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急いで一乗寺に戻ったのは午後6時・・・当然総二郎も先代も会食に出掛けていた。
大森さんに「大変でしたなぁ」と言われ、そこでスマホの充電器を借りて昨日と同じ部屋で充電・・・画面がついたら慌ててメッセージや着信を見たけど、総二郎からのものはひとつも無かったから驚いた。

「・・・・・・1回も電話してくれてない?どうしてメッセージすら無いの?総二郎・・・心配してくれなかったの?」

それを見たら千香さんの事を思い出しちゃう・・・それでまた肩がガックリ落ちてしまった。


その時に襖の向こうから「牧野さん、お疲れ様でした」と高木さんの声が聞こえてビクッとした。
顔の見えない襖を睨んでしまう・・・どうしても高木さんが意地悪してるようにしか感じないんだもの!


「入っても宜しいですか?」
「・・・どうぞ」

「失礼します」


静かに襖が開いて彼が入って来たけどその時には知らん顔して横を向いていた。
本当は話が違ってた呉服屋のことも文句言いたかったけど、私が言えば総二郎が言ったと同じ・・・ここで無用な騒動は起こしちゃダメ。
あと3日間の辛抱だもの、そう思って鞄からあの巾着袋を出して、その中からお化粧品を出した。
こうすれば「女性の時間」だって事で早く出ていくだろうから。


「着物の手配が出来て良かったですね。総二郎様のお部屋の和箪笥に仕舞いましたのでご安心下さい」
「・・・そうですか。でも鍵なんてないでしょ?」

「ははは、そんなに怒らないで下さい。極上の着物しか扱わないお店ですからきっと総二郎様もお気に召しますよ」
「・・・それはどうでしょう?若宗匠は本来自分で選びたい人です。私の選んだものを気に入るかどうかは判りませんわ」

「・・・あぁ、それがアメリカで評判だった巾着ですか?」
「は?」


急にそっちに話を振られて驚いた。
私が持ってる桜流水の巾着・・・高木さんはそれを指さして「噂で聞いたんですよ~」とニコニコしながらそう言った。

確かに関東では支部でも茶道教室でも評判になって追加注文が来たほど・・・でも、関西でも評判に?そんな話、聞いた事がないけど?


「え、えぇ・・・外国の方には喜んでいただけたようです。思い付きで提案したんですが結果としては良かったのかもしれません」
「大変だったでしょうねぇ、生地なんで普通10メートルみたいな単位で買いませんしね」

「確かに大変でしたけど楽しかったですよ?これで本邸の方々とも仲良くなりましたから」
「そうなんですね?縁結びの巾着袋ですね」

「あはは!そうかもです」
「では食事を運んできますね。お腹空いたでしょう?」

「そう言えばお昼も食べてないわ・・・もうペコペコです~」
「あはは、そりゃ大変だ」


・・・なんて、調子を合わせて笑ったけど、心の中ではムカつきが治まらないから目は合わせない。
そしてトドメに「若宗匠は遅くなりますから本日も気にせずここでおやすみ下さいね」・・・絶対に起きて待っててやる!そう思って返事もしなかった。


あれ・・・でもどうして10メートル買ったって知ってるの?



そのあと運んで来られた夕食を食べようと箸を持ったらスマホが鳴った!
今度こそ総二郎かと思ったら・・・また堤さん?

この人の方が心配してくれるって事に何故か淋しさもあったけど、今朝相談したばかりだからその電話に出てみた。


「もしもし・・・」
『どうしたんですか?元気ないですね。牧野さんらしくありませんよ?』

「・・・元気の欠片もありませんよ。はぁ・・・」
『判りました。まずはあの後からの報告をどうぞ』


どうしてこの人はこんなに冷めてるんだろう・・・外側だけじゃなく内臓全部がステンレスで出来てるんじゃないの?なんて思いながら、あれから起きた出来事を話した。
高木さんと言う「自称・お弟子さん」の存在をまず説明し、彼から言われたことを時系列で思い出すと余計にムカついてきたけど。

まず茶事の準備は総二郎1人でやるから近づかないように言われたこと、案内係の私に違う部屋を教えた事、そのあとで着物がなくなり手配のために一乗寺を出たこと、その呉服屋さんも話が伝わらず時間が掛かり総二郎には会えなかったこと。
そして今も彼は鴨川で会食、私は一乗寺の使用人部屋で夕食だと言えば冷静に『そうですか』のひと言。


「・・・何ででしょう?私に対する悪意を感じるんですが、その高木さんって人とは初対面です。先代はl好意的なのにどうしてその人から攻撃を受けるんでしょう?」
『間島支部長が絡んでるのかもしれませんが迂闊に口には出せません。でもその様子だと総二郎様と牧野さんが会えないように仕組まれたのでしょうね』

「やっぱり?」
『間違った部屋を教えたのはあなたに失敗させて総二郎様に恥をかかせるため、それを見抜いたのは良かったですね、意外でした』

「・・・ありがとうございます(だからどうして嬉しくないんだろう?)」
『着物は単に隠されたのでしょう。それか総二郎様の着物の価値を知っている人間が居たら、紛失に見せかけて売却するつもりかもしれませんからネットオークションを見張ります。おそらく違うでしょうけどね』


聞けば総二郎の着物は男性用なのに1枚200万ぐらいが普通らしい。
・・・って事は今日思い切って3枚買ったのは合計600万円もするの?!それは恐ろしかったから口には出せなかった。

どうせ怒られるなら東京に帰ってから・・・総二郎から謝ってもらおう、なんて考えた。


『兎に角誰かが何かを企んでいる感じがします。この先の総二郎様の行動の中で、今度は総二郎様にも仕掛けるかもしれません。どんな事を言われても牧野さんは総二郎様の身の回りに最大限の注意を払ってください。
他には何かありませんでしたか?』

