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大声で俺の名前を叫んで倒れたつくし・・・数ヶ月ぶりにこの腕に抱く彼女の重みは以前とは全然違っていた。

でもそれが凄く嬉しい。
意識は飛んでるけどちゃんと脈打つ胸・・・それを感じたら抱きかかえてバルコニーから部屋の中に入った。
そして唯一この部屋にあったソファーにつくしを寝かせて、自分が着ていたコートを掛けてやった。


可哀想に・・・涙が頬を濡らしてる。
こんなになっても片手はちゃんと子供を守るかのようにそこにあって、俺はその手に自分の手を重ねた。

俺に話し掛けていた天使も眠ってしまったようだ。
今は何も聞こえなかった。



「そんな馬鹿な!絶対に目覚めない筈だったのに・・・『あの音』を聞かずに目覚めただと?」


背中側から聞こえた柊祐の絞り出すような声・・・それを聞いて立ち上がり、彼の方に向き直った。

こいつは素手で闘うような男じゃないとは初めから思っていた。そこまで鍛えてはいない体つきは見ただけで判る・・・そして俺に拳を向けても敵わないという事も察している。

だからと言って「武器」を持っていないとは思えない・・・俺はつくしを庇うようにして立った。


「それ、ミニッツリピーターのこと?」

「・・・・・・どうして知っている?鈴花・・・つくしだって知らないはずだ!」
「三条の前で無意識に鳴らしただろ?彼女がそれを覚えていたからさ」

「・・・・・・あの女、それの存在を知ってたのか」
「女は詳しくないと思った?それ・・・彼女を甘くみたって事だよ。
それに何故ここが判ったのかって言ったよね?美作のシステムも甘くみてるからだ。絶対に見付からないような場所を選んで部下に投函させたつもりだろうけど、たった1日であの男の行動は暴かれて、Nシステムで追い掛けてこの町に辿り着いたんだ」

「・・・・・・あんな辺鄙な道を選んだのに・・・か」
「残念だったね」


「・・・・・・いや、そうでもないさ」


柊祐がズボンの後ろに手を回したと同時に握られた小型拳銃、思った通りそいつの銃口が俺の顔面に向けられた!


少しも震えていない手はこいつの覚悟を感じさせる。
そして冷たく光る目は、やはり俺に対する憎しみで満ちていた。


「どっちが先がいい?自分か・・・つくしか」
「どっちもお断り。そんなもの、早く手放した方がいいと思うけど」

「はっ!強がるな・・・武道に長けていても銃弾には勝てない」
「そうかもしれないけどここでくたばる気はない。つくしにも絶対に触れさせない!」

「もう充分触れたけどね」
「・・・・・・それ以上言うな!それだけは許さない!」


視線を動かさずにこの部屋にあるものを確認・・・でも、身を隠す大きな家具は何ひとつ無い。しかもつくしは気を失ってるから動かせない。
それなら柊祐の気を逸らせる小さなもの・・・その時、俺の靴の先に何かが当たった。

柊祐の目は俺から離れないから妙な動きは出来ない。
仕方なく少し話をして、柊祐が油断するチャンスを待つ・・・それしか無いと思った。

でも口を開いたのは柊祐の方が早かった。


「さっき言ってたよな。俺が知らないこと・・・それは何だ?」
「それを話す前にどうしてつくしを利用した?あんたの母親が失脚した時に一緒に潰されたのがつくしの両親だったのは調べがついた。だからってつくしを使う理由は何だ?」

「・・・つくしは覚えていなかったみたいだけど俺達は子供の時に出会ってる。そしてつくしは言ったんだ。俺が困ってる時には私が助けてあげるってね・・・だから利用させてもらったのさ」

「子供の時?どうやって会ったんだ?」


「花沢のパーティーに徳永商事の部長代行で母さんが出席した事があってね・・・」

「まさか・・・つくしも来たあのパーティー?」


柊祐はその目も、その手の拳銃も動かさずに話し始めた。




********************


~side柊祐・回想~


『お母さん、ここで何するの?』
『・・・・・・えぇ、あのね・・・パーティーなんだけど、お母さん、こんな所苦手だから嫌だなって思って・・・』


初めて来た大きなホテルの中・・・綺麗な服を着た母さんと、俺まで買ったばかりのスーツを着せられて広い部屋の入り口で立ち竦んでいた。
そこまで来て中に入ろうとしない母さんは、キョロキョロと辺りを見回して落ち着きがなかった。子供ながらにそんな母さんが不思議で、嫌なら帰ればいいのにって思って手を握っていた。


暫くしたら誰かがマイクで挨拶を始め、母さんはその時だけ目に涙を浮かべて遠くを見ていた。それが誰なのか・・・声は聞こえるけど話してる内容は全然判らなかった。
背伸びして見るとその人の横には女の人がニコニコしてて、2人の間には俺より少しチビな子が嫌そうな顔をして立っていた。


