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久しぶりに来た一乗寺の屋敷・・・入った感じだとそんなに違和感は無い。
誰かに見られてるとか、異様な緊張感が漂ってるとかって空気は感じ取れなかった。

寧ろあの高木のニヤけた顔の方がムカつく・・・そう思ってつくしを引っ張って正面玄関に向かった。


「いらっしゃいませ、若宗匠。お待ちしておりましたよ」
「大森さん、久しぶりです。お元気そうですね」

「お陰様で。若宗匠は随分と穏やかな表情におなりですね?おや、そちらが・・・」


先代の付き人である大森さんがつくしに視線を向けた。
ここで当然つくしは西門流の作法で挨拶をしたが、それはみっちり仕込んだだけあって上品に美しく出来た。これなら先代・・・爺さんの前でも大丈夫か?と、ついニヤリ。


「おやおや、女性の秘書を雇われたとは聞きましたが、それでそのように丸くおなりで?ははは!」
「え?いや、大森さん、そんな事は・・・」

「いやいや、ご隠居様もその噂はご存じですよ。お引き合わせしたかったのでしょう?」
「・・・・・・まぁ、そうとも言いますが」

「ご機嫌は悪くありませんから牧野さんも安心してくださいね。西門の先代と言っても怖い方ではございませんから」

「ホントに?あっ、いえ!怖いなんて思ってません!どんなお爺ちゃんかなっと・・・あ、そうではなくて!」
「落ち着け・・・」


俺達の噂を聞いててもここで公言する訳にもいかないから、つくしにはドジだけ踏まないようにと歩きながら小声で話した。
それにうんうんと頷いてるようだけど判ってるのかどうなのか、ブツブツ何かを唱えながら歩いてはたまに大きく深呼吸。眉根を寄せてハの字になって、髪の毛が跳ねてたから直してやっても気が付かない。

今更自己紹介の練習でもしてるのか「今私、何歳だっけ?」と言われた時には噴き出しそうになった。
それほどもうすぐ会う爺さんの事が気になって仕方ないらしい。


「・・・・・・・・・はぁ、このお屋敷も広いんですね~」
「あぁ、まぁな。昔はこっちが本邸だったからそれなりにな」

「迷子になりそう・・・」

「ここの屋敷の茶室は季節毎に変わるんだ。本邸もそうだけど庭にその季節の花が綺麗に見えるようにと設計して植えられてるからな。丁度この廊下を挟んで右側が春の『牡丹の間』、夏の『萩の間』、そして左側が秋の『紅葉の間』。冬の『椿の間』。
だから今の季節の茶会は左側の『椿の間』で行われるんだ」

「そうなんだ!覚えられないけど」
「でもうちほど複雑じゃねぇぞ?裏山にあった庵は今じゃ使ってねぇし、使用人用の別棟も1つしかねぇからな」




*******************




総二郎が色々教えてくれるけど私の緊張は高まるばかりだった。
本邸で初めて家元に会った時は茶道家なんて知らなかったから緊張しなかった。
どれ程の家なのか全然知らなかったし、半強制的に秘書人されて気分も悪かったし、総二郎ともどっちかと言うと喧嘩腰だったから。

でも今回は違う・・・一応恋人のお爺様で、西門流の規模も知った。
家元の権威というものも、後援会の存在も、お茶碗1つの価値やお屋敷全体が重要文化財級だって事も。

その家元のお父様で前家元・・・今でも西門家ではこの人のひと言で決められることも多いって志乃さんが言ってた。
堤さんからも「失敗しないように」なんてプレッシャー掛けられたし、総二郎だって苦手としてるような気がするし。


だから気が重い・・・失敗するなと言われて失敗しなかった事がないんだもの。


「こちらでお待ちですよ」

大森さんと言うおじさんに案内されて辿り着いた部屋・・・一段と豪華な襖と欄干の部屋。
そこの廊下で総二郎と一緒に座り、深呼吸を1回!それを面白そうに見てる大森さんが「総二郎様がお見えですよ」と声を掛けると「お入り」と嗄れた声が聞こえた。


「失礼します」

総二郎がいつも私に教えてる作法で襖を開けた。
流石・・・流れるような美しい所作。勿論間違うことなく開けて一礼し、中に入ると今度は私の番・・・「落ち着け!」と心の中で呟いた後で「失礼致します」と声を出して中に入り、ドキドキしながら襖を閉めた。

そして向き直って一礼・・・顔をあげたら、お爺ちゃまにしてはイケメンさんが上品に座っていた。


結構なお歳だろうに姿勢も良くて、穏やかな顔付きは家元に似てる。
もしかしたら若い時には総二郎みたいだったのかしら、と思うほど素敵なお爺ちゃまだった。それに目を細めて笑う仕草・・・これは西門家の遺伝なのか、妙に色っぽかった。

その時、コホン!と総二郎が咳払いをして、私は慌てて総二郎の少し後ろに控えた。


「先代、ご無沙汰しております。お元気そうですね。数日前までお出掛けだったとか?」
「・・・まぁな。いつも同じ顔ぶれだと面白うないので出掛けたくなっての。もう少し若かったら儂がアメリカに行けば良かったわい」

