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「あんたの父親は別の人間だ。あんたはずっと思い違いをしてたんだよ。いや、そう思わせるように言われたのなら、それは有栖川祐子の願望だったのかもしれない」
「そんな訳がない!俺はあの男の・・・花沢の・・・・・・母さんがあいつに・・・!」


絞り出すような声は途切れ途切れで文章にならない。
柊祐は母親が一途に想い続けた男に裏切られたと思っているから当然・・・別の男の子供だなんてこれっぽっちも思わなかったんだろう。

そのぐらい俺達は似てるから。
悲しいほどに似ている・・・並んで歩けば誰だって俺達は兄弟だと思われる筈だ。


進から聞くまでは俺だってそう思ったんだから。


「あんたの父親はイギリス人だそうだ。有栖川祐子が唯一相談していた女性から聞いた話だから本当だと思う。誰にも言わないでと言ってたらしいし、俺の父さんは子供が出来る事を恐れていたから、妊娠して悲劇が起きないように気を付けていたそうだ」

「子供が出来ないように・・・嘘だ!母さんはずっとあの男を・・・!」

「あぁ・・・恋していたのかもしれないね。それはもう判らないけど、あんたの母さんはあんたを産んでからは安全な暮らしを優先したんだと思う。それに父さんを騙してあんたが花沢の子供だと言っても鑑定すれば判るんだから」

「・・・・・・違う!お前の父親が母さんを捨てたんだ!」

「結果はそうかもしれない・・・無理矢理引き裂かれて海外に行き、帰国したら婚約者が用意されてたんだからね。その頃は逆らうって事が出来なかったのか、それとも気持ちが冷めていたのかは判らない。父さんももうすぐここに来るから直接確かめればいい」


見開いた目はそのまま床に向けられていた。
少しだけ開いてる唇が何か言いたそうにするけど、それは微かに震えるだけで何の言葉を発しなかった。

そのうちに聞こえた車の音・・・父さんがここまで来た事を知らせる音だった。


すぐにバタンとドアを閉めた音が聞こえた。でも話し声がする訳じゃないから1人で来たのかもしれない。
やがて階段を駆け上がる靴音が冷えきった屋敷の中に響いた。



「・・・類!ここにいるのか?類・・・何処だ?!」

その声と同時にドアが少し開き、ゆっくりと中を窺うように入って来た父さん・・・奥の壁際にしゃがんだ俺とその横のソファーに寝ているつくしを見て慌てたように足を踏み入れた。
でもすぐに自分の足元に踞る柊祐に気が付き、今度は驚いて飛び退いた。


「・・・・・・君は?!」

「彼が有栖川祐子さんの息子の柊祐だ。今は成瀬コーポレーション社長の息子、成瀬柊祐って名乗ってるけどね。会うのは初めて・・・だっけ?」


俺が柊祐の事を説明すると、もう1度柊祐の顔を凝視していた。

柊祐は顔も上げることなく強張った表情で床を見つめていた。動揺なんて見せたくもなかったんだろうけど、動かせる左手がグッと硬く握られたのを見逃さなかった。
そして下唇を噛み締め深くなる眉間の縦皺・・・どちらかと言うと優しい顔立ちの男なのに、その顔を歪め、全身で憎しみを表してるように感じた。


「君が・・・祐子の?」
「・・・そう・・・あんたのもう1人の息子だ」

「なに?!そんな馬鹿な・・・!」
「そう言う関係だっただろう?それは認めるよな!子供が出来てても不思議じゃないだろう!」

「た、確かにそうだったが、いや、子供が出来たなんて聞いてはいないし、それに・・・」
「話してないから生まれてないとは限らない・・・俺の歳は28歳だ、そのぐらい前に記憶があるんじゃないのか!」

「・・・・・・それは・・・」


完全に気迫では柊祐が勝っていたけど、それはこれまでの自分の思いを押し付けたいだけだ。
俺に否定された親子関係を父さんに認めさせたいだけ。それを科学の力で証明しようとすれば信じたくない結果になるというのに。

それに父さんは俺の手に握られた小型拳銃にも驚いていた。
後ろに寝ているつくしの体つきにも、そして変色した柊祐の右腕にも・・・この部屋で起きている全てをどう理解していいのか、父さんが1番混乱している。
その表情のままで蹌踉けながら俺の所に近づき、跪いてつくしの顔を覗き込んだ。


