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「兎に角着物は必要ですよね・・・困ったな・・・」

いや、困るのはあなたじゃなくて総二郎だから!
先代ならお着物沢山持ってそうだけどお借りするには身長が合わない・・・それに明らかに50歳ぐらい違うんだから似合うかどうかは疑問。その前に総二郎本人が拒否しそうだし。


こうなったら屋敷中探すしかない。
マジックじゃあるまいし、この僅かな時間に燃やされない限りこの世から消えるわけないんだから!
「私、探しに行きます!」、そう言って高木さんの横をすり抜けて部屋を出ようとしたら、グイッと腕を掴まれた!

「何ですか!時間無いんで・・・」
「何処を探すって言うんです?まさか、一乗寺の人間を疑ってるんですか?若宗匠のお着物でしたらそこら辺のものとは価値が違うから?」

「そ、そう言う意味じゃないけど・・・!」
「同じでしょ?東京の人が京都を信じられない、そう言ってるようなものですよ?!」

「今はそれどころじゃないんです!離してください!」
「この屋敷を知らない牧野さんじゃ無理だと言ってるんです」

「でも、ないと本当に困るんです!疑うとか信じてないとかは後回しです!」
「そんな当てのない話より、手配する方が先でしょう?」

「・・・・・・!」


確かに当てはない・・・探しても出て来なかったら時間の無駄。

だけど何かしなくちゃ気が治まらなくて、イライラしながら高木さんの手を振り払った!彼は少し呆れたような顔を見せたけど、総二郎の事なんて所詮どうでもいいのか意外と冷めていた。
困った顔なんかじゃない・・・この人を見ていたら本当にイラつく!


もうこうなったら総二郎に話して、今着てる着物で明日も仕事をしてもらえばいいのよ。そのぐらい我慢させないと本当に経営状態が悪化するかもしれないし・・・。
この際変な拘りを捨てて、少しは経費節減って方向に向かわせなきゃ・・・1人で悶々と考えていた時、高木さんが隣でスマホを取り出し何処かに電話を入れていた。


「西門の高木です、突然すみません。今から行きたいんですが、既成のものでもいいので着物一式揃えていただけます?えぇ・・・うちの若宗匠です。はい、茶会で着るわけじゃありません。講演会で・・・あぁ、そうですか?助かります。では後ほど・・・」


何処かの呉服屋さん?今から行くから既成の着物一式・・・それは総二郎の着物を手配したってこと?
電話を切ったらスマホをポケットに入れながら、私の方に顔を向けた。


「ここから少し離れていますが伏見桃山というところに西門がずっとお世話になってる呉服屋があります。そこに今から行って総二郎様のお着物を選んできて下さい」

「わ、私1人でですか?」

「他に人は居ません。総二郎様がお弟子さんを同行させてないのですから仕方ないでしょう?車は出させますので迷子にはなりませんし、そのお店には以前ご隠居様が総二郎様のためにお着物を作られたためにデータが残ってるそうです。
体型に合ったものを幾つか揃えておくと言われましたので、数枚用意してもらえばいいでしょう」

「お支払いは・・・」

「気になさらなくてもここに請求が来るでしょうから、後は宗家の事務と大森さんが話せばいいですよ。どうせ今日買ったとしてもこれからも着る事が出来ます。無駄な買い物ではないと思いますよ?
それよりも急がなくては・・・この後の総二郎様の行動は私が同行しますので、牧野さんはすぐに出て下さい」

「何かあったら電話しま・・・あっ、電池切れだった!」

「大丈夫ですよ、運転手がいるんですから。早くしないと道が混みますから時間が掛かりますよ」

「は、はいっ!」


この前着物の話を志乃さんに聞いたばかりだけど、まさかこんなに早く総二郎の着物を私が選ぶ事になろうとは・・・!
でも、お店の人が教えてくれるんだから大丈夫よね?と、何が何だか判らないうちに一乗寺を出て呉服屋さんに向かった。

せっかく経費節減しようと思ったのにーーっ!!




