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翌日・・・俺は1人で長野に向かった。
当然家元、家元夫人に見送られることもなく、たった1人の弟子だけが見送ってくれた。

「総二郎様・・・お早いご帰宅をお待ちしておりますから・・・気をつけて」
「ありがとう。俺のいない間の家元達を頼むな・・・じゃ、行ってくる」

門前で深く頭を下げて見送ってくれるその弟子の後ろ・・・僅かに見えたのは家元だった。
立場上、謹慎処分で出される俺の前には出られなかったのだろう・・・俺はそこに向かって頭を下げた。
今更ながら思う・・・あの日、あんな事が起きずにあの人に牧野を会わせていたら状況は違っていただろうに。

少しだけ俺にその頭を下げた家元・・・数少ない俺の理解者だったのにな・・・。


長野に着くまでの間はずっと牧野の事を考えていた。

あの日・・・ちゃんと見つかって良かった。
雨というキーワードと俺たちの少ない思い出を辿れば、あの時は出会った公園しか思い浮かばなかった。
それが牧野も同じだったっていうのは嬉しかった・・・やっぱり繋がっている、そう思えるだろう?

あきらからの連絡で、牧野は時間を遡っていたと聞いた。

俺も思い出していたよ・・・
人混みでお前を見つけたときの喜びと感動と・・・初めてお前を抱いたときのこと。
お前のドレス姿、お前の手料理・・・小さなアパートでの夜。

再会してからこれまで、俺たちに起きたことすべてを思い出していた。


*******


長野の田舎にある西門縁のその寺には、この度の騒動については何も知らされていなかった。
ただ、茶道をするに当たっての修行という名目でその寺に入ったことになっていた。
自分からは電話や手紙などの外部への連絡が出来ないような決まりがあって、俗世から離された生活を送るわけだ。

寺の修行なんてどこでも似たり寄ったり・・・。今まででも短期での修行は経験済みだからそんなには
驚かないが、所詮は見せかけに近いもの・・・真に仏門に入ろうとする人間とは違って当たり前だ。


精神を鍛え直そうと思ってはいるものの牧野の笑顔が頭をよぎる毎日・・・。
当然、ここの住職には見抜かれた。

ある日、俺は住職に呼び出しを食らった・・・畏まって住職と向かい合ったが説教ではなかった。
むしろ穏やかに・・・俺の話を聞いてくれる人だった。


「若宗匠は何を考えておいでかな・・・。街に置いてきたものがおありのようですが・・・」

「わかりますか?ダメですね・・・やっぱり」

そう言って笑うと住職も同じように笑ってくれた。

「いいのですよ。あなたにはこれは本業ではないのですから。ただ、人というのは求めずにはいられないように
出来ておりますから、置いてきたものが大切なら諦めないことです。求め続けなさい・・・悪行でないならね・・・」

「そのために何かを失うとしてもですか?」

「よく言うでしょう?失うのが怖くて求められないのなら本気ではないのです。一番怖いのは失うことより
諦めてしまうことのほうですよ」

何故だろう・・・この人の穏やかな笑顔に誘われるように俺はこれまでのことを話した。
誰にも言うまいと思っていた事まで全部・・・牧野に対する気持ちと綾乃を憎む気持ちを言葉を探りながら話した。
西門のスキャンダルなのにお袋のことまで打ち明けてしまった。

全部を黙って聞いてくれて・・・最後に一言だけ言葉をくれた。

「あなた達はお幸せにならなくてはいけません。二人が幸せになることで怪我をしたお嬢さんもその後は
救われるのですよ。そして大事なことです・・・憎むことはおやめなさい。許すことで新しいものが生まれます。
お母様のこともそうです。どちらからでも良いのですよ・・・許して、認めて・・・そして話し合いなさい」

禅寺にしては緩い説教だと住職の方が笑っていた。


「若宗匠の大切な方を見てみたいものですな・・・いつか、お二人でいらっしゃい」
「お話しを聞いて下さってありがとうございました。少し・・・気持ちが軽くなりましたよ」

