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英徳大学の売店・・・つくしはそんなところも利用したことがない。
何故なら売店と言えどそこは英徳、一流シェフの作ったものしか置かれてないからだ。

だから確かに美味しそうだけど値段も一流・・・いつもそこまで現金を持ち歩かないつくしはその中でも1番安くて小さなサンドイッチを手に取ると、飲み物も買わずに会計に向かった。

振り向けば類が珍しく色々と選んでる。
左手には既に幾つか持っているのに右手で新たに掴んだものも加えられ、今にも大きな腕から溢れ落ちそうだ。
類が食欲を示すなんて滅多になかったからその光景はすごく不思議に見えた。そしてつくしのすぐ後に会計をカードで済ませ、「行くよ」と囁くとそっと肩を抱き寄せた。


「ちょ、ちょっと、類!」
「カフェじゃなくてラウンジに行く。そこだと誰も見ないから」

「う、うん・・・でも何も肩まで・・・」
「いいから」


これを見る学生もいるのにお構いなし。
歩幅が全然違うつくしは、まるで大人に引率される子供のように類の横を必死で歩いた。
チラッと自分のスカートを見ると所々白いまま・・・まるで何処かで転けましたって言ってるようなもので恥ずかしかった。

吹き抜けの階段も急かされるように駆け上がって、辿り着いたラウンジには丁度総二郎もあきらも居なくてつくしはホッとした。
そして1番奥のソファーに向かい、類の隣に座るように指で合図された。

嘘でしょ?と後ろを振り向けば矢のような視線が階下から来る。
それが怖くて急いで類の横にポスッと座った。


「はい、好きなもの食べな」
「え?私、サンドイッチ買ったよ?」

「それだけじゃ満腹にならないでしょ?講義もだけどバイトも出来ないよ?」
「・・・類は食べないの?」

「食うよ。どれにしようかな・・・初めて買ったからな・・・」
「ぷっ!そうなの?」

「ん、牧野が選んで?」


自分で買っておきながら味が判らないとは・・・つくしはそんな類の行動が新鮮で可笑しかった。
買ったものをテーブルに並べ、つくしが自分の選んだサンドイッチを手渡すと、眉を顰めて1度それをガン見・・・その後で口に入れる。それも可笑しくて噴き出すと、恥ずかしそうに「なんだよ・・・」と口を尖らせた。


「だって!こんなに美味しいのにすっごく難しい顔して食べるんだもの~」
「・・・・・・作ってるところを見た事ないものばかりだからそうなるんだよね」

「えっ?」

「・・・母さんは随分前に亡くなったし、自宅のシェフが作るところも見た事がないんだ。出来たものが綺麗に並べられて出てくるけど、誰がどれを作ったのかは判らない。だからどうしても素直に口に入れられないって言うか・・・そんな感じ?」


クスッと淋しそうに笑って「我儘かな」って呟いた類。

つくしはその横顔を見て彼の淋しさを感じた。
それは何不自由ないはずの生活に欠けている、尤も重要な部分。与えられる愛情が少ない世界に生きていることは道明寺を見ても知っていたが、類の言葉で改めて悟った。


「・・・今度さ、ご飯作ってあげよっか?」
「・・・は?」

「いつかは判んないけど類のために作ってあげる。その時に手伝ってよ!私、こう見えて料理は得意なんだよ?」
「・・・牧野のご飯?」

「そっ!リクエストは聞けない。私が作れるものだけね?」
「・・・くすっ、判った。近いうちにね」

「うん!」
「じゃあ約束のキスして?」

「・・・へっ?!」


類が買ってくれたスモークサーモンとゴボウサラダ&フレッシュトマトのベーグルサンドを頬張ろうとした瞬間のひと言。
つくしは大きな口を開けていたのに横目で類を見た。
その時に悪戯っぽく笑いながらウィンクされて心臓がバクン!と高鳴り、ベーグルサンドはつくしの手からテーブルの包み紙の上に戻された。

食べてる最中にキスなんて・・・と、抵抗したけど類の目は真剣。
「早く。昼休み、あと5分だよ?」の声にキスとベーグルサンドが天秤に掛けられる。

それよりも大学の構内で?と目線を遠くに向けると、確かにここからだと誰にも見られない。どうしようかとオロオロするつくしを見て、類はなおも意地悪く笑って自分の唇をチョンチョンと・・・。

