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つくしが東京に戻ってきて3日目・・・父さん達と話し合って俺は社に復帰した。

つくしの妊娠が判った事でフランスへの赴任は延期となり、暫くはこれまでと同じように秘書も持たずに単独での業務。
資料の読み込みや各部署の運営チェックなど経営陣としての仕事を中心にする事にして、勘を取り戻したら少しずつ営業的な部分にも携わるようにとの指示だった。

そんな俺を社員達が認めるには時間が掛かるだろうし、役員達にも説明して回らないといけない。
日々僅かでも前進させて行くしかないと自分に言い聞かせた。



三条との事はあきらが「捏ち上げ説」を吹聴してくれたおかげで既に噂にはなってなかった。
それを完全に払拭するために父さんはつくしの妊娠をここで公表・・・これまでつくしが表に姿を現さなかったのは大怪我とストレスで妊娠継続が危うかったからだとした。

俺の精神不安定も自身の怪我と妻の身体を案じてのことだと役員には打ち明けたらしく、おかげて俺は随分と繊細な人間だと思われたらしい。


「でも復帰した類を見て以前とは顔付きが違うって噂になってるから、暫く業務に集中していれば信用は回復できそうね」
「まぁ、色々と言うヤツは出てくるだろうがな・・・」

「俺は自分に出来ることをするだけだから。
それよりも父さんは20年前の事件の首謀者に何らかの手を打っといて。吉岡は当然花沢から出ていってもらう。今後のリハビリと生活設計は自分で何とかしろって言っといて。この事故に掛かった高額医療も自腹でってね」

「武田常務には然るべき制裁金を課すつもりだ。詐欺罪や業務上横領罪の時効は5年だから法的には何も出来ないが、吉岡の証言を元に当時の詐取推定金額を恵まれない子供達の施設への寄付金とさせる。そのぐらいしか出来なくてな・・・」

「・・・仕方ないよね。でも何もせずに許す訳にはいかない。出来れば柊祐の前で謝らせたいけど・・・」

「彼はどうしたのか判らないのか?」

「・・・・・・・・・」



あれから柊祐を探してはみたが何処からも情報はなかった。
あれだけの怪我だから何処かの病院に行ってると思ったけど、保険証のない怪我人の報告はなかった。もしかしたらまた催眠暗示でも使って・・・そう思ったけどそれだと探せない。

パスポートはないから海外には行けない・・・柊祐が何も持たずに生きていける場所がそんなにあるとは思えなかったけど、それでも無事を祈るしかなかった。


「・・・あっ、定時だ!帰る」

「まぁ、類ったら!」
「つくしさんのところか?そろそろ退院か?」

「あぁ!週末にはマンションに戻るんだ」


真剣な話をしていたのに時計が5時半になると俺は執務室を飛び出すようになってた。
両親は苦笑いで通り過ぎる社員達からは「お大事に~!」なんて言われ、簡単な礼だけ返してロビーからエントランスを走って駐車場に向かった。




**




「あっ!類、お帰りなさい~!」
「ただいま!つくし・・・どうしたの?歩いていいって?」


病院なのに変な会話・・・でも、まるでマンションのような仕様の特別室だったからそんな気分になってしまうのかもしれない。
医療用のベッドはあるけどリビングにはソファーもテレビもあって、窓のカーテンも普通の部屋と同じ。壁には絵も掛かっててセンターラグにフワフワのスリッパ。
大きな観葉植物に見舞いで貰った大きな花束が沢山あって、点滴スタンドなんて全然目立たないし。

つくしはその奥のゲストルームからひょこっと出てきた。
手には抱えきれないほどの見舞いの品・・・それを片付けてるんだって笑っていた。


「うん、大丈夫だよ。今日から病院内を散歩してるの」
「うわ、心配!子供は?」

「元気だよ。さっきまですっごく暴れてたの。パパが来るのを知らせたかったのかしらね~」
「・・・くすっ、そうかもね。少し休もう?」

「過保護だなぁ・・・」
「過保護でいいじゃん。何がダメなの?」


思いっきり抱き締めたいけど大きなお腹が気になる。だから後ろから抱き締めてつくしが振り向いてキスしてくれる。
あれから何度もこうしてるけど、その度に繰り返す言葉・・・「夢じゃないよね?」って。

