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「それじゃあ帰りは絶対に迎えを呼べよ?」
「うん!ありがとう、紫音」

・・・俺でもいいからって言えばいいのに、言えない。

赤坂に着いて朱里を降ろし、その姿が見えなくなるまで車の中から見送った。
それが伝わった訳でもないだろうけど暫くしたら朱里が振り向いてブンブン手を振ったから、慌てて自分の胸の高さで手を振る・・・そんなの見えるわけないけど、振られたんだから応えないと、って思っただけだ。

何時までも駐禁場所に停めておくことも出来ないから移動させようとした、その時・・・


もう小さくなった朱里の姿を止めたヤツがいた。
思わず助手席側に身体を倒して目を細めて見たら・・・その男は西林だ!

まさか朱里が言ってた友達はあいつか?いや、それとも偶然か・・・?!
はっ!もしかしたら俺に嘘をついた?これからデートで、帰りもあいつの・・・って免許はないから車じゃないか。
そんな事を考えていたらクラクションを鳴らされ、今度こそ車を動かした。でも頭の中がさっきの映像で一杯・・・このままだと事故るかもしれないからパーキングエリアを見つけてそこに車を停めた。


朱里はファッション関係の店に行くと言った・・・でも俺は西林の家業なんて知らない。まさかアパレル関係だったりして。
それを誰かに確かめたくて色んな人を思い浮かべた。


父様は茶道家でもそういう事に詳しいけど、理由を聞かれたら答えにくいから聞けない。
あきらさんは仕事中だって聞いてるし、朱里の事だと言えば速効仕事を中断しそうだからもっと言えない。
母様が知ってる訳がない・・・仁美さんも同じだ。
夢子お婆様は企業家だけど情報関係は美作のお爺様に任せてるから知らないだろう。

誰か知ってそうな人・・・司おじさんに聞いてもいいけど大騒ぎしそうだし、理由も聞かずに西林に攻撃しそうだ。


そうなると1人しか居ない。
でもこの時間だとあの国は早朝・・・起きてるかどうかも判らないし、頭が回ってないかも。でも、この人なら黙って聞いてくれるかもしれない・・・スマホに表示された名前を見つめながら、思い切って通話をタップした!



『・・・・・・どうした、紫音』
「あっ!類お・・・お兄さん、おはようございます!起きてました?」

『・・・・・・今起きた。でもいいよ・・・何かあったの?』

不味い!寝てたんだ・・・でも、花音が側に居るわけでもないだろうし。
かけたわりにはどうしようかと悩んで、慌てて出した言葉が「花音元気かなぁ~って思って!」・・・そんな訳ないだろう!
そんな質問だったら本人に電話するし、しかも早朝だし、メッセージだって良かったんだし!

下手くそな嘘を見破られるのは当然で、すぐに帰ってきた答えは『本当の質問は?』だった。


「・・・ごめんなさい。誰に聞いたらいいのか判らなくて」
『・・・いいよ、秘密は守る。言ってみな?』

「西林って名前の企業を知ってますか?英徳高等部にその名前の男が居ます。多分何処かの企業の息子だろうけど、俺は聞いたことがなくて・・・ご存じないですか?」
『・・・西林?あぁ・・・それなら建設関係で最近出てきた企業じゃないかな・・・少し待って』


す、すごいっ!寝起きなのにその場で判るんだ?!
しかも日本じゃなくてフランスに居るはずなのに!

それに感動して暫く放心状態・・・でも、建設関係なら衣料品とは関係ないのか?でも、そもそも店に行くこと自体が嘘ならこの調査も虚しいんだけど。


『お待たせ。うん、西林エンジニアリングって会社の次男が英徳の高等部に在籍してるね・・・そいつだと思うよ。長男はアメリカの大学に行ってるし、その次男は少し素行に問題ありの・・・昔の総二郎みたいな奴?花沢のデータにそう書いてある』

「(えーと、それは突っ込んだほうがいいのかどうか・・・)あ、ありがとうございます!助かりました」

『くすっ、このぐらいいいよ・・・頑張れよ』

「はい!頑張ります!」


・・・・・・・・・電話を切った後で思った。
何を頑張るんだ、俺。

でも西林の事は少し判った・・・昔の父様に似てる、相当ヤバい奴だって事。
今更赤坂に戻っても朱里の行き先は詳しく聞いてないから無駄だ。仕方なく本邸に戻り、夕方早めに小夜さんに確認したら、朱里はちゃんと美作の車で帰宅していた。

それを聞いて一安心・・・小夜さんにも笑われたが適当に誤魔化した。




**




それから数日後、父様の稽古終了後に今度行われる葵の茶会の内容を知らされた。


「もう聞いているだろうがこの夏に家元が隠居されるから俺が後を継ぐわけだが、その跡は紫音、お前を指名する事は決めている。ただしその決定はまだ先だ。
お前はまだ茶席の回数も少ないし、学生の間は行わないつもりだが卒論などは問題ないな?」

「はい。それは問題なく進めています」

「では葵の茶会、お前の茶席中心で行うから主要な客は紫音に任せる。そこでこれまでの稽古の成果を見ていただけ」

「私が中心で?でも今年の葵の茶会はわりと大きなものにしたはずです。それなのに私が中心ですか?お爺様と父様は?」

「勿論俺も家元も点てるが、若い人間の腕を披露するには丁度いい機会だ。そのつもりでしっかり心を鍛えておけ。いざとなったら緊張するようでは後継者として指名出来ない。判ったな」


しっかり心を鍛えておけ、そう言われたらズキッとした。
最近の浮ついた俺を父様は見抜いている・・・そう思った。

確かにイルカのネックレス以来少しおかしいんだ・・・稽古中も茶碗の中に朱里を見てしまうから。

こんな事じゃいけない。
暫くは茶道に集中して余計な事を考えないようにしなければ・・・。


俺の夢は西門流を引き継ぎ、茶道の精神を後世に伝えていくこと・・・そして両親のように唯一無二の存在を見つけること。
その人とこの家を守ること・・・古臭くて輝かしいものでもないけど、それが俺の夢。

その第一歩がこの葵の茶会なら、他の事を考えずに稽古を重ねて茶席に臨もう。


「判りました。日々稽古に集中し、その日にはお客様に喜んでいただけるよう努力致します」

「だからと言って必要以上に気負うな。お前は真面目過ぎるから教本通りでないと不味いと考えるようだが、茶席もその日それぞれだ。その時までの心持ちは大事だが、それよりも日々自分に正直に生きろ。
それが必ずお前の茶にも現れる。誤魔化して生きればそれも茶に現れる。他の誰が気付かなくても己が気付くはずだからな・・・そしてそれが1番落ち込むんだ。それを頭に入れておけよ」

「・・・はい」



既に落ち込んだ・・・。





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2020/01/20 (Mon) 16:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

ふふふ、ヘタレ紫音でございます♡

でもやっぱり総ちゃんの息子・・・そんな行動がこれから出てくると思います♡
(エロ紫音にはなりませんけど)
本当は「優しい・大人しい」と言われることに自分でも戸惑いがあるんだと思います。
内に秘める情熱がまだ現れてないだけ・・・そう思ってやって下さい♡

こちらも番外編にしては長くなりそうですが、どうぞ見守って下さいね。
紫音、必ず「男」になります!
(エロの意味じゃありませんから)

2020/01/20 (Mon) 23:38 | EDIT | REPLY |   

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