FC2ブログ

plumeria

plumeria

総二郎を信じるかどうかは私次第・・・その言葉を何度か心の中で呟いていた。

確かに女にはだらしないのかもしれないけど、私が見た総二郎はほんの一部分かもしれないけど・・・それでも抱き締めてくれた彼の腕を嘘だとは思えない。
本心から私を愛してくれた、そう思う・・・思いたい・・・・・・。

・・・思ってもいいんだろうか?


・・・・・・・・・・・・。


「いや!だから本当に愛してくれてるのよ!疑ってどーすんの、つくし!」

そう言って帰り支度をした鞄からノートを取り出し、これからのスケジュール確認に入った所で襖の向こうから声が聞こえた。


「牧野さん?起きてますか?高木ですけど」
「・・・えぇ、起きてます」

「失礼しますね、おはようございます」
「・・・おはようございます」


静かに開いた襖から顔を出したのは昨日の晩、私をここに案内した彼・・・今日も穏やかな笑顔だった。

この人が何か企んでるかは判らない・・・でも要注意。
「危険察知アンテナ」を立てて警戒しなきゃ・・・と、堤さんに言われて気分が変わった私は彼を見る目も変わった。

無事に東京に帰るまでは総二郎と離されてもいい。兎に角彼が頼まれた仕事をミス無く終えて、若宗匠としての立場を穢さないこと・・・秘書の私はそれに全力を尽くすのよ。
甘い顔しちゃダメ・・・言われたことを全部信じちゃダメ。

私が信じるのは総二郎の言葉、そっちなんだから!


「どうしました?気合い入ってますね」
「仕事ですから。若宗匠はもう食事を済まされて準備に入ってますか?」

「・・・えぇ。牧野さんはこちらで朝食を食べていただき、時間になったらお客様のお出迎えをお願いします。若宗匠はそれまで精神統一するので誰にもお会いにならないそうです」

「(総二郎が精神統一?)・・・そうですか。判りました」
「本日の茶室は正面玄関から入って右側奥の部屋です。間違えないようにご案内して下さいね」


やっぱり変だわ。
あの総二郎がわざわざ精神統一しないと茶事に向かえないなんて事はないもの。
その茶席の空気を掴むのにそこまでの時間は掛けない・・・そんなに場慣れしてない訳がない。その時になったらちゃんと集中しておもてなしが出来るもの。
それだけは知ってる!


朝ご飯をいただいてひと息ついて、ふと隅っこを見れば志乃さんが送ってくれていた私の着物が置かれてる。
総二郎に会えないとなると自分で着なくちゃいけない・・・まだ1人で最後まで着たことはないけど、志乃さんに特訓してもらったんだもの!何とか着てみせるっ!

・・・と、意気込んで着たものの、やっぱり帯が難しい・・・それでも何とか頑張って結んで廊下に出た。
その時にすれ違ったお手伝いさんに帯を手直ししてもらって何とか完了!お礼を言ってお出迎えの時間を待った。


今度はどんな罠を仕掛けてくるの?
総二郎・・・私が顔を見せないから逆に落ち着かないんじゃないかしら。
メッセージだけなら大丈夫かしら・・・そう思って「昨日はごめん!お茶会しっかりね♡」と送ってみた。

でも既読にならない。
本当に精神統一してるんだろうか・・・って画面を見てたらパッと真っ暗になって「EMPTY」の文字が!


「あっ!電池がなくなった!そう言えば充電器も持ってない・・・総二郎に借りればいいと思ってたから忘れてた!」


時計を見たら10時40分・・・お出迎えの時間だ。
スマホは鞄に入れて、気合いを入れて玄関に向かった。




***********************




「牧野がまだ体調不良?」

牧野を起こしに行った高木が戻って来て「先ほど起きられたようですが顔色が随分と悪くて」と困った顔をしていた。

まだ吐き気が・・・?
まさか本当にあいつ・・・・・・それならいつのだ?
時期的にアメリカだろうか。まさか先週の旅行じゃねぇだろうからそれしか考えられないが、それにしても反応早過ぎねぇか?

