつもり?」って迫ってたじゃないの!


漸く辿り着いた総二郎の茶室・・・「成宮様がお見えです」と言えば、隣の部屋から総二郎が出てきた。
・・・あれ?部屋間違えた?

「うふふ、牧野さんったらそそっかしいのね。もう宜しくてよ。ありがとう」
「・・・・・・いえ!し、仕事ですから!ごめんなさい、間違えてしまって!」

「アホか!」って総二郎の小さな声が聞こえたけど、雪乃さんはそのまま微笑んで隣の部屋に入って行った。


・・・・・・・・・やだ、何が起きたの?!




*************************




「・・・・・・遅い!」

雪乃の稽古の時間になってもつくしが案内してこないから、茶室で胡座かいて頬杖までついていた。
少し前に冷たく追い返したから拗ねて来ないのか・・・それならそれでもいいけど、と目の前の空席を睨んでた。

そうしたら隣の空き部屋に向かって「成宮様がお見えです」の声が聞こえガクッ!と崩れた!


馬鹿野郎っ!
お前がミスってどうする!

その声に驚いて、普段なら廊下に出たりしないのに慌てて飛び出したら牧野がキョトンとこっちを見ていた。


「うふふ、牧野さんったらそそっかしいのね。もう宜しくてよ。ありがとう」
「・・・・・・いえ!し、仕事ですから!ごめんなさい、間違えてしまって!」

「アホか!そこは茶室じゃねぇだろうが!」
「・・・・・・申し訳ありません。つい・・・」

「いいから午後の講話の着物、用意しといてくれ」
「はい、判りました」


雪乃が先に部屋に入ったのを確認してからつくしに近づき、耳元で「盗み聞きするなよ?ただの稽古だから」、そう言うと真っ赤になって走って逃げやがった。
くくっ、そんなに走ると転けるぞ?って思った瞬間、遠くですげぇ物音と「牧野さん!」と言う志乃さんの声が聞こえた・・・。


「申し訳ありませんでしたね。あなたの言う通りそそっかしいものですから」
「ほほ、大丈夫ですわ。私も遅れましたもの。申し訳ございません、総二郎様」

「・・・・・・え?」
「あら、如何されました?お稽古、始めて下さいませ」

「あぁ、そうでしたね。それではいつものように帛紗捌きから・・・」
「はい。宜しくお願い致します」


なんだ?この態度は・・・。
いつもならミスったつくしの攻撃から始まり、どうでもいい世間話か聞きたくもない自慢話が続き、無駄な色気を振りまいて稽古なんて終わりの方でチョロッとなのに。

どうして今日は真面目に帛紗捌きしてるんだ?
しかも俺の顔すら見ないとは・・・?


「総二郎様、続けて宜しくて?」
「・・・・・・・・・」

「あの、恥ずかしいですわ・・・そんなに見詰められると・・・」
「・・・はっ!あぁ、申し訳ない。あまりに綺麗な帛紗捌きだったので」

「ありがとうございます。お師匠様の教えがお上手だからですわ」
「・・・・・・・・・・・・」


いや、帛紗捌くところなんて見てなかったけど。
気持ちわるっ・・・!!なんだ、この態度!


この日、雪乃は最後までド真剣に稽古をして、帰る時にも美しい所作で挨拶をして出ていった。
それには俺も唖然・・・雪乃を部屋まで迎えに来て玄関に連れて行くつくしも首を傾げていた。

数分後、雪乃を見送ったつくしが再びドスドスと走って来て「気持ち悪~い!」のひと言。


「総二郎、あれなぁに?どうしちゃったの?!」
「さぁ?何だろうな・・・稽古中もひと言も雑談にならなかったから時間が経たなくて困ったぐらいだ」

「この前はあんなに怒ってたのに?変なもの食べたのかなっ?!」
「お前じゃねぇんだから食い物で態度は変わらねぇだろ。でも気になるな・・・何か企んでるのかな」

「企むって何を?」
「ん~、判んねぇ。でも、あいつは世間知らずのお嬢様だ。1人で悪巧みしたって高が知れてる。それにこんな判りにくい事じゃなくて直球でお前に攻撃するはずだ」

「・・・言ってる事が怖いんだけど」
「真面目に茶に向き合うなんて気持ちもねぇと思うしな・・・」


成宮家が宗家に縁談話を正式に持ち込んだ訳でも無かったし、何の約束もしてないんだから責められる筋合いもない。
でも雪乃の変化は何故かすげぇ不安だった。






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