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つくしの言葉を聞いて類は肩の力がスッと抜けた。

これまで誰にも言わなかった想い・・・それを口にする事に戸惑いと緊張があったのは確かだ。
そしてつくしがそう言う人では無いと思っていても、花沢家と関係ないかもしれない男だと言えば離れるんじゃないかと・・・その気持ちをほんの少し持っていたことを恥じた。

まだ何も進んではないが、大きな壁をひとつ乗り越えた気分。類は自分を抱き締めてくれているつくしの腕に顔を乗せるようにして全身の力を抜いた。
つくしの手が優しく自分の髪を撫でる・・・それは亜弓以来された事がなかったから擽ったかった。


「・・・でも、それで類はどうしたいの?お父さんに言うの?」
「いや、それを言っても聞く耳は持たないって判ってる。俺がいなくなれば後継者問題が発生する、そっちの方が大事な人だから」

「そんな事ないと思うけど・・・」

「そうなんだよ。この前のお婆様の葬儀の時もそうだった・・・何よりも大事なのはお婆様を見送ることじゃなくて、仕事に穴を開けないことだったんだから。
母さんは父さんが俺の誕生を凄く喜んでたって言うけど、それも俺自身が感じた事は無いんだ。総て花沢の為、それを先に言われて育ったから」

「・・・家のため?」
「そう、家のために産まれたんだよ」


この言葉を辛そうでも悲しそうでも無く淡々と口にする類をつくしの方が悲しく思った。
まだ親子では無いと決まったわけでもないのに、類の中では既に区切りを付けている・・・そう感じさせる表情だった。

類もつくしに話しはしたが、これからそれを証明する為に動く計画などまだ無い。
でも動くためのきっかけ・・・そう捉えていた。



「まずはあんたの引っ越しが先かな」
「・・・・・・へ?」


真剣に類の事を聞いていたのに、次に出てきた言葉が自分の引っ越しで、つくしは類を抱き締めていた手を離した。そうしたら今度は類がつくしを引き寄せ、胡座をかいてる自分の膝の中にポスッと入れた。
ホテルの時と違って後ろ向き・・・でも微妙にソレが判るところに触れているからつくしは再び身体を硬直させた。


類がつくしの後ろから抱き締めて、その首元に顔を埋めた。その時に類の唇がつくしの肌に触れ、そのヒヤッとした感触に反してつくしの身体は熱を持つ。
両手はつくしの身体をしっかりと包み、触れている唇から少し舌を出されてるのも判る。

・・・まさか今から?と慌てたつくしが類の膝を押して出ようとしても力で敵うはずがない。


だんだん感じ始めて腰が動き出すのを類に悟られたくない。
セックス好きな女だと思われたくない・・・でも身体は素直に反応する。これだけで疼いてしまうのは相手が類だから・・・そう思うと余計にこの先を望むような動きをしてしまう。

これ以上の刺激には耐えられないかも・・・と、少しだけ振り向いて小さな声を出した。


「・・・・・・あ、あの類、ここじゃ・・・」
「判ってる、しないよ」

「で、でもそんなにしたら・・・ヤバいんだけど」
「実は俺もヤバい。でも今日はちゃんと帰るからこれだけね・・・」


チクッと少し噛まれたかと思うような軽い痛みが走り、つくしは思わず肩を竦めた。
まさか・・・そう思ったけど類がニコッと笑ったから間違いではないのだろう、つくしが慌てて首筋を触ったらそこがすごく熱かった。
でも本気で怒る気にはならなくて、明日の服の心配だけ・・・「もぅ!」と態と怒った顔を見せたら耳朶にも不意にキスをされ、つくしは「ひゃあ!」と大声を出した直後に口を押さえた。

ここはオンボロアパート・・・今の声は階下の住人に聞こえたはず。
見える訳でもないのに部屋の床を見て「しまった・・・!」と小さく呟いた。


「くす、ごめん・・・」
「い、いいけどさ・・・さっきの話、どういう事?私、引っ越すの?」

「そう、ここじゃ危ないから」
「・・・・・・あぁ、あっちゃん?」

「まさか合鍵なんて渡してないよね?渡してたら今日もホテルだけど」
「渡してない、大丈夫だよ」


それを聞いてから類はつくしを退かせて立ち上がり、もう1度そこで唇にキス1つ・・・すぐに離したら、今度はつくしが背伸びして類にキスを返した。


離れる時間が来た・・・それは今までの別れとは違う切なさがあって、お互いに強く抱き締め合った。


「牧野が住みやすいと思うマンションを探してそこに行くよ。
あんたの生活に踏み込むつもりは無かったけど今は違う。俺は牧野を守らなきゃいけないからこれだけは言うことを聞いて?
どう見てもここじゃセキュリティーが甘すぎだから心配なんだ。ドアだって蹴れば開きそうだし防犯カメラだって無いだろ?」

