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「ねぇ、花沢類」

もう少しでアパートに着くって時に牧野が足元を見ながら言った。

チラッと見るけど表情は判らない。鶏卵焼の袋を持つ手が赤くなってるのが見えるだけ・・・。
「なに?」って小さい声で答えたら・・・


「フランス語で『あけましておめでとう』ってなんて言うの?」
「フランス語で?えーと・・・『Bonne année』だけど」

「へぇ・・・やっぱり聞き慣れないね。HappyNewYearはさ、よく聞くけど」
「そりゃそうだろうね。それがどうしたの?」

「・・・ふふっ、何でもない。ただ聞いてみたかったの」
「・・・bonne(ボンヌ)はフランス語で”良い”って意味。année(アネ)は”年”・・・だから直訳すると”よいお年を”って感じかな?日本だと年末向けの言葉だよね」


どうしていきなり聞くんだろう・・・それが不思議だったけど牧野はクスクス笑うだけで何も言わない。
会話が途切れたから、さっき買った鶏卵焼に因んで「フランスはお正月にGalette des rois(ガレット・デ・ロワ)という紙の王冠が乗ったパイを食べるんだよ」って言うとやっぱり笑ってた。


「Bonne année!か・・・じゃあ今年も宜しくお願いしますってなんて言うの?」

「それは日本独特の表現でフランスじゃ言わない。Bonne année et bonne santéで”お体に気をつけて”とか、Bonne année et meilleurs vœux ”今年もご多幸をお祈りします”とか言うかな・・・フランス語、興味あったっけ?」

「ううん、覚えられないから無理だよ。花沢類はやっぱりさ・・・」


そこで到着したアパートの前・・・俺の車の真横で、牧野はそれまではしゃいでいたのに悲しそうな目を見せた。
そして首に巻いてたマフラーを外して俺に差し出し「ありがとう」って・・・でも、それを受け取った時の牧野の氷のような手に驚いて思わずそっちを握った。


「どうして鶏卵焼持ってたのにこんなに冷たいの?」
「・・・あはは、緊張してたから?」

「緊張?何があった?」
「・・・えっと、花沢類と一緒だったから?」

「俺と一緒で緊張?なんで・・・」
「うん、もうこれが最後のお正月かもしれないでしょ?いつフランスに行くかなんて判んないし」

「・・・・・・それで誘ったの?」
「えへへ、勇気出したの。急にいなくなったら淋しいから」

「・・・馬鹿だね、黙って行く訳無いじゃん」


車に乗ろうと思って出したキーはまたポケットにしまった。
そして握ってた牧野の手に息を掛けて、その後もう1回マフラーを牧野の首に回してやった。それを吃驚目で見ていたけど、アパートの部屋を指さして「入れて?」って言うと・・・ニコッと笑った。

やっとここで繋げた手・・・たった数歩しか並んで歩かなかったけど、その間に牧野の指先には熱が戻ってた。




初めて入る牧野の部屋・・・想像していたよりも狭くて、でもきちんと片付けられてて綺麗にしてあった。
それなのにテーブルにあるのはフランスの観光雑誌とか初日の出の観光名所の特集とか。それを慌てて掻き集めて背中に隠し、照れ笑いなんて見せちゃって。

「それ、見せて?」
「やだ!」

「なんで?もう表紙だけ見えたよ?」
「それでもやだっ!あっ、あったかいココア入れてあげる。ちょっと待ってね!」

「じゃあ入れてる間にそれ見せて?」
「・・・仕方ないなぁ」


折れ曲がった雑誌を俺に手渡して、バツが悪そうにキッチンに向かいお湯を沸かしはじめた。
俺は凄く寒い部屋の真ん中に座ってその雑誌をパラパラと捲る・・・時々強くクセがついてるところは初日の出の綺麗な場所が載ってるところだ。

牧野、見に行きたかったのかな・・・って顔をあげたら、キッチンから半分だけ顔出して恥ずかしそうだった。



「初日の出も見たかったの?」
「・・・・・・ん。でもいいの・・・初詣に行きたかったの」

「両方行けばいいじゃん。今から行く?」
「ううん、花沢類・・・寝なきゃご機嫌悪い人だから行かない。ホントにいいの・・・」

「じゃあ来年行こうか?ちゃんと前日から準備してさ」
「来年の約束なんてしない。だって・・・」

「くすっ、側にいれば地球上の何処だって初日の出、一緒に見られるよ?」
「・・・・・・・・・?」


そんなに泣きそうな顔しないで・・・。

雑誌を手放してキッチンに向かい、部屋よりも冷えきったそこで小さく震えてた。
小さなコンロではやっぱり小さなケトルがカタカタ鳴ってる。シンクに並んだカップ・・・牧野はそれにお湯を注ごうとしたけどその手を止めた。

驚いて振り向いた時、俺との距離は本日最短・・・そんな牧野を抱き締めて、雪で少し濡れてる髪に顔を埋めた。


「もっと分かり易く言ってよ。俺、あんたが思ってるほど器用じゃないから伝わらないよ?」
「・・・・・・・・・」

「それとも俺から言おうか?でも答えはYESしか受け付けないけど」
「・・・・・・・・・・・・?」


「今年からは友達じゃなくて恋人・・・そしてあんたの将来は俺が貰ってもいい?」
「・・・・・・・・・は、花沢類・・・?」


待ち人、遅刻なんてしなかった。寧ろ早過ぎ?
捧げてる愛情、無理矢理曝け出しちゃった・・・でも、これは短気じゃないよね?

おみくじの言葉なんて30分で忘れた。
それよりも大事なのは腕の中の真実・・・カイロよりもあったかい出来たてホヤホヤの恋人。


「ねぇ、さっき何をお願いしたの?何になりたかったの?」
「・・・・・・い、言わない」

「くすっ、八幡様に代わって俺が叶えてあげようか?」
「・・・・・・え?今から?!」





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Comments 6

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2020/01/03 (Fri) 08:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

あはは!グイグイ類君なんて滅多に書かないのでね~💦
新年の短編なので思い切ってみました!!

むふふ、こうなると・・・♡
いやいや、お正月からそんな話は書けません(笑)

可愛らしく終わりたいと思います♡どうぞ宜しく~!

2020/01/03 (Fri) 10:59 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/03 (Fri) 11:18 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/03 (Fri) 18:00 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様、こんばんは。

明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。

うふふ、早速脳内変換ですか?絶好調で何よりです♡

私もおみくじはここ数年引いたことがないですね~。
そして大吉なんて引いた記憶もありません(笑)

因みに類君も総二郎も来てくれた事はありません・・・ってか、1人暮らしの経験がないなぁ(笑)
随分憧れましたが、家から出る勇気はありませんでした(笑)

2020/01/04 (Sat) 00:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは(笑)

コメントありがとうございます。

おほほほほ!軽ーいヤツね!
お正月だからド派手には打ち上げませんけど、最近の類くんになかったから♡

いやいや、満足はしないと思うけどね💦
気持ちだけ、気持ちだけ♡



2020/01/04 (Sat) 00:59 | EDIT | REPLY |   

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