雨の降る日はそばにいて (52)

「今すぐお前が欲しい・・・」

すぐ目の前で美作さんが私に言った言葉・・・いま、私は自分がどうなっているのか判断できなかった。
いきなり美作さんに抱きかかえられて、こんなふうに上から見下ろされるなんて・・・!
私の両手は美作さに押さえられていて身動きできない!

いつも優しくてふんわりとした印象の美作さんに、こんな男性の力を感じたことがなかったから
息が止まるほど驚いて何かを叫びたいのに声にならなかった。
もの凄く綺麗な瞳で・・・そんなに見つめないで欲しい。


「やめて・・・美作さん、私は・・・私は・・・」

その後に何を言おうとしたのか、思わずその言葉を飲み込んだ。
今まで気にしたこともない美作さんのつけているフレグランス・・・少し甘いその香りに酔いそうだった。

「いつまでも総二郎に縛られることもないだろ?こうやって逢いに行っても元には戻れなかったんだ。
全部忘れてしまえよ・・・俺が忘れさせてやるからさ」


忘れる・・・?全部忘れてしまえって・・・そう言ったの?

再会したときの喜びも、あのパーティーの後の夜のことも、伊豆の家での言葉も・・・
西門さんの事を全部忘れろって言ったの?

美作さんがゆっくりと私に近づいてくる・・・・・・キスされる・・・!
そう思ったときに美作さんの後ろに西門さんの姿を見たような気がした・・・輝くような笑顔の西門さんを!
とうとう私は大声を出してしまった!


「いやだぁっ!やめて・・・美作さんっ!・・・あなたは西門さんじゃないっ!」

その声に美作さんは動きを止めた。
そして、すべての空気の流れも同時に止まったかのようだった。


「ごめんなさい・・・でも、やっぱり無理なの・・・あの人以外考えられないの・・・」

流れて落ちる涙は私の髪を濡らした。
おそらく私と美作さんの顔は10㎝も離れていないだろう・・・彼の小さなため息が私にかかっている。
瞬間固く眼を閉じてしまったから美作さんの表情はわからなかった。

ゆっくりと眼を開けて・・・次に美作さんを見たときには、何故か彼は笑っていた。


「え・・・?なに?・・・どうして笑ってるの?」

「だって、牧野が本心を叫ばないから・・・こうするしかないだろう?」

そう言うと今まで私の上に乗っていた身体を戻して、私を起こしてくれた。
そして二人でベッドサイドに座った。私は訳もわからず美作さんを見て・・・彼は私の流れる涙を拭いてくれた。


「本当の気持ちを叫んだら、決心がついたんじゃないか?牧野・・・。
総二郎を待っててやれよ。何年かかったってあいつ以外はダメなんだろう?
総二郎が戻ってきたら、一緒に戦いながら生きていってやれ。時間はかかるかもしれないけど
その方が牧野らしいんじゃないか?」

「私らしい・・・?」

「俺たちは全員知ってるさ、司も類も。・・・牧野が誰よりも強い人間だって事はな。
今回は随分と小さくうずくまってたけど、それって大きく飛び立つ前の準備って事だよ。
高く飛ぼうとしたら、人ってそのためにしゃがみ込むだろ?それと同じだよ・・・」


何よりも聞きたかった言葉・・・だったのかもしれない。
こんな私でも、まだ飛び立てる力があるってそう言ってくれた。

「総二郎も牧野も、お互いを想ってるのにどうしても一人で戦おうとするんだよな!
俺は総二郎が小さい頃から知ってるからわかるんだ。寂しいくせに強がって、欲しいくせに手を出さない。
そんなあいつがマジで手を伸ばして掴んだのが牧野なんだよ。本気なんだ、あいつ・・・。
多分、俺の事を一番警戒してるくせに、信用したフリして牧野を預けているけど、内心焦ってると思うぜ?」

美作さんは軽く笑いながらとても優しい顔をしていた。
そして、総二郎には内緒だって言って・・・もう一度私を抱き締めた。


久しぶりの人の温かさ・・・今の西門さんには誰もこの温かさを与えていないんだ。
そう思ったらすぐにでも逢いに行きたくなったけど・・・謹慎処分ではどうしようもない。



その前にどうしても自分の中で整理したい問題があった。

「ありがとう・・・美作さん。ひとつだけお願いがあるの・・・・・・綾乃さんに会わせてほしい」

「綾乃に?どうして・・・もう会わない方がいい!綾乃はまだ総二郎を諦めてないらしいし、何を言い出すか
わからないんだ・・・もう今は普通の精神状態じゃないはずだ!」


必死で反対する美作さんに私は笑顔を向けた。
これは私が前を向くための一歩だから・・・。


*********

<sideあきら>

総二郎から牧野の事を頼まれた・・・俺の気持ちなんて知ってるくせに。
俺にとっては残酷な願い事だったけどあいつの顔を見たら断るなんて出来なかった。

牧野をベッドに押し倒したとき・・・俺は本当に総二郎を裏切る覚悟だったよ。
総二郎を裏切ってでも牧野が欲しかった。牧野の中からあいつを追い出したかった・・・!

今は牧野が泣いても、俺がこの先はそれを笑顔に変えてやる・・・そんな夢のような希望を持った。


あと、少しで牧野の唇に届くって時に俺の肩を総二郎が掴んだような気がした。
そんなわけはないんだけど、遠く離れた場所から総二郎が止めに来たって思ったよ。

総二郎・・・悪かったな。
俺はいかにも牧野のために演技したみたいに言ったけど・・・本当はあのまま抱くつもりだった。


そうしなかった俺をお前は許してくれるだろう?・・・総二郎。


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4 Comments

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2017/06/15 (Thu) 12:36 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは🎵

和也に文也、でしたよね?

あきら、いつか幸せなお話を書いてあげたい。
本気で思います🎵
毎回謝ってる気がします。ごめんね、あきら。

このお話を少し明るくしてくれるのはあきらだよ!
感謝してるよ、あきらっ!っていつも叫びます。

さて、女の戦いに入りましょう!

では、また~❗
今日もありがとうございました🎵

2017/06/15 (Thu) 16:16 | EDIT | REPLY |   

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2017/06/21 (Wed) 23:54 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます🎵

あはは!
みなさん、結果はわかってたみたいだけど、このあきらには反応してくれますね~❗
あきつくの依頼が結構きましたから。

さとぴょん様も読みたい?あきつく。
マジで悩むなぁ。

ちょっと待っててくださいませ。今、リクエストに応えるためにあきつく考えてます🎵( *´艸`)

あきらにもいい思いをさせてあげましょう!

朝起きてびっくりしましたよ!
沢山のコメントありがとうございました‼

2017/06/22 (Thu) 06:18 | EDIT | REPLY |   

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