俺は住職に精一杯の感謝の気持ちを込めて茶を点てた。そして清々しい気持ちで話しを終えた。


寺の中の自分に与えられた部屋で窓の外の星空を見ていた。東京と違ってよく星が見える。
牧野は上にある星空ではなく、今も下を向いて海を見ているんだろうか。


「やっぱり・・・会いてぇな・・・」

かけることの出来ない電話を持って、その中で笑っている牧野の笑顔を見ていた。


*******

<sideあきら>

総二郎に会ってからも牧野に大きな変化はなかった。

「牧野・・・綾乃のことをまだ気にしてるのか?それだったらお前はむしろ被害者だって言っただろう?」

そう言えば泣きそうな笑顔を見せる。
もうわかっているくせに・・・牧野も総二郎以外は愛せないんだ。
ただ迷ってるんだ・・・総二郎のこの先を心配して・・・自分の決心が固まらなくて・・・。

そして、これ以上傷つくのを恐れているだけだろう。


俺はあんまり得意分野じゃないんだけど・・・親友から奪い取るなんて・・・。
ただ、この状態の牧野をこれ以上見るのも限界だった。
総二郎に言われた言葉を思い出すと胸が痛んだけど、ついに押さえていた感情が牧野に向かった。

悪いな・・・総二郎、お前を裏切るかもしれない・・・。


「牧野・・・いつまでもそうしているわけにはいかないだろう?そろそろ前を見ないか?」

「前を見る?・・・どういう意味?美作さん・・・」


「総二郎のこと忘れたらいいんだよ。ずっと同じ事を考えているから立ち直れないんだろう?
次の恋を始めたらいいと思わないか?」

牧野はそれまで伏せていた眼を大きく開けて俺の方を見た。
牧野の中に次の恋なんて言葉は考えてもなかっただろうし、俺がそう言うなんて思いもしなかっただろうから。


「そんなにびっくりした眼をしなくてもいいじゃないか。ここ何日一緒にいたと思ってるんだ?
俺の想いも知ってるだろう?そろそろ答えてくれてもいいと思うけど?」

「・・・美作さん・・・何を言ってるの?冗談はやめてよ・・・」

牧野がその言葉を言い終えるのを待たずに俺は牧野を抱き上げてベッドルームに向かった。

「いやぁあっ!ちょっと、美作さんっ・・・何するの・・・やめてっ!」

そして暴れる牧野をそこに投げ込むように降ろして上から組み敷いた。
その行動に今度は口もきけないほど驚いている牧野に自分の本心を告げた。


「俺もずっと牧野だけを愛してきたんだ・・・!今すぐにお前が欲しい」

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Comments 6

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2017/06/14 (Wed) 12:17 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/14 (Wed) 13:52 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/14 (Wed) 16:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花さま、こんにちは🎵

どうだろう。
でも、もうここまできたらバレバレだと思います。
でも、まだこの時点で悩んでいるワタシ。

あきら、踏み切ったらどうします?

そしたらまた話が変わるぞ?

それもいいかな?

悩むなぁ。結果は明日❗

2017/06/14 (Wed) 17:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは🎵

ホントにすみません❗ものすごく暗い話になりまして!
じれったいのが好きなわけじゃないんだけど、総二郎のイメージが何となく切なく苦しい感じなんですよ!私には‼

だから、落とすってもんじゃないですけど、本気で総二郎は好きなんですよ?
どうすんの?ってコメントばかりもらうんですけど、
最後はハピエンに…なる予定ですから。

もう少しだけおつきあいくださいね!

あ、類のほう?
あはは!ドン引きしました?ですよね。

こっちもどうすんの?って感じなんですよ!
でも、この話ほど暗くはないですよ⁉
たまに切ないくらいかな?

まあ、こちらは気長におつきあいくださいませ。

今日もありがとうございました🎵

2017/06/14 (Wed) 19:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: どうもです。

えみりん様、こんにちは🎵

どうします?マジてあきらが突進したら。

このplumeriaはたまにとんでもないことしますよ?
あきら、マジです!

だれか私を助けて~❗暴走しちゃう~❗
って感じです。あきら、壊れたかも⁉


2017/06/14 (Wed) 19:31 | EDIT | REPLY |   

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