何だ、あいつ・・・・・・あいつもここが嫌なら帰ればいいのに。

そのぐらいにしか思わなくて、母さんの手が緩んだ隙に俺はさっさと探検に出掛けた。


大人ってのはこんなギラギラした世界が好きなのか?
こんな料理は見た事ないけど美味そうじゃない・・・家の方がいいや。
すごい匂い・・・女ってのはこんなの付けるのか?母さんは何にもつけてないけど、俺はその方がいいな。

挨拶が終わってみんながワイワイ始めた頃、会場の中を彷徨いてはくだらない光景を眺めていた。
その時にぶつかったのは皿を持ってた女の子・・・しかも普通の服を着た、この会場には全然似合わない貧乏そうな子供だった。


『ご、ごめんね!余所見してた!』
『・・・別にいいけど。お前、ここに招待されて来た子?』

『しょうたい?判んないけどお父さんに連れて来られたの』
『父さん?』

その子が振り向いたところには、やっぱり普通のスーツを着た、如何にもこの子の父親らしい男が誰かにペコペコ頭を下げていた。
あぁ、確かに親子っぽい・・・そう思って目の前の子を見たら、もう皿の上のケーキを食ってた。


『行儀悪いな。そんなんだとまた人にぶつかって汚すぞ?』
『だって座るとこ、わかんないもん』

『確か廊下に椅子があった・・・そこに行けよ』
『じゃあ連れてって?』

『歩けるんだから1人で行けば?』
『大人が大っきくて見えないんだもん』

『・・・仕方ないな、こっち』
『ありがとう!』


変なヤツ・・・最初はそのぐらいにしか思わなかった。

絶対に場違いなのにそれすらも判って無い歳だから暢気だし、椅子に座らせたら足をブラブラさせながら食ってるし、こんな時に限って母さんは何処かに行ってるし。
はぁ、と溜息をついて俺も隣に座っていたら、この子が「食べる?」なんて自分の残りを俺に差し出したんだ。


『食べないよ!欲しかった訳じゃない!』
『そうなの?美味しいのに~。まだ食べてもいいのかな?』

『・・・・・・いいな、悩みが無さそうで』
『なやみ?困ってるの、あんた。はぁって言ってたし』

『・・・困ってることぐらい誰だってあるだろ。お前みたいな子供には無いだろうけど』
『あはは!よく言われる!つくしちゃんはいつでも楽しそうだねぇ~って』

『つくし?お前、つくしって言うの?』
『うん、牧野つくし!あのね、もしも困ってるなら私が助けてあげようか?いつも弟が困ってる時、私が助けるのよ』

『馬鹿言え!女に助けてもらうほど落ちぶれてないって』
『ふぅ~ん、そうなの?でもね、誰かが助けてくれるって思っとけば楽ちんだってお母さんがいつも言ってるから、私のことを覚えていてね!』

『・・・・・・は?』
『今日のお礼だよ。いつかあんたを助けてあげるね!』



この俺があんな子供に助けられる?
馬鹿馬鹿しい・・・だけど、その時初めて胸が熱くなった。

また会場内にヒョコヒョコ戻って行く後ろ姿を俺はずっと見ていた。
暫くしてその服がテラスに向かった時も、何故か後を追うようにして覗きに行った。
誰かもう1人居る・・・それが気になって近づいたら、その子の隣には俺に似た男の子が居た。あいつはさっき挨拶していた男の隣にいた子・・・だ。


『柊祐、帰りましょう。お母さん、やっぱりここには居辛いわ』
『うん、俺は別にいいけど・・・・・・ねぇ、あの子、知ってる子?』

『え?あぁ・・・・・・今日のパーティーの主催者・・・花沢物産の跡取り息子さんよ』
『そうなんだ。へぇ・・・俺、似てない?』

『そうね、似てて当たり前かもね・・・』
『・・・・・・え?』

『ううん、何でもないわ。じゃ、帰りましょう?家のご飯の方がいいでしょ?柊祐』



似てて当たり前・・・その意味は随分後になって知った。



花沢類・・・あいつは俺の弟だったんだ、と。





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Comments 4

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2019/12/15 (Sun) 09:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

ははは・・・今日は1日中ダウンしておりました。
それでも厚着が出来ない私・・・ヤバいですよね💦

ご心配いただきありがとうございます。


この先はかなり強引に進めて行きますので(笑)嘘でしょ~!!って叫ばないでくださいね?
現実的ではありません・・・書いてて恥ずかしいです(笑)

2019/12/15 (Sun) 22:49 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/15 (Sun) 23:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは(笑)


ふふふ・・・それはどうかな?
類パパに聞いてみよう~!!

2019/12/16 (Mon) 00:00 | EDIT | REPLY |   

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