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京都行きの支度もあるのに気分は最悪・・・。
バイクの事件があってからは総二郎が私をお屋敷から出さないようにしたから、彼が仕事で出掛けても私は志乃さんとお稽古になった。
それはそれで助けるけど気が重い・・・全然お巫山戯がなくて超怖いんだもの!

少しでも順番や作法が間違ってると「違います!」って止められて初めからやり直し。その度に「総二郎様は何を教えているのでしょう!」って言うから、それを彼に告げ口されるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。


「宜しいですか?ここにお稽古に来られるお嬢様達は3歳ぐらいからこのような毎日をお過ごしなのです。
だから多少お年頃になって羽目を外されてもいざとなれば出来るのです。それに比べあなたは24歳まで極普通に暮らして来た方ですから難しく感じるのは当たり前。でも、逆に言えば何故しなくてはいけないのかを考えながらお稽古できると思うのですよ」

「・・・・・・はい」

「何も総二郎様並みにお点前が出来るようになれとは申しませんが、お側に居ても恥ずかしくない、誰からも非難されないような所作をしなくてはなりません。
西門家の玄関に花を生けるのにもセンスが必要ですよ?お客様がまず1番に目を向けるところです。お茶でもお花でもただ飲んでただ生けるのではなく、そこには自分自身が現れると思って下さい。宜しいですか?」

「・・・・・・はい」

「お稽古とは何年やったかではなく、どのように向き合い身に付けたかが重要です。ですから”一生稽古”と言われるのです」

「・・・・・・・・・」


・・・・・・ヤバい、足が痺れた。
返事も出来ずにド真剣な顔で頷くだけの私を、志乃さんは「真面目」に聞いてると思ってくれたらしい・・・。
お話が終わって、志乃さんが出ていく時には座礼で挨拶・・・障子が閉まった途端にその場に倒れた。




その日の午後のこと。
外には出ないから危ない目には遭わない・・・そう思っていたのにそうでもなかった。


「牧野さん、あなたに郵便が届いてますよ?」
「私に?」

「えぇ、 西門流気付、牧野様ってね。こんなの初めて届いたけど」
「ホントだ・・・何かしら?懸賞でも当たったっけ?」

「ははは!前向きだねぇ、牧野さんは」
「えへへ!」


西村さんからそんな事を言われたけど内心は不思議で仕方なかった。
ここでは確かに総二郎の秘書だけど、これまで何かを郵送でやり取りするようなことは1度も無かった。総てメールや電話で済むことで、書類なんかは私宛じゃなくて事務所宛だから西村さんが開封してたし。
それなのにわざわざ私の名前で来るなんて・・・って、差出人のない茶封筒を眺めながら秘書控え室に戻った。


「・・・・・・・・・」

「どうしました?」
「うわぁっ!!」

封筒と睨めっこしてたら急に真後ろから聞こえた堤さんの声!それに驚いて大声を出したら、堤さんがジロッと見下ろしながら「お静かに」と囁いた。


「ごめんなさい。ボーッとしていたものですから」
「普通に話して結構ですよ。それで、どうしたんですか?」

「あっ!こんなものが私宛に届いたんですけど、差出人がないので気になって」
「・・・郵便ですか?」

「はい、郵便です。何が入ってるんだろう・・・私に届くものなんて初めてだから・・・でも、開ければ判りますよね!」

そう言って指で封筒の上を千切ろうとしたら、堤さんに「待って!」と、止められた。
そして無言で封筒を取り上げられて、堤さんはペーパーナイフでその上部をシュッ!と・・・・・・

カチッ!


「今の音は何ですか?今、何か鳴りましたよね?」
「・・・・・・・・・」

「堤さん?」
「・・・・・・危なかったですね。これですよ」

「・・・えっ?!」


堤さんが慎重に取りだしたのは、まるで何処かで見たか聞いたかのような「カミソリの刃」・・・それが封筒の上の方に仕込んであったみたい。
それを指で摘まんで私の方に向けると、その刃が窓からの日差しでキラリと光ってゾクッとした。

もしも勢いよく開けていたら・・・指が切り落とされることはなくても大怪我をしたかも。
それを想像したらガクガク震えが来て、堤さんはすぐに西村さんと志乃さん、家元夫人を呼んだ。


「どういう事なの・・・?」

「家元夫人、これは警察に知らせた方がいいのでは?」
「そうですわ、いくら何でもこれは酷い!もう悪戯ではすみませんわ!」

「・・・・・・・・・」
「牧野さん、本当に心当たりは無いんですね?」


心当たりなんてある訳もなく、堤さんの言葉に首を縦に振るしかなかった。
もう声にもならない・・・確かに命まで落とすような出来事じゃないけど、これで4回目・・・。
誰が自分を狙ってるのかと考えても・・・・・・

