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京都に着くと、いつも迎えが来る場所に足を向けた。
ケーキを食い損ねたつくしの機嫌は悪かったが、帰りに好きなだけ土産を選ばせてやると言えば急にニコニコして足取りも軽かった。

やっぱりこいつの機嫌は食い物か・・・と、半分呆れながら隣を歩いていたが、ここでも俺は神経を研ぎ澄ませてつくしに近づくヤツが居ないかを見ていた。
ここにも不審な奴はいない・・・広い構内を歩いて車まで行くと、そこには一乗寺の若弟子と思われる男が立っていた。


「若宗匠でございますね?ようこそいらっしゃいました。一乗寺の高木と申します。ささ、お寒いので早く車にどうぞ」

「あぁ・・・」
「5日間、お世話になります。秘書の牧野と申します」

「牧野さん・・・はい、こちらこそ宜しくお願い致します」


高木なんて名前は初めて聞いた。
物腰の柔らかそうな男・・・穏やかな言葉遣いはつくしを安心させたのか、笑顔で車に乗り込んだ。

でも何故か俺は気に入らねぇ。
こんなに張り付いた笑顔の男なんて気持ちが悪い。いつもの運転手がどうして来ない?
いや、東京で変な事件が続いたから、こんな些細な事にも神経質になってんのか・・・?つくしに「若宗匠、急いで下さい!」って叫ばれてもなかなか足が動かなかった。


車が動き出すと真っ直ぐ一乗寺に向かってるようだ。
そして此奴の運転の仕方は地元の人間だろうと思わせた。渋滞回避してるし、悩みもせずにハンドルを切ってる・・・これが京都の人間じゃなかったり最近来たばかりの人間だったら不安そうに運転するんだろうけど、そんな素振りは無かった。

歳は俺と変わらねぇぐらいか・・・そんな歳の男が一乗寺に居たっけ?


「大森はどうした?」
「大森さんですか?ご隠居様についておられますよ」

「・・・先代はいつ頃舞鶴から戻ったんだ?」
「そうですねぇ、3日前ですかね。随分ごゆっくりされてましたねぇ」


会話は通じる・・・って事はやっぱり一乗寺の人間か。




***********************




京都に来たのは初めてで、思ったよりも都会だった。
もっと古風な街のイメージだったから人の多さに吃驚!
しかも殆どが外国人で、まるでアメリカに行った時みたいに思えた。ただ看板が日本語だから日本だと感じるだけで、すれ違う人の国際色豊かなのにはホントに驚いた。

そんな中で迎えに来てくれた人は穏やかそうな男性の高木さん。
運転してたからなのか着物じゃ無くてスーツだった。

印象としては堤さんがステンレスだとしたらこの人は柔らかめのプラスチックみたい。割りとシャープな顔立ちのイケメンに囲まれて暮らしてるから、こんな童顔で可愛らしい人にはちょっとだけドキッとする。
斜め後ろからチラッと見える彼の横顔・・・いい感じじゃない?


「何を見てるんだ、牧野」
「・・・!!な、何も見ていません。舞妓さんは居ないのかな?と・・・」


総二郎の怒ったような声に吃驚して急に姿勢を正した。
まさか心の声が聞こえたとかじゃないよね?って隣を見たら、口を思いっきりへの字に曲げて、腕組みしてたのにそれを解いて私の膝に・・・!

一乗寺の車の中で何やってんだか!ってキッと睨んだら、今度は目を閉じて知らん顔。
でもその手は私のスカートの上から太股を触ってるし!必死に引き離そうとしてもその手が太股の内側に・・・もう少しで悲鳴をあげそうになったら、急に運転席から声が聞こえた!


