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お茶屋さんの中はまるで異次元空間みたいだった。

見慣れない飾り物や薄暗い廊下、見通しの悪い造り・・・どうやら1階は舞妓さん達の休憩室だったり台所らしいけど、それをお客さんに見せないようにしているらしい。
外から見た時には判らなかったけど小さな中庭もあって、ほんの少しだけカウンター席のようなものもあった。

舞妓さんを呼ばなくてもいいって人の為に用意された和風バーみたいなものだと総二郎には聞いたけど、お茶屋さんに来始めた人が女将さんに試されてることもあるらしい。
誰でもいいわけじゃなくて、お客さんは選ばれた人だけ。「一見さんお断り」ってそう言う事だと聞かされていた。

そこで品があって信用出来ると判断されたらお部屋に通されて舞妓さんも呼んでもらえる・・・万が一暴れたりしたら料金を跳ね上げられ、次回からお断りって事もあるんだそうだ。


「2階の奥でございますから・・・」って女将さんが細い廊下の先頭を歩いて行って、先代、総二郎・・・何故か私の前には剛さんが歩いてて総二郎が見えない。
不安だったから大きな剛さんの身体の横から覗いていたけど、クルッと角を曲がったから総二郎の顔が見えなかった。


「もうっ・・・不安なんだから離れないで欲しいわっ・・・って、えっ!?」


私も剛さんの後について角を曲がろうとしたら、急に後ろから誰かに腕を掴まれた!
そのせいで転けそうになったから慌てて腕を持ってる人に縋ったら、それは女の人・・・そして「しー!」と唇に指を1本立てて、私に「静かにしておくれやす」と・・・。

それはやっぱり着物姿で可愛らしい女性。
歳は私と変わらないぐらい・・・もしかしたら少し上かも?ってぐらいの顔立ちで、総二郎達が階段を上がって行く足音を確認したら私を引っ張ってもっと奥の部屋に連れて行った。


「ちょ、ちょっと!何するんですか?!離してください!」
「お静かになさいませ。あなたにお話がありますのよ」

「はぁ?私には話す事はありませんっ!ちょっと、迷子になるじゃないですか!・・・って、あなた、誰?」
「私は千香と申します。総二郎様のことで・・・そう言えば宜しくて?」

「・・・総二郎の?いや、あなた・・・若宗匠の何ですか?」
「あら、嫌だ・・・そんなに怖い目で見ないでくださいな。牧野つくしさん」

「・・・なんで名前を知ってるの?」
「総二郎様のことでしたら何でも知ってますの。うふふ・・・あなたよりも早い時期からね・・・」

「・・・・・・・・・」


まさかこの美人が京都での元カノーっ?!




*************************




「あれ?牧野は・・・」

座敷まで来たら後ろからついてきているはずの牧野がいないことに気が付いた。
てっきり真後ろに居ると思ったのに、そこに居るのは間島剛・・・厳つい顔のこいつが居て、俺の事をガン見してやがった。

そのデカい図体の後ろに居るのかと思ったけど・・・居ない。
慌てて部屋から出て廊下を見たけど目に入った場所にはつくしの姿はなかった。


「どうしたんじゃ?総二郎」
「いえ、牧野がいなくて」

「つくしちゃんが?そこはほれ、女子だから言いにくい事もあったんではないか?」
「・・・はぁ」


つくしがトイレぐらいで俺に遠慮するとは思えない。
でも初めての連中が居るから恥ずかしかったのか?って、そんな女か・・・?
剛に聞いても「さぁ、気が付きませんでしたが?」としか言わねぇし、部屋の中では間島の爺さんが「心配性ですなぁ!」と笑いやがるから、仕方なく中に入った。
入ったが気になる・・・女将の挨拶も間島の挨拶も全然耳に入らずに、うわの空で返事をしていたら「遅くなりました」と、1人の女が入って来た。

上品な着物を着た美人・・・何処かで見たことがあるような無いような?


「お久しぶりです、総二郎様」
「・・・・・・えっ?!」

「嫌やわ、お忘れですか?千香ですわ」

「・・・・・・ちか?・・・あぁ、宇治に住んでた千香さん?」
「思い出してくれはりました?うふふ、そんなに変わりましたかしら?」


千香と名乗った女は俺の2つ下で、間島支部長の娘の子供で剛の従姉妹にあたる女だ。つまり千香の祖母が西門出自の女性だから所謂遠縁になる。
千香の母親は離婚して間島に戻っていると聞いたから姓も間島のはず・・・それを聞けば「はい」と可愛らしく答えた。