総二郎が昔手を出した女しかいないじゃないのっ!!💢

とは言えずに、その場で小っちゃくなっていた。


「消印は東京駅の近くの郵便局ですね」
「中には何も入ってないの?」
「白紙が2枚入ってますわ。手紙に見せかける為じゃないんですか?」
「紙でも指紋は採取できますが、そのぐらいは犯人も考えているでしょう」

「何処にでもある封筒なの?」
「えぇ、特殊なものではありませんね。購入店は特定できないでしょう」
「紙だってコピー用紙ですね」
「牧野さんがペーパーナイフで開ける人で良かったわ!」

「それは私が開けました。牧野さんが素手で開けようとしたので」
「・・・・・(そこは強調するのね?)」


その時に遠くから聞こえて来た足音・・・それが近づいてきた時にドン!と凄い音も響いたから全員が吃驚してドアを見つめた。そうしたら腰を押さえた総二郎が真っ青な顔で飛び込んで来た!


「つくし!!大丈夫か!」
「総二郎~~~!」

「怪我してないか?!」
「そ、それは大丈夫だけど、総二郎の方が何処かで転けたんじゃ?」

「俺の事はいい!指、切ってねぇな?!」
「う、うん・・・!」


いや・・・その前に家元夫人とか堤さんがいる前で私を抱き締めるのはやめてくれるかな・・・。

とも言えずに、総二郎に抱きつかれたまま恥ずかし過ぎて顔が上げられなかった。




*************************




数ヶ月前にはこれが普通だった。

自分で運転して自分だけで仕事して・・・そんなの慣れていた筈なのに、今はぽっかり空いた助手席にすげぇ虚しさを感じる。


現場にいてもつい隣を見てしまう。
居たら居たで面倒ばっか起こすのに、それが面白くて仕事が楽しかったんだと今更ながらに思う。だからなのか無駄な時間も使わず仕事を終わらせ本邸に戻ってる最中にその連絡が入った。

今度はつくし宛に不審な郵便物が届き、中に刃物が仕込まれていたと。


急に上がるスピードと、それに同調して心臓がバクバク鳴り出してハンドルを握る手には汗を滲ませた。
そして裏口から入ってガレージにも停めず車を飛び出し、靴すら放り投げるように脱いで長い廊下を全速力!!

秘書控え室が見えてきたら曲がり角を曲がり損ねて派手に転けたが、それよりもつくしの無事を確かめたくて勢いよくドアを開けた!

「つくし!!大丈夫か!」
「総二郎~~~!」

泣きじゃくるつくしにオロオロしてるお袋と志乃さん。
困った顔の西村さんに同じく溜息をつく堤・・・その中でつくしを抱き締めてチラッと机の上のカミソリの刃を睨んだ。


「怪我してないか?!」
「そ、それは大丈夫だけど、総二郎の方が何処かで転けたんじゃ?」

「俺の事はいい!(実はすげぇ痛いけど)指、切ってねぇな?!」
「う、うん・・・!」

「はぁ~、良かった!お前の事だから何も考えずに破って開けると思った!」
「・・・・・・・・・(鋭いわね)」


その後警察にはお袋が連絡し、知り合いの刑事が捜査をする事にはなったが脅迫をされた訳じゃないし、怪我も未然に防いだから事件と言うよりは「悪質な悪戯」って話になった。
それでもうちの警護の人間も増やして、付近もパトロール強化を図ることにして刑事達は帰ってった。

ポツンと椅子に座って項垂れるつくし・・・流石にしょんぼりして可哀想なほど情けない顔になってた。


「牧野さん!すっごく美味しいケーキをいただいたのよ?一緒にいかが?すぐに珈琲を準備させるわ。ねぇ、志乃さん!」
「は?!あぁ、そうですわね!珈琲も良い豆が入ったばかりですわ。ちょっと厨房に行って来ます!」

「ささ、じゃあ母屋のリビングでお茶にしましょ?総二郎さん、後は宜しく!」

「あぁ、判った」


つくしを慰めようとお袋がその手を引っ張ってこの部屋を出た。
堤は何も言わず自分の席に戻って、西村さんは「今後も郵便物に注意します」と言って事務所に戻って行った。


今度は本邸内で・・・すげぇ嫌な気分だった。





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2019/12/20 (Fri) 13:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。


やっぱその時の転け方を想像する・・・腰を強打して一瞬立ち上がれない総ちゃん(笑)

後で湿布貼ってたりして。


「総二郎?何か匂うよ?」
「つくし・・・今日だけ勘弁してくれ」

「じゃあ私が・・・」
「マジで?いつ覚えたんだ?!」

2019/12/20 (Fri) 22:43 | EDIT | REPLY |   

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