***********************




千香の事を出されて面食らったが、先代も京極さんも「何の話だ?」って感じで会話が繋がらなかった。
だからさっさとこの話は切り上げ、京極さんの質問する道具の話や掛物の話をして、最後の薄茶点前を終えた。

そうなると残るのは退席の挨拶だけ。
薄茶で使った道具をすべて片付け、茶道口の外に俺が座る。
そこで主客総礼・・・これが終わると、正客から順に席を立つ。最後にもう1度床の間の掛物を拝し、炉を拝見・・・今度こそ茶室から出て行き、これで総ての茶事が終わる。

亭主の見送りはここまでで、門まで行く事は無い。
だから後は水屋を片付けて、今回の目的の茶事は終了・・・まぁ、そこそこ上手くいったって事で満足していた。



「そう言えばつくしが来ないな。片付けは手伝わなくていいと思ったのか?まぁ、確かにいいけどよ・・・それよりは身体の方が心配だしな」

なんて呟きながら茶巾で茶碗を拭き、道具類を総て仕舞った。
その時にも頭を過ぎるのはつくしの事・・・こうなったらさっさと公表しねぇとな、とその時期やこれからの仕事のスケジュールを考えていた。


やっぱ産まれる時には立ち会ってやりたいし。

名前は何にしよう・・・男だったらこれまでに倣って「郎」の字、付けた方がいいのか?俺としては変えてみたいけどな。
女だったら可憐な名前にしてぇよな。呼んでてウキウキするようなヤツ・・・どんなのが流行だ?いや、流行りに乗っかっちゃダメか。意味のある名前にしてやらなきゃな・・・なんて。



「若宗匠、お疲れ様でございました。次の予定のご準備をお願い致します」

そう言って水屋に来たのは高木だった。
それは牧野の言う台詞じゃねぇのか?とジロッと睨んだが涼しい顔してやがる。


「なんでお前が言いに来る?牧野はどうした?」
「牧野さんはお出掛けですので。お部屋にお召し替えの準備はしてあるようです」

「・・・出掛けた?」
「はい。茶事の最中でしたので若宗匠にはお伝え出来ませんでした」

「何処に?あいつは京都は初めてだ。勝手に何処かに行くとは思えないが」

「若宗匠のもう1枚の着物が見当たらないと大騒ぎされましてね。探したのですが本当に何処にもなくて、明日からのお着替えに困ると言われましたので懇意にしている呉服屋に向かわれました。
突然の事でしたので若宗匠のお好みに合うかどうかは判りませんが、店主が見繕ってくれるでしょう。ですからお寺には私が同行します。宜しゅうございますか?」


着物が見当たらない?
あんなもの、どうやったら無くすんだ?

それに朝起きた時に荷物は部屋の隅に確かにあった。つくしのスーツケースだけ消えてたんだ。

本当に消えたって言うならまずは俺に相談だろう。
わざわざつくしが出向かなくてもここまで持って来る呉服屋はいくらでもいる・・・あいつの判断で行くとは思えないが?


「それ、牧野が頼んだのか?」
「はい。同じ着物を着せるわけにはいかないと仰って、不安だから急いで行きたいと」

「茶事が終わるまでどうして引き止めなかった?それか他の者でも良かっただろう」
「着物の紛失は自分の責任だと言われました。その気持ちも判りますので私も協力してしまいましたが、お伝えした方が良かったですね、申し訳ありません」

「・・・俺はスマホを無くしたんだ。悪いが貸してくれるか?」
「宜しいですよ、どうぞ」


・・・・・・お掛けになった電話番号は電波の届かないところにあるか、電源が・・・・・・


電池切れかっ!!💢





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2020/01/17 (Fri) 13:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

あら!大丈夫でした?なんだったのかしら・・・。
兎に角お大事にして下さいね。

色々あるだろうけどそういう時は妄想に耽ってください(笑)


もう皆さん、高木に怒る怒る💦
もしかしたらこういうタイプが1番読者様には嫌われるのかも?
柊祐もかなり嫌われたけど最後には「幸せに」って言われたんだけど、この人には無さそうだなぁ(笑)

書くには面白いんだけど(笑)

うちの旦那も子供と話す時はいつもニコニコしてるよ。
そして同じく裏ではキモいと笑っている💦
男親ってのはそんなモノなんですかね~(笑)

笑っても格好良くないところが残念・・・。

2020/01/18 (Sat) 15:41 | EDIT | REPLY |   

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