暫く会ってなかったがすげぇ成長ぶり・・・着物だけどスタイルの良さも良く判る。
顔立ちも間島の爺さんや剛とは全然違って整ってて、つくしの1つ下になるが備わってる色気が桁違い・・・いや、つくしはあれでその時になったら驚くほど変わる女だから堪んねぇけど。

淑やかな所作で部屋に入り、まずは先代にも丁寧に挨拶・・・そして末席に座ると俺をチラッと見て赤くなる。
まさか、こいつ・・・?と思ったが間島支部長もニコニコしてるだけで何も言わない。何となく嫌な空気・・・それよりもつくしが戻って来る気配が無い事の方が気になる。


「あぁ、総二郎様・・・」
「なにか?」

「お連れの女性、牧野さんって仰るの?」
「えぇ、そうですが・・・何処かに居ました?」

まさかこいつからつくしの名前を聞くと思わなかったから驚いたが、千香の方は少しばかり心配そうな顔で並んでる連中を見た。
全員が千香に注目・・・そうしたら言いにくそうに暫く考え込んで、小さな声で「実は・・・」と言葉を出した。


「私、遅れてお店に入りましたでしょう?そうしたらスーツ姿の女性が吐き気がするって言って女中さんに介抱してもらってたんです。どうしたのかと聞きましたら総二郎様のお連れ様で牧野さんと名乗られて、その・・・ムカムカして歩けないって。
真っ青な顔して踞ってらっしゃいました。ですから今は何処かの部屋でお休みなんじゃないかしら・・・」

「牧野が吐き気・・・?」

「はい、とても辛そうでしたわ」

「・・・・・・・・・・・・」


いや、待て。
一乗寺を出るときは極普通だったし、寧ろ酒を飲もうかどうしようか悩んでたぞ?
京都に来る時には甘ったるいケーキを食おうとしたぐらいだし、土産の菓子まで考えてたし、具合が悪そうな素振りはこれっぽっちも無かった。

吐き気ってのはそんなに突然来るものな・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・総二郎、まさかお前」
「いえ!!そのような事は御座いません!牧野はまだ秘書ですから!」

「まだ・・・?確かにまだ秘書じゃが・・・」
「・・・・・・・・・」

「おや、若宗匠は何を狼狽えておいでですかな?秘書とは言え人間ですから病気ぐらいあるでしょう。少し女将さんに任せて休ませたら如何です?酒の匂いは余計気分が悪くなると言うものですよ」


間島支部長がそう言うから様子を見にいこうかと思ったのをやめて席に戻った。それならスマホでメッセージを、と思って取り出したら「そう言う事も焦らせるだけでしょう?」、そう言われて仕方無くポケットにしまった。

「それでは始めましょうか」という間島支部長の言葉で始まった会食。
派手な舞妓が「おこしやす~」と入って来たのも眼中に入らず、ポツンと開いた席を見てソワソワしながら酒を酌み交わした。
そのうち仕出し屋が持って来た料理も並び始め、舞妓が横にきて酌をしながら何か言ってる。そいつにも軽い返事で中身も覚えず、牧野がいつ戻ってくるのかを気にしていた。


「若宗匠、大丈夫ですか?全然食っておらんじゃないですか?」
「総二郎、そのように心配してもつくしちゃんの具合は良くならんだろう。休ませてやるのも薬と思うて、お前は間島さんの話を聞くがいいぞ?」

「・・・はぁ」

「いやいや先代、儂のつまらん話よりも千香と仲良うしてくれたら嬉しいですがねぇ?」
「嫌やわ、お爺様ったら。総二郎様がお困りですよ?」

無愛想な剛は何も喋らず黙々と料理を食い酒を飲み、先代は面白そうに俺を見る。
間島支部長は何がそんなに可笑しいのかずっと笑ってるし、舞妓は退屈そうに愛想笑いをしている。そして千香は何故か気が付いたら俺の横・・・手に徳利なんて持って、舞妓の仕事を奪ってるかのようだ。


・・・・・・あれ?

どうした・・・俺・・・・・・何でこのぐらいでクラクラするんだ?


つくしの事が気になって殆ど飲んでねぇと思うのに、急に視界がぼんやりしてきた。
その時に先代が俺に何かを言ってるようだったけど全然言葉が頭に入って来ない・・・。

俺まで吐き気?・・・いや、そうじゃない・・・。


ガタンと膳の上に手をついて、その後の記憶がなくなった。






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2020/01/12 (Sun) 20:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

ってか、怒るのはいいけど、ついでに何を言ってるの?(笑)
そんな借りの返し方、ないと思うんだけど?

おかしいなぁ・・・私が大変なだけじゃん?それ・・・。

2020/01/13 (Mon) 01:26 | EDIT | REPLY |   

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