確かにあの時も我慢出来なかったから覚えはある。
しかも1回や2回どころじゃねぇ・・・そうなってもいいって思ったから悩みもしなかった。そうなったら速効嫁に出来る・・・寧ろラッキーじゃね?なんて考えてたし。

個人差はあるだろうが朝の方が気持ち悪いって聞くしな・・・。


「判った。準備するのに牧野が居なくても大丈夫だから休ませてやってくれ。何か食えそうだったか?」
「朝食はお休みになった部屋で少しだけお食べになりました。茶事の時間になったらせめてお出迎えはしたいとの事でしたのでお願いしています。宜しかったですか?」

「あぁ、それだけで構わねぇ」
「判りました。若宗匠が随分と心配されていたことをお伝えしておきますね」


高木が出ていった後、1人で着物に着替えて今日の茶室の設えに行った。
掛物は昨日から準備していたから掛けるだけ。茶花は山ぼうしの照り葉に椿の西王母、そいつを一乗寺の庭から切り取らせてもらって床の間に生けた。

後は道具の準備だけ。
頭の中ではつくしの身体を気遣いなら、これからの事を考えていた。


どっちかな・・・。
やっぱ男だったら安心だけど、そう言うとプレッシャーだろうから兎に角元気だったらどっちでも良い・・・そう言ってやらねぇとな。




*********************




今日のお客様は間島支部長と京極さんと言う関西支部でも昔からの役員さんで、観光産業を中心とした大きな会社の会長さんらしい。
大事な茶事には必ず招待されるという方々・・・東京から来た若宗匠のお茶を楽しみにしているのだと聞かされていた。

だから粗相があってはいけない。
お茶室までの案内だけど、私も東京から総二郎に選ばれてきてるんだから失敗したら総二郎に恥をかかせる。
ドキドキしながら玄関まで迎えに行くと、そこには大森さんが控えていて「丁度車が着きましたよ」と教えてくれた。

自分の着物を再度確認。
門まで出迎える時の姿勢やお辞儀にも決まりがある・・・総二郎に言われたことを思い出しながら丁寧にお迎えした。


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。宗家より参りました牧野と申します。本日は宜しくお願い致します」

間島支部長は昨日も会ってるから・・・って言うか、この人は千香さんのお爺さん。
だから何かを知ってるのか、私を見ても今日は知らん顔だった。一緒に来た京極様・・・この人は上品なお爺様で、私にも丁寧に挨拶してくれた。

そのまま玄関まで案内して総二郎が待つ茶室まで連れて行くのが私の役目。
今朝、高木さんに言われたようにお屋敷右側の茶室に行こうとした時に、ふと思い出した。


『ここの屋敷の茶室は季節毎に変わるんだ。本邸もそうだけど庭にその季節の花が綺麗に見えるようにと設計して植えられてるからな。丁度この廊下を挟んで右側が春の『牡丹の間』、夏の『萩の間』、そして左側が秋の『紅葉の間』。冬の『椿の間』。
だから今の季節の茶会は左側の『椿の間』で行われるんだ』



あれ?今は冬だから左側の茶室で行われるんじゃないの?
どうして高木さん、右側って言ったの?

そっちは春と夏の茶室・・・お客様が後ろに居るのに足が止まって、京極様から「如何しました?」と聞かれた。
慌てて振り向いたけど、その時の間島支部長の厳しい顔・・・それを見てドキッとした。


「・・・大変失礼しました。これより『椿の間』にご案内致しますね」


危ない、危ない・・・もしかしたらこれも罠だったのかもしれない。
私は総二郎に聞いたとおり、お屋敷の左側にお客様を案内した。





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/01/13 (Mon) 12:24 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/01/13 (Mon) 14:47 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/01/13 (Mon) 15:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

生粋娘様、こんばんは。

コメントありがとうございます。


あはは!本日も盛大に怒っていらっしゃいますね?(笑)
ふふふ、つくしちゃんが頑張ってくれるので安心して下さいね♡

でも、まだまだ・・・高木はやりますよ?結構なワルです(笑)

2020/01/14 (Tue) 00:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

止めてよ!!そんな危険な状態で京都駅に放置しちゃダメ!
駅員さんが困っちゃう(笑)

てか、うちの子が喜ぶかもしれない(笑)


で、あっはは!
そこかーーーーー!!類君の方でも妊婦だったからな~!

確かに書けないもんね!
でもここは違うって判るでしょ?
総ちゃんの誤解はまだまだ続きます♡


で、どうしたの?大丈夫ですか?
腫れ引いた?

もしかして・・・泣いた?胸貸そうか?

2020/01/14 (Tue) 00:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

はい!つくしちゃんパワー全開で頑張ります!
まだこれから幾つかありますので、この京都も長いですよ~(笑)

そうですね~。
西門を京都に移し、自分達が権力を握りたい間島一家です。
そう簡単にいくもんか!って事で、頑張るのが総ちゃんじゃなくてつくしちゃん(笑)

総二郎は妄想に耽っております💦
大丈夫か?総ちゃん・・・💦

2020/01/14 (Tue) 00:10 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply