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plumeria

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和風ケーキを持って来たのに目の前には夢子お婆様の作ったフルーツケーキ。
相変わらず真っ白なレースに囲まれたリビングで女性陣に囲まれて居心地が超悪かった。

何故か隣がお婆様で斜め前が仁美さん・・・朱里は真正面に座って俺が持って来たケーキを眺めていた。

出された珈琲カップはピンク色の薔薇模様で、窓際の花瓶にも相変わらず薔薇の花が生けてある。
懐かしいテラスの外に目を向けながら、子供の時にここを走り回ったことを思い出していた。
ジャングルジムやブランコをあきらさんが用意してくれて、仁美さんか小夜さんが一緒に遊んでくれたっけ・・・パンジーとかビオラとかを植えた記憶もある。
花音と並んでスコップ持って、それを運んできたのは・・・母様だった。


「紫音、お稽古頑張ってるの?総二郎君、お家元の襲名はいつ頃?」

夢子お婆様に言われて視線を室内に戻し、慌てて珈琲をひと口飲んだ。
朱里はもうケーキを食べ終わってて、今度は和風ケーキを仁美さんに強請ってる。俺はお婆様に質問されていたのに朱里を見つめて返事が出来なかった。


「紫音?聞いてる?」
「・・・あっ!なんでしたっけ?」

「もうっ!いやぁねぇ、私の話、聞いてなかったの?総二郎君の襲名はいつ?襲名したら紫音はどういう立場になるの?すぐに次期家元ってなるの?」

「あぁ、その事ですか」


驚いた・・・朱里を見ていたことを聞かれたらどうしようかと思った。
ホッと息を吐いたのを誰にも気付かれなかったかと思ったけど、仁美さんがチラッと俺を見て、その後でクスッと笑った。
昔よりも笑顔が多くなった仁美さんは、病気をしたなんて思えないほど元気だ。俺がここに居た時とは違う雰囲気で、服装だってすごくカジュアルになってるし顔色だっていい気がする。

それには安心だけど、さっきの「クスッ」はなんだ?


「家元・・・お爺様が今年の夏には隠居され秋には京都に行かれると聞きました。父様が襲名するのもその夏頃になるでしょうね。丁度真夏は茶事も少ないので丁度いいと思ってるんでしょう。
でも京都の夏は暑いので暫くはこちらで過ごし、涼しくなったら移られるようです」

「あらすぐじゃない!お祝いしなくちゃね~!で、紫音は?」

「俺の事は・・・まだ何も言われていません」


家元はその時に居なくてはいけないから当たり前だけど、次期家元なんて立場の人間はすぐに必要なわけじゃない。
家元となった父様からの指名と、それに後援会役員満場一致の承認が必要だと聞いている。
確かに俺と颯音が男だからどっちかだろうけど、茶道にそこまで気を入れてない颯音が選ばれたら・・・流石の俺も落ち込む。

まずは父様が襲名されて暫くは西門も行事続きで俺の事なんて後回しだし、落ち着く頃には炉開きやら年末行事、それが終わったら初釜だ。
それに俺は大学の卒論・・・って言っても今の時点でほぼ出来てるから焦らないけど。


夢子お婆様も仁美さんも「楽しみねぇ~」なんて言うけど、俺がその立場になったら五月蠅くなるはずなんだ。
俺宛の釣書とか・・・今の時代でもお見合いとか。

だから全然楽しみじゃない。
寧ろ俺の事はこの先10年ぐらいは放っておいて欲しいぐらいだ。

10年経てば朱里は25歳、その頃なら・・・・・・



「花音ちゃん、元気かな?」
「・・・・・・は?」

朱里の10年後を想像した時に耳に入った朱里の声、顔を上げたら持ってた珈琲カップを落としそうになり、吃驚して持ち直したらテーブルの上に珈琲を溢した!
「何やってんの?」って呆れ顔お婆様にタオルをもらって自分の周りを拭き、それを小夜さんに渡して頭を下げる・・・また仁美さんがクスクス笑ってる。


