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「峰山商事?こっちから出向かなきゃいけねぇのか?」
「仕方ないでしょ?今日の午後しかお時間取れないって言うんですもの。宜しく頼みましたよ」

「・・・判ったよ」


大学を卒業してもう7年・・・もうすぐ30って時だが独り身でお袋の機嫌は最悪。
これまでに何度も持って来られた縁談は西門サイドで全部断わらせていた。勿論会う前に・・・だ。


牧野にはあれから1度も連絡を取らなかった。
何処かの企業に就職したって事は聞いていたけど、それが何処かも調べなかった。
元々俺達のような世界には無縁の・・・その方が幸せになれるヤツだ。それなのにわざわざ探し出して引き摺り込むような事はしなくていい。

そう思う気持ちと、真反対の気持ちもあった。


もう誰か他の男が傍にいる・・・もしもそうなら見たくない。
こっちの方が強いのかもな、と釣書が届く度にそう思って来た。


そして今日出向かなきゃいけない峰山商事・・・実はここのお嬢もその1人だった。
以前から親子共々積極的で、何度か食事の席も断わったのに諦めない。親父が後援会の副会長だけに無碍には出来ないと両親に散々言われたが、それでも断わってきた。

その副会長が自ら鎌倉に茶を点てるための庵を建てたいなんて言い出しやがって「若宗匠の意見を聞きたい」・・・そんなの自由に建てりゃいいのに、呼び出すにはそこに理由があるってヤツだ。
行けば娘の香織がいる・・・そう言う事だろうと溜息しか出なかった。




峰山商事に着いたら受付の女性には何も言わずに通過した。
顔をあげれば丁度エレベータに人が乗って、扉が閉まるところだった。面倒臭い事はさっさと終わらせようと、そのエレベーターが閉まる前に飛び乗った。

でも扉を押さえてる時に見た目の前の女・・・・・・


「・・・・・・牧野?」
「・・・・・・西門さん?」


全然変わってない・・・と言うよりも昔よりも少しは女っぽくなってた。
でも髪型も変えてないし、相変わらずのナチュラルメイク。営業みたいなスーツに堅苦しい白いブラウスだったが、少しは金があるのか首に光るネックレスは小さいがダイヤだ。
そのデッカい目を更にデカくして俺を見てる・・・時が10年遡ったような気がして笑いが出そうだった。

でもそこで気付いたのは隣の男だ。


生意気そうなヤツ・・・この俺に鋭い目を向けて来やがった。
その時の空気ですぐに判った。

この男・・・牧野に惚れてやがる。


「牧野先輩、どうしたんですか?お知り合いですか?」
「え?あぁ、えぇ・・・あの、高校の先輩で・・・」

「あぁ、英徳の?へぇ、先輩なんだ?」
「う、うん・・・」


牧野先輩?って事はこいつの方が年下か。
で、牧野の出身校も知ってる・・・仕事以外の世間話をする仲って訳だ?


牧野を挟んでその向こうから来る挑戦的な視線・・・それを無視して黙ったまま牧野の横に立ってた。チラッと昇降ボタンのパネルを見ると8階が点灯している。
俺が行くのは15階の役員フロア。この会社の8階なんて何があるのか知らねぇが、エレベーター内の案内表示を見ると8階は営業系のフロアだ。

・・・牧野が営業?
噴き出しそうになったが必死で堪えた。


8階に着いたら男が俺を横目で睨み、牧野は赤い顔のまま俺の横を離れた。その瞬間、まるでそいつから引き離すように牧野の腕を掴んでエレベーターの中に戻し、扉は閉まった。
閉まる寸前の男の驚いた顔・・・それにニヤリと笑ってやった。

牧野は当然驚いただろうから俺の手を振り払って、でもエレベーター内で逃げ場はない。
出来る限り俺から遠離って鞄を胸に抱いてるけど、そこまで警戒すんのか?ってムッとした。


「なっ、何すんのよっ!」
「今の男・・・誰だ?」

「へ?あぁ、今一緒だった人?同じ会社の高橋君。後輩だけど私の指導係よ」
「高橋・・・指導係って何だ。お前が年上だろう?」

「昨日から営業に回されたのよ!だから今日は体験的に外回りに出ただけよ・・・」
「体験?お前、もう28だろ?今更体験とか必要なのか?」

「放っておいてよ!今まで10年間内勤なの!初めてなんだから仕方ないでしょ・・・って西門さんはここで何してるの?」


その時15階に着いて、エレベーターの扉が開いた。
そしてそこに立っていたのは峰山香織・・・俺を見た瞬間はすげぇ嬉しそうに笑ったが、牧野の姿を見たら激変。一気に鬼のような顔をして牧野を睨んだ。
牧野もそれには驚いたようで、ビクッとして俺の後ろに隠れ、それがまた香織を刺激した。


こいつ・・・高校の時のビビり癖がまだ治ってねぇな?と何度目かの笑いを堪えた。


「総二郎様、受付からお見えになったと連絡がありましたからお待ちしてましたの。その方はどなた?」
「香織さん、わざわざ出迎えなくても宜しかったのに。こちらはここに営業で来た牧野さんですよ。私の後輩だったので話してたらここまで一緒に来てしまいました」

「こ、こんにちは~。河野産業の牧野と申します~」


河野産業・・・聞いた事ねぇ名前。
牧野が挨拶しても香織は恐ろしい顔を緩めないまま・・・そのうち非常階段が喧しくなったと思ったら、さっきの男が血相変えて駆け上がってきた。


「はぁはぁ・・・っ!あんたっ、何するんだよ!」
「別に?少し話したかっただけだ」

「高橋君?!よく15階が判ったねぇ?」
「停止した階を見てましたから!それよりも何ですか!この人は!」

「なんなの!あなた達、五月蠅いんだけど!ここは役員室よ?営業なら営業課に行きなさいよ!」


香織は牧野に向かってギャアギャア喚いていたが、俺は牧野よりも高橋って男を見ていた。
そいつも俺の事をガン見・・・でも悪いがお前と俺じゃ勝負にならねぇけどな、ともう1度ニヤリと口角を上げた。

牧野は時計を見て「高橋君っ!時間過ぎてる!」・・・それを聞いてエレベーターに乗ろうとした時、そいつは振り向いて言いやがった。


「牧野先輩は俺のものだから。悪いけど横から手ぇ出さないで下さいよ」

「横から?そんな事はしねぇよ。でも牧野はお前のもんじゃねぇ。ついでに言えば俺のものでもねぇ・・・今のところはな」



止まっていた時間が動き出した・・・それを俺は感じていた。





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2020/02/21 (Fri) 22:27 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

そうそう、秒で相手の事が判るのよ(笑)
そんなのめっちゃ怖いけど!

総ちゃんに喧嘩を売る高橋(笑)
相当な金額で買うんだろうね~、総ちゃんなら!
そして倍返しすんのよ(笑)

階段をめっちゃ速く降りるならいいけど、上がることはもう出来ない💦
自分ちの2階に行くのに手摺りが欲しいと思った瞬間、歳を感じたプルでした・・・。

2020/02/22 (Sat) 00:42 | EDIT | REPLY |   

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