「ははは、この時間には舞妓には会えませんし、会えたとしても本物じゃないと思いますよ?」

「ほ、本物じゃない?偽物が居るんですか?」

「偽物っつーか観光舞妓っヤツだ」
「観光舞妓?」


どんな話題でも助かった・・・!
高木さんの声で総二郎の手は本来あるべき所に戻り、私はずり上がったスカートを直した。


観光舞妓というのは、祇園周辺でよく見掛けられるらしい。
舞妓姿にあこがれる観光客に舞妓の着物、鬘、簪などの着付けをしてあげる新しいサービスだそうだ。
だから舞妓の衣装を着けた観光客が色んなところでご飯食べたりしてる姿を目撃されて、何も知らない他の観光客から本物の舞妓と勘違いされて問題になってるらしい。

うん・・・確かに舞妓さんが外でたこ焼きとか焼きそば食べてたら驚くかも。


「舞妓ってのは昼間は大抵稽古だ。着物だって舞妓のものじゃねぇ。基本座敷は夕方からだからな。
それに本物は地毛で髪を結うけど観光舞妓はカツラ。その髪に”ぶらぶら”って呼ばれる簪をぶら下げてるのは舞妓になって1年未満の子で、上唇には紅を塗らねぇんだ。だけど観光舞妓は”ぶらぶら”もぶら下げてちゃんと口紅してる」

「へぇ、そうなの?」

「細かく言えば舞妓は着物の両方の褄(つま)を合わせて左手で持つけど、観光舞妓は長い裾に慣れてないから始めから褄を上げて止めてる」

「・・・・・・総二郎、舞妓に詳しいのね」

「・・・一般常識だ」


そんな一般常識、聞いた事ないけど。
今度は私がジロッと睨むとクルッと窓の方に顔を向けた。


そうこうしてるうちに外の景色が都会の賑やかな感じから自然の多い場所に変わった。
近づいたのかしら、と首を伸ばしてると高木さんの運転する車は細い道に入り、そこは両側に上品な日本庭園が広がってる。何処かの観光地かと思ったけど、どうやら既に西門の土地に入ったらしい。
「この先が京都の先代の家だ」って言われて驚いた。

東京でもかなり浮いてる感じの武家屋敷なのに、ここも広そう~~!

ポカンと口を開けていると、本邸よりも時代を感じさせる門の前で車が停まった。


「お疲れ様でした、若宗匠。私は車をガレージに入れてきますのでお入りになっててください。ご隠居様は朝から楽しみにしておられましたよ」

「・・・そうか。ご苦労さん」
「ありがとうございました!」

「いえ、ではまた後で、牧野さん」

「は?はい!」


また後で?また後で・・・私に?

車を降りたら高木さんがニコッと笑って車でまた走り出し、私は呆然とそれを見ていた。
でも次の瞬間、後ろから総二郎に腕をグイッと引かれて大きな門の中に引き摺られるようにしてはいった!


「ちょ、ちょっと!離してくださいよ、玉砂利で転けちゃう~!」
「余所見するからだ。次にしたらお仕置きするぞ!」

「は?なにっ、そのお仕置きって!!」
「いいからお前は自分の隣だけ見とけ!・・・馬鹿野郎!」

「なんで怒ってるんですかぁ?!」
「分かり易いんだよ、お前っ!」


あ、あら?!やっぱり心の声が漏れてたのね?





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2019/12/30 (Mon) 15:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

そうそう、軟質プラスチックね(笑)
まぁ、私は程良い固さが好きですけど。

ステンレスは固すぎるしね~!プラだと物足りないよね~!

何の話かって?
素材の話よ?


あはは!一緒に買い物💦想像出来ないなぁ~💦
女の買い物に付き合うような忍耐力は無い人なのよ。
姪の場合は我慢出来るのかは知らないけど。

古い人間だからお年玉は高校生までって思ってるんだろうけど、自分の頭の方がまだ小学生ぐらいなのにね!
ホント、理解不能なヤツなのよ(笑)

正月、会わないといけないかと思うと気が重いわ・・・💦

2019/12/30 (Mon) 23:05 | EDIT | REPLY |   

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