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「家元、失礼致します」

後ろにつくしを従えてる、それが頼もしいような不安のようなって思っていたら、部屋に入る時にこいつがズルッと足を滑らした。
ホントにドジったのか!と噴き出しそうになったが、部屋の中の雰囲気はそんなものじゃなかった。

慌てて姿勢を正して座ったのはいいが、今のがこいつの第一印象になったのは言うまでもない。
ま、俺としてはそんな事、どうだっていいんだけど。



目の前には親父とお袋、右隣には孝三郎が座り、その横に釣書でみた詩織が座っていた。その横には詩織の両親が満面の笑みで俺を見ていた。必要以上に笑う事に少しムッとするぐらいだ。
胡散臭いおっさんとやっぱり気位高そうなおばさん・・・そっちにも簡単に挨拶をすると、志乃さんが静かに障子を閉めた。


詩織は写真で見るよりずっと美しい女だった。

着ている振袖はつくしのそれに引けを取らないし、肌の白さも髪の艶やかさも、上品に育てられたのだろうから母親に比べて娘の方が気品もある。作法に何の問題もないだろうと思われるだけにさっきのつくしのズッコケがなんとも・・・。
それを笑う訳でもなく、紹介されるまでは顔も見ようとはしない。

この手のお嬢にはよくある「無感情」だった。


「お待たせ致しました」
「うむ・・・総二郎、こちらが孝三郎の婚約者となられた齋藤家の詩織さんとご両親様だ。齋藤さん、詩織さん、これが孝三郎の兄で総二郎です。当家の次男ですが、今後は講師として西門流に居りますので宜しくお願い申し上げます」

「おぉ、総二郎君!お目に掛かるのは初めてですが、いやぁ、考三郎君もご立派な方ですが兄上も凜々しいお方だ。これから娘を宜しくお願いしましたよ?仲良うしてやって下さい」

「西門総二郎でございます。こちらこそ宜しくお願い致します」


よく普通に言えるもんだ。
この前まで相手は俺だったのに本当に怒ってもいないのか・・・と、半ば呆れて挨拶をした。

ここで初めて詩織は顔を上げ、俺の目を見た。
なんとも気の強そうな自信に満ち溢れた瞳・・・隣に座ってる孝三郎が小さく見えて、完全にこいつは尻に敷かれると思った。
紹介された後はマナー教本から抜け出たような作法で一礼し、自己紹介。その喋り方の速さも声の高さも特訓してきたかのようで、逆に俺は興ざめした。


「初めまして。齋藤詩織と申します。
本日より婚礼までの間、こちらのお屋敷で西門流について学び、茶道のお稽古もさせていただくことになりました。お義兄様、どうぞ宜しくお願い致します」

「こちらこそ宜しくお願い致します。
義兄と申しましても私は講師ですので、お気楽にお付き合いいただければと思います」

「・・・はい、色々と教えて下さいませ」


その時に詩織がチラッと目をやったのはつくし。ここでは俺が勝手に紹介は出来ないから、親父の方に視線を送ると、苦々しい顔でつくしの事を聞いてきた。
つくしも今度は自分の番だとすげぇ顔を引き攣らせ、あれだけ練習したのに背中を反らせすぎて変な姿勢になってた。


「総二郎、そちらの方を皆に紹介しなさい」

「はい。私の横に居りますのは結婚を前提にお付き合いさせていただいている牧野つくしさんです。英徳大学の後輩になりますが、高校からの知り合いでございます。つい最近まで企業で働いていましたが、彼女も西門流の勉強のために退職し、今は私の指導で少しずつ茶道の稽古を始めております。
何分茶道未経験者でございますので宗家のお役に立つまでには時間が掛かるとは思いますが、今後はご指導下さりますようお願い申し上げます」


俺が一礼すると牧野もそれに合わせて礼・・・そして顔を上げたら、一呼吸置いて練習通りに挨拶をした。


「初めまして、牧野つくしと申します。
ま、まだ何も判らない未熟者でございますが、総二郎さんの力になれるように日々努力しようと思います。どうぞ宜しくお願い致します!」


詩織に比べて声も上擦ってるし、スピードも速すぎ・・・そして頭を下げるタイミングも深さもイマイチ。
でも「総二郎さんの力になれるように」・・・練習した言葉だけど、何故かすげぇ嬉しかった。




**********************




「初めまして、牧野つくしと申します。
ま、まだ何も判らない未熟者でございますが、総二郎さんの力になれるように日々努力しようと思います。どうぞ宜しくお願い致します!」


言えた!言い切った!って思ったけど、お家元達の表情は固いままだった。
何か失敗したかな?って総二郎を見たけど、彼は別に怒ってない。寧ろニヤニヤして気持ち悪いぐらいだった。

家元夫人も何故か困った顔で、弟の孝三郎君も眉を寄せてる。
詩織さんってお嬢様はニコッと笑ってくれたけど、その目が凄く怖く感じた。その隣のご両親は無視・・・私の存在すらどうでもいい感じに見えた。

ただ、ここで家元が反応・・・一瞬大きくなった目に私の方が驚いてしまった。


「牧野つくしさん?牧野さんと言えば・・・総二郎、まさか?」
「えぇ、そうです。覚えておいででしたか」

「総二郎さん、この方でしたの?まぁ・・・もうあちらは大丈夫なの?」
「大丈夫だからこうして私の横に居るのです。何か問題でもありますか?」


この会話でピン!と来た。

家元も家元夫人も道明寺の事を言ってるんだ・・・だからそんなに驚いているのね?と納得。
確かに高校生の時に道明寺家に認められるためにここで少しお茶をやったことがある。そしてあの道明寺の相手としてほんの少しだけマスコミに取り上げられたから、それで「牧野つくし」に反応したんだ?