「つくしさんは生きてるんだな?」
「あぁ、気を失ってるけど大丈夫。それよりも早く病院に連れて行きたい。
その前に彼の思いを父さんは聞くべきだと思う。ここまで花沢を憎んだ理由・・・つくしも巻き込んで数年間、こいつは真実を知らずに生きてきたんだから」

「花沢を憎む理由?数年間って・・・何の話だ?!」


柊祐の復讐劇を数分間で話せる訳がない。
でも、掻い摘まんでこれまでの事を話し、つくしを利用して俺に攻撃を加えていたことを説明した。その発端が有栖川祐子の創り上げられた不正事件と、その結末・・・それを話したら再び驚いて柊祐に目を向けた。


「・・・あんたは自分の息子が可愛くて本気で調べようとしなかった。
ちゃんと調べてくれれば母さんの無実は証明されたかもしれないのに、事もあろうか真犯人に全権を任せてこいつの命を優先したんだ!あんた達は何も出来ないくせに病院から出ることもなく、その間に起きた事を精査することもなく・・・俺の母さんが犯罪者的に処分されたのに、あんたは名前すら確かめずに了承したんだ!」

「・・・それは違う・・・!」

「今頃否定しても遅いんだよ!こいつの病気のせいであんたは長いこと業務を放置したから忙しかったって言うんだろう!その不正事件で横領された金も所詮徳永商事の金だ・・・親会社は痛くも痒くもなかったし、そんな金額はあんたにとっちゃ微々たるもんだったんだろうけどな!
そのせいで会社をクビになってここに戻った母さんがどれだけ泣いたと思ってる?毎日毎日・・・毎日泣き暮らしたんだ!悔しいって言い続けて病気になって、最後には泣きながら死んでったんだ!
あんたが回復したこいつと一緒に浮かれて暮らしてた時、花沢を憎んで母さんはこの山奥で泣いてたんだ!」



「本当に?」

柊祐が叫んだ後に俺がそう言うと、柊祐の目が俺を睨んだ。
「どう言う意味だ」・・・小さく言葉を返すと、その瞳の奥が日差しを受けてギラリと光った。

もう1度進からのメッセージを読んで、1つ大きく息を吐いた。
・・・柊祐も父さんもこの事実を知ってるのだろうか。でも大野という女性が初めは教えなかったぐらいの内容だ・・・だから父さんは知らないんだと思った。
そして柊祐は子供の時に知ってしまった可能性がある。


柊祐の憎んでる相手は俺達だけじゃない。
本当に憎んでる人間が苦しみながら朽ちていくのを1番身近で見ていた・・・そして最後に告げるつもりだったんだろう・・・実は自分も花沢の人間だった、と。

それにつくしを利用したのはおそらく・・・・・・


「あんたの母さんが泣いていたのはそれが理由じゃないだろう。ここに戻りたくなかった理由は他にあるんじゃないの?」

「・・・・・・なに?」
「最終的には経済的理由から戻ったけど、それはあんたに寂しい想いをさせたくなかったからだ。いつも側にいてやりたいって気持ちから、過去の事を我慢してここに戻った・・・そういう事じゃないの?」

「・・・・・・・・・!」
「類、何の話だ?過去の事とは?」


その表情を見ても柊祐はやはり知ってる。それは確信出来たけど、父さんには何の事か判らなかった。
それも当然・・・好きになった相手にそんな事は言えない。有栖川祐子が全てを伝えたいと思っても、それだけは絶対に隠し通しただろう。

それを今から父さんに話すことをどうか許して欲しい・・・会った事もない有栖川祐子に許しを請い、進からの情報を言葉にした。


「有栖川祐子がこの屋敷から逃げたのは実の父、有栖川靖彦に関係を迫られるから・・・そうだよね」






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2019/12/18 (Wed) 06:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

コメントありがとうございます。

そうですね。これから柊祐の語りが入ってきます。
これまで知られなかったこと、勘違いしていたことなど色々です。

可哀想な柊祐ではあります。悪いヤツだけど。
多分、つくしちゃんが起きてたら渇入れられて一発殴られ、
でもその後には許すんだろうなぁ、って思うので(笑)寝てて良かったです。

熱も下がってのでそろそろ動こうかな?とは思いますが・・・仕事が溜まってしまった(笑)
悪循環ですよね💦

ご心配かけました💦

2019/12/18 (Wed) 10:12 | EDIT | REPLY |   

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