「あはっ・・・そんな設備があったらこんな金額じゃ住めないから」
「金の問題で引っ越せって言うつもりじゃない事だけは判ってくれる?牧野の生活を無理に変えたくないんだ・・・でもここじゃ・・・」

「うん、ちゃんと判ってるよ。あっちゃん・・・怖いから」
「もう接触してこないとは限らない。俺が帰った後も戸締まりをして気を緩めないで。明日の朝、迎えに来る」


狭い玄関で靴を履きながら、類は心配そうにつくしを見つめる。
そして見送ろうとするのを少し怒った顔で「ダメって言ってるのに!」と止めた。類が車を走らせた後で万が一仙道が現れたら・・・そのぐらい警戒しているのだ。
だから最後のキスはオレンジ色の光りの下・・・淋しそうにつくしの髪を撫で、その手が離れるとつくしもシュンとしてしまった。


「おやすみ」
「うん、おやすみ。気をつけてね、ちゃんと戻ったかメッセージだけでも・・・」

「ここから自宅までそんなに離れてないよ。でも判った・・・メッセージするね」
「うん、待ってる」

「もし何かあったら電話すること。じゃあ明日の朝、俺が来るまで外に出ないで」
「判った・・・」

「・・・・・・・・・くすっ」
「ふふ、こんな事言ってたら帰られないね」


安っぽい金属音をさせてつくしの部屋のドアが閉まる・・・そこに耳を当てて類の足音が遠のくのを聞いていた。
それが聞こえなくなると今度は急いで小さな窓に向かい、カーテンを少し開けて類が停めた車に向かうのを見送った。途中で1度振り向いたのが判り、小さく手を振ると類も軽く片手をあげて応える。


熱くなった身体が冷めない。
もっと一緒に居たかった・・・こんな思いを他の恋人達もしているのだろうかと、カーテンを握り締めて思った。
そのうちに光ったのは類の車のライトなんだろう、それが暗闇に吸い込まれて消えるまでつくしはその場から離れられなかった。





花沢邸に戻ったのはもう日付が変わってからだった。
いつもの場所に車を停め、照明が灯されている玄関に向かい重厚なドアを開けた。

当然フロアには誰も居ないがここが真っ暗になることはない。
キチンと執務服を着た執事が「お帰りなさいませ」と声を掛けるが、類はそれに軽く返事するだけで目も合わせない。靴音を響かせながら階段を上がると自分の部屋まで歩を早めた。

その時に背中から聞こえた声は父、聖司だ。


「類、珍しいな。昨日は無断外泊か?」


その声を聞いて数秒間は振り向けなかった。
このぐらいのことで咎める気なのか・・・それともまた気に入らない話でも持ち込まれるのか、と唇を噛んだ。
聖司の方から話し掛けられることなどそう多くはない。そう言う時は決まって面白くない話だった。

身体を向けることなく顔だけ横に向けて無愛想に類は答えた。


「連絡しなければいけませんでしたか?たまにはありますよ・・・子供じゃありませんから」

「・・・まさか女でも出来たのか?それは世間に公表出来るお相手なのか?そうじゃないのなら・・・」
「そうじゃないならなんです?そこまで踏み込んで来るつもりですか?」

「・・・お前がムキになるなどもっと珍しいな。まぁいいだろう・・・遊びの1つも知らないのも問題だ。でも忘れるな、お前は・・・」
「花沢唯一の後継者、そう言いたいんでしょう?」

「判っているならいい。ただし間違いだけは起こすな。後々災いの火種となるからな」

「・・・失礼します」



間違いとは子供を作ること・・・そう言いたいのだろう。
それは花沢家の為と言うよりつくしの為になら気持ちを抑えることは出来る。

聖司の顔を見ることも無く自分の部屋に入り、そのままベッドにダイブ・・・昨日とは違って冷たい布団に埋もれ、つくしの笑顔を思い浮かべながらメッセージを送った。


『ちゃんと帰ったよ。おやすみ、牧野・・・また明日』





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2020/01/27 (Mon) 08:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

ははは!類君の本名が他にあったら嫌ですよね💦
何処に行っても「花沢類」でなければ(笑)
顔と名前はセットですものね♡

これから調査が始まりますが、色々ヤなヤツも出てきます♡
ほんわかラストにはまだまだ遠いですが、どうぞ宜しくお願いします♡

2020/01/27 (Mon) 23:53 | EDIT | REPLY |   

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