総二郎はこうなることを判っていたんだろうか・・・。
友人の・・・道明寺の元カノを婚約者にしたなんて、この人達にすれば大問題なのかもしれない。


「道明寺家が怒りはしないのかね?それで西門の後援会を出ていくなどと・・・」
「司が怒るようなことはありませんよ。既に何年も前に話し合って終わらせています。私が奪い取った訳ではありません」

「でも世間体が悪いわ・・・楓さんになんて言われるかしら」
「問題ないでしょう。私はこの家の跡取りではありませんし、西門は企業ではありません」

「総兄が良くても世間はそう思わないんじゃないの?判ってるんなら選ばないだろ、普通・・・」
「悪いな、孝三郎。世間がどう思おうが自分に素直になって選んだらこうなっただけだ」

「・・・・・・・・・」



もしかして、総二郎・・・だから次期家元を降りたの?
私が家元夫人にはなれないから・・・だからなの?自分の立場を捨ててまで・・・・・・どうして?

私、別れた彼女だよ?
これは契約・・・じゃなかったの?


「・・・あ、あの総二郎・・・さん」
「つくしは気にしなくていい。お前は今まで通り俺を支えてくれたら助かる」

「えっ?!は、はい・・・」


今まで通りって、支えたこと無いですけどーーーっ!!

そんな事をニッコリ笑って言わなくても!って顔が熱くなったけど、その時に家元夫人がサラリと冷たい言葉を出した。


「総二郎さんの力になれるように日々努力しようと思いますって・・・思うだけではダメなのですよ?実行して下さらないと西門の・・・たとえ跡取りの嫁で無くても宗家男子の嫁であれば一通りの事は覚えていただかねばなりません。
詩織さんは本日からここに住まいを移してお勉強を開始致しますの。あなたはどうなさるおつもり?」

「・・・わ、私は・・・」
「先ほどもお話ししましたが、牧野には私が直接指導します。家元夫人の仕事を引き継ぎませんので時間を掛けてゆっくりと・・・それでいけませんか?」

「宗家を守る女側にも特別な仕事はあるのです。詩織さんは茶道は勿論のこと、華道も書道も習っておいでです。牧野さんはどうなの?」

「両方とも初めてです・・・これから勉強いたします」
「説明済みですよね?この世界が初めての人ですから総てこれからだと」


なんなの?この空気・・・詩織さんの歓迎会って言うよりも私の試験みたいじゃない?!
そして完全に不合格宣言・・・家元夫人が思いっきり「×」って書いたプラカード掲げてるような気がするんだけど?!

それなのに全然慌てることも無く両親を見てる総二郎・・・頼もしいと言えば頼もしいけど、この場では縋り付くことも出来ない。
足は痺れるし喉は渇くし、どっかに変な汗かいてる。
もう帰りたいって溜息が出そうになるし、胸が痛くなって帯が苦しい・・・場違いなところに座ってる気分は、やっぱり道明寺の時を思い出させた。


『あなたなんて道明寺には似合いません』


あの「鉄の女」に言われた言葉を、今日も聞くのかと思うと怖くて身体が震えた。


「やはり牧野さんは西門には・・・」
「西門に似合うかどうかでここに連れて来ているわけではありません。私が一生を共に過ごすのに彼女しか居ないと思ったから隣に座らせています。
それを拒否なさるなら私も一緒に拒否されたものと見做し、この家を出されることも覚悟しておりますが」



その時の総二郎の目・・・初めてこの人と過ごした日の目と同じだった。





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Comments 4

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2020/03/26 (Thu) 13:03 | EDIT | REPLY |   
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2020/03/26 (Thu) 14:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

生粋娘様、こんばんは。

お久しぶりです♥

ふふふ!今回はコメディですけど西門家も齋藤家も嫌な奴等ですね💦
まぁ、そこは総ちゃんに任せておけばそのうち懲らしめてくれると思うので(笑)

詩織・・・まぁ、いいヤツじゃ無さそうですね💦
こんなキャラも必要なのですよ~♥

髪は長い友達です(笑)大事にして下さいねっ!

2020/03/26 (Thu) 21:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

このお話の家元夫妻も考ちゃんもイマイチな設定です(笑)
まぁ、考ちゃんは毎回変な弟だけど💦

詩織は・・・紫ほどじゃないと思うけど、そこそこヤなヤツです(笑)


エッチ無しなのにつくしにベタ惚れな総ちゃん(笑)
ある意味可哀想な状況ですが、頑張っていただきましょう~!
お触りぐらいは結構あると思うから(どんな話や!)我慢しててね~!


うちの猟師、元気ですよ(笑)
最近も釣りに行って70㎝のブリ釣ってきて、母が煮魚用にぶつ切りにしたら無言で帰ったらしい(笑)
どうやら刺身を希望していた様子・・・

「言わなきゃわかんないっつーの!」って母が怒っていました。

因みに大好物が「豆ご飯」・・・そして私の嫌いなものは「豆ご飯」
何処までも仲の悪い兄妹です(笑)

2020/03/26 (Thu) 22:02 | EDIT | REPLY |   

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