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「・・・・・・池田君、ここ?」
「そうだよ。ここの展望レストラン、予約大変だったんだから」


池田君に連れられて来たのは公園のすぐ近くのホテルだった。
何処かのレストランだとは思っていたけど、それがまさかホテルのレストランだなんて・・・何故か隣で笑ってる池田君に違う気持ちがあるような気がして怖かった。

まさかね?まさか・・・部屋をとってるなんて言わないよね?
それは自意識過剰ってもんよね?


池田君に背中を支えられてエレベーターに乗ったけど、他のお客さんも居てホッとした。
2人きりなんてなれない・・・そう思うなら始めから受けなきゃ良かったのにって後悔してる。展望レストランのある階に着くまでの間、私は彼と目も合わさずに全然知らない人の背中を見ていた。

そしてレストランのある階に着いて、そこで全員が降りた。
当然私達も・・・池田君はホール係の男性に話し掛けて、1番奥の夜景が綺麗に見える席に案内された。


あ、・・・・・・あのツリーが見える。

その席に座ると真下には公園のツリーがあって、一際そこが輝いてた。テーブルの上の薔薇の一輪挿しにも美味しそうなオードブルにも目を向けず、私は暫くそれを見詰めていた。


「そんなに好きなの?あの公園」
「え?あぁ・・・子供の時からクリスマスになるとあのツリーを見にいくのが楽しみだったから」

「そうなんだ。でも今は前を向いて欲しいな」
「ご、ごめんなさい!」

「怒ってないよ。淋しかっただけ」


またドキッとする言い方。でもその「ドキ」は熱くなるものじゃない・・・ちょっと胸が痛くなる感じ。


そのうち運ばれて来たお料理を池田君の説明付きで食べながら他愛も無い会話をしていた。高校の時の部活の話しとか兄弟の話とか大学の話しとか。私は自分に話せるほどの出来事が無かったから笑顔で聞くだけ。
寧ろ人に話したらドン引きされるような事ばっかりだから言えないし。

最後のデザートになった時には午後9時・・・チラッと時計を見てしまった私を見て池田君が苦笑いした。


「牧野さん・・・今日は可愛くしてるけど、それって俺の為だと思ってもいい?あの返事、OKだって受け止めていいよね?」
「・・・あっ、それは・・・あの、私は・・・」

「だってその気がなければお洒落なんてしないでしょ?俺、実はこの会社を辞めて大阪の企業に行こうと思うんだ」
「辞める・・・?」

「うん。先輩が起業してるんだけど、そこに引き抜かれてる。給料もいいし、規模だって今の会社より当然デカいし、年内には社長に話して3月末で退社すると思う。
牧野さん、恋人として一緒に大阪に行こう?真面目に将来を考えたいって思ってるんだ」

「・・・・・・・・・池田君、あのっ・・・」

「いいよね?」


その時にチラつかせたルームキー・・・それに驚いて席を立ち上がった!
そうしたら回りの視線が私達に集まって、池田君は慌ててそれをポケットにしまい込んだ。
今度は少し怖い顔・・・椅子に座らない私に「人が見てる。俺が恥ずかしいだろ!」と小さな声で言った。


あぁ、やっぱりこの人はサンタじゃない・・・私はこの人に連れて行かれたくはない。


「池田君、本当にごめんなさい。あなたに思わせ振りな態度をとっちゃったみたい。
でもあなたへの返事、答えはNOです。私はこの街を離れる気も、今の会社を辞める気もありません。今日は誘ってくれてありがとう・・・でも、ここまでです。私、帰りますね」

「牧野さん?!まさかここで断わるの?」

「・・・だって答えは1つじゃなかったでしょう?決めつけていたのは池田君で、勘違いさせるような格好したのは・・・それは反省します。ごめんなさい」

「・・・・・・巫山戯んなよ?」

「・・・・・・これが返事です」


今までに見た事がない池田君の怒った顔・・・・・・私から目線を外した彼に頭を下げてレストランを出た。




外に出たら小さな雪が降っていた。
その向こうにはあのツリーがある・・・私は駐車場に行かずにまた公園に向かった。

「彼」はいないって判ってたけど、足は自然といつもの場所に向かい、そしてこれまでと同じ位置から天辺を見上げた。
イルミネーションがあるから真っ暗じゃないけど、そこから落ちてくる雪はふわふわとダンスと踊るように舞っていて、私の前に来たら人混みに消えてく。
今日もやっぱり恋人達は沢山居て、私の回りで幸せそう・・・その彼氏達が全員サンタさんに見えた。