「ご冗談を。あのようなハードスケジュールはお身体に良くありませんよ。飛行機、お嫌いでしょ?」
「1時間ぐらいなら乗れるがのぅ・・・」

「14時間です。そのような無茶はお考えにならず、大人しくここでお過ごしくださいませ」
「相変わらず可愛くないのぅ、総二郎。少しは穏やかになったと聞いておったのに変わっておらんわい!」

「・・・25年間この性格です。今更変えられません。それより随分と急な変更でしたが、なにか意味があるのでしょうか?」
「・・・・・・いや、別に。で・・・何も言わぬ気か?」


なんつー刺々しい身内の会話・・・って口も出せずに黙っていたら、急に先代が私の方に目を向けた。
総二郎は特に慌てることもなく、私を振り返る事もない。実に堂々としてて頼もしい・・・けど、どう説明するんだろうかと彼の背中を見詰めた。


「紹介が遅れましたね。牧野・・・少し前に来なさい」
「は、はい!」


前に来なさい、だなんて言い方は初めて!
その喋り方で一気に緊張して、前に出ようとしたら超綺麗な畳でストッキングが滑って15㎝ぐらいズルッ!と・・・それを見た総二郎の眉も1.5㎝ぐらい上がった。
慌てて体勢を戻したら畳の縁を踏んで総二郎の指がギュッと・・・今度は座り直したつもりが足首を捻ってゴキッ!と音がした。

でも顔だけは笑顔・・・バレバレだと判ってるけど、愛想良く愛想良く!と念仏のように唱えた。
何より怖いのは隣の彼だけど。


「既にお聞き及びだと思いますが、私の秘書として勤務してもらっている牧野つくしさんです。
アメリカにも同行してもらい、そこでは彼女の機転で思いもしない方々と繋がりを持つことが出来ました。茶道に関してはまだまだですが、頼もしいパートナーでございます」

「初めてお目に掛かります、牧野つくしと申します。どうぞ宜しくお願いいたしまふ・・・まする・・・・・・す・・・」


マズい!と思ったけどもう遅い!
総二郎が睨んでる気がしたから、反対側に顔を向けて目を閉じたまま口を噤んだ。


どうして噛むかなーーっ!!こんな時にっ!


「ほほほ!なかなか面白ろそうなお嬢さんだの。確かに噂通りじゃわい」

「・・・正直に言って下さい。どんな風に聞いてるんですか?」
「・・・(いや、そこは濁して!!)」


「来た早々酒の飲み過ぎで酔い潰れて本邸に転がり込み、来客専用の檜風呂を使い、何も出来ないのに秘書になって総二郎にくっついておるとな。
今まで執着した女子などおらん総二郎は、その秘書の事になると回りが全く見えなくなって廊下を走っておるそうじゃないか。しかもアメリカでは内弟子を先に帰して2人だけで居残ったと・・・何をしとったのかは知らんが、戻って来たら秘書は本邸に部屋を持ったそうだな。
それからと言うもの、あの広い本邸には夜な夜な妙な声が響くそうじゃのぅ?まこと東京の若宗匠は人が変わったようになったと聞いたが・・・何処までが本当かな?」


「・・・・・・よくご存じで」
「・・・・・・・・・」


誰よ!そこまでバラしたのはっ!💢






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2019年 総ちゃんのお話はこれで最後になります。
次話は1月5日からです。

それまではお正月ストーリーですが、1話を短くして私ものんびりさせていただきます❤

それでは15時の「花沢城」で本年度を締め括ります❤
1年間、連載にお付き合い下さいましてありがとうございました。

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Comments 6

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2019/12/31 (Tue) 14:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。
そして今年一年、本当にお世話になりました。

ふふふ、こちらのお話も穏やかな場面で年越し(笑)
去年は「私の帰る場所」始めの方での年越しだったので気が重たかったけど💦

うんうん、この話は事件が起きても深刻にならずにサラリと読んでいただいて大丈夫!
また来年宜しくお願い致します♡


私もまりぽん様の旅行記、楽しみにしてますからね~♡
また色々教えて下さいね!

待ってまーす♡

2019/12/31 (Tue) 23:20 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/31 (Tue) 23:38 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/31 (Tue) 23:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

aya様、こんばんは。

明けましておめでとうございます。

こちらこそいつも応援いただきありがとうございます♡
マイペースでのんびりになるでしょうが、今年も頑張って書き進めたいと思います。

どうぞ宜しくお願い致します♡

2020/01/01 (Wed) 00:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!

明けましておめでとうございます。

こちらこそいつも応援ありがとう~~~~♡
今年も宜しくお願い致します~!

うんうん、少しずつ前進!
ちょっとずつ幸せ、そのうちHappy!!

その日が来るまでゆっくりのんびりで♡

私も総ちゃんに幸せで楽しいRを(笑)

2020/01/01 (Wed) 00:25 | EDIT | REPLY |   

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