「他には特に・・・・・・あぁ、どうでもいいんですけどさっき高木さんが変な事を知ってました」
『変な事?』

「はい。私達が手芸店で巾着袋の生地を10メートル買ったことを知ってました。それ、凄く不思議だったんですよ・・・そんなの誰にも言ってないし」

『・・・・・・手芸店のことを?』


初めて堤さんにステンレス製とは違う反応があった。
それに驚いてスマホを耳に押し当てたけど、そのあとは「気をつけて」だけで電話は切られた。

・・・・・・ホントに変な人だ。



堤さんに話したら気分が変わって、お腹が空いていたから夕食をいただいた。そして絶対に総二郎が帰ってきた時には出迎えて、今朝の事と着物の事を言わなくちゃ!
そう思っていたのに、夕食を食べた後で何故か凄く眠たくなった。


頭がフラフラする・・・どうしてこんなに眠たいんだろ?
何度頭を振っても意識が朦朧とするばかりで、そのうち目の前が真っ暗になった。


総二郎・・・早く帰ってきて・・・・・・早く、私の所に・・・・・・




***********************




会食が終わって先代と屋敷に戻ったのは21時。
当然つくしが出迎えると思ったのに、出てきたのは大森さんと高木だった。

大森さんは先代を支えながら部屋に向かって、俺の前にはニコニコした高木・・・それにムカついてつくしの事を聞いた。


「どうして牧野が来ない?まさか戻ってねぇ訳じゃねぇよな?」
「あぁ、牧野さんでしたら今日も具合が悪いらしくてもうお休みです。お部屋に行かれますか?」

「もう寝てんのか?!具合悪いって、また吐き気か?」
「そうらしいですね。でも夕食は少し食べてますから大丈夫じゃないでしょうか?それともお医者様を呼びますか?よくお休みですけど」

「・・・取り敢えず顔が見たい」
「ではこちらにどうぞ」


高木に案内されて俺の部屋とは別棟に向かった。
ここに粗末な部屋なんて無いから別棟と言っても小綺麗にしてある。
その一室の前で高木に「こちらです」と言われ、静かに襖を開けると、本当につくしが寝ていた。

部屋を見回しても別に何も変わった感じはない。自分の荷物を片隅に纏めて布団の中でぐっすり・・・。
足音を立てないように側まで行って踞りつくしの寝顔を覗き込んだけど、俺の気配は感じないのか起きる様子は無かった。本当に爆睡・・・寧ろ少しムカッとした。

これだけ心配してんのに起きねぇのかよ・・・!

ふと目線がつくしの腹辺りに・・・でも、後ろに高木が居るから手を出す訳にもいかない。
まぁ、安心して寝てるのならいいか、と静かに立ち上がって部屋を出た。



「お医者様はどうしましょう?」
「いや、よく寝てるからいい。どうしても回復しそうにないなら東京に戻ってから掛り付け医に診てもらう」

「そうですか。では無理をしないようにお休みいただきましょうね」
「・・・何か言ってなかったか?」

「手配された着物を若宗匠のお部屋の和箪笥に入れてますと。気に入ってもらえるだろうかと悩んでおられましたが」
「そうか・・・判った」


着物なんて何でもいい。
そんなものよりつくしの身体の方が大事だ。寒い中、慣れないところでウロウロしてもしもの事があったら・・・。

高木が部屋まで付き添ってきたが、自分の部屋に戻ると言葉も交わさずに襖を閉めた。


用意されてる1人寝の布団・・・・・・マジ、辛いんだけど。
これ何ヶ月耐えなきゃならねぇんだ?





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Comments 6

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2020/01/18 (Sat) 13:25 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/18 (Sat) 17:19 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/18 (Sat) 23:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんばんは。

コメントありがとうございます(笑)

あはは!落ち着いてっ!
優しいフリして人を騙す奴、確かにイラッとしますけど(笑)

やっぱり総ちゃんが「おいおいおいおい!!💢」って感じでしょ?
判ります、判ります(笑)

私も書きながら「総ちゃん、大丈夫か?」って思いますもん。
でもコメディなので!

たまにはこういう総ちゃんも・・・・・・ダメですか?(笑)



類のお話(笑)
言われてみれば「私」ですかね?
いやいや、本当に三人称に憧れたんです。でも難しい~~~!!
まだまだ長いのにこの方法で書き続けられるのか?(笑)って思いますが、毎日1話ずつ、必死に書いてます。

どうぞ最後までお付き合い下さいませ♡

2020/01/18 (Sat) 23:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

そうなんです~!つくしちゃんがここで成長してるんです~♡
高木が思うよりつくしは根性があるんです(笑)

総ちゃんも妄想の世界に飛んでますが、間もなく戻って来ると思います♡
たまにはつくしちゃんに助けられる総ちゃんってのもいいかなって思って。

堤さん、結構ワルモノだと思われていたようですが、実はいい人なんです♡

悪巧みももう少し続きますが、もう1回言います。
コメディですからご安心を!!

2020/01/18 (Sat) 23:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

生粋娘様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

総ちゃんが帰還してくるのはもう少し先です(笑)
もう少し夢見ててもらいます♡そこで泳がせてやって下さいませ♡

お茶目な総ちゃんも楽しいでしょ?
でも本来の総ちゃんは頭脳明晰です。今はつくしちゃんのお腹が気になって仕方無いだけですから💦
妊娠させるまでのプロであって、妊娠させたら素人です(笑)

2020/01/18 (Sat) 23:55 | EDIT | REPLY |   

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