ギュ!と目を瞑って5秒・・・つくしは覚悟を決めて、真横にいる類に顔を向けると・・・


キスしようとしたのは自分なのに、類の方からフワッと顔を寄せられて唇を塞がれた。
瞬間スルッと入ってきた舌・・・そのヌルリとした感触は昨日から何度も味わったもの。唇を解放された後で目を見開き、飄々とした類の顔を見つめた。


「くすっ、なんて顔してんの?ほら、全部持って行きな?」
「・・・うわぁっ!!時間だ!」

「さっきから言ってるのに。講義終わったら駐車場においで。バイト先まで送るから」
「・・・う、うん!!判った!ひゃあぁ、ヤバいーっ!!」

「階段、落っこちるなよ?」
「はーい!じゃあ後でね、花沢類!」


最後のフルネームにムッと唇を尖らせたが、つくしは振り向きもしない。
慌てて階段を駆け下り、カフェを横切って自分の校舎に向かう後ろ姿を朝と同じ気分で見送っていた。





「はい、今日はこれまで。レポート未提出者は後で私の所に来なさい」

本日最後の講義が終了し、教授の声でつくしは大きく背伸びをした。
それも一瞬の事、急いで勉強道具を片付け朝と同じ駐車場に向かった。


車の中には既に類が居て、シートを倒したまま寝ている・・・まさか、あの後からずっとここで寝ていたのだろうかとつくしは頭を捻り、窓越しに髪が寝乱れた類を見ていた。

寝息までは聞こえるはずもない。でも胸の辺りが上下するのを見て、寝てるんだとホッとする。
何処かの国の美術品のように起きないんじゃないかしら・・・と、男性とは思えない寝顔にゴクッと喉を鳴らした。


「この陽気なのに暑くないのかしら・・・」

窓をノックするのも憚られる。
どうしようかと悩んでいたけど時間は待ってはくれない。バイト開始まであと20分になったから勇気を出して、でもすごく小さな音で類を起こした。


類の目が少しだけ開き、窓の向こうで不安そうにしているつくしを捉えた。
そしてムクッと起き上がると時計を確認・・・ガチャ、と言う音がして内側からドアを開けられた。


「ごめん、待ちくたびれた?もしかして午後は休講だった?」
「・・・ううん、サボった。眠たかったし」

「またサボったの?仕方ないなぁ~、お腹いっぱいになったら眠くなるもんね~」
「ううん、腹は減ってる」

「えっ?!食べなかったっけ?もしかして珈琲だけ?」
「ううん、あんたが買ったサンドイッチ食ったよ?あんたが俺の食ったから」

「・・・・・・あれ?」


眉間に指を当てて昼休みを思い出す・・・そう言えば自分が買った安いサンドイッチを食べた記憶がない。
つくしは今更ハッとして類を見たが、類は気にもせず狭い車中で背伸びをし、「早く乗りな」と微笑んだ。

勿論これは正面玄関に近い専用駐車場で、つくしが類の車に乗るところは多くの学生に見られている。中には聞こえるように唾棄する言葉を出す者もいた。
車中の類に聞かせないようにと、つくしは急いで乗り込みドアを閉めた。


そして小さく吐く溜息・・・でも類には想像出来たのだろう。
「気にするな」と何度目かの言葉を出され、つくしもまた鼻を啜り目頭を拭った。


「今日のバイトは何処?」
「あぁ、駅前の喫茶店なの」

「・・・・・・制服、ミニスカートとか?」
「へ?あぁ~、うん、短いねぇ」

「・・・・・・・・・そこ、バイト禁止」
「はっ?!」





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2020/01/23 (Thu) 06:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

自宅に居ながら誰が作ったか判らないは嫌かもですね~。
外食ならいいんでしょうけど。
きっとこの人達には「お母さんの手作り弁当」も経験ないんでしょうね。

子供が小さい時は遠足のお弁当もコンビニのおにぎりって子が居ました。
給食がお休みの日に冷凍食品持たされて、先生に「電子レンジで温めてください」って言った子もいました。
何となく庶民で言えばそんな感じなのかしら・・・。

ん~~~、それぞれの事情ですが、やっぱり少し淋しいですね。

2020/01/23 (Thu) 21:56 | EDIT | REPLY |   

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