「花音?知らないよ・・・時差があるから電話もしないし。朱里の方がメッセージのやり取りしてるんじゃないの?」
「うん、してたんだけどね。最近忙しいみたいで控えてるの。類おじ様、結構スパルタ教育らしいわよ?」

「そうなの?花音の前でおじさんとか言ってないよね?」
「勿論よ~!でもメッセージに♡マークが沢山つくから楽しんでるんじゃないかしら」

「♡マークね・・・・・・」


暢気だな、花音は。
でも、そう言う時ほど本当は泣きたいのかもしれない・・・時々天邪鬼になる奴だから。
遠く離れてる俺の分身に後でメッセージ入れとこう、なんて思った。




「じゃあ、俺はそろそろ帰ります。稽古があるんで」

「あら、そうなの?」
「紫音、少し待って?つくしさんにケーキのお裾分け持って来るから」


本当は稽古の時間なんて決まって無かったけど、落ち着かないから珈琲を飲んだらそう言った。
いつもの事だけど必ず持たされる夢子お婆様のケーキを仁美さんが取りに行って、リビングでは朱里とお婆様と俺・・・車のキーをポケットから取り出したら急に朱里がそれを見つけて話し掛けてきた。


「あっ!紫音、今日は車なの?」
「うん、自分のね。どうかした?」

「あのね、送って欲しいんだけど時間あるかな?」
「・・・・・・いいけど、何処に?」

「赤坂でお友達のお父様が新しいお店を出したんですって。素敵なお洋服が揃ってるからおいでって言われたの。連れてってくれない?」
「赤坂・・・帰りはどうするのさ」


赤坂なんて中学生のクセに・・・って思ったけど口に出したら「おじさん」呼ばわりだ。
だからグッと我慢して言葉を止めた。
しかもその友達って男?女?・・・それも聞いたら「お父さんみたい」って言われるんだ。だから纏めて言葉を呑み込んだ。


「帰りは迎えを呼ぶわ。でも紫音の方がお話し出来るからいいんだもん」

「・・・・・・うん、じゃ支度急いでね」
「はーい!」


スカートを翻して階段を上がって行く朱里に目を向けたら夢子お婆様がクスクス笑った。
ここでも少しムッとしてお婆様を軽く睨んだけど、そんな俺を逆に面白そうに見上げていた。瞬間身体が熱くなる・・・心の奥を見透かされてる気がするからすごくイヤだ!


「・・・なんです?」
「ううん、何でもないわ。今度はあきら君が居る時にいらっしゃいな。そうね~、賑やかなのがいいから絢音ちゃんも颯音君も連れて来なさいよ」

「賑やか通り越して五月蠅いですよ・・・」
「いいじゃないの!じゃあ朱里のこと、宜しくね♡」

「えっ!宜しくって・・・」
「送ってくれるんでしょ?」

「・・・・・・・・・」


あぁ、そっちか。
驚いた・・・そんなの宜しくって言わなくてもいいのに。

完全に遊んでるな?って思ったけど言い返せない。仁美さんから母様宛のケーキを受け取り、可愛く支度してきた朱里を連れてガレージに向かった。



さっきよりも少し大人っぽい格好・・・外に出ると陽の光で髪が茶色く見えて、それが風に舞うからドキドキする。

あきらさん譲りの柔らかい髪、それに長い睫と白い肌。
ガレージがもう少し遠かったらいいのにと思うけど車はもう目の前で、俺は助手席のドアを開けた。
朱里が「お邪魔しまーす!」なんていいながら乗り込んで、俺は深呼吸して運転席へ・・・自分の車なのに息を止めて乗るってどうなの?と思ったが、コンパクトカーだけに助手席との距離が近いんだ。

ふんわりと優しい香りもしてくるし、朱里の足も丸見え・・・。


「じゃ、出すよ」
「うん!お願いします♡」


今日もその首にイルカのネックレスが光っている。






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