『恋人がサンタクロース 本当はサンタクロース
プレゼントを抱えて
恋人がサンタクロース 寒そうにサンタクロース
雪の街から来る・・・』



今日は『牧野?』・・・って聞こえない。
私が待ってるのは彼だったって・・・この時はっきり判った。

認めちゃいけないって怖がって、叶わないと思って諦めて・・・・・・でも、こんなにも好きだったんだ。



花沢類・・・あなたの声が聞きたい。

取り出したスマホ・・・電話を掛けたけど彼は出てくれなかった。




**




それから池田君は会社で私とは目も合わせず、本当に大阪に行くと社長に申し出た。
その送別会も仮病で欠席して、最後まで言葉を交わすこともなく終わった。


社会人2年目は仕事に打ち込んだ。
事務から営業に異動して、毎日日焼けしながら介護施設や病院なんかを回った。研修に出張に残業・・・毎日忙しくて彼氏どころじゃない。
夏の海も秋の紅葉も関係ない。必死に働いてクリスマスにも仕事を入れた。

お正月はひたすら寝て過ごし誰とも会わない。
バレンタインは施設のお爺ちゃん達に和菓子をプレゼントするという情けない日だった。


社会人3年目も同じ・・・今度は新人の研修係にもなって「オニの牧野」と呼ばれた。
花見だってしなかったし、新しい水着も買わなかった。後輩達が沖縄土産だとか北海道土産だとか山ほどくれるけど、私は1度もあげたことがない。


「牧野さんって何処にも旅行しないんですか?」
「うん、そうだね~、行ったことないかな?社会人になってから」

「彼氏は?磨けば可愛いんですからもっとお洒落して彼氏作りましょうよ!」
「五月蠅いなぁ、放っといてよ。彼氏なんて居なくていいの!」

「出来たこともないんですか?!マジで?」
「失礼ねぇ!出来たことはあるわよ、しかも極上の男だったのよ?極上すぎて・・・ダメだっただけよ」

「うわっ、さり気なく自慢?じゃあ、今好きな人は?」

「・・・いるよ。この人はね・・・特別なの。私のサンタクロースだから」

「・・・・・・は?おかしくなったんですか?いませんよ?サンタなんて」


「ふふっ、いるのよ・・・私には。でももう会えないかもしれないけどね・・・」





その年の12月初め、私に派遣の話が来た。
社長の同級生が福岡で介護施設を運営してて、そこで3年ぐらい実務を経験して資格を取らないかと言うものだった。

返事は年内・・・そう言われて悩んだ結果、私は行くことにした。
多分彼は今年大学を卒業してフランスに行くはず・・・それなら私も新しい土地で頑張ろうって思った。


「じゃあ送別会はクリスマスイブに!予定もあるだろうけど都合付けてくれよ?」
「「「ええーっ?!」」」

「あはは!社長、そんなの可哀想ですよ~。私の送別会とかいいですから。辞める訳じゃないんだし」

「いやいや、忘年会もクリスマス会も兼ねて、牧野さんの送別会だよ!奮発して何処かのホテルでやろうか?!」
「「「おおおおーっ!」」」」

「あぁ、私の送別会はオマケって事ね?」



クリスマス・・・・・・あれから2年間あの公園には行かなかった。
今年はどうしよう?


もう1度・・・ツリーに会いに行こうかしら。






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Comments 6

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2019/12/26 (Thu) 15:43 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/26 (Thu) 17:17 | EDIT | REPLY |   
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2019/12/26 (Thu) 20:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

出たっ!ヘタレ発言💦
あっはは、ホントですよね~~!怒ってますね?(笑)

いや、つくしちゃんを枯れさせないで下さいませっ!!まだ大丈夫!歳で言えば21歳ぐらいの筈です!
花盛りですって!うんうん、これからですよ♡

グインと急旋回してHappyエンド!そうじゃなかったら私が類君に怒られますから(笑)

2019/12/26 (Thu) 21:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

ええーー?!どうして判ったの?
まさかシナモン様に言われるとは思わなかった(笑)

お仕事、少しは落ち着いたんですか?
でも今度は家の事かな?

私も正月返上で仕事です(笑)
娘が日曜日に帰省してくるので扱き使ってやろうと今から楽しみ♡

お料理から解放されるので嬉しいです~~~♡

2019/12/26 (Thu) 21:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

rin様、こんばんは。

ご訪問&コメントありがとうございます。
ジレジレしてますか?(笑)

大変申し訳ありません💦しかも公開が遅かったのでクリスマス終わってからのラスト(笑)
明日、LastStoryですので最後までお付き合い下さいませ♡

ほんわかしていただけると嬉しいな♡←お前が言うな!

2019/12/26 (Thu) 21:22 | EDIT | REPLY |   

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