FC2ブログ

plumeria

plumeria

落ち込んだからと言って稽古を休むわけにはいかない。
だからあれからも毎日茶室に向かい、父様や母様を相手に稽古を続けた。

良くないと判っているのは「無心になろう」と頭で考えていること・・・母様には言われないが、父様には伝わっている気がしてソワソワした。
黙って飲み干し「また明日も来なさい」とひと言だけ・・・注意もないのが凄く不安を煽るんだけど、それも父様の教えの1つのような気がした。

自分で解決しろ・・・そう言う意味だ。



そんなある日、朝食時に父様から言われたのは「今日は5時半に前後援会長の鷹司様が来て下さるから間に合うように帰ってきなさい」だった。

鷹司前会長はもう随分高齢であまり本邸にも来なくなったが、父様とは昔から仲が良く、時折訪ねて来ては楽しそうに茶を飲んでいた。
詳しく聞かされていないが、俺達が美作から西門に戻ったのもこの人のおかげでもあったのだとか・・・だから父様は特に鷹司様を大事にしていた。
今でも相談事をしているらしいし、母様もこの人の事はお爺様達と同様に気に掛けているぐらいだ。


「お茶を点てて差し上げるのですか?」
「あぁ。でも気張らないでいいものだ。お相手していただけ、勉強になるぞ」

「・・・はい、判りました」

「久しぶりねえ~、お身体大丈夫なのかしら。お土産も準備しなくちゃ!」


母様も嬉しそう・・・でも、俺は少しだけ煩わしかった。
ご老人の話よりも自分が立ち直る方法を見つける方が先のような気がして、言葉が悪いが鬱陶しい・・・出来たら1人静かに稽古したいのに。
そんな俺をチラッと見た父様・・・それが判ったからさっさと食事を終わらせてダイニングを出た。




漫然と1日を過ごし、時間は既に夕方。
今から大学を出れば約束の時間には余裕で間に合うなと、迎えの車が来ているはずの駐車場に向かっていたら、西林と以前話していた男を見つけた。

数人で笑い合ってたが俺の方には顔を向けてなかったから気が付いてない。俺もそいつには用なんて無い・・・黙って後ろを通り過ぎようとしたら其奴らの会話が聞こえて来た。


「マジで?大丈夫かよ?相手は美作だろ?」
「はははっ!西林のヤツ、この前街で声掛けても無視されたってキレててさ。中学生ぐらい力ずくでヤれば、その後は恐ろしくなって言うこと聞くだろうって言ってたんだって!」

「そうかもだけどあの子の親父さん、マジ怖いって噂だぞ?うちの親父、美作だけは敵に回せん!って言ってるし」
「見た目はそんなんじゃないけどな~、怒ったら道明寺さんも黙るって言われてるんだろ?」

「そんな昔の話は知らねぇけど、この時間に呼び出してるらしいぜ?中等部の裏門で5時だったかな・・・つけてみようか?」
「止めとけって!俺達までとばっちり食うぞ?それに本当にヤるのかどうかなんて分かんねぇんだろ?」

「まぁな・・・バレてボコられるのは西林だけでいいか!また話だけ聞いてやろ!」


・・・・・・・・・・・・。


なんだって?朱里を・・・?

其奴らの話を聞いて時計を見たら4時45分・・・後15分しかない!

時計の文字盤を見ながら頭がパニックになった!
英徳大学と中等部はそこまで離れていないが15分走っても間に合わない・・・でも、帰らないと鷹司様が・・・でも、こうしている間にも朱里に西林が近づいてる?!

この前は偶然だったって事か・・・いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない!


止めていた足を動かし、駐車場にダッシュした!
そこで待ってたうちの車のドアを乱暴に開け、転がるように乗り込んだ!
いつもは出迎えてドアを開ける役目の運転手が目を見開き、血相変えて飛び込んで来た俺に大慌てしているが、それにも構っていられなくて「中等部へ急げ!」、と叫んだ!


「はっ?中等部ですか?」
「そうだ、いいから急げ!!どのぐらいで着く?」

「ここからですと12~3分でしょうか?」
「急いでくれ、5時までに行かなきゃいけないんだ!」

「畏まりました!」


心臓がバクバク言ってる・・・背中にも額にも汗が流れる。
ここで漸くスマホを取り出し、朱里に電話した。誰にも会わずにまっすぐ帰れ、そう言わなきゃと思ったのに電話に出ない。
もしかしたら鞄に入れてて気付かないのか・・・それとももう西林に捕まったのか?

今度は母様に電話を入れた。


『もしもし~、紫音?もう帰ってくる?』
「ごめん!!母様、待ち合わせの時間に帰られないんだ!父様に謝っといて!」

『どうしたの?紫音、何があったの?』
「・・・訳は後で話す!時間がないんだ、ごめん!!」

『紫音!!』


冷静に声が出せない・・・電話なんかそのまま切って鞄に放り投げ、俺の目は車の窓から中等部の建物を探していた。
それはすぐに見えてきて「裏に回れ!」と叫べば運転手は慌ててハンドルを切った。

高等部と並立していて広大な敷地・・・それをぐるっと回るだけでも時間が掛かる。それに信号もあってその度に止まり、イライラする・・・とうとう裏門近くの交差点で止まった時には車を飛び出していた。
「紫音様!」と運転手が叫ぶけど身体が止まらない・・・!!

朱里が連れて行かれる前に辿り着かないと・・・その気持ちだけでアスファルトの上を全力疾走していた。



「・・・・・・あ!朱里?!」

裏門に近づいた時に見えたのはタクシーに乗り込む白いスカート・・・でも、それを押し込んだのは男・・・西林だ!


「待て!!」

そう叫んだ時にはタクシーは走り出し、俺の足では追い付かない。その時に真横に停まった西門の車、それに飛び込んで「あのタクシーを追え!」と叫んで噎せ込んだ!


「紫音様、大丈夫ですか?」
「ゴホッ!いいから追え!見失うな・・・ゴホゴホッ!」

「お、お屋敷に連絡を・・・!」
「黙って追い掛けろ!それどころじゃないんだ!!」

「畏まりました!!」


判っている・・・あきらさんや父様の方がこういう時には役に立つ。
判断も的確で行動も冷静で、西林なんか歯が立つわけがない、そんな事は誰に言われなくても判っている。でも俺も西門に来てからは父様に武道は教え込まれた。
闘うことが嫌いだから上達したかと言われれば疑問だが・・・それでもあの父様に教えられたんだ。


だから朱里を助けるのは俺だ・・・!!
絶対にあいつから奪い返してやる!

朱里に指1本触れさせない・・・万が一俺がやられても朱里だけは無傷で取り返す!



待ってろ、朱里・・・・・・お前の事は俺が守ってやるから!





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/01/22 (Wed) 13:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

そしてそれは犯罪です(笑)
しかもかなり刑罰が重いです💦少し手前で止めておきましょう。
特に2人纏めては・・・はい、ヤバいと思います。

うふふ、ここで紫音も総ちゃんの血が流れていることを証明しましょう♡
大人しいだけじゃないぞ?紫音だってやれば出来るんだぞ!って感じで(笑)←強そうじゃない💦

そして当然出てきますよね・・・最強コンビが(笑)

2020/01/22 (Wed) 21:50 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/01/27 (Mon) 00:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

懐かしかった?(笑)
私も名前が出てこなくて(何故か清四郎と出てくる・・・)読みに戻りましたよ。

うんうん、このお爺ちゃんは過去最高にいい人でした♡
本当は夢の屋のお婆ちゃんも出したかったけどなぁ~!

2020/01/28 (Tue) 00:01 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply