雨の降る日はそばにいて (53)

<sideあきら>

牧野はそれまでと違う強い眼に戻っていた。
そして、綾乃に会いに行くという。・・・俺も噂でしか聞いていなかったけど、こうまでしても総二郎を
手に入れられなかった綾乃は誰とも口をきかず、精神障害を起こしているという。

それでも、最後に綾乃に会いたいと牧野は譲らなかった。

「綾乃さんの事を許せるかって言われたら、それは許せないの。私だけじゃなく西門さんまで罠にかけたんだから。
それでも、このままだと彼女は一生苦しむでしょう?助けたいんじゃないの・・・自分で立ち直って欲しいのよ」

「ホントにお人好しだな・・・自分の幸せだけ考えたらいいのに・・・」

「半分は自分のためだよ。残りの半分は・・・」

総二郎のためだろう?今更そんなに言葉を選ばなくても俺は大丈夫なのに・・・。


「美作さん・・・本当に・・・」
「牧野!もう何も言わないでくれ。・・・お前の最後の頼みぐらい聞いてやるよ。どうせ何を言っても聞かないんだろう?
俺が動かなかったら自分1人で行くんだろうし・・・その代わり俺も立ち会うからな。
総二郎からも牧野の事は頼まれてるから何かあったら俺が殺されるよ」


俺はこれでいいさ。世話のかかる妹と親友のために動いてるのも悪くはない。
自分でも損な性格だと思うけど・・・。


*******


牧野を綾乃が入院している病院に連れてきた。
少しだけ緊張している牧野は俺の後ろにくっついてその病院に入った。

総合病院の最上階にある特別室・・・今は誰も来ていないその病室には面会謝絶の札があったが
看護師に頼んで綾乃の意向を聞いてもらった。
もしかしたらここで帰されるかと思ったけど・・・意外にも綾乃は牧野に会うと返事をしたらしい。

俺たちは看護師に案内されてその部屋の前に案内された。

「念のため申し上げておきますが、藤崎さんは精神疾患の症状が見られますので興奮させないで下さいね?
何かあったらすぐに呼んで下さい」

俺たちはその看護師に頭を下げて、綾乃の病室に入った。



病室の中で綾乃は車椅子に座った状態で、窓から外を眺めていた。

「綾乃・・・牧野を連れてきた。お前と話がしたいらしい。二人きりには出来ないから悪いけど俺もここにいるからな」

俺が声をかけても綾乃はこっちを見ようともしなかった。
自分のしたことを悪いとも思っていないのか、綾乃の表情は冷たいままだった。
凍ったような表情で窓の外を見ているだけ・・・張り詰めたような空気が流れた。


牧野がゆっくりと綾乃の側に近づいた・・・何故か俺の方が緊張している。
牧野が何を言い出すのか、綾乃がまた牧野を苦しめないかとそれだけが気になった。
いざという時のため、牧野の少し後ろについてその様子を見守った。

綾乃の正面に牧野が立つ・・・なにか声をかけるのかと思った瞬間!
牧野の右手が綾乃の左の頬を思いっきり平手打ちにした・・・!乾いた音が病室に響いた!


「何をするのよっ!」

左頬を手で覆った綾乃が牧野を睨んでいる!ここに来て初めて見た人間らしい綾乃の顔・・・
牧野も自分の振り下ろした手を固く握りしめて、綾乃の目を見たまま立っていた。


そんな状況なのに、俺は何故か笑ってしまった・・・昔の牧野がそこにいたから。


*******


綾乃さんの大声が病室に響き渡った・・・でも悪かったなんて思わない。謝ろうとも思わない。
この人は今まで人に叩かれた事なんてないんだろう。

この痛みをわかろうとしたこともないんだろうから。


「痛いでしょう?人に叩かれたら・・・自分で傷つけても痛いでしょうけど、他人から傷つけられたらもっと痛いのよ?
すごく心が痛むのよ!あなたは今までそうやって人を傷つけてきたの。私はあなたを許さない・・・
西門さんや美作さんを傷つけたこと、絶対に許さないわ・・・!」

綾乃さんはその綺麗な顔を歪ませて私を睨んだ。
初めからこうしようと思ったわけじゃない。でも、彼女の顔を見たら自然と手が出てしまった。

綾乃さんは私を睨み付けたまま話し出した。

「あなたみたいな何の取り柄もない女に総二郎お兄様を渡したくはなかったのよ!子供の時からずっと
総二郎お兄様だけを見てきたのよ・・・いつか、私を選んでくれるって信じてたのに!
お兄様が初めて話した女の事があなただって知ったときはショックだったわ!あなたなんかのどこが良くて・・・」

ハッとして話しを途中でやめてしまった。
綾乃さんの今の言葉・・・西門さんは私と付き合う以前から、私のことを綾乃さんに話したって事なの?


「いつから私のことを知っていたの?」

そう聞くと視線をまた窓の外に移した。

しばらくしたら綾乃さんは私の質問に答えた。

「もう6年ぐらい前にお兄様が言ったのよ。藤崎の家が私とお兄様の婚約の話しを願い出たらきっぱりと断ってきて
・・・その時に好きな女性がいるって。普通の家の人で大学の後輩で・・・いつも一緒にいる女だって!
調べたらすぐにわかったわ。牧野つくしって名前・・・全然釣り合わないじゃない!あなたとお兄様・・・!
笑ったわよ!この私があなたに負けたのかと思ったらね!」

6年前って言ったら・・・道明寺と別れた頃だ。
あの頃から想ってくれてたの?・・・・・・西門さん、私にはそんな事言わなかったじゃない。
私の片思いの相手が自分だって知ったときも言わなかったじゃない・・・私のことばかり聞いてたくせに・・・。
涙が出そうになるのを必死で堪えた。

この話を聞いて思い出した・・・あの時に綾乃さんが私を見て笑ったこと。


「じゃあ、わざとだったの?大学の卒業式の日・・・あの夜のこと・・・」

「びっくりしたわ。お店を出たらあなたが目の前にいて・・・。だからお兄様に言ったのよ。
私につきまとう男がすぐ近くにいるから、振り向かずにここでキスして恋人のふりをしてって・・・。
お兄様はそんな事慣れているからすぐに言うことを聞いてくれたって訳よ!」


私を牧野つくしだとわかった上でやったんだ・・・西門さんも覚えてないわけだ。
そんな頼まれたキスの事なんて・・・。


眉間に皺を寄せたままの綾乃さん・・・
そこまでしてあなたが得たものは一体何だったの?

今、あなたの手の中には何が残っているの?

私には・・・まだ掴んではいないけど西門さんとの夢が残ってる。
それを今から掴みに行く・・・時間がかかってももう一度二人で夢を掴みに行くの。


綾乃さん・・・あなたにもそんな想いをわかって欲しい。

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花より男子

2 Comments

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2017/06/16 (Fri) 12:26 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは🎵

(/▽\)♪、キャー❗やっとわんこ様にOKもらえた気がする❗良かった🎵

いや、もう私ったらつくしちゃんまでも落としまくったから、話が暗くなっちゃって!
早くここまで来いって思っておりました。

いや、来たらすでにラスト直前ですけど。

やっぱり元気なほうがいいですね!
最後に向かって突っ走りたいと思います‼

ありがとうございました❗

2017/06/16 (Fri) 14:08 | EDIT | REPLY |   

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