そして後ろから腹を抱えると決まってポコンと蹴ってくる。
これも毎回心の中で話し掛ける・・・『あの時はありがとう』って。


それからは夕食を並んで食べて1日の出来事を話し合う。
つくしは昼ご飯のメニューの報告と検診結果。ネットで見つけた子供服と家族で行きたい場所とか、おもちゃの話。俺は会社で起きた面白い事を少しだけ・・・仕事に関する事は自分がまだまだだから報告が出来ない。
いつかは仕事が忙しくなってこんな話も出来なくなるだろうから、今は自分達の夢をずっと話し合っていた。



「ねぇ、名前は何にする?」
「ん?そうだな・・・つくし、付けたい?」

「類に頼んでもいい?私は候補が沢山あって決められないの」
「男の子か女の子かも判らないけど」

「うふふ!でもその方がいいわ。楽しみだもん~!でも、何となく判るんだ、私」
「あ、俺も・・・ちょっと予感がする」

「そうなの?どっち?」
「教えない」

「ええーっ?!」


この会話はもう電気も消してつくしのベッドの中で。
布団に潜り込んでるつくしの横で、片手で頬杖ついてつくしを見下ろす俺。
眠たそうに目を擦りながら、それでも色んな話をして、そのうちスーッと寝てしまう・・・俺はその寝顔を見るまでずっと起きてた。

そして寝てしまったら頬にキスして俺も横になる。
その手は必ず握られてて、つくしの髪が俺を擽る。


長かった1人寝が嘘のよう・・・・・・何も怖くないと思える夜だった。




**




土曜日・・・つくしの退院の日。
大騒ぎはしたくないから誰も来ないように話していたおかげで静かだった。

病院に届けられた見舞いの品は昨日のうちに自宅に運んでもらったし、元々ここには何も持って来てないから身軽なもの。
つくしは俺の手だけ握って看護師達に礼を言ってエレベーターに乗った。


病院長達の見送りも断わった。
退院の花束なんて要らない・・・それよりもお互いが居ればいい。握られた手の温もりだけあれば他には何も要らない。

久しぶりに晴れた冬空に空いてる手を翳して、つくしは「春が待ち遠しいね」って言った。



タクシーに乗ったら懐かしそうに東京の景色を見てる。
「こんなに人が多かったっけ?」って笑いながら「今まで鳥の大群しか見なかったから」って・・・その時だけは有栖川の屋敷を思い出したのか悲しそうな表情だった。
それを忘れなきゃ、と思ったのか小さく頭を振ったら今度は急にハイテンションになって独り言の連発・・・俺は黙ってそれを聞いていた。

「あっ!新しいお店があった!」
「うわぁ、あのビル改装してるの?」
「あそこにあったレストラン、潰れちゃったの?」
「みんなコート着てる~。冬なんだね~」

「くすっ・・・」
「だってぇ!」

「浦島太郎みたいだね、つくし」
「・・・ははは!ホントだね!」


そんな事を言ってる間にマンションに着き、つくしはここで凄く緊張していた。
自分が住むはずだったマンション・・・改装の時に入っただけで、まだ1度もここには戻って来ていない。

初めて帰る自分の家・・・その最上階を見上げてつくしの喉がゴクリと鳴った。





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Comments 4

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2020/01/05 (Sun) 06:25 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/05 (Sun) 13:00 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

お名前がなかったのですが・・・ビオラ様かな?(笑)

コメントありがとうございます。

はい♡類君復活して後は赤ちゃん産まれて・・・で、柊祐ですよね(笑)
牧野のパパたちも迎えに行って、んでラスト・・・💦

もう事件は起きませんのでのんびりゴールまでお付き合いくださいませ♡

2020/01/05 (Sun) 21:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!妊婦さんで残念だったでしょ?
素直に言えばいいのに~♡

でも・・・あるかもよ?ふふふふふ・・・。

2020/01/05 (Sun) 21:24 | EDIT | REPLY |   

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